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金属材料の疲労破壊・腐食の原因と対策
原理と事例を知って不具合を未然に防ぐ

定価(税込)  2,640円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-08127-9
コード C3057
発行月 2021年04月
ジャンル 金属

内容

金属材料は身の回りに多く使われている素材ですが、不具合時には大きな事故を引き起こすことがあります。本書では、特に起こりやすい疲労破壊と腐食について、原理、事例、不具合を防止する対策などを解説します。

福﨑昌宏  著者プロフィール

(ふくざき まさひろ)
福﨑技術士事務所 代表技術士(金属部門)
1980年 千葉県生まれ
2005年 千葉工業大学 工学研究科 博士前期課程 金属工学専攻 修了
2005年 金属加工メーカーに入社
2013年 建設機械メーカーに転職
2017年 技術士登録(金属部門)
2019年 福﨑技術士事務所を開設、現在に至る
2020年 東久邇宮文化褒章 受賞

目次

目次

まえがき

1章 金属材料の不具合紹介
1.1 金属不具合の歴史
1.1.1 1912年 タイタニック号沈没
1.1.2 1942年 リバティ船の沈没
1.1.3 1954年 ジェット機コメットの空中分解
1.1.4 1940年 タコマナローズ橋の崩壊
1.2 金属不具合の種類
1.3 不具合の被害・損失

2章 疲労破壊の原因と対策
2.1 疲労破壊に関係する金属の基礎知識
2.1.1 結晶構造
2.1.2 転位とすべり運動
2.1.3 すべり系
2.1.4 金属の強化方法
2.2 材料と応力
2.2.1 応力の種類
2.2.2 応力集中
2.2.3 き裂の負荷モード
2.3 疲労試験
2.4 疲労破壊の破面の特徴
2.4.1 すべり帯
2.4.2 すべりとへき開
2.4.3 フィッシュアイ
2.4.4 ストライエーション
2.4.5 ビーチマーク
2.4.6 延性破面と脆性破面
2.5 フレッティング摩耗
2.6 疲労強度向上の対策
2.6.1 不純物介在物
2.6.2 硬さ
2.6.3 残留応力
2.6.4 材料強化方法
2.7 実際の不具合事例
2.7.1 低温脆性
2.7.2 焼戻し脆性
2.7.3 溶接残留応力

3章 腐食の原因と対策
3.1 腐食に関係する金属の基礎知識
3.1.1 周期表
3.1.2 原子とイオン
3.1.3 化学結合
3.2 腐食の基本原理
3.3 イオン化傾向と標準電極電位
3.4 金属の不動態皮膜
3.5 腐食と pH
3.6 腐食形態の分類
3.7 全面腐食
3.8 局部腐食
3.8,1 異種金属接触腐食
3.8.2 酸素濃淡腐食
3.8.3 粒界腐食
3.8.4 孔食
3.8.5 すき間腐食
3.8.6 脱成分腐食
3.8.7 応力腐食割れ
3.9 腐食試験
3.10 防食方法
3.10.1 めっき
3.10.2 塗装
3.10.3 電気防食
3.10.4 耐食材料
3.10.5 環境制御
3.11 実際の不具合事例
3.11.1 不動態皮膜と塩化物イオン
3.11.2 ステンレス鋼の鋭敏化
3.11.3 銅合金とアンモニア

4章 各種金属材料の特徴
4.1 鉄鋼材料
4.1.1 鉄鋼材料の基礎
4.1.2 鉄鋼材料の JIS規格
4.1.3 鋼のマルテンサイト変態
4.1.4 鉄鋼材料に起こる不具合
4.2 ステンレス鋼
4.2.1 ステンレス鋼の基礎
4.2.2 ステンレス鋼の JIS規格
4.2.3 ステンレス鋼に起こる不具合
4.3 アルミニウム合金
4.3.1 アルミニウム合金の基礎
4.3.2 アルミニウム合金の JIS規格
4.3.3 アルミニウム合金に起こる不具合
4.3.4 アルミニウムと溶接の不具合
4.4 銅合金
4.4.1 銅合金の基礎
4.4.2 銅合金の JIS規格
4.4.3 銅合金に起こる不具合

