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単位操作を理解して生産性を向上!
食品工場の生産技術

定価(税込)  3,300円

著者
サイズ A5判
ページ数 301頁
ISBNコード 978-4-526-08078-4
コード C3034
発行月 2020年08月
ジャンル 生産管理

内容

食品製造業は深刻な人手不足で、機械化・自動化が強く望まれているが、食品製造業には衛生管理などの面から難しさがある。この本では、食品工場特有の事情を考慮した技術で生産性を向上させ、機械化・自動化を実現するノウハウを豊富な事例を通して解説する。

弘中泰雅  著者プロフィール

(ひろなか やすまさ)
テクノバ株式会社 代表取締役
www.technova.ne.jp mailbox@technova.ne.jp
経歴
1976年 鹿児島大学大学院水産研究科修了
中堅食品企業にて研究室長、製造課長歴任
1988年 農学博士(九州大学)、
船井電機にて食品課長、電化事業部技術部次長(技術責任者)
世界初の家庭用製パン器の開発に携わる 功績により社長表彰
2000年 テクノバ株式会社設立 生産管理ソフト「アドリブ」開発
食品工場等の指導多数 ISO22000審査業務
2017年 農林水産省 食品産業戦略会議専門委員
2018年 農林水産省 食品産業生産性向上フォーラム企画検討委員長、
農林水産省 食品産業戦略会議専門委員
受賞歴 ベストITサポーター賞(近畿経済産業局長)受賞
日本生産管理学会賞受賞 
日本穀物科学会賞受賞
所属学会 日本生産管理学会理事、標準化研究学会、日本食品科学工学会、
日本穀物科学研究会理事 食品産業研究会主宰
主な執筆 弘中泰雅著、名古屋QS研究会編:よくわかる現場シリーズ 異常管理(中部標準化懇話会(SCSC)、2010)、よくわかる「異常管理」の本(日刊工業新聞社、2011)、ムダをなくして利益を生み出す 食品工場の生産管理(日刊工業新聞社、2011)、 生産性向上と顧客満足を実現する 食品工場の品質管理(日刊工業新聞社、2012)、モノと人の流れを改善し生産性を向上させる!食品工場の工程管理(日刊工業新聞社、2013)、食品工場の経営改革 こうやれば儲かりまっせ!(光琳、2013)、“後工程はお客様”で生産効率をあげる!食品工場のトヨタ生産方式(日刊工業新聞社 2015)、“ムダに気づく”人つくり・しくみつくり 食品工場の生産性2倍(日刊工業新聞社 2016)、食品工場の生産管理 第2版(日刊工業新聞社、2018)、月刊食品工場長(日本食糧新聞社)、食品工業(光琳)等 日本生産学会誌、日本食品工業学会誌、その他技術誌等多数

目次

第Ⅰ章 食品工場の生産技術とは
Ⅰ-1 生産技術とは
Ⅰ-1-1 生産技術の種類
Ⅰ-1-2 モノづくりの基盤技術
Ⅰ-1-3 固有技術・要素技術
Ⅰ-1-4 生産方式と生産技術
Ⅰ-1-5 生産技術の役割
Ⅰ-2 食品工場の生産特性と生産技術
Ⅰ-2-1 高い生産技術力は開発を助ける
Ⅰ-2-2 食品工場の生産技術力不足がスケールメリットを縮小する

