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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい新幹線技術の本

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08144-6
コード C3034
発行月 2021年05月
ジャンル ビジネス 機械

内容

新幹線の高速化に伴い、安全を確保しつつ高速でも揺れない走り、高速からの減速・停止、長い坂を抑速しながら下る技術、徹底したトラブル再発防止など、新幹線は様々な面で技術進化を遂げています。本書では、こうした新幹線にまつわる技術についてトコトンやさしく解説します。

辻村 功  著者プロフィール

(つじむら いさお)(※辻は一本しんにょう)
1956(昭和31)年神奈川県生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒業。電機メーカーにて鉄道車両用電気機器の設計業務およびエンジニアリング業務に従事。外資系の電機メーカーおよびブレーキメーカーを経て独立。2015年より5年間、インド国内で鉄道コンサルタントとして活躍。技術士(機械部門)。

●主な著書
『鉄道メカニズム探究』(島秀雄記念優秀著作賞受賞、2013年)JTBパブリッシング、2012年

目次

【第1章】新幹線が誕生するまで
1 狭軌と敗戦を克服して「不利な条件から飛躍した歴史」
2 戦前の弾丸列車計画「新幹線の布石となるプロジェクト」
3 十河信二と島秀雄「総裁の情熱と技師長の見識」
4 逆風の中でのスタート「風向きを変える根回しと方策」
5 鴨宮モデル線での試運転「未知なる時速200kmへの挑戦」
6 日本国民の叡智と努力「夢ではなくなった「夢の超特急」」

【第2章】未知の時速200kmによる試練
7 パンタグラフに揺さぶられる架線「営業を開始して初めてわかること」
8 新幹線初の脱線事故「車内信号を確認せず出発し脱線」
9 ブレーキディスクの飛散「空転の遠心力で取付ボルト破壊」
10 汚水が吹き上がるトイレ「頭から汚水を浴びた乗客の苦情」
11 氷雪の落下で割れる窓ガラス「関ケ原の雪が温暖地区で禍」
12 車軸が折れたまま走行「車掌が機転を利かせて停止手配」
13 騒音・振動が社会問題に「市街地を通る高速鉄道の課題」
14 重量超過で線路の作り直しへ「自由席導入がもたらした大誤算」

【第3章】快適な旅を支える技術
15 座席の変遷「3人掛け座席の進化」
16 トンネルでも耳ツンなし「圧力を保つ車体の気密構造」
17 夏も冬も快適な温度の車内「空調装置も進化している」
18 快適なトイレを追求して「汚物処理装置の進化」
19 グリーン車と特別座席「くつろぐことができるゆとりの車内空間」
20 頂点を極めた食堂車「旅を支える供食サービス」
21 快適な旅を支える車内清掃「短時間で完璧な清掃を行う技術」

【第4章】高速走行を安定させる技術
22 線路とトンネルの規格「作り直しはできない重要な規格」
23 線路の構造と保守「高速走行を支える線路の技術」
24 蛇行動の防止「高速走行を阻む大敵」
25 台車構造の変遷「高速走行の鍵を握る技術」
26 折れない車軸の実現「車両の中で最も過酷な使われ方をする車軸」
27 たゆまぬ軽量化「開業当時と比べて車両重量は約8割に」
28 豪雪を克服した技術「豪雪でも走り続ける新幹線」

【第5章】時速300km以上まで加速させる技術
29 走行抵抗との戦い「高速走行で急激に増加する空気抵抗」
30 モーターの回転は速くない「モーターの回転速度は通勤電車と大差なし」
31 直流モーターとその制御「直流モーターの特性は鉄道車両に最適」
32 動力分散方式と発電ブレーキ「各車両が動力を持つ電車方式」
33 交流モーターの登場「VVVFインバータが開発され交流モーターが登場」
34 交流→直流→交流の変換「交流電化と交流モーターは関係なし」
35 回生ブレーキの実現「省エネ・軽量化に効果のある回生ブレーキ」

【第6章】高速からブレーキをかける技術
36 摩擦ブレーキの限界「ディスクを押さえるパッドの摩擦」
37 ブレーキに有利な動力分散方式「電気ブレーキの活用がさらなる高速化の鍵」
38 渦電流ブレーキ「モーターを持たない車両で使える電気ブレーキ」
39 軽井沢から高崎へ下るには「延々30 km続く勾配を高速で駆け降りるには」
40 地震でいかに早く停めるか「変電所の地震計で送電停止」
41 踏面清掃子という裏方「粘着を保って空転・滑走を防止」

