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エッジAI導入の手引き
生産設備/機器制御への組み込み

定価(税込)  1,980円

著者
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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08222-1
コード C3053
発行月 2022年07月
ジャンル 機械

内容

クラウドAIのデメリットを解消するエッジAIの定義や特徴を披露し、生産性や品質向上に必要な課題の洗い出しと、AI実装法をわかりやすく体系化。生産設備/制御機器にエッジAIを組み込み、最適化を図る進め方を説く。適切なアルゴリズムの選定からデータの加工、ハードウェア選定まで指南する。

出澤純一  著者プロフィール

(いでさわ じゅんいち)
株式会社エイシング 創業者 代表取締役 CEO
2004年、早稲田大学主催「ワセダベンチャーゲートビジネスコンテスト」において最優秀賞を受賞
2006年3月 早稲田大学理工学部機械工学科 卒業
2008年3月 早稲田大学大学院理工学研究科 修士課程(機械工学)修了
2007年に大学院修士課程1年時に早稲田大学発ベンチャーとして起業。大学院修了後、ソフトウェア開発、総合卸売、AI研究開発、医療機器研究開発などの事業を行ってきた
2016年に日本総合研究所主催のアクセラレータプログラム「未来2017」に参加し、二次審査通過後に株式会社エイシングを設立。2017年3月の最終審査において「日本総研賞」受賞
2018年には大学発ベンチャー表彰にて経済産業大臣賞を受賞。同年、起業家万博において総務大臣賞を受賞
その他、講義、講演など多数

菅原志門  著者プロフィール

(すがわら しもん)
株式会社エイシング 執行役員 CTO
2010年3月 早稲田大学理工学部機械工学科 卒業
2012年3月 早稲田大学大学院創造理工学研究科 修士課程(総合機械工学)修了
2012年4月 日本オラクル株式会社入社
2017年7月 株式会社エイシング入社

目次

第1章
生産技術者が身につけたい
AI活用の視点
1 現在のAIブームの実態
2 AIの進化と拡大するAIビジネス
3 AIチップの開発競争と背景
4 機械学習(Machine Learning)とは何か
4.1 ルールベースシステムと機械学習システム 
4.2 第3次AIブームで脚光を浴びる機械学習 
5 機械学習が解決する問題と代表的なアルゴリズム
5.1 回帰 
5.2 分類 
5.3 異常検知 
5.4 クラスタリング 
5.5 次元削減 

第2章
AIプロジェクトの進め方
1 AIプロジェクトを運営できる人材の重要性
2 AIプロジェクトと通常のシステム構築プロジェクトとの違い
3 データ取得における留意点
4 AIシステムは稼働後も精度の監視と調整・再学習が必要

第3章
機械学習におけるデータ前処理
とモデル評価手法
1 機械学習とデータ
2 機械学習におけるモデル評価手法
3 過学習
4 交差検証
5 他の評価観点
6 学習モデルの作成
7 機械学習における前処理
8 コンセプトドリフト
9 コンセプトドリフトへの対応

第4章
エッジAI/エンドポイントAIが
求められる背景と特徴
1 エッジ AI/エンドポイントAIとクラウドAIの違い
2 エンドポイントAIに注目が集まる背景
3 エンドポイントAIのためのモデル軽量化技術
4 エンドポイントAIにおけるデバイス上オンライン学習の
メリット
5 エンドポイントAIでのオンライン学習実現に向けた課題
6 オンライン型学習器DBT(Deep Binary Tree)
7 オンライン型学習器MST(Memory Saving Tree)

第5章
実製品にAIを搭載すること
を可能にする方法
1 実製品にエッジAI/エンドポイントAIを実装するにあたり、
必須となる3つの検討項目
2 AIによる既存制御の知能化
3 クラウドを介することなく導入機器単体でリアルタイムに
自律学習・予測可能に
4 AIが動く環境を一体で手に入れる
5 PoCの壁を超えるために

第6章
既存制御の限界を突破し、
生産性を飛躍的に向上〜オムロンでの実践
1 オムロンの考える製造装置の知能化
1.1 エッジAIの使いどころ 
1.2 既存資産とエッジAIの融合による期待効果 
2 AI予測制御技術の検証事例
2.1 背景 
2.2 課題 
2.3 解決方法 
2.4 シミュレーション検証結果 
2.5 実機検証結果 
2.6 結論 

第7章
導入実績から見えた
導入方法の5パターン
1 PID制御にAI予測を追加するAI-PID制御
2 ソフトセンサとしての活用
3 AIモデルのパラメータ最適化への応用
4 AIモデルによる最適制御入力値の生成
5 異常検知/分類を活用した操作切り替え

第8章
AIの実装やコモディティ化を
進めていくために
1 AIの普及の現状と課題
2 AIのコモディティ化
3 コモディティ化によるAI実装における必要人材の変化
4 先行者利益獲得のために