第Ⅱ章 食品製造業の生産の特徴と低生産性の原因
Ⅱ-1 日本の食品製造業が低生産性に至った原因
Ⅱ-1-1 低生産性に至った歴史的要因
Ⅱ-1-2 食品製造業の生産特性と組織がもたらす低生産性
Ⅱ-2 食品製造業の実稼働率低下を招いている原因
Ⅱ-2-1 多品種少量生産
Ⅱ-2-2 バッチ(回分)型生産
Ⅱ-2-3 オーブン等の焼成温度と時間
Ⅱ-2-4 生産ステップ(工程)毎の生産処理速度の差
Ⅱ-2-5 清掃と洗浄
Ⅱ-2-6 包装作業でのラインストップ
Ⅱ-2-7 生産効率を無視した納期順の生産
Ⅱ-2-8 生産工数を無視した製品開発(設計)
Ⅱ-2-9 非効率な個人完結型作業
Ⅱ-2-10 納品不足分のペナルティ回避のための過剰生産
Ⅱ-2-11 遅い受注時間による見込み生産
Ⅱ-2-12 工場入場時の過剰食品衛生ルーチンによる実労働時間減少
Ⅱ-2-13 人手不足
Ⅱ-3 食品製造業の実稼働率低下の原因に対する改善策

第Ⅲ章 食品製造の生産技術を支える食品化学工学の要点
Ⅲ-1 食品化学工学とは?
Ⅲ-1-1 原料の特殊性
Ⅲ-1-2 製品の特殊性
Ⅲ-1-3 加工上の特殊性
Ⅲ-1-4 平衡
Ⅲ-1-5 移動速度
Ⅲ-2 液体の流れ
Ⅲ-2-1 層流と乱流
Ⅲ-2-2 流路の摩擦損失
Ⅲ-3 食品の輸送
Ⅲ-3-1 流体食品の輸送
Ⅲ-3-2 ポンプ
Ⅲ-3-3 粉粒体食品の輸送

第Ⅳ章 食品製造の生産技術を支える単位操作の要点
Ⅳ-1 食品の熱処理
Ⅳ-1-1 伝熱の機構
Ⅳ-1-2 熱伝導
Ⅳ-1-3 熱対流
Ⅳ-1-4 熱放射
Ⅳ-1-5 クッキング
Ⅳ-1-6 殺菌
Ⅳ-1-7 凍結と解凍
Ⅳ-2 食品の脱水、蒸発、乾燥
Ⅳ-2-1 食品の脱水
Ⅳ-2-2 食品の蒸発濃縮
Ⅳ-2-3 食品の乾燥による脱水
Ⅳ-3 食品の固液抽出・限外沪過
Ⅳ-3-1 固液抽出
Ⅳ-3-2 限外沪過
Ⅳ-4 食品の固液分離
Ⅳ-4-1 沪過
Ⅳ-4-2 圧搾
Ⅳ-4-3 遠心分離
Ⅳ-5 食品の粉砕・分級・混合/捏和・造粒
Ⅳ-5-1 粉砕
Ⅳ-5-2 分級
Ⅳ-5-3 混合と捏和
Ⅳ-5-4 造粒
Ⅳ-5-5 乳化
Ⅳ-6 食品の包装方法
Ⅳ-6-1 食品包装機

第Ⅴ章 開発から量産化への流れと生産技術
Ⅴ-1 企画・開発・設計段階
Ⅴ-1-1 デザインレビュー(DR・設計審査)
Ⅴ-1-2 FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)
Ⅴ-1-3 FTA(故障の木解析)
Ⅴ-2 工程計画
Ⅴ-2-1 生産に必要な技術
Ⅴ-2-2 工程計画の進め方
Ⅴ-2-3 工程計画の作成
Ⅴ-3 工程設計
Ⅴ-3-1 工程設計の立て方
Ⅴ-3-2 工程設計とムダの排除
Ⅴ-4 設備管理
Ⅴ-4-1 設備導入のステップ
Ⅴ-4-2 設備の効率化
Ⅴ-4-3 VE(Value Engineering)
Ⅴ-4-4 工程設計と5(7,8)S
Ⅴ-5 量産試作と評価段階
Ⅴ-5-1 購入材料調達
Ⅴ-5-2 量産試作と評価
Ⅴ-6 生産段階(生産・検査)
Ⅴ-6-1 品質確認
Ⅴ-6-2 異常処置
Ⅴ-6-3 設備・冶工具・検査機器管理
Ⅴ-6-4 検査
Ⅴ-6-5 改善活動
Ⅴ-6-6 工数低減のアプローチ 工数低減の基本
Ⅴ-7 生産技術の人作り・組織作り
Ⅴ-7-1 生産活動の主体である人の集団としての組織
Ⅴ-7-2 生産技術部門の人と組織

