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パワービルダーの家づくりビジネス戦略
安くて良い住宅を提供するためのノウハウ

定価(税込)  2,420円

編著
編著
サイズ A5判
ページ数 264頁
ISBNコード 978-4-526-08207-8
コード C3052
発行月 2022年04月
ジャンル 土木・建築 経営 電子書籍

内容

一戸建て住宅を低価格で販売する不動産業者をパワービルダーと呼ぶ。パワービルダーと呼ばれる会社のひとつ、株式会社アーネストワンの事例をもとに、品質が良く、低価格で住宅を提供するノウハウを解説する。


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西河洋一  著者プロフィール

1963年生まれ。㈱アーネストワン取締役、一般財団法人アーネスト育成財団理事長、一般社団法人日本MOT振興協会理事、一般社団法人日本開発工学会会員。一級建築士
2009年芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科修了
1982年和田建設㈱入社、1999年㈱アーネストワン(旧伏見建設㈱)入社・取締役営業副部長、2000年㈱アーネストワン代表取締役社長、2013年㈱アーネストワン取締役会長、2013年飯田グループホールディングス㈱代表取締役社長、2021年飯田グループホールディングス㈱取締役会長、2022年㈱アーネストワン取締役(現在)

小平和一朗  著者プロフィール

(こだいら かずいちろう)
1947年生まれ。一般財団法人アーネスト育成財団専務理事、㈱イー・ブランド21代表取締役、一般社団法人日本開発工学会理事・運営委員長・学会誌『開発工学』編集委員長。博士(学術)
1970年芝浦工業大学電子工学科卒、2005年芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科、2007年芝浦工業大学大学院工学研究科博士(後期)修了、博士(学術)
1970年大倉電気㈱入社、技術部長、経営企画室長、営業部長、情報通信事業部長(2002年まで)、2004年㈱イー・ブランド21代表取締役(現在)、2018年敬愛大学経済学部特別講師(現在)

目次

まえがき
推薦の辞

序 章 パワービルダーのコンセプト
0-1 戸建て分譲住宅事業のコンセプト
0-2 ビジネスモデル
0-3 不動産販売事業者のセンスウェア
0-4 おわりに

第1部 アーネストワンの経営理念
第1章 企業理念と技術経営戦略
1-1 企業アイデンティティと企業理念
1-2 MOTを学び、経営に生かす
1-3 アーネストワンのモノづくり戦略
1-4 リーマンショックが起きた際のアーネストワンの経営戦略
1-5 お客さまとのコミュニケーション手段としてのブランド戦略
1-6 おわりに

第2章 不動産開発
2-1 土地取得の基本的な考え方
2-2 ビジネスモデルと土地取得
2-3 安価な土地を取得する
2-4 土地取引のリスク
2-5 土木工事

第2部 木造軸組工法住宅の基本仕様
第3章 住宅の仕様
3-1 はじめに
3-2 お客さまのニーズ
3-3 木造戸建て住宅の工事仕様
3-4 エネルギー区分
3-5 価格帯別の住宅の仕様
3-6 地域別仕様
3-7 省エネルギー性能

第4章 土地仕入れと法規制
4-1 不動産取引における土地仕入れ
4-2 業者開拓
4-3 現地調査と役所調査
4-4 分割計画
4-5 事業に影響を及ぼす法規制
4-6 取り纏め

第3部 木造軸組工法住宅の製造設計
第5章 個別の家づくり
5-1 はじめに
5-2 分譲住宅の基本設計
5-3 設計の標準化
5-4 間取りと各部屋の機能
5-5 住宅の商品仕様
5-6 構造仕様

第6章 プレカット設計と製造と組立
6-1 プレカット工法
6-2 プレカットの設計
6-3 製造工程
6-4 プレカットの組立(上棟)

第4部 設計施工と付帯設備
第7章 設備工事
7-1 設備工事
7-2 室内設備
7-3 付帯設備

第8章 生産性
8-1 スピードビルド
8-2 建築工法の改善で上がる生産性
8-3 材料加工の省力化
8-4 新たな製品開発

第5部 大工による家づくり
第9章 家づくりの施工・工法
9-1 さまざまな家づくりの工法
9-2 木造軸組工法の全工程
9-3 基礎工事
9-4 土台敷設
9-5 上棟と屋根工事
9-6 大工造作
9-7 内装仕上げ
9-8 外装工事
9-9 外構工事
9-10 検査体制
9-11 おわりに

