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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい二次電池の本
新版

定価(税込)  1,650円

著者
著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08183-5
コード C3034
発行月 2022年01月
ジャンル ビジネス 電気・電子

内容

充電して使用する二次電池は、電気自動車や自然エネルギーの蓄電装置などに使われ、近年注目が高まっている。代表的なリチウムイオン二次電池をはじめ、様々な種類の二次電池の原理、仕組み、特性などがわかる。

小山 昇  著者プロフィール

(おやま のぼる)
エンネット株式会社 代表取締役・社長
博士(工学):1977年東京工業大学、1977年より米国カリフォルニア工科大博士研究員(高分子機能電極の新分野を開拓) 、東京工業大学(工、総合理工)助手(=准教)、1981年より東京農工大(工)助教授、1989年より同大教授・同大大学院教授で2012年3月に定年退職、2012年4月より現職。
専門:電気化学、エネルギー電子化学。「リチウム二次電池の特性評価および劣化診断法の開発研究」に現在従事。趣味:ゴルフ、散歩
受賞歴:日本化学会学術賞(「分子機能電極の基礎および応用」)(1989年)など
http://energynet.co.jp

脇原將孝  著者プロフィール

(わきはら まさたか)
1971年3月東京工業大学大学院博士課程修了(理学博士)、同年4月、同大工学部助手、1974年2月〜1974年8月で米国シカゴ大学博士研究員、1982年より東京工業大学工学部助教授、1989年より同大学工学部教授、2008年3月に同大を定年退職(同大名誉教授)。
2008年10月〜2012年3月でNEDO 大学発実用化プロジェクト担当、2008年4月〜2018年3月で東京理科大学理学部、日本大学文理学部非常勤講師。
専門:無機工業化学、電池材料開発
趣味:水彩画、ゴルフ
受賞歴:Yeager賞(2008年)など

目次

第1章 二次電池の基礎知識
1 電池が注目される世界の状況「持続可能な社会のために」
2 電池が生まれた歴史「バグダッド電池、ガルバーニのカエルの実験、ボルタの電池」
3 ダニエル電池とルクランシェ電池「日本の電池開発にも影響を与えた」
4 電池はどんな構造をしているのか「電池の分類と構成」
5 主な二次電池の歴史「19世紀後半からの電池の進歩」
6 二次電池の電圧と電流の関係「電圧、電位、起電力と放電曲線」
7 酸化還元反応と電池反応「電子のやりとりと、エネルギーのやりとり」
8 電池反応式「酸化還元反応を式で表す」
9 充放電反応と過電圧「充電曲線と放電曲線」
10 イオンの拡散と電池反応「レドックス化学種の濃度変化と電位の関係」


第2章 リチウム二次電池(LIB)
11 リチウムイオン(二次)電池誕生の歴史「日本が大きな役割を果たした」
12 リチウムイオン電池(LIB)の原理と取り扱い「エネルギー密度が大きいため注意が必要」
13 インターカレーション反応「層状になった構造にリチウムが入りこむ」
14 相互作用の因子も含めたインターカレーション反応「相互作用、ガス・格子モデル」
15 長寿命化への挑戦①「充放電にともなう熱発生・熱吸着」
16 長寿命化への挑戦②「充放電にともなう熱流束の測定」
17 長寿命化への挑戦③「電解液を用いたLIBで10年以上の寿命」
18 差分曲線「電池特性を非破壊で知る指標」


第3章 LIB以外の二次電池とエネルギー貯蔵デバイス
19 LIB以外の二次電池と類似エネルギー貯蔵デバイス「用途によって使い分けられる電池の種類」
20 LIBとその他の二次電池の比較と特徴「一長一短で使い分けが重要」
21 鉛蓄電池「正極に二酸化鉛、負極に鉛を用いる」
22 ニッケル・カドミウム(ニカド)電池「温度変化による容量変化が少ない」
23 ニッケル水素電池①「ニカド電池の負極を水素吸蔵合金に置き換え」
24 ニッケル水素電池②「負極に使われる水素吸蔵合金」
25 ナトリウム硫黄(NAS)電池「負極はナトリウム、正極は硫黄で炭素繊維を加える」
26 レドックスフロー(RF)電池「大型の電池として需要がある」
27 電気二重層キャパシタ①「原理と構成材料」
28 電気二重層キャパシタ②「充放電特性と特徴」
29 リチウムイオンキャパシタ「EDLCとLIBの組み合わせ」
30 ナトリウムイオン二次電池「リチウムイオンをナトリウムイオンに置き換える」
31 マグネシウム二次電池「Mg2+イオンの移動で充放電」