第Ⅵ章 
Ⅵ-1 しらすの自動計量包装
Ⅵ-2 水産工場の不良率低減
Ⅵ-3 数の子の整列作業へのコンベア導入
Ⅵ-4 カニの身だし刃調整
Ⅵ-5 和菓子工場の個人完結作業からコンベアによる分業への移行
Ⅵ-6 コンベア高さ差減少によるロスの減少と作業効率向上
Ⅵ-7 鯖寿司のコンベア乗り移り
Ⅵ-8 冷凍食品工場の成型トレーの洗浄と整列積上げ
Ⅵ-9 通路の明確化と生産ラインのレイアウト
Ⅵ-10 卵焼き・錦糸卵の生産効率
Ⅵ-11 メロンパン押し型 くるみパンカット
Ⅵ-12 工場の過剰な湿度を防ぐ―除湿機
Ⅵ-13 寿司工場のレイアウト
Ⅵ-14 フィリングトッピングマシン
Ⅵ-15 段差乗り越え台車
Ⅵ-16 チョコトッピングガイドレール
Ⅵ-17 粉払い刷毛装置
Ⅵ-18 成形サイズ合わせ(レーザーポインターの活用)
Ⅵ-19 粉糖振り掛けトッピング装置
Ⅵ-20 オイル噴霧器
Ⅵ-21 天板回転装置
Ⅵ-22 発酵を助ける加湿装置
Ⅵ-23 卵塗り仕上げコンベア 自動霧吹き
Ⅵ-24 脈流生産改善
Ⅵ-25 成型不良指摘装置
Ⅵ-26 夾雑物除去台車
Ⅵ-27 錦糸卵の厚さを均一に
Ⅵ-28 ロータリー自動給袋包装機の投入かごガイド
Ⅵ-29 ドーナッツ水付け器
Ⅵ-30 フォンダン塗り機
Ⅵ-31 事例をまとめてみると

