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利益が出せる生産統制力
異常の芽を事前に摘み取るQCD管理

定価(税込)  2,530円

著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-08205-4
コード C3034
発行月 2022年04月
ジャンル 生産管理

内容

コロナ禍でQCDの維持に苦慮する生産現場へ向けた「利益確保」のためのバイブル。「生産計画通りに遂行できない」「標準やルールが守れない」要因を解明し、改善着手までのプロセスを伝授。SCMの停滞などによる外乱にも正しく対処できる工程運営の進め方を詳述する。

坂倉貢司  著者プロフィール

(さかくら こうじ)
1981年、名城大学理工学部機械工学科卒業。トヨタ系自動車部品1次下請メーカーで生産技術部生産技術開発、トヨタ生産方式プロジェクト員、自動車用外装部品設計開発、安全装置設計開発を担当。紡績テキスタイル製造会社で短繊維テキスタイル事業部天然繊維工場勤務。生産技術開発担当、同工場製造部長、生産統括部長、品質保証部長を歴任。自動車部品2次下請メーカーで製品企画Gグループリーダー兼品質保証Gサブグループリーダーを経て、取締役本社工場長と主力生産子会社の取締役に就任。2020年4月に美容室「ANNE-SHIRLEY」を開業。プロリンクスKS経営技研合同会社 代表社員

この間、金属・樹脂・繊維の加工および表面処理技術開発、商品開発設計、品質管理、一貫生産工場の工程管理、生産管理、外注工場管理に携わる。生産管理・工程管理・品質管理セミナー講師および改善コンサルタントを兼務。中小企業診断士、繊維製品品質管理士、日本生産管理学会理事 標準化研究学会理事

著書に「不良低減 実践現場の管理と改善講座」(日本規格協会)、「トコトンやさしい生産技術の本」「トコトンやさしい工程管理の本」(いずれも日刊工業新聞社)がある

目次

はじめに

第1章 生産統制が組織力の基本
1-1 企業の利益構造の最適化
1-2 付加価値をつくり出す構造
1-3 SDGsとの関係
1-4 ムダ取りが統制の基本
1-5 5Sの本質を理解する
1-6 TPSも統制力が必要
1-7 生産工程の真の姿を見る
1-8 生産工程の力量を測る
1-9 PQCDSMEの最適化
1-10 生産工程の力量向上を図る
1-11 ISOと生産統制の両立を図る
1-12 ものづくりとサービスの統制の違い
Column1 統制から見た管理職の資質

第2章 生産統制の仕組みづくり
2-1 仕組みで問題発生を押さえ込む
2-2 ねらいの品質・できばえの品質を定める
2-3 PQCDSMEのバランスの考慮
2-4 自工程完結活動にする
2-5 良品条件を定める
2-6 生産統制はどこを統制すべきか
2-7 ムダ取りと7つのムダを活用する
2-8 IE・DXを活用する
2-9 製品設計の基本
2-10 工程設計の基本
2-11 生産計画の基本
2-12 生産技術との関係
2-13 結果の検証可能性を保証する
Column2 「馬なり」と統制

第3章 効率の良い生産統制を構築しよう
3-1 させられ感を発生させない
3-2 動ける組織にする自主活動の定着
3-3 正しい作業をしている確証を持つ
3-4 間違いのメカニズムを理解する
3-5 階層別教育を取り入れて達成感を得る仕組み
3-6 人材育成と統制をバランスさせる
3-7 稼働率と可動率を使い分ける
3-8 設備管理体系を構築する
3-9 信頼性工学を活用する
3-10 FMEAは転ばぬ先の杖
3-11 QAネットワークを形骸化しない
3-12 改善前にトレードオフに気を配る仕組み
3-13 工程の気づきを育てる
Column3 弘法は筆を選びたい

第4章 ルールが守れる組織を編成する
4-1 QCDは目標にすべき指標
4-2 QCDはプロセス管理にする
4-3 QCDを管理者が理解する
4-4 管理者は経営者の目線にする
4-5 気遣い作業を探してムダを排除
4-6 生産4要素別の統制方法を採る
4-7 人は間違えることを前提に管理する
4-8 FP・フェイルセーフを活用する
4-9 説明責任を果たす
4-10 SDCAでルールをつくる
4-11 「守れないルールは守らない」にしない方法
4-12 ルールを安易に変更しない
Column4 構えられない管理者

第5章 統制管理を全社的に進める
5-1 誰が見ても統制のわかる工程にする
5-2 ボトルネックはわかっているのか
5-3 統制が崩れる前兆はチョコ停
5-4 成果が見えるために測定結果を活用
5-5 不具合発生の真の原因をつかむ
5-6 不具合の是正処置は再発防止
5-7 水平展開を確実に実行する
5-8 社内規格化は信用力を高める
Column5 叱ると怒るの違い

第6章 維持から改善へ移行する手順
6-1 工程を安定化させる条件
6-2 行動が起こせないムダな管理は除外する
6-3 SCMが不適切に放置されていないか
6-4 リーダーシップでカイゼン活動
6-5 ダメ出し会を行おう
6-6 成功体験にしがみつかない行動計画をつくる
6-7 ECRSでパレート的にムダを排除
Column6 過去の栄光にしがみつく