参考文献 
あとがき 
索 引 

はじめに

昨今、AI技術は、多くの産業分野で導入・活用が始まりつつあります。AIに限らず、近年は使いたいソフトウェアがあれば、クラウド上のサービスを利用する動きが主流となってきています。そういった中で、AIにおいてもクラウドAIの活用が先行しています。
クラウドAIとは、大量のデータをクラウドへ送信し、クラウド内のCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)やGPU(Graphics Processing Unit:グラフィックス・プロセッシング・ユニット:コンピュータゲームに代表されるリアルタイム画像処理に特化した演算装置)を使って高速学習するものです。クラウドAIでは、大量のデータを蓄積することはもちろん、それらを高速処理して学習モデルを作ることが可能です。たとえば、GAFAM〔Google(Alphabet)、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、Microsoft〕などが提供するクラウドサービスにはAIを搭載できるものがあり、これらを基盤としてクラウドAIが提供されているケースもあります。
しかし、クラウドAIにはデメリットもあります。クラウドAIはオフラインで活用することができません。また、データ量が増えるほど通信量が増えるほか、インターネット経由での処理になるため高速処理が難しいとも言われています。仮に、クラウドAIとエッジデバイス間を5G通信してもレイテンシー(遅延)が発生し、高速応答やリアルタイム性が必要となるシーン(自動車の自動運転など)には不向きと言われます。すべてのデータがクラウド上に集められることから、セキュリティやプライバシーに関するリスクもゼロではありません。
対策としてはデバイスにAIを組み込む方法がありますが、単純にデバイスにAIを実装するのはメモリや計算コストの点から難しく、実装の軽量化を進めつつ精度も維持するというハードルを越えなければなりません。
こういった状況下で誕生したのがエッジAIです。エッジAIでは、これまでクラウドで行っていた情報処理をエッジ側で行うことで、通信遅延のないリアルタイムな処理を可能としたものです。今、このエッジAIの先進的な活用が注目を集めています。
本書では、クラウドAIのデメリットの解消手段として期待されるエッジAIに焦点を当て、その定義や特徴、活用事例を述べるとともに、生産技術者がエッジAIを用い、どのように生産設備/機器制御の最適化を実施すべきかについて紹介します。
読者のみなさんの中には、AIに対して、知らない領域ということで身構えて敷居を上げてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、それは非常にもったいないと思います。AIは道具の一つにすぎないからです。
AIの専門家に情報工学出身者が多いことも、AI活用のハードルを高めている一つの要因かもしれません。情報工学出身者は、モビリティ制御やFA(Factory Automation:工場における生産工程の自動化を図るシステム)における機械制御などの専門領域に詳しいとは言えず、AI技術者が、AI領域と機械工学領域をつなぐ役目を果たす役割を担うのが難しいのは事実です。
AIアルゴリズム自体を研究開発するのであれば、統計学、数学、既存の機械学習(Machine Learning)の様々な理論を深く広く知る必要があります。しかし、AIを自身の専門領域で応用・適用するのであればこれらを深く知る必要はなく、それぞれの機械学習アルゴリズムの特徴を理解し、自分が適応したい課題を整理して適切なアルゴリズムを選定し、それに必要なデータの加工をすればよいだけです。ハードウェア選定に関しても、アルゴリズム特性や課題に応じて適切なものを選定すればよいのです。
思い返せば、ホームページ制作においても、1995〜2000年頃はHTML言語を使えてデザインセンスが多少ある方が重宝されていましたが、現在では小学生でも無料でホームページを作ることができる情報と環境が整っています。AIも近い将来に、同様にコモディティ化していくと考えます。しかし、コモディティ化するまでには時間がかかります。読者のみなさんの専門領域で、既存技術では実現できない、一般的に限界であると決めつけられている技術課題を見出すことができれば、「業界初」「世界初」のソリューションが実現できる可能性があるのです。
昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みやAIの活用などにより、生産や品質管理などにかかるコストを削減し、さらにカーボンニュートラルやSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)などの要求に応えていくためのAIの実装、およびコモディティ化が加速しています。この結果、先行者利益を得ることができる期間も短縮してきています。
各領域の専門家のみなさんには、常識を疑い、生産性や品質などの向上のために必要な技術課題の洗い出しを行っていただき、この先行者利益を早期に得ていただきたいのです。
本書では、専門的な内容も記述していますが、まず一度流して読んでいただくことをお勧めします(難しいと判断された箇所は適宜読み飛ばしてください)。それでも読者のみなさんは、AIベンダーから見ても「なかなかAIリテラシーが高い人」になれるはずです。繰り返し読んでいただき、本書の専門的な内容まで理解する、もしくはイメージを捉えることができれば、もう立派なAIコンサルタントです。
本書では、AI、エッジAIを自らの企業・現場で利活用することを考えた際に、自身・自社でどこまで実現できるのか、そのための手段は何か、どこからは自身・自社ではできないかが判断できるためのポイントをお伝えできればと思っています。
生産設備/機器制御にAI、エッジAIを組み込む、組み込みたい生産技術者のみなさんに、AI実装に向けた活用の“勘どころ”を体得いただければ幸いです。

2022年5月吉日

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