買い物かごへ

自動車エレクトロニクス「伝熱設計」の基礎知識
小型・高性能化する自動車用電子制御ユニット(ECU)の熱対策技術

定価(税込)  2,750円

著者
サイズ A5判
ページ数 248頁
ISBNコード 978-4-526-08167-5
コード C3054
発行月 2021年11月
ジャンル 電気・電子

内容

電動化や低燃費化、インテリジェント化が進む車載機器において、熱設計の重要性が顕著になっている。とくに、自動車の各部における電子制御を司る制御ユニットの小型、高熱化が進むにつれて、従来以上にその熱対策設計が難しくなってきた。本書は、熱対策設計や熱シミュレーション活用を中心に、事例も含めて現場での開発ノウハウまで詳解する。

篠田卓也  著者プロフィール

(しのだ たくや)
㈱デンソー、エレクトロニクス製品基盤技術部。
1967年東京生まれ、大分育ち。1987年国立大分高専電気工学科を卒業し、デンソーに入社。その後、グロービス、放送大学を経て、現在東京工業大学工学院機械科博士課程に在学中。
デンソーでは、エンジン制御用、ナビ用のコンピュータの開発・設計に従事、その後、エレクトロニクスの伝熱技術を専任。電子系熱技術委員会を設置し、全てのコンピュータの熱技術コンサルを実施。熱抵抗と熱容量で構成される過渡熱(RC)モデルを開発し、JEITA日本規格化、IEC国際規格化を予定。
2020年、東京工業大学に「デンソーモビリティ協働研究拠点」の立ち上げに尽力。産学連携の研究開発をコーディネート中。2021年、デンソーの研究開発業務と並行して、父の事業を承継し、㈱フジデリバリー代表取締役社長に就任。併せて電子機器の伝熱技術のサービスを開始し、社内外にコンピュータの伝熱技術を支援。電子設計、筐体設計のフロントローディングが自身のテーマであり、解析の高度化に着目し、70%以上の設計コスト効率化を実現。e-mail:takuya.shinoda.ceo@fujidelivery.com、ホームページ http://www.fujidelivery.com/
【学会・委員会活動】
自動車技術会:国際標準記述によるモデルベース開発技術部門委員会
JEITA「熱設計技術SC」「半導体パッケージング技術委員会」「サーマルマネージメント標準化検討G」「パッケージ基板評価法TF」「国プロ 熱設計 戦略委員会」日本能率協会「テクノフロンティア企画委員」
【受賞歴】
自動車技術会 2019年春季大会 学術講演会 優秀講演発表賞 受賞、JEITA2020半導体標準化専門委員会 功労賞 受賞

目次

目  次

はじめに

【第1章】自動車業界の伝熱技術、現在の視界と今後の世界
現在の自動車産業の ECUについて
自動車技術は CASEの世界へ
CASEの熱課題
Electric(Electrification) ~電動化~
Autonomous ~自動運転~
Sharing&Service ~シュアリングサービス~
Connected ~コネクテッドカー~
欧米の解析技術比較
どのような発熱対策の基本が今後重要になるかそれは過渡伝熱技術
新たに必要になる伝熱解析での検証
伝熱解析で顧客満足度向上へ

【第2章】ECUの概要
ECUの構造と放熱の課題
後手対策を止めて伝熱検証をフロントローディングへ
小型化で発熱密度が上昇
キーポイントは伝熱解析の高精度化で実験レス  

【第3章】伝熱の基礎
温度と熱、そして伝熱の違い
温度とは
熱とは
伝熱とは
熱のアナロジー
伝導伝熱
熱伝導
熱伝導率
対流熱伝達(熱伝達)
自然対流と共生対流
浮力について
層流と乱流
境界層と熱伝達の関係
エンジンルームの内部温度と走行風
対流熱伝達による温度測定について
ふく射伝熱
電磁波放出によるふく射伝熱
電磁波の分類
反射・吸収・透過
ECU向けふく射伝熱の基礎式
ふく射伝熱の応用

