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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい土木技術の本

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08125-5
コード C3034
発行月 2021年03月
ジャンル 土木・建築 ビジネス

内容

土木が取り扱う範囲は非常に広いが、本書では土木事業の流れに沿ったもの(企画・計画・設計・施工・維持管理)と土木工学が取り扱う学問領域についてまとめる。コンクリート材料や施工法の研究、維持管理に長年携わった経験を生かしてトコトンやさしく解説する。

溝渕利明  著者プロフィール

(みぞぶち としあき)
法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科教授
専門分野:コンクリート工学、維持管理工学

●略歴
1959年 岐阜県生まれ
1982年 名古屋大学工学部土木工学科卒業
1984年 名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了
1984年 鹿島建設(株)に入社、技術研究所に配属
1993年 広島支店温井ダム工事事務所に転勤
1996年 技術研究所に転勤
1999年 LCEプロジェクトチームに配属
2001年 法政大学工学部土木工学科・専任講師
2003年 法政大学工学部土木工学科・助教授
2004年 法政大学工学部都市環境デザイン工学科・教授
2007年 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科・教授
2013年 公益社団法人日本コンクリート工学会・理事
2016年 一般社団法人ダム工学会・理事

●主な著書
「よくわかるコンクリート構造物のメンテナンス 長寿命化のための調査・診断と対策」日刊工業新聞社、2019年
「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいダムの本」日刊工業新聞社、2018年
「図解絵本 工事現場」監修、ポプラ社、2016年
「コンクリート崩壊」PHP新書、2013年
「見学しよう工事現場1〜8」監修、ほるぷ出版、2011年〜2013年
「コンクリートの初期ひび割れ対策」共著、セメントジャーナル社、2012年
「モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!」監修、アスペクト、2010年
「土木技術者倫理問題」共著、土木学会、2010年
「基礎から学ぶ鉄筋コンクリート工学」共著、朝倉書店、2009年
「コンクリート混和材料ハンドブック」(第6章第4節マスコンクリート)、エヌ・ティー・エス、2004年
「初期応力を考慮したRC構造物の非線形解析法とプログラム」共著、技報堂出版、2004年

目次

【第1章】土木とは?
1 工学と理学の違いは? 「土木工学は工学(実学)の第一人者」
2 土木って何ですか? 「土木の名前の由来」
3 地味にスゴイ! 土木の仕事 「土木は縁の下の力持ち」
4 土木の守備範囲はとてつもなく広い 「人々の生活の隣にいつもいる土木」
5 土木の歴史はとても古い 「人類の文明とともに歩んできた土木」
6 土木と建築の違いは? 「土木と建築が分かれているのは日本と韓国だけ?」
7 土木は国家繁栄の礎 「土木技術の発展が、災害から人々を守り、国を豊かにしていく」
8 土木と軍事工学 「土木は軍事工学から生まれた?」
9 土木が学問として扱われるようになったのは? 「土木工学の誕生」
10 土木工学を支える三力とは? 「土木工学の基礎となる構造力学、土質力学、水理学」

【第2章】土木の棲み分け
11 土木をどう切り分けるか? 「土木の基本となる分野は5分野!?」
12 土木が総合工学といわれる理由 「土木工学はあらゆる工学と繋がっている!」
13 土木と関連する分野は? 「土木はほとんどの分野と関わっている!?」
14 土木工学を学ぶために必要な科目は? 「数学と物理が基本だが、それだけでは土木を学べない」
15 土木の中の○○工学 「土木の中には多くの工学分野が存在している」
16 土木構造物と呼ばれるものは何か? 「土木で扱うのは面的に広がった構造物!?」
17 地上の建築と地下の土木 「土木が地下で建築が地上の区分は間違っている!?」
18 土木構造物にはどんな種類のものがある? 「土木構造物にはさまざまな分類方法がある!?」
19 土木に使われる材料 「土木構造物にはいろいろな材料が使われている!」

