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<解析塾秘伝>AIとCAEを用いた実用化設計

定価(税込)  2,420円

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監修
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-08146-0
コード C3053
発行月 2021年06月
ジャンル 機械

内容

人気シリーズ「解析塾秘伝」第8弾!今回のテーマは、AIのCAEへの活用。本書では、活用事例を挙げながら、AIとCAEをどのように組み合わせたら、従来以上の設計が実用化できるかを検討していく。製造業を担う設計者・製品開発のプロジェクトリーダー・生産技術の開発を行う若手技術者向けにAI技術の概要を説明し、そのCAEへの活用を展望する。

平野 徹  著者プロフィール

(ひらの とおる)
1948年生まれ。北海道出身。日本機械学会・フェロー、大阪工業大学・客員教授。
1972年にダイキン工業(株)に入社。技術開発室にて建築物の年間非定常負荷計算ソフトの開発に従事、1983年に CAEセンター設立に参画、1994年 CAEセンター所長、1996年電子技術研究所所長に就任、機械と電子技術の両面から技術開発と CAEの社内展開を推進した。1987年から 10年間、傾斜機能材料開発(FGM)国家プロジェクトに参画、熱応力緩和 FGMやエネルギー変換 FGM開発のためのマルチスケール解析技術を開発した。その後、ソリューション事業展開や海外企業との提携等に従事し、2004年ダイキン情報システム(株)・常務取締役に就任、設計及び生産システム開発と海外展開を担当、現在は顧問を経てスペシャリストとしてIoT、AI技術の社内展開をサポートしている。
また、2002年に NPO法人 CAE懇話会の設立に参画、2009年から理事長と関西CAE懇話会の会長を務めている。2013年から理研・計算科学研究機構(京コンピュータ)の運営諮問委員を務めた。CAE関連や傾斜機能材料関連の書籍や論文等、多数。

安武健司  著者プロフィール

(やすたけ けんじ)
1962年生まれ。奈良県出身。
1985~2012年、シャープ(株)技術本部にて流体、伝熱、構造、電磁界、射出成型等のCAE技術開発に従事。また生産技術本部にて液晶及び太陽電池の製造装置の技術開発に従事。さらにソーラー事業部にてバックコンタクト型太陽電池モジュールの技術開発および企画業務に従事。
2012年 12月にシャープ(株)を早期退社し、アステロイドリサーチ(株)代表取締役社長に就任。機械系技術(CAE、実験)、知財活用(特許、商標等)およびクラウドファンディングに関するコンサルタントとして活躍。
2016年より NPO法人 CAE懇話会の幹事に就任。現在に至る
著書に、電子書籍 “女性起業家のための超わかりやすい「商標」入門 ”を Amazonにて出版(2016年 3月)がある。

片山達也  著者プロフィール

(かたやま たつや)
1982年生まれ。大阪府出身。
2005年に電機メーカーに入社。家電商品の開発に従事。その中でモノを作らなくてもコンピュータの中で現象を予測できる CAEの虜に。設計活用できる CAEの技術開発・教育に従事した。2012年により複雑な現象を求め、空調機器メーカーに転職。冷媒圧縮機の CFDや音振動の構造解析などを中心に解析技術の高度化に務め、現在は、それらの解析技術を駆使し冷媒圧縮機の開発に従事している。
社外活動としては、NPO法人 CAE懇話会の関西支部幹事の他、オープン CAE勉強会@関西の幹事の一人として、CAEの枠にとらわれず先進的な技術に飛びつき、技術の無駄遣いと言われるようなテーマを日々探求し、趣味レーションを楽しんでいる。

岡田 浩  著者プロフィール

(おかだ ひろし)
1965年生まれ。福岡県出身。技術士(機械部門)、機械設計技術者(1級)
1991年に電機メーカーに入社。金属・機械材料の加工の影響を考慮した強度・疲労寿命評価と改善、電子機器の放熱対策、新生産工法の開発に取り組むとともに、構造・熱・樹脂流動 CAEの教育・推進に従事した。現在は「AIと CAEを用いた、設計上流での機能・工法を考慮した製品品質評価と改善活動」に従事している。
社外では、NPO法人 CAE懇話会の関西支部幹事などで、CAEの製造業への推進活動にも携わっている。 著書に、「解析塾秘伝 CAEを使いこなすために必要な基礎工学!」「塾長秘伝 有限要素法の学び方!(共著)」「設計検討ってどないすんねん!STEP1、STEP2(共著)」(日刊工業新聞社刊)などがある。

