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めっちゃ使える!
設計目線で見る 「部品加工の基礎知識」
形状、精度、コストのバランスが良い機械部品設計のために

定価(税込)  2,860円

監修
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-08212-2
コード C3053
発行月 2022年05月
ジャンル 機械

内容

実際の工作機械や加工場面を写真と図面で紹介。機械設計者に必要な機械加工のポイントを丁寧に解説した入門書。設計者が形状、機能、精度といった自らの設計意図を満足させ、かつコストを抑えた部品設計を身につけるために必要な基礎知識を解説する。

山田 学  著者プロフィール

(やまだ まなぶ)
1963年生まれ。兵庫県出身。技術士(機械部門)
(株)ラブノーツ 代表取締役。 機械設計などに関する基礎技術力向上支援のため書籍執筆や企業内研修、セミナー講師などを行っている。
著書に、『図面って、どない描くねん!』『めっちゃメカメカ!基本要素形状の設計』(日刊工業新聞社刊)などがある。

藤崎淳子  著者プロフィール

(ふじさき じゅんこ)
長野県在住。Material工房・テクノフレキス 代表。
工作機械・工具商社の営業職を経て、樹脂材料・部品加工、プレス金型、基板実装その他複数の業種の製造現場に関わり続け、ものづくりの知識を蓄えながら作る立場と設計の立場を兼ねるようになる。主に、電子部品メーカーの生産現場をサポートする治具や装置等の受注設計製作を手がけ、現場打ち合わせから最後の納品まで一人で行う。その傍らで3D設計ツール、加工法、製図基礎の講師とWEB上での技術コラムの執筆を行っている。

今井 誠  著者プロフィール

(いまい まこと)
東京都在住。やなか技術士事務所 代表。技術士(機械部門)。
精密機器メーカー、精密加工部品メーカーの研究開発、加工開発、機械設計を経て、都内特許事務所にて知財業務に携わる。2020年にやなか技術士事務所を設立する。主に機械設計、加工方法、3Dプリンタ、PL法に関する講演や社内外の研修講師に従事している。

目次

絵に描いた餅を食える餅にする方法を知っておこう


第1章 丸物加工の王道!
「旋盤加工」
1-1 設計目線で見る汎用旋盤加工
1-2 設計目線で見るNC旋盤加工

第2章 板物(角物)加工の王道!
「フライス加工」
2-1 設計目線で見る汎用フライス加工
2-2 設計目線で見るNCフライス加工

第3章 小ワザが光る!
「その他の加工」
3-1 設計目線で見るボール盤加工
3-2 設計目線で見るブローチ加工
3-3 設計目線で見る歯切り加工

第4章 高精度に仕上げるならコレ!
「研削加工」
4-1 設計目線で見る平面研削加工
4-2 設計目線で見る円筒研削加工

第5章 加工のテクニシャン!
「特殊加工」
5-1 設計目線で見る放電加工
5-2 設計目線で見るレーザ加工



第6章 コストダウンの救世主!
「板金加工」
6-1 設計目線で見る切断加工
6-2 設計目線で見るパンチ・プレス加工
6-3 設計目線で見る曲げ加工

第7章 困ったときの命綱!
「接合加工」
7-1 設計目線で見る溶融接合
7-2 設計目線で見る液相接合(ろう接)
7-3 設計目線で見る圧接接合(抵抗溶接)

第8章 複雑形状に強い!
「成形加工」
8-1 設計目線で見る鋳造(砂型鋳造)
8-2 設計目線で見る鍛造
8-3 設計目線で見るダイカスト
8-4 設計目線で見るロストワックス鋳造
8-5 設計目線で見る射出成形
8-6 設計目線で見るコイルばね加工