【第3章】土木計画
20 土木計画とは? 「何もない荒野に街を造るためには、最初に何をしますか?」
21 土木計画とはどんなことをするのか? 「土木事業や社会基盤整備の企画・計画」
22 土木の計画は誰がするのか? 「土木計画は誰のためにするのか?」
23 事業計画を立案するために必要なことは? 「事業計画の基本は、規模、費用、時間?」
24 土木計画の基本は地道なデータ集めから 「携帯の位置情報も活用」
25 土木構造物を造るための手順 「計画段階にはさまざまな手順を踏む必要がある」
26 土木計画を学ぶために必要な科目は? 「土木計画を学ぶには全ての学問分野を網羅的に学ぶ必要がある」
27 土木計画は過去・現在・未来を見据えて行う? 「過去の状況から現在の状況を判断し、将来の状況を予測」
28 国家百年の計は土木にあり!? 「国土計画、都市計画は国の未来を左右する」

【第4章】土木設計
29 設計とデザイン 「設計とはデザインすることである」
30 土木の設計は自然が相手! 「災害リスクの最小限化が設計のカギ」
31 設計は何をするのか? 「計画をいかに具現化するかが設計のカギ」
32 土木のさまざまな設計 「土木の設計と一口でいってもいろいろある」
33 概略設計と詳細設計 「構造物のコンセプトとディテールを決める」
34 土木設計を学ぶために必要な科目は? 「設計の基本は力学とCAD」
35 設計を行うのは誰か? 「設計コンサルタントは調査・設計のプロ集団」
36 土木設計の成果品 「設計図書は発注者・コンサル・施工者を繋ぐ重要な共有品」
37 設計者が施工者を管理? 「設計コンサルタントが現場での施工管理を行う」

【第5章】土木工事
38 土木の仕事はお天道様次第 「土方殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降ればよい」
39 土木工事の受発注 「工事の入札方式も大きく様変わり」
40 工事場所の調査 「工事を受注してもすぐに工事は始められない」
41 施工計画を立てる 「工事内容をしっかり吟味する」
42 現場事務所を建てる 「現場事務所の場所を探すのは大変」
43 工事の工程 「工事に対する工程管理は立場で違う」
44 土木工事で働く人たち 「土木工事にはいろいろな職種の人が働いている」
45 土木工事での施工の流れ 「施工は横に広がるか、下に進むかである」
46 土木工事で使われる機器 「土木工事で使用される機械は重機から長靴洗い機までさまざま」

【第6章】土木とメンテナンス
47 土木構造物の寿命 「土木構造物の寿命は明確ではない」
48 高齢化社会に向かう土木構造物 「供用後50年以上の膨大なインフラストックが急増」
49 メンテナンスを見据えた計画・設計・施工 「維持管理を考慮した計画が必要」
50 メンテナンスとライフサイクルコスト 「土木構造物はその構造物にかかるトータルコストで考える」
51 土木と医療は似ている? 「土木と医療現場で使用する機器はよく似ている?」
52 土木構造物の調査・診断 「調査・診断はメンテナンスの基本」
53 土木構造物の補修・補強 「補修・補強は構造物の機能回復のための治療」
54 土木構造物のターミナルケア 「物言わぬ構造物だからこそ、その仕舞いをどうつけるかが重要」
55 土木構造物のメンテナンスを支える人たち 「土木構造物は多くの人たちの手で守られている」

【第7章】土木の未来
56 時代のニーズに合わせて進化する土木 「人類の発展の陰には、土木の支えがあった」
57 宇宙に羽ばたく土木 「近い将来宇宙事業が土木の中心になる?」
58 土木事業は常に時代の最先端を行く! 「土木工事は先端技術をいち早く導入、活用している」
59 土木の基本はいつの時代も変わらない 「人々の生活を支えるという土木の使命」
60 土木が進むべき道 「土木事業に求められるもの」
61 土木と国際協力 「土木技術の輸出大国を目指して」
62 これからの土木工学 「土木工学は総合工学としての見直しを行うべきである!」
63 土木の未来 「100年後の土木はロボットが主役?」
64 土木の仕事は終わらない 「人々の日々の安心・安全を守る土木の仕事は未来永劫続きます」


【コラム】 土木に多大な影響を与えた人たち
●行基
●ジョン ・ スミートン
●古市公威
●アレクサンドル・ギュスターヴ・エッフェル
●ケーネンとヴァイス
●青山士
●吉田徳次郎と田中豊


