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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい天文学の本

定価(税込)  1,650円

著者
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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08115-6
コード C3034
発行月 2021年03月
ジャンル ビジネス

内容

天文学で扱うテーマは、天体や宇宙の位置、運動、構造、起源、進化など多岐に渡る。宇宙について解き明かされたこと、これから研究される注目のテーマなどを、予備知識なしに幅広く理解できる一冊。

山口弘悦  著者プロフィール

(やまぐち ひろや)
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所 宇宙物理学研究系 准教授
1980年 大阪府生まれ
2003年 京都大学理学部卒業
2008年 京都大学大学院理学研究科 博士課程修了・博士(理学)
理化学研究所基礎科学特別研究員、ハーバード・スミソニアン天体物理学研究所研究員(日本学術振興会海外特別研究員)、NASAゴダード宇宙飛行センター研究員を経て、2018年9月より現職。2019年4月より、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻准教授を併任。

専門はX線天文学・原子分光実験
超新星残骸や銀河団などのX線観測や、これらの天体を構成する高温プラズマを実験室で再現して、放射過程を調べる原子分光研究を進めている。SNSはやらない古典派の研究者。

主な受賞歴
文部科学省 文部科学大臣表彰 若手科学者賞
宇宙科学振興会 宇宙科学奨励賞
日本物理学会 若手奨励賞
NASA Exceptional Scientific Achievement Medal
NASA Robert H. Goddard Honor Awards

榎戸輝揚  著者プロフィール

(えのと てるあき)
国立研究開発法人 理化学研究所 開拓研究本部 理研白眉研究チームリーダー
1983年 北海道生まれ
2005年 東京大学理学部卒業
2010年 東京大学大学院理学系研究科 博士課程修了・博士(理学)
スタンフォード大学研究員(日本学術振興会海外特別研究員)、NASAゴダード宇宙飛行センター客員研究員(日本学術振興会特別研究員SPD)、京都大学白眉センター特定准教授を経て2020年1月より現職。

専門はX線天文学・高エネルギー大気物理学
宇宙最強の磁石星とも言われる謎の中性子星「マグネター」のX線観測や、X線観測を応用した雷や雷雲の高エネルギー大気物理学の研究を進めている。最近は、シチズンサイエンスを取り込んだ研究のあり方も模索している、SNSもやっている新しもの好きな研究者。

主な受賞歴
文部科学省 文部科学大臣表彰 若手科学者賞
科学技術・学術政策研究所 科学技術への顕著な貢献2018
宇宙科学振興会 宇宙科学奨励賞
日本物理学会 若手奨励賞
IOP Publishing The Physics World Top 10
Breakthrough 2017

目次

【第1章】宇宙を見る眼
1 宇宙からのメッセージ 「様々な波長の光」
2 宇宙を観る様々な方法 「光の性質と観測手段」
3 可視光天文学の発展 「肉眼観測から望遠鏡 ・ 分光器へ」
4 星の誕生現場を見通す赤外線天文学 「初めて見つかった「目に見えない光」」
5 雑音の研究から始まった電波天文学 「高い視力の秘訣は光の波動性」
6 幸運によって開花したX線天文学 「灼熱の宇宙を観る新しい眼」
7 最高エネルギーの光を観るガンマ線天文学 「米ソ冷戦がもたらした驚きの発見」
8 天から降る粒子を観る宇宙線天文学 「素粒子物理学の発展をもたらした謎の放射線」
9 幽霊粒子を捉えるニュートリノ天文学 「超低質量の粒子が伝える星の核心部」
10 時空のさざなみを聞く重力波天文学 「アインシュタインの最後の宿題」

【第2章】宇宙の大きさと距離
11 宇宙の階層構造と距離はしご 「宇宙の大きさを測る様々な「ものさし」」
12 宇宙の小さな家族「太陽系」 「階層構造の最小単位」
13 太陽系のご近所の星たち 「三角測量で距離を測る」
14 天の川銀河とマゼラン雲 「「標準光源」の発見」
15 島宇宙と局所銀河群 「シャプレーとカーチスの大論争」
16 1億光年先まで続く銀河の大家族 「銀河団と超銀河団」
17 膨張する宇宙 「ハッブル = ルメートルの法則」
18 届け宇宙の果てまで 「極小から始まった宇宙」