食品製造フローチャート
おわりに
参考文献
索引

はじめに

 皆さんは、食品工場の生産性を向上させようと日夜懸命に考えておられると思います。そして、食品工場の生産性向上を成し遂げるには、社員の熱意はもちろん大切ですが、熱意だけでは達成に無理があることは先刻お気付きの通りです。生産性向上には意欲に加えてそれを実現するための具体的な工学的手段が必要なのです。そしてその工学的手段は大きく2つの領域に分かれます。
 1つは人・機械設備・冶工具・材料・仕掛・在庫・運搬などから構成される、生産システム全体の効率化を図る所謂インダストリアル・エンジニアリング(IE・経営工学)と呼ばれるものです。これまでの拙著「食品工場シリーズ」は主に1つ目のこのIEの領域を扱ってきました。
 そして、2つ目の工学的手段とは原材料から製品を作る各個別工程において、機械設備等の設計や改善を担う製品設計情報などの量産前の活動と、量産中の機械設備や冶具や製造設備等の改善活動など設備等の効果的活用技術に関するものです。これらは固有技術であり量産前と量産中の両方の活用を合わせて一般には「生産技術」と呼ばれ本書で取り上げるものです。
 昨今の日本における人手不足の問題は食品工場もその例外ではなく、この程のコロナウイルス騒動もあり、益々外国人労働者の採用も難しくなる現状にあって、食品工場も自動化やロボット導入、AIやIoT等を生産活動に早急に取り入れ生産性を向上しなければなりません。しかし現状の食品工場のままこれらの方法を単に導入しても、食品工場特有の要因により、多くの食品工場でうまく機能しない可能性が高いと著者は考えています。この食品工場特有の要因を改善しなければ食品工場の生産性向上はありえないのです。
 このことを農林水産省の食品産業戦略会議や全国8ヶ所の食品産業生産性向上フォーラム等で訴えてきました。食品工場特有の要因とは①食品製造業の保守的体質、②経営工学と生産技術への不理解、そして③バッチ生産や脈流生産等の食品製造業の特異な製造特性が食品工場の効率化を阻害している、です。①、②については食品製造業の成り立ちに関わる点が多く、前著「食品工場の生産性2倍」にその状況を書きました。本著で述べる③食品製造業の特異な製造特性による障害を克服するために必須の技術こそがまさに生産技術であると考えています。自動化やロボット等導入の成果を上げる為には、多品種少量生産やバッチによる脈流生産から可能な限り1個流しや安定したタクトタイムの整流生産ができるように、工場の生産技術力を用いて食品生産工程を改善しなければならないのです。
 皆さんにとって恐らく「生産技術」という言葉は余り馴染みのないものではないでしょうか。著者も生産技術という言葉をはじめて意識したのは、食品企業から電機企業に移ってからだったと記憶しています。その企業では生産技術という言葉は日常的に使用されていました。その「生産技術」とは辞書的には生産工程に関わる技術で、開発部門で開発された製品を製造する際、生産をより効率的に行う為に必須で重要な技術とされています。たとえ開発段階でどんなに魅力的な新製品が開発されても、高品質な製品を工場で採算が合うように、効率良く生産できなければ経営的に成り立ちません。また生産開始後も生産設備などの改善は永遠に続けなければならず、生産技術はこれらの改善活動を支える技術でもあります。このように生産技術は効率的生産をする企業経営に必須な技術なのです。
ところが量産に必須な技術であるにも関わらず、生産技術の書物は案外と少なく、あっても自動車や電機等のディスクリート生産を前提としたものです。プロセス型製造業の生産技術に関するものは見当たりません。まして食品のようなレオロジカルな不安定な物性の物質を原料とし、バッチ・プロセス生産における生産技術について記述したものは著者の知る限りありません。そのため生産性向上に悩む食品工場の為に食品工場で活用できる生産技術の本を書く必要を強く感じていました。
 食品工場において生産技術の考え方や活用は自動化やロボット導入に必要な生産ライン改善に必須な前提条件です。しかし当事者である多くの食品工場では生産技術の理解もまた組織の確立も含めてその実力が現実的に不足しています。
 また、他方ロボット導入を支援する側のSIer*には、食品製造に関する現場の技術的知識が不足しています。生産技術力の不足している食品工場と食品製造に関する知識の不足しているSIerとの関係の現状を踏まえて、両者の溝を埋める必要があると思い本書を書くことにしました。
 生産技術といえば機械や電気の知識や技能が思い浮かびますが、本書ではプロセス型製造業である食品生産に必須な食品化学工学についても述べてみました。
 また、この食品化学工学に基づく、物質やエネルギーの物理的変化・伝播における反応、分離・生成、蒸留・抽出、吸収、吸着、膜分離、乾燥、再結晶、熱や運動量の増減、混合、粉砕、沪過等の単位操作の組み合わせで食品製造工程は成り立っているので、この単位操作を理解することで当事者である食品工場の生産技術力を増強するとともに、支援する側のSIerに食品製造に関する知識を補填してもらい両者の間の溝を浅くし、相互に理解し合い人手不足解消を目指すラインの新設・改良あるいは自動化・ロボット導入を促進させることができるのではないかと考えています。本書が食品工場の生産性向上に少しでも貢献できれば幸甚です。どうぞご活用下さい。

2020年8月
弘中泰雅

*SIer:システムインテグレーション(SI)を行う業者でシステム構築の際、顧客の業務を把握分析し、課題解決するシステムの企画・構築・運用支援等の業務を請け負う。

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