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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい電線・ケーブルの本

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08097-5
コード C3034
発行月 2020年11月
ジャンル ビジネス 電気・電子

内容

電気・通信分野では多くの種類の電線やケーブルが用いられている。材料や部品の柔軟性や耐久性は非常に重要で、不適切な取り扱いや劣化を見落とすと安全性にも関わる。本書では、この電線とケーブルの材料や種類、災害対策、補助材、検査・保守について、役立つ情報を紹介する。

福田 遵  著者プロフィール

(ふくだ じゅん)
1979年3月東京工業大学工学部電気・電子工学科卒業
同年4月千代田化工建設㈱入社
2002年10月アマノ㈱入社
2013年4月アマノメンテナンスエンジニアリング㈱副社長
(社)日本技術士会青年技術士懇談会代表幹事、企業内技術士委員会委員などを歴任
日本技術士会、電気学会、電気設備学会会員
資格:技術士(総合技術監理部門、電気電子部門)、エネルギー管理士、監理技術者(電気、電気通信)、宅地建物取引士、ファシリティマネジャーなど

著書:『トコトンやさしい熱利用の本』、『トコトンやさしい電気設備の本』、『トコトンやさしい発電・送電の本』、『トコトンやさしい実用技術を支える法則の本』、『技術士第一次試験・第二次試験「電気電子部門」受験必修テキスト 第4版』、『技術士第一次試験「基礎科目」標準テキスト 第4版』、『例題練習で身につく技術士第二次試験論文の書き方 第5版』、『技術士第二次試験「技術士第二次試験「電気電子部門」過去問題〈論文試験100問〉の要点と対策』、『技術士第二次試験「総合技術監理部門」標準テキスト』、『電設技術者になろう!』(日刊工業新聞社)等

目次

第1章 どんなものが電線材料となっているのか
1 電気を長距離に大量に送るために「電力損失を少なく安く送る条件」
2 長い線状になるための条件は?「電線材料が持つべき特性」
3 電線断面を有効に利用するには「表皮効果による効率低下への対策」
4 導電材料に使われている№1「銅線とその合金線の活用」
5 導電材料に使われている№2「アルミ線とその合金線の活用」
6 使いやすい電線を作るための工夫「電線の断面を見てみると」
7 線材は隔離されなければならない!「電気的な絶縁を実現する素材」
8 高速・大容量通信を担う細い線材「光で情報を送る線材の特性」
9 外部からの影響に立ち向かうために「ケーブルの外側被膜の目的」

第2章 裸でがんばる電線たち
10 遠くの発電所から電気を送る「送電線と送電鉄塔の構成」
11 送電鉄塔頂部の余った電線は何?「架空地線の役割」
12 環境と共生するための工夫「環境調和型の送電線」
13 雪にも負けず風にも負けず「自然現象に立ち向かう助っ人たち」
14 人の移動を担う電線たち「電気車に電力を安定供給する仕組み」
15 常に張り詰めた状態を維持するために「張力維持のサポート材たち」
16 利便性と安全性を両立させるために「安全を確保するための基準」
17 動物との共生を実現するための策「電気さくの設置は特別な許可」
18 裸電線路を実現するセラミックス「絶縁距離を長くする工夫」

第3章 電力と信号を送るケーブルたち
19 都市部の電力幹線を担うケーブル「地中送電線用のケーブル」
20 ケーブルを構成する材料たち「ケーブル材料の役割確認」
21 電柱での電線の使い分け「屋外配電用電線の種類」
22 屋内で使われる電線たち「低圧回路用の絶縁電線」
23 移動する機械に電気を伝える電線「キャブタイヤケーブルの特性」
24 一般の人に最も身近な電線たち「ビニルコードとゴムコード」
25 遠隔から確認して指示するために「制御用と計装用のケーブル」
26 EMケーブルって何?「環境配慮型のケーブル」

第4章 情報通信社会を支えるケーブルのいろいろ
27 情報をメタルで交信する「対よりと星形カッド」
28 屋内使用の情報伝送用ケーブル「FCPEVとUTP」
29 大量情報伝送のために「光ファイバケーブルの構造」
30 環境から光ファイバを保護するがい装「海底光ファイバケーブルの構造」
31 4K・8K放送を見るために「同軸ケーブルの特性」
32 地下鉄で携帯電話が使える訳「漏えい同軸ケーブルの効果」