第9章 短納期の救世主!
「AM技術 1」
9-1 設計目線で見る材料押し出し法
9-2 設計目線で見る液槽光重合法

第10章 短納期の救世主!
「AM技術 2」
10-1 設計目線で見る粉末床溶融結合法


加工知識の引き出しをたくさん持つということ

はじめに

〜絵に描いた餅を食える餅にする方法を知っておこう〜

設計者のみなさんは、日々何のためにCADに向かってモデリングや製図をしているのでしょう。「業務だから」という答えはもちろんですが、焦点はそこではありません。みなさんが描かれる部品図面や3Dモデルは、最終的に現物の機械部品となって仕事をしてもらわなくてはいけません。ですから図面やモデルを作る上では「それが実現可能な部品形状であること」が大原則なのです。
みなさんは、自分が図面に描いた部品の形状が、どのような方法を経て現物になるのかを考えてみたことはあるでしょうか。どんなに手間をかけて図面を描いても、それが実現不可能な形状だったら、その図面は「絵に描いた餅」にしかならず、製図作業は徒労に終わってしまいます。この、「実現可能か不可能か」のジャッジをするのは、部品加工の現場です。
設計と加工現場の間で起きる「加工方法に苦悩する部品形状問題」は昔からありますが、近年その頻度が増えているように見受けられます。設計と製造の現場が切り離されて「設計は日本で行い、生産は海外で」といったグローバル生産体制や、「設計と組み立ては自社で行うが、部品加工は外注」というファブレスメーカーも増えました。それらの合理性は否定しませんが、その背景に潜んでいる「CADの操作には長けているのに、ろくに材料に触ったこともなく加工知識もない設計者が増えている状況」は好ましいことではありません。これが「加工現場泣かせの部品形状」を続々産んでしまう一つの要因であり、ただの絵描きなら許されることでも、設計者を名乗るからには、現場に丸投げでは済まされない事はいくつもあります。設計者だからとデスクで粛々とCADに向かうよりも先に、現場でリアルなモノづくりを学ぶことは本来必須で、設計者であればこそ、自分が描いた絵が現物になる方法にはどんなものがあるのかを知り、それぞれの加工法のメリットとデメリットをおおよそ掴んでおくべきでしょう。
各社、製造業において欠かすことのできない3要素である、Q(Quality=品質)、C(Cost=費用)、D(Delivery=納期)を満足させることを目標に掲げるも、Q(品質)とD(納期)については比較的指標が明らかなのに対して、C(費用)については、その数字の根拠が曖昧なままの設計者が多いように見受けられます。
対して現場が加工方法を検討する際には、「切る」「削る」「曲げる」「つぶす」「溶かす」といった物理的な検討だけでなく、加工時間と加工費も併せて考えます。現場は図面やデータに忠実にモノを作ることが仕事なので、一見すると加工困難と思われる形状でも、よほどおかしな形状でない限り、なんとか工夫して作ろうとするのです。ただ、その場合、ほぼ間違いなく加工費用は高額になります。
例えば、一体モノの削り出し形状の部品について加工検討の末、「これは一体モノでは加工不可能な形状だけど、部品を複数に分けて作って溶接すれば形にはなる」と打開策を見出したとします(図0-1)。
しかし見返りとして、素材からの一体モノ削り出しと比べて、溶接箇所では応力による変形や割れ等が生じて機能を損ねるリスクが生じますし、分割した部品を1点ずつ加工してさらに溶接するので、大幅に工数が増えて結果的にコストも急騰するわけです。
いくら形だけはなんとかなっても、機能は満たさないわコストは上がるわで、これじゃ機械部品として何一つ良いことがありません。装置全体の予算枠が決まっているのに、こんな具合に部品のいくつかが無駄に予算を食うようでは、良い設計とは言えませんよね。
このような事例では「この形状は、分割して部品を加工した後に溶接して一体化するしか方法がないが、それで問題ないか」と現場から設計に確認の連絡が来ます。しかし設計と加工現場が隔たれていることが多い昨今、設計者が現場に積極的に問い合わせない限り、ふだんの加工法に関する細かな情報がフィードバックされることはほとんどありません。つまり、設計者が知らないところで加工に無駄なコストがかかっている事例は数多くあるということです。加工現場では、図面に描かれた情報を常に「正」とし、それを忠実に再現することを使命と考えて日々作業をしています。現場にとって「正」となる図面の理想形とは、どの加工法を用いるかが容易に判断でき、なおかつ投影図の向きや寸法の配列が、加工者に見やすく描かれたものです。理想的な図面を描くためには、まず製図のルールを覚えて、さらにそこに加工法や工具の知識が伴えば「絵に描いた餅」で終わってしまう、悲しい図面を描くことはなくなるはずです。
考えてみれば、設計者は図面に重要な情報を託しているにもかかわらず、自分の描いた絵がどのような手順で現物化するのかを知らないままで、絵だけを描き続けることに不安を覚えないなんておかしな話です。せめて自分の描いた図面を持って加工現場に行って、手順を知り、コストを試算しながら加工中の様子を見て「絵に描いた餅が食える餅になっていくさま」を学習するということは、とても必要なことだと考えています。
昔からよく、「現場を知る設計者は、知見が豊富で創造力や応用力のある強い設計者だ」と言われます。ところが現在、先に述べたようなグローバル生産体制やファブレスシステムなどで、設計の現場と部品加工の現場が物理的に隔てられていることで、設計者が望んでもなかなか現場で加工法を「知る・学ぶ」ことができないという残念な背景もあります。そこで、ぜひ本書を活用していただき、部品加工方法の種類とその概念を知って、加工に使用される工作機械の種類と動作の原理、工具の基礎知識と加工知識を得ることで、より合理的な設計力を培っていただけることを願います。

読者の皆様からのご意見や問題点のフィードバックなど、ホームページを通して紹介し、情報の共有化やサポートができ、少しでも良いものにしたいと念じております。

書籍サポートページ
https://www.techno-flexis.com/ Material工房・テクノフレキス
https://www.yanaka-proengineer.com/ やなか技術士事務所


最後に、本書の執筆にあたり、日刊工業新聞社出版局の担当者にお礼を申し上げます。

2022年3月
Material工房・テクノフレキス 藤崎淳子
やなか技術士事務所 今井 誠

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