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よくわかる粉体・粒体ができるまで
機能を持った粒をつくる造粒技術

定価(税込)  1,760円

著者
サイズ A5判
ページ数 136頁
ISBNコード 978-4-526-08173-6
コード C3043
発行月 2022年01月
ジャンル 化学

内容

本書は、粉体/粒体を取り扱う技術、とりわけ「造粒」の技術について、入門者にもわかりやすく丁寧に解説するもの。造粒に関係する機器やそのしくみを著者オリジナルの試作機材などを使って紹介。「粒を造る装置/システム」について、その造粒過程とそれぞれの造粒装置のしくみを理論から解説するとともに、前処理と後処理、さらにトラブル対策についても説明する。

吉原伊知郎  著者プロフィール

(よしはら いちろう)
1951年生まれ、東京農工大学、化学工学科卒業。粉体処理機器メーカーの㈱奈良機械製作所にて、粉砕・乾燥・造粒・表面改質等、粉体にかかわる装置の開発・設計・トラブル対応に携わる。日本粉体工業技術協会の造粒分科会代表幹事を 14年間担当し、現在、吉原伊知郎技術士事務所、所長。技術士(機械部門)。救急法救急員。山登りと動く模型作りが趣味。

目次

はじめに

第1章 粉と粒
1. 付着力と分離力
2. 小麦粉と米の粒
3. 粉体にすると都合がよい、初めの工業分野は?
4. ポリマーエマルジョンは球形化して取り出す
5. 自然界で「土壌」という「粒」が、生命を育んだ
6. 親父は「黄金の指を持つ」粉屋
7. 粒径の表示方法とその測定方法
8. 気体と液体を、粉に混ぜると、「混相流体」になる。アッテルベルグ教授の表

第2章 粉や粒が活躍する分野
1. 鉱工業分野
2. 医薬品分野
3. 食品分野
4. 触媒分野
5. 化粧品分野
6. 製造分野、3Dプリンタ分野
7. (電子)コピーのトナー分野
8. おむつの中身をつくる分野
9. 反射板や信号板

第3章 粉をつくる手法
1. ブレークダウン法
① 衝撃力:「固体をぶつけて壊す」原理
② 剪断力:「はさみで切り裂く」原理
③ 圧縮力:「餅つきで突きつぶす」原理
④ 摩砕力:「乳鉢+乳棒」や、「すり鉢+すりこぎで、すり潰す」原理
2. 粉砕機の後段としての篩(ふるい)分け(分級:ぶんきゅう)
3. ビルトアップ法
① 物理蒸着法
② 化学蒸着法
③ その他

第4章 粒をつくる手法
1. 転動造粒:「重力を利用して転がす」原理
① 「傾斜皿形転動造粒機」
② 「乾燥を伴う転動、コーティング造粒」
2. 攪拌造粒:「攪拌羽根で粉体を混合して、結合剤を噴霧し、遠心力を利用して転がす」原理
① 攪拌軸が縦型の「高速攪拌型混合造粒」装置
② 「連続型、2軸式攪拌造粒」
3. 圧縮造粒「粉体層を押しつぶして固める」原理
① 「ブリケッティング」
② 「打錠成型」
4. 破砕造粒「材料を軽く解砕し、望みの粒子径に粒揃えする」原理
① シート状態から破砕
② 錠剤形状から破砕
③ 団粒、塊からの破砕で、粒揃え
5. 流動層造粒「乾燥工程でよく使われる流動層状態で、結合液を噴霧する」原理
6. 押し出し造粒「ダイス(孔)から混錬した粉体材料を押し出して円柱状の粒にする」原理
① 「バスケット式押し出し造粒機」
② 「ペレットミル」:ロール回転型圧縮押し出し造粒機
③ 「2軸混錬押し出し造粒機」
④ 溶解押し出し造粒機
7. 噴霧乾燥造粒「懸濁液を気体中に噴霧して乾燥させ、液滴中の粒子を固める」原理
8. 溶融造粒「溶かした材料をその表面張力で丸くして固める」原理
① 冷却板上固化方式
② 冷気塔内落下固化方式
9. 反応によるカプセル造粒「2相の界面で化学反応を起こさせ、球形膜で造粒する」原理
10. 表面改質による複合粒子「ここでは機械的に粒子の表面を別の物性に変える」原理
11. 蒸発や凝縮・析出を利用した造粒「高温・高エネルギーや物理化学的手法で造粒する」原理