第10章 大工人財の育成
10-1 はじめに
10-2 戸建て建設業界の請負形態の変化
10-3 家作りにおける大工の仕事
10-4 サラリーマン大工とは
10-5 大工人財の育成システム
10-6 サラリーマン大工のブランド化、組織化
10-7 外国人社員の採用
10-8 外国人大工の育成
10-9 おわりに

第6部 販売契約と保守
第11章 販売と契約と販売促進
11-1 販売委託先である不動産業者との関係
11-2 販売促進活動
11-3 住宅ローン
11-4 契約
11-5 登記

第12章 保守メンテナンスサービス
12-1 はじめに
12-2 保証制度
12-3 住宅設備延長サービス
12-4 オプション
12-5 リフォーム

あとがき
索引

はじめに

 なぜ「パワービルダー」と呼ばれるようになったのかとよく問われる。本書を刊行しようと思ったのは、「パワービルダー」が取り組んできたモノづくりやコトづくりを、一度整理すべきと考えたからである。
 パワービルダーとは何か。国土交通省はパワービルダーについて「厳密な定義はないが、一般的に『一次取得者層をターゲットにした比較的小規模な分譲一戸建て住宅を低価格で販売する不動産業者』のことを指すことが多い」と定義している。まさに飯田グループホールディングスの各社は、低価格で価格競争力があり、安心して住むことができる家づくりを事業の柱にして取り組んできた。したがって飯田グループホールディングスの各社は、パワービルダーと呼ばれてきたといえる。家づくりの技術力と不動産業としてコトづくりで、顧客が求める安価な住宅を提供してパワービルダー業界を牽引してきたといえる。
 本書をまとめるにあたっての具体的な事例は、飯田グループホールディングスの一社であるアーネストワンのものを取り上げている。飯田グループホールディングスの6社に共通する取り組みも多いが、家づくりに関する取り組みにおいては各社が特徴的な技術を開発して、それぞれが独特の強みづくりをしてきた。

本書で何を伝えたいか
 本書で取り上げるアーネストワンは、家づくりだけでなく不動産業というサービス提供にも取り組んできた。モノとコトの融合をビジネスにした。戸建て住宅供給の土地取得という上流工程から、販売・保守という下流工程までを通して取り組んでいる。分譲住宅販売というサプライチェーンを可能なかぎり短くすることでキャッシュフローが正の循環をするようにコントロールできた。できるだけお金の借り入れをせずに売上を増加させる仕組みと、モノづくりだけではできない、安定的な収益が得られるコトづくりの開発をした。本書では、その仕組みを可能な限り具体的に伝えたい。
 家づくりでは、「在来木造軸組工法」でのモノづくりも伝えたい。日々の改善の積み重ねで製造原価を引き下げて、価格競争力をつけようと試行した。モノづくりを大工に任せるのではなく、自らモノづくりの改善やシステムづくりの改善に取り組んだ。原価を引き下げる色々なアイディアを実践した。それらを次々と反映する形で、安全で効率的なモノづくりを実現してきた。
 生産技術の開発に不断の取り組みを続けてきた。効率的な家づくりを行うことで、競争力があって安価でありながら、顧客の要望に応えられる住宅を供給してきた。それができたのは、色々な技術開発や作業改善の積み重ねの結果である。そのモノづくりのノウハウを本書では伝えたい。この分野での学術研究はあまりされていない。本書が在来木造軸組工法の学術研究に繋がる資料となることを期待している。

想定している読者
 本書は、住宅産業分野における実践にもとづいた技術経営書である。木造戸建て住宅のモノづくりと、不動産業サービス分野でのコトづくりについて記述している。マネジメントに関わる経営幹部の方を読者として想定している。
 また、コトづくりを含めたモノづくりの事業に取り組んでいる経営幹部やマネジャークラスの方にとっても、身近な理解しやすいビジネスモデルを話題としているので、容易に理解できる内容である。
 さらに、建築工学や経営マネジメントを学ぶ学生にとっても、実務にもとづく事例が書かれているので、モノづくりとコトづくりを平易に理解できる図書である。