【第4章】プリント基板上の温度低下対策
IC周辺の伝熱設計概要
IC内部の温度均一化
伝熱解析に使用する ICの構造
チップサイズ
ダイパッドの熱伝導率
ダイアタッチ(ダイボンド)材
モールド
上面放熱の素子
伝熱解析に使用する MOSFETの発熱要因、解析精度とその対策
制御回路における MOSFETの動作概要
MOSFETのオン抵抗
スイッチング時の損失
温度は 1℃、電力は 0.1 Wレベルの解析が必要
素子のサイズアップ
ヒートスプレッダ
部品のレイアウト
熱拡散の方法
発熱密度(熱流束)の管理方法
発熱密度による製品のガイドライン
発熱素子同士の温度上昇の抑制
チップ抵抗の並列化
プリント基板を放熱材として扱う
基板の等価熱伝導率
等価熱伝導率の計算方法
実践編 プリント基板を放熱材にするためのコツ
サーマルビア
残銅率アップ
プリント板の基材の熱伝導率アップ
厚銅化
プリント基板のサイズアップ
配線での放熱
プリント基板の固定ネジ
コネクタおよびワイヤハーネス

【第5章】きょう体部周辺の放熱性能向上
きょう体部による放熱対策への道筋
きょう体での放熱促進
ホットスポットを低減 ~きょう体の熱伝導率を高くする~
ホットスポットを低減 ~きょう体の肉厚を厚くする
表面積アップで熱拡散 ~放熱フィン(スプレッダ)の設置~
表面積アップで熱拡散 ~きょう体のサイズアップ~
きょう体の黒色化(放射率を上げる)
ブラケットによる放熱
搭載条件
放熱材

【第6章】接触熱抵抗
伝熱を妨げる接触熱抵抗とは
伝熱シミュレーション実施時の接触熱抵抗の課題
既存の接触熱抵抗に関する技術例
接触熱抵抗の概念
取り付けのひずみによって生じる応力の解析
ねじ締結による圧力分布の可視化
うねりを利用した接触熱抵抗の低減

【第7章】温度測定の技術
温度測定のポイント
温度測定の方法
非接触型
接触型
ECUの温度判定基準
ジャンクション温度は熱電対で測定できない
ΔTjの算出の手間は大きい

【第8章】回路解析を駆使した素子電力計算
次世代の仕様検証方法は“動く仕様書”
過渡伝熱モデルを活用して部品選定
安全動作領域の検証にも応用可能で、瞬時に判定
確度の高い過渡伝熱モデリングの重要さ

【第9章】過渡伝熱技術
時代は過渡伝熱技術へ
熱回路網にも時定数
熱伝導より熱抵抗
過渡伝熱抵抗は熱インピーダンス
Tj算出に過渡伝熱抵抗グラフは不可欠
過渡伝熱抵抗の測定方法は 2種類
なぜ過渡伝熱抵抗測定が必要なのか
3次元の放熱経路を 1次元で表現
構造関数のクニックによるθjc推定
TDI法を利用した基本となる測定技術
実装状態での熱抵抗測定の応用技術

【第10章】電子設計をフロントローディングするためには
フロントローディングのすすめ
伝熱解析導入の課題
伝熱設計の時間領域によって設計内容が変わる
仮想技術のプロセス改革のコツ

【第11章】定常伝熱解析のモデリング技術
仮説を立てる
各工程に伝熱解析を組み込んでいく
目的ごとにモデリングの手法を選ぶ
実測データが解析精度を左右する

【第12章】過渡伝熱解析のモデリング
素子モデリング別での過渡伝熱解析
課題解決のためのモデリング手法を開発
2種類の過渡伝熱モデル DSRCとDNRC
モデルの作成方法
DNRCモデルでは過渡伝熱抵抗の測定が必要
熱回路網の構造の決定
フィッティングで実測に合わせ込んでいく
誤差平均 4.8%のモデルを作成
DSRCモデル・DNRCモデルの利用方法