第5章 造粒処理の「前処理」と「後処理」
1. 前処理としての粉砕
2. 前処理としての混合
3. 後処理としての乾燥
4. 後処理としての「整粒」、「篩分け」

第6章 粉体粒体プロセスの「トラブル対策」
1. 粉であることによって発生する、トラブル 10種
2. 事前対策、事後対策、エスケープルート的対策

第7章 粉粒体を扱うプロセスの今後の展望
1. リアルタイム・オンライン・センサで、粉の挙動を瞬時に把握する
2. 粉体プロセスの数値シミュレーション技術
3. 仮想現実と拡張現実

おわりに

はじめに

はじめに
 粉や粒をつくる技術は、材料を扱う化学プロセスの中でも、特に粉体を扱うプロセスにおいて総合的な知見を要する分野として、今まで「知る人ぞ知る」と言われた分野でした。ところが 「粉体は世に出るまでの仮姿」と先人たちが教えてくれたように、半導体や、液晶画面、医薬分野といった最先端の技術は、粉体技術なくしては成り立ちません。その中でも、現代の先端技術では、粉体を「微小粒子の集合体」と認識して、構成粒子一つ一つに焦点を絞り、「機能を与えた粒子」として考えることが必要とされています。
 身近な粉体原料である砂糖、塩といった粉体材料を、「粒」にすることによって、固まったり、詰まったりしないようにすることや、ゴマ粒に塩の造粒品を混合して、食卓で分離しないようにすることも大切な「粒をつくる技術」ですが、そればかりではなく、24時間効能を発揮する「医薬品の徐放性製剤」や粉体積層型「3Dプリンタに用いる流動性を有する粒体原料」などは、粉体・粒体取り扱い技術から生まれています。さらに、膨大な表面積を持つナノ物質をハンドリング良くするために、「分散を前提とした粒にする技術」の発展により、多くの新材料が生まれてきました。半導体分野ではナノ粒子を表面に固定した複合粒子の技術で、日本は世界でもトップクラスです。
 粉を扱う分野として、先人たちがまとめた「おもしろい粉のはなし」「ト、コトンわかる粉の本」、「粉体の科学」といったわかりやすい解説書や、「粉体工学ハンドブック」、「入門 粉体トラブル工学」といった専門書があります。また一方では「粉粒体のトラブル対策」、「入門 粒子・粉体工学」といった、粉体・粒体を扱う装置の専門書もまた、多くの読者にその扱いの基本を示しています。(巻末に参考文献を紹介します。)
粉と粒の違いは本書の中でもふれていますが、人の感覚として、触った時の「きな粉のツルツル触感」、と、「グラニュー糖のざらざら触感」、というように、皮膚感触も異なります。粉体工学の専門家は、「表面の付着力と、体積による分離力の相違」ということで粉と粒を区別しますが、それらを含めて、粉や粒のつくり方、特に付加価値を持った粒子:粒をつくる手法を中心に、スポットを当ててみたいと思います。
 本書は、新しく粉体・粒体の分野に参入して、この物質の取り扱い技術を俯瞰してみたい方々、自分が属している組織が粉体・粒体にかかわる研究や生産をしているが、その基本的な事項をなかなか知る機会がない方々、を対象として書かれています。
 また、生産工程で、粉体・粒体という形態を通過して製品がつくられているプロセスを、部分最適化から全体最適化に広げていくために、「粉体・粒体取り扱い機器の原理」と、その装置によって「生産される粉体・粒体製品に与えられる物性」を知っておきたい方々にも目を通していただきたい、将来リーダーシップを執れる、粉体にかかわる若い研究者や技術者に読んでいただきたい、そんな想いで解説しています。

吉原 伊知郎

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