買い物かごへ

クリーンルームにおける静電気対策

定価(税込)  2,750円

著者
サイズ A5判
ページ数 170頁
ISBNコード 978-4-526-08128-6
コード C3054
発行月 2021年04月
ジャンル 電気・電子

内容

クリーンルームを使う製造業において、静電気は、その帯電による塵埃の吸着、静電気放電など、製品不良や事故を引き起す大きな課題だ。そこで本書では、静電気の基礎から、実際の事例を引きながらクリーンルームにおける静電気障害について解説。その解決策を提示する。

鈴木政典  著者プロフィール

(すずき まさのり)
1984年3月 名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程化学工学専攻修了
1984年4月 (株)テクノ菱和入社、技術開発研究所へ配属 
2002年8月 豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程環境・生命工学専攻入学
2005年7月 豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程環境・生命工学専攻修了
「清浄環境下におけるイオナイザーによる静電気除去技術に関する研究」で博士(工学)取得

現在に至る。

目次

【第1章】静電気の基礎
1.1 静電気とは
1.1.1 電気の出現と帯電
1.1.2 静電気の発生機構
1.1.3 静電気発生に影響する主な要因
1.2 静電気の緩和と帯電
1.2.1 放電による緩和
1.2.2 導電による緩和
1.2.3 静電気帯電
1.2.4 静電気緩和による静電気除去グッズの性能評価

【第2章】半導体・液晶製造、医薬品製造等のクリーンルームにおける静電気障害
2.1 半導体・液晶製造のクリーンルームにおける静電気障害
2.1.1 浮遊微粒子汚染
2.1.2 静電破壊
2.2 医薬品製造のクリーンルームにおける静電気障害
2.3 危険物を取り扱う工程及び施設における静電気障害

【第3章】半導体・液晶製造、医薬品製造等のクリーンルームにおける静電気対策の方法
3.1 接地により静電荷を散逸させる方法
3.1.1 静電気を管理するための主な物理量と測定装置及び方法
3.1.2 静電気対策と評価指標
3.1.3 防爆施設の各工程における静電気対策例
3.2 イオナイザーからの空気イオンにより静電荷を中和する方法
3.2.1 イオナイザーの除電原理
3.2.2 イオナイザーの種類と特徴
3.2.3 イオナイザーの選定方法及び使用上の注意点
3.2.4 イオナイザーの除電性能の評価方法

【第4章】クリーンルームにおけるイオナイザーによる静電気対策の問題点
4.1 コロナ放電式イオナイザーの問題点
4.2 軟X線イオナイザーの問題点
4.3 医薬品製造のクリーンルームでの問題点

【第5章】コロナ放電式イオナイザーの電極からの発塵の問題
5.1 電極からの発塵濃度の測定
5.2 電極からの発塵濃度の経時変化
5.3 コロナ放電電極からの発塵メカニズムの検討
5.3.1 電極の磨耗
5.3.2 電極上への微量不純物の析出・堆積

【第6章】開発されたクリーンルーム用イオナイザー
6.1 シースエア式低発塵イオナイザー(コロナ放電式)
6.1.1 シースエア式低発塵イオナイザーの概要
6.1.2 発塵防止対策の評価結果
6.2 新耐磨耗性電極の長期耐久試験と金属汚染量の測定
6.2.1 新たに開発した耐磨耗性電極の原理と製法(概要)
6.2.2 実験装置および実験方法
6.2.3 実験結果
6.3 シースエア量を低減したシースエア式低発塵イオナイザー
6.3.1 シースエア量低減の検討
6.3.2 開発したシースエア式低発塵イオナイザーの発塵防止性能(シースエア効果)
6.4 イオン化気流放出型イオナイザー(軟X線照射式)
6.4.1 イオン化気流放出型イオナイザーの特長
6.4.2 各種イオン化気流放出型イオナイザーの概要
6.5 液晶カセット用イオン化気流放出型イオナイザーの遮蔽性能と除電性能
6.5.1 軟X線の遮蔽性能
6.5.2 除電性能の評価方法
6.5.3 除電性能の評価結果
6.5.4 従来方式によるカセット内のガラス基板に対する除電性能
6.6 チャンバー型無発塵イオナイザー(イオンカラム)の遮蔽性能と除電性能
6.6.1 チャンバー型無発塵イオナイザーの概要及び主な特徴
6.6.2 実験装置および方法
6.6.3 実験結果および考察
6.7 静電気対策用層流吹出口(イオンキューブ)の遮蔽性能と除電性能
6.7.1 実験装置及び方法
6.7.2 実験結果及び考察
6.7.3 イオナイザー実機による遮蔽性能の確認と除電性能の測定
6.8 防爆型無発塵イオナイザー(軟X線照射式)
6.8.1 防爆型無発塵イオナイザーの用途
6.8.2 防爆型無発塵イオナイザーの仕様
6.8.3 防爆型無発塵イオナイザーの外観
6.9 今後の展望
6.9.1 今後イオナイザーに求められること
6.9.2 今後必要とされるイオナイザー