第4章 電池を構成する材料
32 負極材「黒鉛、ハードカーボンなど」
33 正極材「層状構造、スピネル構造、オリビン構造など」
34 電解質「正極と負極の間でイオンを媒介する」
35 支持電解質「電解液の導電率を上げる働き」
36 バインダーと導電助剤「電極の安定保持に必要とされる」
37 セパレータ「正極と負極の短絡防止に役立つ」


第5章 汎用LIBの性能
38 汎用的なLIBの特徴「出力電位、エネルギー密度、安全性、使用温度、充放電サイクル数、寿命」
39 LIBのセルの形「円筒型、角型、ラミネート型、その他の形」
40 ポリマー電池「溶液系、固体系ではない電解質の形」
41 化学修飾「電極と電解質との界面制御」


第6章 性能の劣化と診断方法
42 LIBの特性が劣化する要因「使用とともに起こる劣化の数々」
43 劣化を評価するための指標「エネルギー容量、パワー密度の減少、出力電位、抵抗の変化」
44 交流インピーダンス測定「電池を電気化学的に評価する方法」
45 電池反応の疑似等価回路「電気的抵抗因子、キャパシタ因子、リアクタンス因子」
46 インピーダンス測定とパルス応答による電池診断「等価回路フィッティング解析」


第7章 リユースとリサイクルに向けた取り組み
47 中古LIBのリユースの可能性「EV用電池の普及とともに再資源化がカギ」
48 中古LIBの回収と化学物質の再利用「有害な物質を処理してリサイクルする方法」
49 LIBの主なトラブル①「内部短絡が起こる理由」
50 LIBの主なトラブル②「短絡によって過熱され、熱暴走を引き起こす」
51 安全性を確保するための釘差しテスト「極限環境を再現する試験」
52 サンプル用LIBの作り方「電極作製、電池組み立て、評価・検査」


第8章 二次電池の進化への挑戦
53 電解質の難燃化「イオン液体、支持電解質の高濃度化、水和融体」
54 高エネルギー密度化のための正極材料「金属酸化物酸素の酸化還元」
55 金属リチウム負極の利用「理論容量は高いが劣化と安定性が課題」
56 リチウム硫黄電池「容量は魅力で資源も豊富だが、中間生成物が問題」
57 リチウム空気電池の可能性「高エネルギーで小型軽量だが充電と放電の電位差が大きい」
58 全固体リチウム二次電池とは「電解質に固体を用いた新型電池」
59 全固体リチウム二次電池の材料開発「イオン導電性の高い材料が求められる」
60 全固体リチウム二次電池の克服課題「材料と構造体の両方に課題がある」


第9章 二次電池の用途と取り扱い方法
61 市場の拡大①「定置型電源としての利用」
62 市場の拡大②「移動型電源としての利用」
63 宇宙での活躍「独特の環境で使われる電池」
64 体内での電池の活躍「リチウムヨウ素電池の利用」
65 二次電池に関わる法律「エネルギーの缶詰を安全に取り扱うために」

【コラム】
●一次電池は充電できるのか?
●ソニーのLIBで高価なコバルト酸リチウムが正極に選ばれたわけ
●将来の電池はどうなり、どこへ向かうのか
●電池性能を影で高める添加剤
●電極材・電解質の複合化
●性能劣化のよもやま話
●安全性を担保するための電池の構造
●変幻自在の硫黄原子
●これからの二次電池の利用と本書のまとめ