【第3章】太陽とその仲間
19 もっとも身近な恒星「太陽」 「水素の核融合が生み出す膨大なエネルギー」
20 リズムを刻む太陽と地球への影響 「黒点と活動周期」
21 太陽表面の巨大爆発「太陽フレア」 「磁気リコネクションと太陽コロナ」
22 恒星の自己制御システム 「自己重力系と「負の比熱」」
23 恒星の質量と寿命の関係 「HR図と質量光度関係」
24 太陽の行く末は? 「赤色巨星を経て白色矮星へ」
25 大質量星の後期進化 「太く短く生きる星々の劇的な晩年期」
26 双子や三つ子の星たち 「連星と質量輸送」
27 分子の雲から生まれる赤ちゃん星 「原始星と原始惑星系円盤」
28 太陽系外惑星とハビタブルゾーン 「灼熱のホットジュピターからハビタブルな惑星探しへ」


【第4章】コンパクト天体
29 不思議なコンパクト天体の世界 「多様性と法則性が織りなす極限天体」
30 電子の縮退圧が支える「白色矮星」 「量子の力で星を支える」
31 高速で自転する宇宙の灯台「中性子星」 「原子核密度を超えるコンパクト天体」
32 中性子星の動物園 「回転、磁場、降着、熱のエネルギーで輝く多様な星々」
33 宇宙最強の磁石星「マグネター」 「磁場エネルギーを解放して輝く中性子星」
34 一般相対性理論が導き出したブラックホール 「光さえも抜け出せない宇宙の黒い穴」
35 X線連星の「恒星質量ブラックホール」 「光も脱出できないブラックホールはなぜ輝くか」
36 銀河中心の「超大質量ブラックホール」 「ジェットも吹き出す銀河の中心のモンスター」
37 中間質量ブラックホールは存在するか? 「超大光度X線源(ULX)とULXパルサー」


【第5章】激しく変動する宇宙
38 定常な宇宙像から激動の宇宙観へ 「時間軸天文学の勃興」
39 大質量星の最期「重力崩壊型超新星」 「鉄コアの光分解とニュートリノ」
40 宇宙の巨大核融合爆弾「Ia型超新星」 「白色矮星の爆発と鉄の生成」
41 歴史に名を残す超新星と、その後の姿 「宇宙の花火、超新星残骸」
42 宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」 「継続時間の長いガンマ線バースト起源」
43 ブラックホール合体からの時空のさざなみ 「人類が初めて捉えた重力波」
44 金を生み出す大爆発、中性子星の合体 「短いガンマ線バーストとキロノバ」
45 宇宙遠方からの謎の高速電波バースト 「若く磁場の強い中性子星が起源か?」

【第6章】銀河と銀河団
46 天の川銀河の〝発見〟と構造 「近さゆえに見えづらい銀河の全体像」
47 様々な種族の銀河たち 「ハッブルの音叉図と銀河の進化」
48 銀河を構成する星間物質 「様々な顔を持つ水素ガス」
49 銀河の回転とダークマター 「見えない「何か」に支配される星と星間物質の運動」
50 フェルミバブルが伝える天の川銀河の過去 「昔は激しかった天の川銀河の中心核」
51 活動銀河核とクェーサー 「銀河全体の100倍の明るさで輝く銀河核」
52 銀河の活動がもたらす星のベビーブーム 「スターバースト銀河」
53 宇宙の大家族「銀河団」とダークマター 「銀河を閉じ込め、時空をも歪める巨大な重力」
54 銀河団を満たす高温プラズマ 「銀河を浮かべる灼熱の火の海」
55 誕生直後の宇宙の記憶をとどめる大規模構造 「「宇宙のクモの巣」から物質集積の歴史を探る」

【第7章】宇宙の始まりと終わり
56 ビッグバンの痕跡、宇宙マイクロ波背景放射 「元始、宇宙は火の玉であった」
57 宇宙の開闢「インフレーション」 「ビッグバン直前に起こった宇宙の急膨張」
58 ビッグバン時代の物質生成 「素粒子のスープからヘリウムの生成まで」
59 宇宙の晴れ上がりと暗黒時代の到来 「霧が晴れたら暗闇になった」
60 宇宙の未来 「加速する宇宙膨張とダークエネルギー」

【第8章】これからの天文学
61 天文学の未解決問題と将来への展望 「宇宙、物質、生命の起源と進化」
62 スペース ・マルチメッセンジャー 「超大質量ブラックホールの進化と初期宇宙の謎に迫る」
63 アストロバイオロジー 「地球外の生命と文明を求めて」
64 観測装置の高性能化 「より早く、より広く、より深く、より精密に」
65 天文学と社会の関わり 「天文学を取り巻く諸問題と社会貢献」
66 天文学から考える私たちの未来 「宇宙災害への対策」

【コラム】
●天文学者のお仕事
●星々の名前
●日食の思い出
●ノイズはノイズではない
●天文学データは人類の財産
●オープンサイエンスの新しい潮流
●科学者ガモフの遊び心
●人類、再び月へ行く?