第5章 巻線と使用環境に対応した電線たち
33 巻かれて生きる電線たち「電気機器内でひそかに働く電線」
34 樹脂を焼き付けられた電線たち「いろいろなエナメル線」
35 火事でも設備を動作させるための電線たち「耐火電線と耐熱電線」
36 高温環境を扱う電線たち「MIケーブルとヒーティングケーブル」
37 移動体に電力や信号を送る電線の構造「エレベータケーブルとクレーンケーブル」
38 自動車を安全・快適にする電線たち「ワイヤーハーネスの環境対応」
39 のりものに使われている電線たち「交通機関用電線の特徴」
40 建設現場における省力化策「プレハブ化とユニット化」

第6章 身を挺して電線を守る配線材たち
41 電線を守る保護管たち「堅牢な金属管の特性」
42 美観向上のための電線管「柔軟性が高い合成樹脂管」
43 電線地中化に貢献する配管「波付硬質合成樹脂管」
44 金属管は占積率に注意しよう「金属電線管太さの選定規程」
45 流せる電流の制限「ケーブルの許容電流」
46 電線管工事のための付属品たち「ボックス類と接続部材類」
47 埋設される電線を保護する方法「地中電線路の方式」
48 大量のケーブルを配線するために「ケーブルラックの計画」
49 防火区画を貫通する場合の対応「貫通部防火措置材の適正使用」
50 屋内配線の隠ぺい方法「建築資材も使った配線路」
51 低圧屋内配線方法のいろいろ「施設場所による工事の可否」
52 電柱の電線に対する規制「安全を高めるための基準」

第7章 電線・ケーブルの布設工事とは
53 鉄塔に送電線を架線する「延線工事と緊線工事」
54 ケーブルを布設する場合の配慮「管路配線とケーブルラック配線」
55 ケーブル布設にはやさしさを「布設工事の気遣いポイント」
56 海底光ファイバ布設は大プロジェクト「船からケーブル布設する技術」
57 電線同士または機器と接続する際の注意「接続および端末処理」
58 振動を考慮した施工とは「耐震施工と振動機械への結線」
59 接地の目的を知り適切な選択を!「ケーブルと防護物の接地」

第8章 維持管理とリサイクルの手法
60 電線・ケーブルの異常箇所を発見する「巡視と事故点測定」
61 電線・ケーブルの健全性の確認方法「劣化診断の手法」
62 供給を維持しながら工事をするために「電力の安定供給と感電の回避」
63 生物の習性からケーブルを守る「咬害や繁殖習性との戦い」
64 ケーブル寿命とリサイクルの状況「環境配慮の現状」

【コラム】
●ケーブルも電線のうち
●「汽車に乗る」から「電車に乗る」へ
●電工ドラムは正しく使いましょう!
●5Gも8Kもケーブルあってこそ
●ショーケンで傷(体)験?
●凡ミスでボンと火を噴く電気の怖さ
●ソーメン流しで冷汗を流し
●カタログから学んだ技術知識