【第13章】実験と解析の乖離検証と高精度化
乖離について
実験と解析誤差の考え方
実験の誤差
解析の誤差
実験と解析の乖離検証方法
解析の高精度化
限定した素子が極端に乖離している場合
一部のデータの傾向が異なる場合
全体のデータの傾向が同じ場合
恒温槽を使った実験環境の場合
ワイヤハーネスによる影響の場合
その他の影響の場合

【第14章】分析による最適設計
統計手法を活用した最適設計
特性要因図 ― STEP1 ―
要因の絞込み ― STEP2 ―
解析による多元配置法 ― STEP3 ―
直交表実験による寄与率算出の手順 ― STEP4.5.6 ―
伝熱解析と実験の整合性確認 ― STEP7 ―
CAEを活用した最適化手法
電子部品配置におけるレイアウト最適化適用事例
素子レイアウトの最適化
きょう体放熱フィンの最適化

【第15章】機動力のある伝熱技術のチーム体制
解析技術の 7つのフレームワーク
戦略 ―部署にとって戦略と戦術の優先事項 ―
組織 ―伝熱技術体制と役割 ―
社内の仕組み ―社内連携 ―
スタッフ ―必要能力の育成 ―
スキル ―各業務課題とスキル ―
経営スタイル ―マネジメントスタイル ―
価値観  ―ECUにおける熱マネジメントのビジョン ―
まとめ

おわりに

はじめに

あなたは、動作中のコンピュータの温度を下げることに苦労していませんか? 例えば、試作品を製作してみたら素子の温度が高温になってしまった、温度検証に時間がかかってしまった、はたまたリカバリーの熱対策に手間がかかってしまったなど、記憶にあると思います。挙句の果てには、その熱対策の費用がかかりすぎて製品企画自体が成立しなくなった、なんてことになりかねません。そのような状況のままで熱対策をするとしたら、ひと月程度も時間をとられてしまうことでしょう。
電子製品の課題として EMCと双璧であるこの熱対策を、どのようにしたらスムーズに進められるでしょうか? 近くにいる先輩が伝熱技術を得意とするならば、教えてもらってなんとかなると思いますが、なかなかそうはいきません。
何をどうすればよいか、本書では、実際の量産設計の現場で使われている発熱対策をお伝えしていきます。本書で、過酷な環境で使われている自動車搭載用コンピュータ(ECU)の小さなコツを理解することで、伝熱設計のフロントローディング手法を理解することができます。
この本を手に取っていただきたい方は、コンピュータに搭載された半導体の放熱に困っているエンジニア、自動車業界でエレクトロニクスの製品に携わっている回路設計者、構造設計者、伝熱解析設計者、制御設計者及び、これからメーカーに入社を考えている大学生や高専生です。
本書の構成は、伝熱技術について、実験と解析の両方からアプローチしています。第1、2章では、CASE時代に突入した自動車エレクトロニクスの伝熱技術の概要や課題を述べていきます。第3、4、5、6章では、その ECUにおける伝熱の基礎、発熱側のプリント基板、放熱側のきょう体の設計留意点、温度が上昇する要因になる熱抵抗などについて説明します。第7、8、9章では、温度計測実験の使用方法やその注意点などを解説します。第10、11、12章では、伝熱解析の現状の課題と対策方法、今後のトレンドの過渡(非定常)伝熱解析のモデリングについて詳述します。第13、14、15章では、応用編として、伝熱に関わる最適設計のノウハウや、解析の高精度化に向けたエッセンスを入れておきました。必要な技術テーマの章だけ読んでもらって、他は省略してもらっても構いません。
本書を読むことで、これからの日本の新たな成長領域である自動車業界のCASE技術の伝熱の課題について、何をすべきか、どう考えていけばよいかを理解できると思います。日本の基幹産業である自動車業界の今後の発展は、あなたのその創造力と解決力にかかっています。それでは、この本を読み終えるまで、少々お付き合いください。

篠田 卓也
〈ご注意〉伝熱解析と温度測定実験の結果について、条件が異なることで温度結果が異なりますので、改めてご検証下さい。

買い物かごへ