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スマートシンキングで進める工場変革
つながる製造業の現場改善とITカイゼン

定価(税込)  1,980円

著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-08159-0
コード C3034
発行月 2021年12月
ジャンル 電子書籍 生産管理

内容

コロナ禍を経験し、デジタルシフトが加速する製造業の変革法を具現化する。個別企業や現場が有機的につながり、価値を生む仕組みをスマートシンキングと定義。中小製造業でも実践できる現業と管理、ITをつなぐプラットフォーム再構築を16のチャートを用いて実現する。


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西岡靖之  著者プロフィール

(にしおか やすゆき)
法政大学デザイン工学部教授 博士(工学)
一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ 理事長

1985年早稲田大学理工学部機械工学科卒業。国内のソフトウェアベンチャー企業を経て、1996年に東京大学大学院博士課程修了。 2003年から法政大学教授。日本機械学会フェロー。2015年「つながる工場」のための製造業のデジタル化を支援するインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)を設立し、ものづくりとITとの融合による新たなイノベーションの創出をリードする。専門分野は知識工学、生産マネジメント、情報システムなど。

学術的な観点から中小製造業の情報システムの実装や導入支援を多く手がけ、より現実的で実用的なシステム構築のための方法論の開発に取り組む。そうした中で、現場の担当者が自らつくり上げる「ITカイゼン」のコンセプトを提唱し、その実現のためのITツールの開発や、より現実に即した中小製造業DXの支援を行っている。提案した内容のいくつかは、日本的なものづくりのモデルとしてIECなどの国際標準にも採用されている。

目次

スマートシンキングで進める工場変革
つながる製造業の現場改善とITカイゼン
目  次

はじめに

第1章 ものづくりのデジタル化
1-1 製造業のDX
1-2 生産現場の理想と現実
1-3 スマートシンキング

第2章 現場改善とITカイゼン
2-1 2種類のIT化
2-2 情報に関する7つのムダ
2-3 カイゼン型でシステム投資
ITカイゼン奮闘記

第3章 カイゼンと変革の同時進行
3-1 インダストリアル・バリューチェーン
3-2 ものづくりの参照モデル
3-3 EROTサイクル
3-4 チャート活用技術

第4章 組織が持つ知のデジタル化
4-1 問題設定に関する定義要素
4-2 活動現場に関する定義要素
4-3 デジタル設計に関する定義要素
4-4 モデル集約のための定義要素
4-5 モデル補助のための定義要素

第5章 問題発見と共有の道具
5-1 困りごとチャート
もやもやした現実の中から、何が問題なのかを明らかにする
5-2 なぜなぜチャート
絡み合った問題に対して、解決するための糸口を見つける
5-3 いつどこチャート
解決のための取組を示し、実現させるための手段を掘り下げる
5-4 目標計画チャート
最終的な目標に至る過程を示し、状況に応じて段階的に取り組む
さまざまなシンキングメソッド

第6章 業務分析と提案の道具
6-1 組織連携チャート
複数の組織間で交換される相互の取引や利害関係を明らかにする
6-2 やりとりチャート
それぞれの現場で役者間のやりとりや活動内容を関係者と共有する
6-3 待ち合せチャート
複数の役者が関わる現場の活動の流れとデータの関係を整理する
6-4 状態遷移チャート
変化する現場をいくつかの状態に分け、それらの遷移によって示す
AI(人工知能)は本当に知的なのか?

第7章 システムの設計の道具
7-1 見える化チャート
伝えたい内容に関する情報の構造について、あるべき姿を議論する
7-2 モノコトチャート
モノで構成される物理的な対象について、その機能と構造を整理する
7-3 割り振りチャート
役者が行う活動を、コンピュータや機械で代替できるかを議論する
7-4 データ構成チャート
モノや情報の内容と関係づけて、データの内容や構造を議論する
IoTはモノとコトのインターネット

第8章 システムの実装の道具
8-1 レイアウトチャート
データを介して複数の拠点が業務を連携させるしくみを議論する
8-2 コンポーネントチャート
デジタル化して処理する内容を、コンポーネントとして切り分ける
8-3 ロジックチャート
デジタル技術を用いた処理が、どのように行われるかを議論する
8-4 プロセスチャート
ロジックの内容を詳細に定義し、実際のモノや情報と対応づける
ITとバグの関係

第9章 生産管理の取り組み例
9-1 個別受注型の生産管理の困りごと
9-2 個別仕様への対応をシステムに組み込む
9-3 ICカードを用いた作業実績の自動取得
9-4 TODOリストによる現場の見せる化

第10章 在庫管理の取り組み例
10-1 簡単で確実でムリのない在庫管理
10-2 入出庫の管理と棚卸の基本
10-3 数えなくても欠品しない方法
10-4 未来の在庫を見える化する

第11章 設備管理の取り組み例
11-1 設備管理における困りごと
11-2 計画的な設備保全のための管理基準
11-3 IoTを活用した設備稼働の見える化
11-4 設備がつながるスマート工場へ
システム開発の道具(ノーコードツール)

第12章 さあ、始めよう!
12-1 3か月で成果を出すには
12-2 プロジェクトの失敗とともに成長する
12-3 三つの心得と3つのポイント
12-4 進化する現場を人がつなぐ


資料 インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ
業務シナリオ実証テーマ(2015~2020年度)
索引