本書の構成
 本書は、第1部「アーネストワンの経営理念」、第2部「木造軸組工法住宅の基本仕様」、第3部「木造軸組工法住宅の製造設計」、第4部「設計施工と付帯設備」、第5部「大工による家づくり」、第6部「販売契約と保守」の合計6部で構成されている。
 第1部の「アーネストワンの経営理念」は、第1章「企業理念と技術経営戦略」と第2章「不動産開発」で構成されている。
 第1章の「企業理念と技術経営戦略」では、経営を牽引するリーダーの心得を報告している。明るい未来を社員に語りかけてこそ、成長の礎となると説く。常に技術の見直しを行い、技術経営戦略を持って社会変革を先導する西河洋一が取り組んだ企業理念と経営戦略を紹介する。
 第2章の「不動産開発」では「相場より高く土地を購入し、機能・性能を落とさずに安価な住宅を提供する」という非常識とも思える事業戦略を展開してきたことを報告している。今まで住宅に手が届かなかった低所得層をターゲットとして、規模の拡大に取り組んだ。その要に土地の仕入れがあるという。車社会においては、必ずしも駅前が良いわけではない。分譲住宅事業の90%は、土地仕入れで決まると解説している。
 第2部の「木造軸組工法住宅の基本仕様」は、第3章「住宅の仕様」、第4章「土地仕入れと法規制」で構成されている。
 第3章の「住宅の仕様」では、シンプルであっても、必要な機能や性能、設備は充実している家づくりの仕様を報告した。効率的な工法の選択と顧客が求めるニーズとが最適化されていることが分かる。全国展開にあたっては、それぞれの地域特性を調査し、顧客が求める最適な家づくり仕様づくりがされている。
 第4章の「土地仕入れと法規制」では、分譲住宅提供ビジネスの要に土地仕入れがあることを解説する。良い土地を仕入れるには、地元不動産業者との交流が重要となる。良い土地を手に入れることが顧客満足度の向上につながる。さらには仕入れた土地の分割のしかたで、売れるか売れないかが決まってしまう。
 第3部の「木造軸組工法住宅の製造設計」は、第5章「個別の家づくり」と第6章「プレカット設計と製造と組立」で構成されている。
 第5章の「個別の家づくり」では、家づくりの基本方針は「シンプルイズベスト」と考え取り組んできたことを述べる。設計の標準化をすることで、生産性を向上させることができている。安ければよいわけではない。高機能、高品質でなければ、お客さまは購入してくれない。品質を維持し、少ない工数や時間で住宅づくりをする、1ランク上の水準のものづくりを目指してきた。
 第6章の「プレカット設計と製造と組立」では、大工の手仕事を工業化したプレカットについて説明する。プレカットならば、手作業では困難な曲面加工が容易にできる。加工時間を短縮するだけでなく、上棟時のトラブルも減少させた。さらに、工期を短くできるだけでなく、製造原価の削減にも寄与した。アーネストワンはプレカット工法を業界の中ではいち早く採用し、ノウハウを蓄積して業界を先導してきた。
 第4部の「設計施工と付帯設備」は、第7章「設備工事」と第8章「生産性」で構成されている。
 第7章の「設備工事」では、グレードの高いキッチン、浴室設備などを採用していると報告する。設備は、入居後に変更することが難しいからだという。高機能なものを標準化し、計画的に一括で大量に購入することでスケールメリットを活かし、購入費のコストダウンを図っている。1階と2階にはそれぞれトイレを設置する。カラーテレビインターホン、門柱、門灯、ポストを設置している。
 第8章の「生産性」では、段取り改善で建築工事の工期短縮を実現、生産性の良さがビジネスモデルを支えていることを示す。戦略として職人の確保、職人の生産性向上、材料加工の省力化、建築製品開発による建築工法の改善などに取り組む。様々な工種、工程において効率化を進め、住宅1棟にかかる時間と人件費を削減し、生産性を向上させた。
 第5部の「大工による家づくり」は、第9章「家づくりの施工・工法」と第10章「大工人財の育成」で構成されている。
 第9章の「家づくりの施工・工法」では、木造軸組工法での効率的な施工方法を紹介している。監督、検査専門要員、第3者検査という3重の検査体制で、手抜きがおこらないようにして品質の確保を行っている。上棟と同時に屋根を張る、すぐに1、2階の床を張る、といったことを行い、天候に左右されない安全な作業環境を提供することで、大工の安全と作業の効率化を促進している。
 第10章の「大工人財の育成」では、大工不足を解決する目的で、会社に社員として所属する大工を育成している方法を述べる。2年間という短い期間で、一人親方に負けない技量を育成する研修システムを確立した。また外国人人材の活用にも取り組んできた。日本人と同じ待遇で、企業の人財として育成してきた。外国人の仕事に取り組む姿勢は真剣であり、優秀な大工人財へと成長している。
 第6部の「販売契約と保守」は、第11章「販売と契約と販売促進」と第12章「保守メンテナンスサービス」で構成されている。
 第11章の「販売と契約と販売促進」では、分譲住宅販売の多くが不動産販売業者を介して取引されている。販売を不動産業者にアウトソーシングしていることについて解説する。売主としての役割と不動産業者の役割がそれぞれあって機能している。顧客のほとんどは、住宅ローンを利用する。顧客と売買契約を締結し、住宅ローンの目途がつきしだい引渡しとなる。
 第12章の「保守メンテナンスサービス」では、点検での顧客訪問で顧客との接点を設け、継続的なお付き合いをしてきたことを紹介する。網戸、シャッター、収納など、顧客ニーズに応えらえるようオプションで対応している。分譲住宅を始めて20年がたち、リフォームのニーズに応えられる体制づくりを進めた。
(西河洋一、小平和一朗)