参考文献
索引

はじめに

電池の中で、「リチウムイオン二次電池」という言葉は、日常会話の中でも一般的に使われるようになりました。携帯電話の充電は、多くの人が就寝前にする日常事になっています。
30年前に市場での販売が始まったリチウムイオン電池(LIB)は、軽いことと高容量の蓄電能力を持つことから、当初は携帯電話やノートパソコン(PC)など、小型電子機器の電源が主な用途でした。そこから携帯電話はスマートフォンに、ノートPCはタブレットにシフトしていき、表示もカラーが当たり前、今では第5世代移動通信システム(5G)が登場してきました。デバイスも高速・大容量化、多数接続という特徴を持った通信へ多機能化され、それに対応するために電源・電池の高容量化も計られてきています。
大きな電流での使用に対応できる中型・大型のLIBの開発も着実に前進してきました。特に、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の動力源として、LIBの利用が全世界で展開されるようになりました。蓄電池の高性能化は自動車用途のみならず、エネルギー利用社会の新しい構築の観点からエネルギー貯蔵タンクとしても必要です。例えば、太陽光、風力、地熱などを利用した自然エネルギーを貯蔵するタンクとしての用途が広がりを見せています。この電池には、高い安全性、大容量化、長寿命化、低価格化の実現が求められています。
産業界での炭酸ガス排出量の規制は世界的に厳しくなっています。高性能二次電池や水素を用いる燃料電池は電気自動車の動力源のみならず、住宅、オフィス、工場に利用する動きが急速に高まってきました。そのため二次電池には、これまで以上に高い安全性の確保と長期間にわたる使用が求められています。LIBを長期にわたって使用するためには発火などの事故回避や特性の劣化度合いの把握が必要ですが、その評価・診断方法は現状では十分ではありません。
LIBの市場が大きな広がりを見せていることから、この産業分野に従事している技術者・研究者はきわめて多く、これらの方々に向けた電池開発の学術的進展とその応用での進展を取り込んだ書籍に関するニーズは高いと想像できます。また、身の回りの自転車や工具機器にも二次電池が使用されるようになり、エネルギー技術のキーデバイスとして注目されている二次電池の基本反応や特徴、使い方などについて、私たちはある程度の知識を持つことが必要になってきました。どの程度理解しているかを改めて自問してみると、実は案外知らないことが多いのではないでしょうか。
本書は、これまでご愛読いただいた『トコトンやさしい二次電池の本』の新規改訂版です。著者が変わり、電池関連の専門分野で半世紀にわたって大学で研究開発に従事し、定年退職後の10年間は民間企業で「二次電池」の研究開発に従事してきた二人が本書を執筆することになりました。「トコトンやさしい」というフレーズは、著者の二人にとって、字数制限もあり難解な課題でしたが、挑戦することにしました。
本書は、このような社会的ニーズに応えるために、各種汎用二次電池の反応の概要、構成材料、特性と特徴、関連技術の現状把握と解決課題が明確になることを指標として、項目をまとめました。各項目では、従来技術の紹介をすることはもちろんのこと、新しい測定・評価法、観察法、反応評価のシミュレーション解析などに関する紹介や解説も加え、新しい科学情報も取り上げました。電池の安全使用に関する法規制や取り扱い方についても紹介しています。二次電池分野の全体を把握しやすく、かつ今後の開発に役に立つように、今後の開発要素も記載しました。説明には専門用語も多く登場しますが、多方面にわたってわかりやすく解説することを心がけたつもりです。
特に、車載用で市場が急拡大している汎用LIB(液体電解質を使用)では、構成材料によりますが、高温下や低温下で良好・安全に作動ができて、かつ十年以上の使用寿命を保証できる電池がすでに販売されていることを本書で解説・紹介しています。しかし、日本が多くの成果を上げ、進展させてきた高性能電池の重要技術が今、国外に安易に流失し、かつての「半導体」のように、国内での関連技術の空洞化が進んでいるといわれています。世界のEV化の流れに貢献できるLIB技術がすでに国内にあり、それを守りつつ発展させていただきたいと、著者は官民の政策関係者の方々に期待しています。
また、本書の内容が、読者の皆様の疑問に少しでも応えることができたならば幸甚です。
最後に、本書原稿の取りまとめを辛抱強く行ってくださった日刊工業新聞社出版局の岡野晋弥さんに厚く御礼を申し上げます。

2022年1月
小山 昇
脇原將孝 

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