目次

はじめに

【第1章】AIとは?
1.1 AIと IoTの定義
1.2 AIの歴史(ブーム)と各種 AIの手法
1.2.1 第 1次ブーム(1950年代後半~1960年代)
(1) 回帰分析(線形重回帰、非線形重回帰、応答局面法など)
(2) 決定木
(3) クラスタリング
(4) ベイズ推論
(5) ニューラルネットワーク
1.2.2 第 2次ブーム(1980年~2000年)
(1) 機械学習
① 教師あり機械学習
② 教師なし機械学習
③ 強化型機械学習
(2) ディープラーニング
コラム:バックプロパゲーション(誤差逆伝搬法)
1.2.3 第 3次ブーム(2010年以降)
(1) 転移学習
(2) 畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional neural network:CNN)
(3) データ同化

【第2章】実用化事例案
2.1 現状の製品開発における課題整理と実用化開発の狙い
2.1.1 製品開発における、AIと CAEを融合させることの魅力
2.2 事例案 基板実装時の AI×CAEの活用
2.2.1 STEP1 AIとビッグデータを用いた「教師あり機械学習」
2.2.2 STEP2 IoTのデータを実測から CAEに切り替えるための CAE解析精度向上
2.2.3 STEP3 STEP1と STEP2を用いた実用化設計(「強化型機械学習」AI×CAE)
2.2.4 今後の展開 これからの実用化設計・自動設計を目指して

【第3章】製品開発 CAEのための統計数理・機械学習の分類と応用
3.0 製品開発 CAEのための AIの分類
3.1 多変数関数の非線形回帰による代理モデル構築
3.1.1 多層ニューラルネットによる代理モデルの精度検証
3.1.2 勾配ブースティング法による代理モデルの精度検証
3.1.3 多層 NNを用いた非線形弾塑性解析の代理モデル構築
3.1.4 LightGBMを用いた非線形弾塑性解析の代理モデル高速化
3.2 動的非線形解析結果の固有直交分解等による次元圧縮
3.2.1 動的非線形解析結果の固有直交分解( POD)による次元圧縮
3.2.2 動的非線形解析結果の特異値分解(SVD)による次元圧縮
3.3 ベイズ最適化による圧力損失最小化問題の最適解探索
3.3.1 本節でのベイズ最適化の考え方
3.3.2 最適解の探求
3.3.3 獲得関数
3.3.4 最適化アルゴリズム
3.3.5 関数を用いた数値実験
3.3.6 分岐管における圧力損失最小化問題
3.3.7 アーメッドボディの抗力最小化
3.4 補足資料(各種問題に対する Pythonプログラム)
3.4.1 Pythonの実行環境(Anaconda,.Google.Colaboratory)
3.4.2 Pythonによる 4層 NN(512、256)モデルのプログラム
3.4.3 LightGBMによる回帰モデル及び各種グラフ・プロット
3.4.4 Pythonによる POD及び SVDを用いた縮約モデル作成プログラム
3.4.5 ベイズ最適化のための Pythonプログラムソースコード集

【第4章】設計の上流から下流まで全プロセスをカバーするこれからの AI・IoT・CAEの概念と日本の製造業への提言
4.1 拡張 CAEと AI・IoT関連技術について
4.1.1 拡張 CAEの提案
4.1.2 拡張 CAEと AIおよび関連する周辺技術について
コラム:製造業におけるベイズ推論の適用事例
4.2 拡張 CAE分野における AI・IoT適用事例
4.2.1 生産現場における適用事例
4.2.2 活用現場における適用事例
4.2.3 先進的製造業の AI戦略分析 4.3 各社の特許戦略
4.3.1 生産分野の事例(ファナックの場合)
4.3.2 運用分野の特許事例(コマツの場合)
4.4 日本の製造業の若手技術者への提言