参考文献
索引

はじめに

 日本の製造業は、従来は先行技術のキャッチアップや応用力、すり合わせ技術が得意で、それら匠の技が工程を支えていると言われてきた。昭和30年代後半〜40年代の高度経済成長期からオイルショックを経て、日本のものづくりが世界で認知され始めた頃、たとえば自動車産業ではアメリカのビッグスリーの背中を見て、技術取得や開発で「追いつけ・追い越せ」の時代にあったが、同時に「安かろう・悪かろう」の払拭に懸命で品質管理体制の構築に余念がなかった。
 やがて気がつけばビッグスリーを追い越し、今度はジャーマンスリーの背中が見え始め、ついに販売台数でトップ争いに加わる。20世紀後半の短期間にこれを可能にし得たのは、応用開発力と工程管理のうまさで市場に投入する日本製品の魅力と信頼が浸透したからであろう。日本の工程管理力や現場力、統制力は現場で培われた暗黙知が多く、欧米はそれを理解し活用するためにさまざまな形式化を試みた。しかし、ルール化や組織の体系化、製品化プロセスコントロールの定義化で対応しようとしたものの、日本の優位は揺るがなかった。

 21世紀に差し掛かる頃に、バブル崩壊の後遺症と急激な円高による製造業の海外流出、高い輸入浸透率による国内生産規模の縮小に見舞われた。廉価な輸入品との競争や、市場規模の縮小による利益額の減少に対応するため、コスト抑制策としての労務費削減と、少子高齢社会対策による非正規労働者への切り替えが従来の正規労働者へも波及し、低賃金化がコスト削減の構成要素として定着化し始めた。これと並行して、工程管理や現場管理の源泉となる統制力で高度経済成長期を支えてきたいわゆる「団塊の世代」のリタイアは、暗黙知を多数織り込む日本式生産管理の技術伝承を難しくし、従来型の統制力では対応が難しくなったと言われている。
 その間、急速に製造業としての力量を蓄えた中国を筆頭とする新興国は、新技術のキャッチアップや応用が日本のメーカー以上に早く、対等以上の競争力を身につけ日本製の優位を脅かす存在に成長した。日本市場を含むグローバル市場で日本の製造業が勝ち残るためには、新技術や応用技術で競争に負けられないが、工程管理における統制力を発揮した現場の優位性でも後れをとるわけにはいかないのである。
 しかし、新技術が目まぐるしく発展変化する状況下で、徐々に現場力が衰退しつつあるとは言え、現在も相対的に高い発揮能力を持つとされるのが日本のメーカーである。ただし本当に現場力を維持し、今後も競争力を確保できるかどうかは懸念せざるを得ない。近年、一流と言われる企業の相次ぐデータ改ざんや、ルール違反によるリコールが発覚し、技術や品質に定評のあった日本製品に疑義がもたらされる事態になってきているのは、その一端と見た方がよい。

 任せると任せっぱなし、和気藹々(あいあい)と慣れ合い、叱ると怒るはまったく異なる。見ると観るが違うように、体験と経験、経験と知見へと昇華していかなければならないが、そこには明確な統制の意志が必要となる。統制力の低下は、①問題発生時に根本的な解決ができない、②怯むような場面で思い切った行動を起こせない、③悩みの種を放置して先延ばしにする、④自分の意思を持って変化を起こせない、⑤「大目に見てくれる」と悟った人が多く近づいてくる、⑥コミュニケーションスキルに問題が発生する、という場面で顕著に表れる。
 人は、強制されることや我慢を際限なく強いられることを嫌う。目的が明確で、結果のフィードバックが適時適切で、強制や我慢ではなく自らが進んで行う仕組みが今こそ求められる。過去に統制力の発揮方法として、「サッカー型」「野球型」の組織の特徴について話題になったことがあった。筆者は、現在のわが国の工程管理における統制力はその中間的な「吹奏楽型」が適切としたい。
 吹奏楽は、各パート(フルートやオーボエ、トランペットなど)の集合体であり、指揮者の下で演奏する。組織目的は、演奏で聴衆を感動させることである。練習でパートごとに音合わせをし、指揮者は各パートの調律を取って行く。各パートにはまとめ役のリーダーがいる。演奏中に各パートは常に指揮者を見ているわけではないが、指揮者が演奏中に各パートやソロ演奏者に指揮棒や目配せ、うなずき、顔向けなどで総合的な調律を統制し目的を達成させていく。パートの演奏力は指揮者の統制の範囲内で最大化し、パートの異常はリアルタイムで指揮者に気づきを与えられて修正されて、組織目的は最大化されて達成される。このようなイメージである。
 本書は、時代背景を踏まえつつ工程管理者や従事者が、日本企業の生産管理や工程管理の源泉であった現場力を構築する糸口を見つけ出せることをテーマに、工程の統制をムダ・ムラ・ムリなく円滑に再構築する気づきのポイントをまとめた。今、求められる統制力とは強権で押さえつけて管理で縛りつける古い統制のことではなく、指揮の範囲を設定した中で自主的に活動できる組織をどうつくるかであろう。そのためには古い統制概念の打破や、統制が崩壊している工程の再定義が必須になる。現場で工程管理をうまく機能させることができないなら、古い概念に縛られていないかどうか、もう一度基本に立ち返って統制力を見つめ直すことが必要であり、その一助になればと思う。
 最後に本書をまとめるに当たり、日本生産管理学会、株式会社セキデン(三重県亀山市)の諸氏にご協力いただいたことに、この場を借りて謝意を表する。

2022年3月
筆 者

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