参考文献
(1) 『最近の分譲一戸建の着工動向 -首都圏における動きを中心として-』(平成15年)国土交通省 (パワービルダーの定義)

推薦の辞

 本書には、一級建築士でもあり、本学の工学マネジメント研究科(MOT:技術経営)を修了した西河氏が取り組んだビジネスモデル、サプライチェーンの仕組み、職人の技の工業化などが書かれていて、工学的かつ技術経営的な視点で考察をしており示唆に富む内容である。
 西河氏は「従来よりも安くて性能が良い快適な住宅を提供できれば、今まで住宅を持つことができなかった人達に希望を与えることができる」と語り、実学的な視点で大幅な工期の短縮に取り組んできた。工場生産を重視し、工法の改善を積み重ね、家づくりの工業化を実現し、良質な住宅をベテランの大工でなくても建築することができるビジネスモデルは、大学の研究者にも注目され講演も多数されている。
 西河氏は、社員9名、売上54億円であった伏見建設(アーネストワンの前身)の社長に就任したあと、会社再建に取り組み一部上場を果たし売上2千億円を超える会社に成長させた。2013年には、全国で年間4万棟以上の戸建て住宅を建設し分譲してきた同業6社(「パワービルダー」と呼ばれている)の統合を指導し、売上1兆円を超える飯田グループホールディングスの社長に就任した。大規模災害後の復興では、住宅供給能力を発揮し社会基盤づくりで貢献した。さらに、日本の家づくりのノウハウが海外でも役に立つという考えから、東南アジア、ロシア、米国などで、事業の立ち上げに取り組んでいる。
 西河氏は、木造軸組工法による戸建て分譲住宅の工業化を実現し、「パワービルダー」業界を牽引してきた。これら家づくりのノウハウを本書に整理してくれたが、木造戸建て住宅づくりに関するビジネスの仕組みと工学的な視点から、各工程の具体的な工法を明らかにした本は、これまでほとんど見うけられない。
 本書で明らかになった「パワービルダー」のビジネスモデルを、多くの読者が知見として役立てることにより、カーボンニュートラル実現に向けた課題解決やSDGsで掲げられた「17の目標」達成のためのヒント、環境にやさしい木造住宅づくりのさらなる発展に役立つことを確信し、ハウスメーカーの研究者、建築業界の経営者やエンジニア、建築を学ぶ学生、ユーザーなどの皆様にご推薦申し上げたい。

令和4年4月
学校法人芝浦工業大学
理事長 鈴見 健夫

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