【第7章】静電気対策の事例
7.1 半導体・液晶製造
(1)半導体用封止材の充填工程における静電気対策
(2)フレキシブル基板の静電気対策
(3)ガラス基板の吸着ステージにおける静電気対策
(4)ガラス基板の搬送工程における静電気対策
(5)フィルムコーター装置における静電気対策
7.2 医薬品製造 148
(1)粉体薬充填装置にける静電気対策
(2)粉体薬充填アイソレータにおける静電気対策
(3)医療用樹脂製品の静電気対策
(4)遠心分離機における静電気対策
(5)錠剤の画像検査工程における静電気対策
7.3 危険物を取り扱う工程及び施設
(1)粉体溶解槽等の固定タンクにおける静電気対策
(2)溶剤充填用クリーンベンチにおける静電気対策
(3)溶剤小分け工程における静電気対策
(4)溶剤充填時の樹脂ドラムの静電気対策
(5)溶剤の撹拌・ろ過工程における静電気対策
7.4 その他
(1)樹脂ベルトで誘導帯電した電池ケースの静電気対策
(2)導電性布によるバグフィルタの静電気対策
(3)食品包装工程における静電気対策
(4)樹脂容器の加工工程における静電気対策
(5)樹脂部品用トレー供給部における静電気対策

索引

はじめに

筆者らが「静電気」に取り組むことになったのは、1986年頃だった。半導体・液晶製造関連産業がまだ元気な時で、静電気による微粒子汚染や静電破壊が製品の歩留まり低下を引き起こし、問題になっていた。筆者らが所属しているテクノ菱和は、クリーンルームの設計・施工も行っている会社で、ちょうど、1986年9月に技術開発研究所が新築され、クリーンルームの要素技術開発の一環として「クリーンルームにおける静電気対策」も始まった。
当時の半導体製造は、200mmφウェハが主流で、300mmφウェハによる製造が始まったばかりであった。液晶製造では、ガラス基板のサイズがまだ小さく、300×400mmで、生産装置のローダー/アンローダー部に置かれたカセットからロボットアームでガラス基板を引き出したり、挿入したりする際、ロボットアームと帯電したガラス基板との間で、火花放電が確認できた。
また、当時は、半導体・液晶製造の前工程にもコロナ放電式イオナイザーの導入が始まった頃で、コロナ放電式イオナイザーを稼働させるとクリーンルーム内の塵埃濃度が高くなることが問題になっていた。そこで、筆者らは、この現象の原因の調査を始めた。その結果、放電電極から発塵があるというコロナ放電式イオナイザーの問題点が明らかとなり、その対策として、シースエア式低発塵イオナイザー(クリーンルーム用イオナイザー)を開発した。これに対して、1992年に日本空気清浄協会より会長奨励賞を授与された。
さらに、1992年頃から、クリーンルームで本質的に無発塵の軟X線イオナイザーが使用されるようになったが、軟X線による被曝の危険があることが問題になった。そこで、軟X線イオナイザー自体が遮蔽構造を持つイオン化気流放出型イオナイザーを開発し、実用化した。これに合わせて、清浄環境下で危険物を取り扱う工程向けに、軟X線をイオン化源とする防爆型無発塵イオナイザーも開発し実用化した。これらの功績に対して、2006年に静電気学会より進歩賞を授与された。クリーンルーム用イオナイザー以外でも、当時、「クリーンルームでは気流によって常に静電気帯電が起こっている」というそれまでの常識を覆す「クリーンルームでは気流帯電はない」ことを実験と理論で証明し、日本空気清浄協会の会長奨励賞を受賞した。
本書では、理解を深めるため、まず静電気の基礎について説明する。次に半導体・液晶製造、医薬品製造等の製造環境(クリーンルーム)における静電気障害について説明し、その対策として、イオナイザーについて、イオナイザーの除電原理、イオナイザーの種類と特徴、イオナイザーの具体的な選定方法と使用上の注意点、イオナイザーの除電性能評価方法を説明する。また、イオナイザーをクリーンルームで使用する上での問題点とクリーンルーム用イオナイザーについて述べる。さらに、イオナイザーを使用しない接地による静電気対策(危険物を取り扱う工程や施設における静電気対策)についても、読者が自ら実施できるように、具体的に平易に詳細に説明する。本書では、先端産業の製造に携わる読者が、静電気の基礎から静電気対策全般までの広範囲な知識(初心者から上級者までのレベル)を習得できるように、平易に詳細に説明する。本書が、読者の皆様の一助になれば幸いである。
終わりに、本書執筆の機会を与えてくださった株式会社テクノ菱和の関係者の方々、および本書出版にご尽力いただいた日刊工業新聞社の関係者の方々に厚くお礼申し上げます。

2021年4月
鈴木 政典

買い物かごへ