参考文献
索引

はじめに

2019年8月某日、著者のひとり ・ 山口のもとに、畏れ多くもJAXA宇宙科学研究所(以下、宇宙研)名誉教授の的川泰宣先生からのお電話がありました。先生は以前、本書と同じ「トコトンやさしい」シリーズの「宇宙ロケットの本」をご執筆されており、同社の編集の方から、次に企画している「天文学の本」を書ける人物の紹介を頼まれた、とのこと。詳しくお話を伺うと、先生は当初、山村一誠さん(宇宙研准教授)に打診されたものの、山村さんが僕を売ったらしいことが判明。当時僕は宇宙研に着任して間もなく、いろいろな方から暇そうな奴だと見られていたようです。いや、決して暇ではなかったのですが、大先生からの依頼をお断りできるわけもなく、またそれなりに時間をかけても良いとのことだったので、お引き受けすることになりました。その際、前任地のNASAゴダード宇宙飛行センター時代に苦楽を共にした榎戸輝揚さんを共著にお誘いし、山口の不得意な分野を補ってもらうことにしました。これが、本書執筆に至った経緯です。

本題に入りましょう。本書は全8章で構成されます。第1章では、観測天文学の手段として、様々な波長の光や、光以外の媒体(メッセンジャー)が使われることを概観します。天文学に関する他の入門書や児童向けの図鑑を開くと、この手の話題は最後に置かれることが多いようです。しかし本書ではあえて、この部分を最初に持ってくることにしました。「人間の目に見える宇宙だけが天文学の観測対象ではない」という事実を、初めに知っていただきたかったからです。これは、観測天文学を生業とする著者2人のこだわりなのかもしれません。
続く2章は、「宇宙の大きさ」を実感いただくことを目的とします。宇宙には、太陽系、星団、銀河、銀河団など、スケールの異なる様々な階層構造があります。それらがどのような経緯で認識されるに至ったのか。そして、各階層の大きさや天体までの距離はどのような方法で測られるのか。これらをやさしく解説します。
3章からは、いよいよ個別の天体や天体現象の紹介に入ります。まずは身近な太陽をはじめ、様々な質量を持つ恒星の誕生と進化について解説します。4章では、白色矮星、中性子星、ブラックホールといった、極限的な高密度天体が登場します。5章では、超新星爆発やガンマ線バースト、連星合体など、星の終焉を彩る様々な突発現象を紹介します。
6章からは、宇宙の階層構造を上位へと進み、銀河や銀河団の世界を概観します。銀河や銀河団は、無数の恒星に加えて、星間ガスや高温プラズマ、ダークマターなど、様々な要素で構成される天体です。また、各銀河の中心には太陽の数十万倍から数百億倍もの質量を持つ巨大なブラックホールが存在し、時に高い活動性を示します。本章では、それらの発見の経緯や理解の現状について、やさしく解説します。
7章は、個々の天体ではなく、宇宙そのものの誕生と進化、および宇宙の将来に関する話題(いわゆる宇宙論)を、短くまとめています。
8章では、天文学の未解決問題についておさらいし、代表的な将来計画や、これからの天文学の方向性について概観します。
 
以上のように本書は、宇宙に存在する様々な天体、あるいは現代天文学の諸問題を、最新の観測事例の紹介を交えつつ、できる限り網羅的に扱うように努めました。しかし、完璧ではありません。例えば、身近な太陽系の話題は、思い切って1項目(見開き1ページ)に抑えました。近年の天文学分野において極めてホットな「星形成」や「系外惑星探査」の話題も、紙面の都合上、大幅に割愛しています。また、著者が2人ともX線天文学を専門とするため、各天体の紹介内容にも多少の偏りがあるかもしれません。その点についてはご理解の上で読み進めていただければ幸いです。

さて、本書の出版を目前に控えた2021年2月現在、世界は1年以上に及ぶ未曾有の「コロナ禍」に見舞われています。奇しくもこの事態により、人々の間に「コロナ」という単語が悪い意味で浸透しました。一方、天文学者にとっての「コロナ」とは、太陽や恒星の上層大気に相当する、美しくも謎に満ちた重要な研究対象です。本書を読み進めていただくうちに何度か「コロナ」が登場しますが、間違ってもウイルスのことだとは思わないでください。一刻も早く世界がこの悪夢から解放され、人々が豊かで文化的な暮らしを取り戻すと同時に、美しい天体現象を意味する本来の「コロナ」が再認識されることを願ってやみません。

最後になりますが、本書の執筆にあたり有用な助言をいただいた多くの方々と、長らくお付き合いいただいた編集の岡野晋弥さんに、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

山口弘悦・榎戸輝揚

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