【第5章】AI×CAEがもたらす最適化社会
5.1 CAEとデジタルトランスフォーメーション(DX)
5.2 CAE技術の発展と適用範囲拡大
5.3 CPSを前提としたものづくりと CAEの再定義
5.4 キー・アーキテクチャとしての CPS+AI.
5.5 機器エッジ側の知能化とプラットフォーム側の知能化
5.6 CPSプロセスにおける不確かさ評価とベイズ推論
5.7 「人・社会」と「システム・サービス」のモデル化
5.8 スマート・サービスのアーキテクチャ分類
5.8.1 プラットフォーム・アプリ型
5.8.2 垂直統合型
5.8.3 スマート・コネクテッド・デバイス型
5.8.4 複数プラットフォーム連携型サービス
5.9 Society5.0とポスト・パンデミックの社会システム
5.9.1 日本が目指すべき社会システム Scoiety5.0とは
5.9.2 COVID-19感染拡大(パンデミック)に対する世界の対応
5.9.3 ポスト・パンデミックの社会システムを考える

おわりに
参考文献
索引

はじめに

はじめに

「人工知能」(AI:Artifical Intelligence)という言葉が誕生したのは、1956年にアメリカのダートマス大学で開かれた研究集会。計算機による複雑な情報処理を意味する言葉として「人工知能」という名称が使われたとのことです。それから、
・「人工知能」のベースとなる「各種統計的手法」
・「ニューラルネットワーク」
・「ディープラーニング」
・上記を活用した各種「機械学習」
などが提唱され、また、これらの手法を後押しするように「コンピュータの性能向上」「画像処理・認識技術の進展」「インターネットの普及」「各種計測機器とインターネットを接続して収集した“ビッグデータ”Internet of Things(モノのインターネット)を用いた分析」などを総合的に用いて業務革新を行う DX(Digital Tarnsformation)の発展がありました。
その結果、半世紀以上の歳月をかけ、AIは何度かの発展と停滞を繰り返しながら進化し続け、現在は「自動運転」「交通管制」「物流」「医療分野」「製品の保全」など、さまざまな分野で活用されるようになりました。昨今の経済・工業新聞やネットのニュースで、「AI」や「IoT」を有効活用した改善活動の取り組みが紹介されない日はないくらいです。
しかしながら、現在の AIは、やっと実用化に向けて歩み始めた状態だと私たちは思っています。現在の AIは、あくまで IoTで集められた既存の製品の良・不良やサービス状況等の情報をビッグデータとし、ヒトが「教育型(教師あり)」の機械学習をベースとした AIに学習をさせて、製品の不良検知やニーズ分析・市場予測の向上に対して活用することが主になっていると思っています。

一方、私たち「設計者・生産技術者」が本来活用したいと思っている「製品開発」においては、残念ながら、AIは十分に活躍できているとは言えません。その理由は、私たちは少なくとも下記の 2点にあると思っています。

(a)  入力データ〔「設計仕様」を解釈して、必要な設計・制御因子(ルール)を設定する。および、製品を作るために必要な、材料・加工法・加工条件などのマスターデータを用意する〕と出力データ(どのような機能、品質になれば、その製品は良品とみなせるかを判断する)の評価指標をヒトが決定しなければならない。
将棋・チェス・囲碁のように、1対 1でコマを動かすルール(入力する因子)と勝敗パターン(出力する因子:機能と品質)が決まっているようなものであれば、「強化型の機械学習」と呼ばれる AIが活躍できるのですが、今はせいぜい、教師あり・教育なしの機械学習をベースとした AIが主で、既存の製品を改良する程度。
(b) 最新の深層学習(ディープラーニング)などの AIは、様々な統計処理手法を持ち、ヒトが入れた入出力データを用いて、確率統計論的に実用的と思われる案を出力するが、「なぜ、その推論が正しいか、どのような特徴量を認識しているか?」は、確率統計論的に逆同定することが難解で、かつ、論理的・工学的な説明にまで構築されていない。私たち設計者・生産技術者としては、「AIが答えを出したから」と製品を製造し、販売するわけにはいかない。製品を販売するためには、顧客対する品質・コスト等の説明責任があり、これを行うためには、確率統計論的に得られたデータを数式化、論理化し、設計者・生産技術者自身が論理的・工学的に、顧客が納得するように説明を行わなければならない。