参考文献
必見! 土木構造物一覧
土木技術に関する用語の解説
索引



はじめに

以前、「土木の入門書というものはありませんか」と知人から聞かれたことがありました。土木が取り扱う範疇は非常に広いことから、「土木全般を網羅的にかつコンパクトに書いたものはないです」と返答した記憶があります。ある特定の土木分野の専門書は数多くありますが、これ1冊読んだら土木のことがわかりますという本は、私自身これまでほとんど見かけたことがありませんでした。今回、これを読んだら土木のことがわかる本を執筆してくださいといわれた時は、正直お断りしようかと思ったくらいでした。
一方で、土木を目指している高校生の方たちや土木工学科(名称はいろいろありますが)に入学した大学1年生の新入生の人たち、土木のことを何も知らない方々にも土木というものをイメージできる本が以前から欲しいと思っていました。それでも網羅的に書こうとすると、百科事典か広辞苑のような非常に厚いものになってしまい、到底初心者や土木を知らない人には受け入れられない代物になってしまいます。他方、内容を絞りすぎると土木の扱う範囲が限定的なものと思われてしまいます。悩んだ末に、土木事業の流れに沿ったもの(企画・計画・設計・ 施工 ・ 維持管理)と、土木工学が取り扱う学問領域のことを書いてみることにしました。当然、個々の部分は非常に簡単な説明だけになってしまいますが、土木をイメージするのにはよいのでないかと思った次第です。出版社の方とも相談させていただき、当初『トコトンやさしい土木工学の本』というタイトルだったものを『トコトンやさしい土木技術の本』に変更しました。
土木全般のことについては、ほとんどの場合、計画系の高名な先生方が大所高所から土木とは何かということを述べられることが多いのですが、私のような建設会社に長年いて、大学でもコンクリート材料や施工法、維持管理のことを教えている身には大所高所から土木のことを語れませんので、私なりの立ち位置である下から見上げた土木について書いたつもりです。そういう意味では、今までなかった土木の本になっているのではないかと思っています。また、自分が土木のことを学び始めた頃のことを思い出しながら、その頃疑問に思ったりしたことを第1章と第2章にまとめてみました。今回、本書を執筆するために、大学にある学部・学科についてあらためて調べてみて、土木が関わる学問領域がどんどん広がっているのと、土木という学問分野が総合工学の範疇をはるかに超えて、文理融合した総合学問であることを認識しました。特に社会基盤(インフラ)のライフサイクル(建設から建て替えまで)を考える場合、工学の知識よりも法学、経済学、社会学、哲学などの分野が重要になってくるのを痛切に感じた次第です。
今回、本の執筆を依頼された際にコラムは土木に多大な影響を与えた人物について書こうと決めていました。ここでも、これまで土木の偉人というと役人の方たちを取り上げるものが多かったのですが、私なりの視点で人物を選んでみました。行基については、土木の使命とは何かを行動と共に示した人物であり、私が最も敬愛する総合技術者(もちろん僧侶なのですが、私から言わせれば土木技術者であり、医者であり、薬剤師であり、哲学者であり、農学者でもあります)の1人で、空海や最澄のようなスーパー僧侶と並び称される人物と思っています。ジョン・スミートンや古市公威のような土木工学の父と呼ばれる人物も是非みなさんに知ってもらいたいと思いました。現在の構造物のほとんどが鉄とコンクリートでできています。それを広く知らしめたケーネンとヴァイス、エッフェルの業績についても紹介したいと思いました。これまでの計画系が中心の土木技術者とは異なった実務者たちの功績をぜひ知ってもらいたいと思った次第です。また、日本に留まらず世界的に有名な土木技術者も数多くいることを知ってもらいたいと思い、青山士氏についてもコラムを書きました。さらに、現在の土木工学の礎を築いた吉田徳次郎博士と田中豊博士も今回是非紹介したいと思いました。もっと多くの土木の偉人がいますが、今回私が勝手に考えた執筆のテーマである下から見上げた土木の中で紹介したいと思った人たちです。
本の内容自体は、不十分なところが多々あると思っていますが、できるだけ多くの人に土木のこと、土木の魅力を知ってもらいたいと思って執筆しました。土木は本書の中でも書きましたが、時代とともに形を変えながら人々の日々の生活を安心・安全に、そしてより豊かな暮らしができるように陰ながら支えているということをみなさんに知ってもらえたら本書を執筆した意義が少しはあると思っています。本書を読んで土木のことを少しでも知ってもらえたら幸いです。

2021年2月
溝渕 利明

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