5章 金属材料の強度試験と分析方法
5.1 材料強度試験
5.1.1 引張試験
5.1.2 硬さ試験
5.1.3 シャルピー衝撃試験
5.2 金属分析
5.2.1 金属組織分析のフローチャート
5.2.2 化学成分の分析
5.2.3 光学顕微鏡観察
5.2.4 電子顕微鏡観察
5.2.5 EDSと EPMA
5.2.6 EBSD
5.2.7 X線回折

6章 不具合調査方法
6.1 調査方法のフローチャート
6.2 不具合の特定
6.3 サンプルの保管
6.4 目視観察と写真撮影
6.5 正常品との比較
6.5.1 成分分析
6.5.2 金属組織観察
6.5.3 硬さ試験
6.5.4 加工工程の確認
6.6 生産工程から見た不具合の種類

参考文献
索引

はじめに

人類が金属材料を使用してきた歴史は古く、銅や鉄は数千年前までさかのぼることができる。現在では銅や鉄の他にもアルミニウム、マグネシウム、チタン、レアメタル、貴金属など様々な材料が生産されている。日用品などの身近な用途以外にも建築、自動車、鉄道、航空機、産業機械など、多くの産業分野で使用され、不可欠な存在となっている。
近年の技術の進歩はめざましい。それに伴い金属材料に対する研究や開発も盛んに行われている。しかし、金属材料の基本となる結晶、転位などの理論を置き去りにして金属材料を使いこなすことは不可能である。そして、人の命に限りがあるように金属材料にも寿命がある。特に疲労・摩耗・腐食は機械部品の不具合原因としてよく取り上げられる。これらの不具合は、疲労の応力集中や腐食の電位差の他にも金属材料自身がもつ特性に大きく影響される。
技術の進歩は金属材料そのものに限らず、金属材料を分析する機器・装置についても起きている。成分分析においてはppm、ppbレベルの微量な分析、電子顕微鏡ではナノレベルの微小な観察などが標準的に行えるようになってきている。分析機器は検出レベルが向上しただけでなく操作面でも改善され、試料をセットすれば結果が出てくるようになりつつある。これは短期間で技術者を育成できるなど良い効果があるが、同時に測定原理や装置構造などを意識し、勉強する機会が減少することにつながりやすい。
また、例えば疲労破壊という一つの専門分野だけに知識がかたよっていると、計画や設計の段階で、金属材料に起こる可能性のある不具合を全て列挙することは困難である。さらに、金属製品は建築物や輸送機器など人の命に関わることが多いため、事故後に「想定できなかった」ではすまされないことも多い。そのため、金属材料の技術者は疲労や腐食など特定の専門性を持つことと同時に、全体を見通す広い知識も必要となる。
疲労破壊、腐食、分析機器などは個別の専門書が数多く出版されているが、一つのテーマの元にこれをまとめた書籍は少ない。そのため本書では、企業などで始めて金属材料を扱う研究者や技術者向けに金属材料の疲労破壊、腐食、分析についての基礎的な内容をまとめた。1章では過去の大きな事故について。2章では疲労破壊。3章では腐食。4章では鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金について。5章では金属材料の分析について。6章では不具合対策の進め方について記述した。
金属材料についての専門知識はたいへん幅広く奥も深いが、本書では疲労破壊や腐食などの不具合に関する項目にとどめた。疲労破壊と腐食については実例を交えて基本から解説している。不具合が起きた時に主に使用される金属材料の分析機器についても様々な分析機器を紹介した。各分野の専門家からは物足りなさを感じる部分があるかもしれないが、入門書としての位置づけで本書を構成している。企業などで金属材料を扱う研究者や技術者に活用でき、また講演のテキストとしても使用できる内容の書籍としてまとめた。  本書をまとめるにあたり、データのご提供を頂いた川重テクノロジー株式会社、新潟県工業技術総合研究所、総合バルブコンサルタント株式会社、旭化成エンジニアリング株式会社、株式会社WELDTOOL、西日本旅客鉄道株式会社には多大なるご協力とご理解をいただいた。ここに深甚なる謝意を表する。
最後に、出版にあたり、日刊工業新聞社出版局の岡野晋弥氏には多大なるご配慮とご支援をいただいた。ここに深く感謝申し上げる。

2021年 4月 福﨑 昌宏 

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