将来的に、私たちは、ヒトと AI、CAEで下記のようなことができればよいと考えています。

①ヒトが顧客の要求の中から製品仕様を決める。
・QCD:品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)
・ESH:環境(Environment:省材料化、製品の製造時や使用時の消費エネルギーの削減)、安全性(Safety:設計した製品・および製造現場の安全性確保)、ヒトへの配慮(Human:本人・周辺の方に対しての心地よさ)
② 上記で決定する製品仕様について、過去の論文〔最新の設計手法、材料・加工法・加工条件の中(マスターデータ)〕の中から、AIが確率統計的な手法で実用的と思われる設計案につながる「レシピ」(ヒント)のようなものを出して、ヒトがその情報を元に仕様を確定し、構想設計を行う。
③上記の構想設計について、設計者・生産技術者が CAEなどを用いて、論理的・工学的に詳細設計を行い、顧客の納得性を得る。
さらに、AIで実測の誤差と論理的(CAE)誤差(現在の工学の限界や、計算力学(有限要素法等)の設定などからくる計算誤差)を考慮したロバスト設計を行う。

※新製品を創作する際には、まだ、「実態もなければ、顧客が要求する機能も正確に決まっていない」わけですから、3次元 CAD(Computer AidedDesign)と CAE(計算力学を使用した Computer AidedEngineering)を活用して、設計を行わなければならない。現在の AIで、「新たな製品の創造」を行うためのヒント(レシピのようなもの)は、出してくれるかもしれない。
※上流設計で品質を高めるためには、CAEには、実機との一致が求められます。しかし、すべての自然現象が論理化されているわけではない(例えば、摩耗・腐食・表面の仕上げによる液体と固体の界面張力等の現象)。そこで、現在の工学では解明されていない部分を予備実験で補完し、実験結果を AIで数式化・論理化した上で、必要に応じ、CAEに新たな機能として組み込まなくてはならない。そのためには、実現象を精密に計測する技術が必要。

私たちは、製造業において、ヒトと AIと CAEが、上述の①~③のようなことが行えれば、商品企画から設計、製造、品質評価に至る一連の設計プロセスの効率化、品質向上、開発期間の短縮など、実用的な設計を行えるものと考えます。そして、その製品を有効活用して、『最適化社会を創出』したいと考えています。しかし、このレベルに達するのは、まだまだ時間がかかるものと思います。
そこで今回私たちは、これからの製造業を担う設計者・製品開発のプロジェクトリーダー・生産技術の開発を行う若手技術者向けに、
・AIの概要を説明する。
・「ヒト」と「AI×CAE」を融合し、どのように活用すれば、従来以上にQuality・Cost・Delivery+Environment・Safety・Human(Easy to Use)を考慮したものづくりができるのか? ただし、現状の AIと CAEの融合だけではできない課題もあると思われるので、その際に、追加でどのような技術を構築し、活用しなければならないか? 実用したい目標と、現実的に行えることの事例を紹介する。
・最後に、将来を夢見て、AIと CAE(ここでは拡張 CAEと銘打ちます)がどのように進化し、「ヒト」とともにより良い社会を実現していくのか?

を提言することにしました。言うなれば、私たちから、将来を担う設計者・生産技術者に、「夢の設計」を考えてもらうための期待を込めた、将来像のメッセージを本書籍に残そうと思っています。

本書籍が、将来、製造業で働く技術者の役に立つこと、「ヒト」が、AIとCAEがどのような思考で検討しているかを理解できるような形にした上で、夢の「実用化設計」を行い、「最適化社会」を創出できるようになるのかのヒントになれば幸いです。

2021年5月31日 本著の執筆にあたって
執筆者一同

※図表は省略しております。

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