参考文献
付録資料:ケーブルの品名と記号

はじめに

 多くの技術者にとって、電線・ケーブルは業務に欠かせない資材であると思いますが、意外と知らないことが多い資材でもあります。また、電線・ケーブルは基本的に長尺の資材であるため、図面への表記に苦労をするだけではなく、種類の多さから選択に苦労をする資材でもあります。しかも、強電関係の仕事をしている技術者にとっては、結構な重さがある電線・ケーブルを扱わなければならないため、布設工事には苦労を強いられます。それだけではなく、ケーブルを布設するためには、布設場所の事前準備や多くの補助材の用意が必要となりますので、適切な資材が必要数量用意できていないために工事を中断した経験がある技術者は多いと思います。著者も、プラント電気設備の設計で、電線・ケーブルに関わる業務に費やした時間数は多かったと記憶しています。特に電力ケーブルは、調達費用が多くかかるだけでなく、納期も長いので、不足すると工期に大きな遅延を生じますが、余っても資材費の無駄になりますので、プロジェクトマネジャーからの叱責を覚悟しなければならない場合もあります。
 一方、機器や設備の設計・製造を行っている技術者にとっても、電線やケーブルの特性が機器の特性に影響を及ぼすだけではなく、製品のデザインにも影響する場合もありますので、気を遣う資材であると思います。軽量化とコンパクト化を求められる自動車においても、電子化や電動化によって配線数は増加の傾向を示しています。自動車等で使われる場合は、電線にとって厳しい使用環境下となりますので、状況に応じて適切に選択されなければ、不具合につながる危険性を持っています。また、エレベータなどに使われるケーブルや、電気鉄道に用いられる電気線などは、生活で身近に使われているにもかかわらず、一般の人には電線の特性や安全性確保の方策についてはあまり知られていません。そういった背景から、広く電線について知ってもらおうと、2018年に、一般社団法人日本電線工業会が11月18日を「電線の日」としました。残念ながら、それもあまり知られていないようですが…。それはともかくとして、電線・ケーブルは社会維持に欠かせない資材であるのは間違いない事実であると思います。
 電線・ケーブルは、目に見えない電気や情報を伝える資材で、しかも、その多くが長期にわたって使用されるものであることから、安全や利便性を損なわない社会を実現するために、多くの法律や基準・規則が定められています。技術者は、そういった知識を十分に持っていないと、不適切な材料を選択したり、誤った使用をしてしまう危険性があります。その結果、人や社会に安全面で脅威を与える危険性もありますし、自然現象の発生によって使用できなくなる可能性もあるため、社会生活に大きな支障を及ぼす資材と考える必要があります。そのため、さまざまな自然現象を想定して、技術者はどういった対応をしなければならないかを認識していただきたいと思います。なお、電線・ケーブルに対しては、安全・安心な状態を確保するために多くの補助材が準備されています。技術者は、それらの目的や特性を的確に理解して、効果的な電設資材を適切に用いる必要がありますが、その資材の種類の多さや使用方法の多様さから、知らず知らずに不適切な施工が行われている場合も少なくありません。そういったものをすべて説明することは難しいのですが、技術者はどういった点に注意をしていかなければならないか、また、どういった資料を勉強しなければならないかを知ってもらえればと思います。本著を読んで、電力や電気設備に関係する技術者だけではなく、交通分野や電気製品・設備などに係わる技術者に、少しでも電線・ケーブルに興味を持ってもらえれば幸いです。ここに紹介した内容は、電線やケーブルに関する基本的な事項のみで、電線・ケーブルの種類の面では、1割にも満たない少ない範囲しか紹介できていません。しかし、多く使われている電線やケーブルについてはできるだけ広い分野について紹介しています。なお、電線やケーブルに関して広範囲に示した市販資料は残念ながら存在しません。そのため、今回紹介した内容は、メーカー等のカタログから多くのヒントやデータを得ております。そういったメーカーの資料については、巻末にいくつか紹介しておきましたので、より詳しく知りたい方は、関連するメーカーの資料を直接参照して、より深く勉強されることをお勧めします。著者もエンジニアリング会社勤務時代には、電線メーカーの技術者から直接教えをいただき、業務に生かさせていただきました。また、大口径のケーブルの接続作業や端末処理作業については、電線メーカーから専門の技術者を現場に派遣していただき、その作業を自分の目で確認したことを覚えています。世の中には、その仕事や製品に特有の電線やケーブルが求められており、現在でも個別仕様の電線やケーブルは無数に存在します。多様な電線やケーブルを適切に製造し、管理している電線メーカーの技術者には頭が下がる思いです。人の目に触れないように施工されている電線が多いのですが、その陰に、人に知られることなく、新たな材料の開発や電線構造の設計に携わっておられる多くの技術者がおられることを知っていただきたいと思います。また、電線やケーブルに係わる技術者の皆様に感謝申し上げるとともに、今後のさらなるご活躍を祈念しつつ、多くの読者の皆さまにお読みいただけることを期待しております。

 最後に、このような機会を与えてくださった、日刊工業新聞社出版局の鈴木徹氏に心から感謝申し上げます。

 なお、本文中に略記する基準・規定等は下記の内容を示します。
 【技術基準】:電気設備技術基準
 【電技解釈】:電気設備技術基準の解釈
 【解釈の解説】:電気設備の技術基準の解釈の解説(経済産業省)
 【内線規程】:JEAC8001(Japan Electric Association Code)

 2020年9月
福田 遵

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