【第7章】電気を送り込む技術
42 交流電化と周波数「新幹線計画段階で成功した交流電化」
43 三相交流から単相交流への変換「変電所から架線とレールに送り出す単相交流」
44 架線とレールへの電気の送り方「通信線への誘導障害を考慮」
45 安定した集電を支える架線の改良「高速走行や強風に適応できる架線」
46 パンタグラフの数の変遷「架線を揺らし騒音源となるパンタグラフ」
47 パンタグラフの騒音対策「高速走行特有の集電音と空力音」
48 一瞬電気が停まるセクション通過「位相が異なる交流への対応」
49 周波数が3回変わる北陸新幹線「明治時代に異なる発電機を輸入した宿命」

【第8章】衝突を回避する技術
50 人間の注意力は時速160kmが限界「ATC自動列車制御装置の採用」
51 多段ブレーキ制御のアナログATC「1つの列車しか入れない閉塞区間」
52 一段ブレーキ制御のデジタルATC「ブレーキ力は車両側で算出」
53 自動と手動の役割分担「新幹線の自動運転は技術的に可能」
54 新幹線の運行管理システム「運転指令所で一括管理するシステム」
55 地上と車上をつなぐ列車無線「運転指令所と乗務員をつなぐホットライン」

【第9章】安全確保へのたゆまぬ努力
56 幸運を味方に付ける再発防止策「乗客の死亡事故が発生しなかった新幹線」
57 フェイルセーフの徹底「事故が起きることを前提にした設計思想」
58 ヒューマンエラーの撲滅「人間は見落としたり忘れたりするもの」
59 メンテナンスの重要性「深夜に実施される線路や電気の保守作業」
60 阪神淡路大震災の教訓「崩落箇所に列車が突っ込めば大惨事に」
61 新潟県中越地震の教訓「時速200kmで走行中の列車が脱線」
62 東日本大震災で対策効果を立証「物理的に完全防止できない地震による脱線」

【コラム】
●新幹線の博物館と車両基地一般公開
●水没から車両を救った作戦
●在来線を改軌したミニ新幹線
●標準軌・狭軌両用の軌間可変電車
●日欧混在の台湾高速鐵道
●新幹線の寝台車は中国で実現
●ドクターイエローとイースト・アイ
●リニアモーターとは 超電導リニアの原理
●新幹線の海外展開に向けて

世界最高速度記録年表
全国新幹線一覧表・全国新幹線路線図
新幹線車両諸元表
参考文献
車両写真索引
索引

はじめに

世界初の高速鉄道である新幹線が開業してから、半世紀以上の歳月が流れました。現在では九州から北海道まで日本列島を縦断し、沿線を移動する中長距離の旅には欠かせない存在で、年間輸送人員は4億人を超えています。開業以来、列車の運転そのものに起因する乗客の死亡事故が皆無という安全性、そして最高時速260〜320kmに達する安定した高速運転は、高度な技術によって支えられています。またそれらの技術のうち、乗客の目に触れるものはごく一部に限られています。本書は多岐にわたる新幹線技術について、書名の通りトコトンやさしく解説することを目指して執筆いたしました。
鉄道技術は、工学の分野だと土木・機械・電気などに跨っています。本書はそれらの分野に縁がなくても、一般的な基礎知識があれば理解できるようにまとめてあります。想定している年少の読者は鉄道や技術に興味がある中学生、そして大人なら誰でも理解できるよう配慮したつもりです。内容はかなり高度な領域まで踏み込んでいますので、新幹線を運行する鉄道事業者の新入社員教育にも、副読本として使えるレベルです。見開き左側のページには図・イラスト・写真を入れましたので、右側の本文を読まなくても、左側だけ紙芝居を観る感覚で目を通せば、あらすじは理解できると思います。

「乾電池の電気は直流ですか? 交流ですか?」もしこの質問に即答できない場合は、申し訳ありませんが電気の入門書(たとえば『トコトンやさしい電気の本』)を参考にするか、ネット情報の助けを借りてください。やさしく理解できるよう図解を多用しましたが、目に見えない電気は図解で表現できない部分もあり、難しい記述があるかもしれませんがお許しください。逆に著者自身に対して、「乾電池の電気は直流です」と即答できる読者には、それ以上の予備知識を求めてはいけないという課題を与えましたので、右側の本文が難しいと感じれば、左側のページに理解を助けるヒントがあるはずです。
本書の全9章のうち、技術の各論は第3章〜第8章です。第1章は新幹線誕生までの序章、第2章は新幹線開業後に遭遇した試練、そして第9章は安全確保へのたゆまぬ努力について記述しています。また世界の高速鉄道における新幹線の立ち位置についても若干触れています。なお技術分野のうち、高速運転や新幹線特有の制約条件に関わらない分野(たとえば指定席券の発券システム)については割愛しました。本書との出会いにより、新幹線に乗って湧いた疑問が「なるほど、そういうことか」と解けたり、四季折々の日本列島を疾走する新幹線の旅を、より身近なものに感じていただければ幸いです。

2021年5月
辻村 功

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