はじめに

2014年の春、第4次産業革命(インダストリー4.0)に関するドイツからのレポートを初めて手にしたとき、製造業の未来の風景が、筆者の中でこれまでのモノトーンの世界から色彩豊かな景色に変わったように思う。そして同時に、世界に冠たるわが国の製造業は、このタイミングで大きく変わらなければ未来がないという危機感も同時に感じた。
とは言っても、多くの製造業の関係者の第一印象と同じように、日本のものづくりのこれまでの経緯や価値観からすれば、ドイツ発のこのコンセプトがそのまま定着しないことも容易に想像できた。ならば、日本的なものづくりを基軸とした第4次産業革命を進めるためのしくみが必要である。そのような経緯で、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)が設立された。
その後、経済産業省も第4次産業革命というキーワードを大々的に取り上げ、多くの製造業がこのテーマに取り組んだ。従来からあった自動化やデジタル化との違いは、協調領域の拡大による“つながる化”の推進である。IVIは特に、企業単独では難しかったIoTやAIの実証実験を数多く行い、普段なら出会うこともない担当者や管理者の企業を超えた“つながる化”にも大きく貢献した。この活動をメソドロジーとして裏で支えてきたのが、本書で紹介する“スマートシンキング”である。
設立当時の業務シナリオワーキンググループの成果報告書には、やりとりチャートやロジックチャートなどが多用されており、当時からこの手法の片鱗が確認できる。ただし、当時は模造紙とポストイットによる情報共有であった。本書で紹介するように、スマートシンキングとしてそれらの知の断片をデジタル化し、再利用できるようになるのはそれから数年後のことである。
ドイツで第4次産業革命のコンセプトが発表されて10年、日本で注目されてほぼ7年の月日が経つ。その間に何が変わったかというと、革命というキーワードに相当するような大きな時代の変化は見当たらない。むしろコロナ禍により、その外部要因として製造業は否応なしにデジタル化が進みつつある。しかし、そうした中で、確かな成果としてスマートシンキングの概念が具体化され、手法としてのツールも洗練されていった。
現在のような不確実な時代において最優先とすべきなのは、人財への投資であり、これまでの貴重な知的財産の棚卸ではないだろうか。それぞれの人が持つ技術やノウハウが組織力の源泉であるとするならば、それらを見える化し、顕在化させ、組織が持つ総合力として、不確実な時代においても最大限のパフォーマンスが発揮できるように備えるべきである。スマートシンキングは、こうした企業や団体が持つ問題意識に応える組織学習のための手法でもある。
本書は、主に三つのパートで構成されている。まず、第1章から第3章までは導入として、製造業とデジタル化の関係について整理する。特に中小製造業ではなぜIT化が進まないのかについてその原因を議論し、その解決策として、ITカイゼンという現場改善アプローチを提案する。また、これからのデジタル時代に必要となる標準化や共通モデルを活用し、企業の変革のための見取り図を作成するための道筋も併せて示す。
続く第4章から第8章は、スマートシンキングの中核となる16種類のチャートの活用方法について示している。まず第4章において、スマートシンキングの基本部品に相当する20の知識要素を説明し、それらを用いたチャートを四つのカテゴリーに分けて解説する。それぞれのチャートの説明では、簡単な利用例と知識要素の構造を示しており、必要に応じて必要なチャートのページを参照できるようになっている。
最後のパートとして、第9章から第12章はスマートシンキングの具体的な適応事例となる。ここで取り上げる会社は仮想企業であるが、IVIの活動の中で実際に扱った企業事例や、筆者がこれまでに関係してきた事例などをもとに、より現実的な課題や取組をまとめたものとなっている。スマートシンキングのためのチャートの記述例を示すとともに、中小製造業のデジタル化による変革のための具体的な事例としても参考になるよう意識した。
本書は、中小製造業のデジタル化のための教科書という位置づけもあるが、できるだけ即効性のある指南書となるような構成とした。まず、中小製造業のDXの進め方について関心がある読者は、第1章と第2章、そして第12章から読むとよいだろう。さらに、DXを企業の変革のための取組としてより広い視点から位置づけるためには第3章も重要となる。
中小製造業のデジタル化を現実の課題として取り組んでいる読者は、第9章の生産管理の取り組み例、第10章の在庫管理の取り組み例、そして第11章の設備管理の取り組み例について、自社の問題と対比しながら読むことで、何らかのヒントが得られるかもしれない。
そして、実際にスマートシンキングの手法を実践するため、まずはチャートを書くところからスタートしたい場合には、第4章から第8章までが参考となる。これらの章は、それぞれのチャートを利用する時点で必要に応じて参照して欲しい。各チャートは、専用のツールやソフトウェアを利用しなくても、図形の表記ルールさえ守れば、一般的な描画エディターでも十分である。
本書では、繰り返し、日本の現場力の強さを強調している。この強みを受け継いでいる多くの人に本書を読んでもらいたい。この強みをデジタルの時代にそのまま持ち込むことができれば、日本のものづくりの未来は安泰だからである。しかし、そのためには越えなければならない壁も多い。欧米型のデジタル化をそのまま受け入れ追随するのではなく、スマートシンキングによって日本的なデジタル化をあえて試みる価値はあると思う。本書が新たな製造業の飛躍のための一助となれば幸いである。

2021年11月
西岡 靖之

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