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図解よくわかる植物細胞工学
タンパク質操作で広がるバイオテクノロジー

定価(税込)  2,420円

著者
サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-08074-6
コード C3043
発行月 2020年07月
ジャンル 化学

内容

遺伝子組換やゲノム編集などバイオテクノロジーにより生まれた植物の成り立ちやユニークな機能をやさしく説く。タンパク質の書き換えによる細胞の機能強化の様子を図解詳述。これらの技術で生まれた植物の大型化、除草剤の改良、燃料増産などの例も多数紹介する。

富永基樹  著者プロフィール

(とみなが もとき)
早稲田大学准教授
1971年 和歌山県生まれ
1995年 姫路工業大学理学部 卒業
2000年 姫路工業大学大学院理学研究科 修了 博士(理学)取得
2000年 郵政省通信総合研究所 専攻研究員
2003年 独立行政法人通信総合研究所 日本学術振興会 特別研究員
2006年 東京大学医科学研究所 特任助教
2007年 理化学研究所 和光中央研究所 研究員
2011年 理化学研究所 基幹研究所 専任研究員
2011年 科学技術振興機構 さきがけ研究者(兼任)
2012年 理化学研究所 きぼう船内実験チーム(兼務)
2014年 早稲田大学 教育・総合科学学術院 専任講師
2017年 早稲田大学 教育・総合科学学術院 准教授

目次

まえがき

第1章 細胞は生命の基本単位
1.1 細胞は生命の基本単位(生命の3条件)
1.2 DNA、染色体、ゲノム、遺伝子
1.3 タンパク質
1.4 生体膜
1.5 遺伝子からタンパク質へ
1.6 40億年前:細胞の誕生(原核細胞)
1.7 最初の生物は酸素が苦手だった(嫌気性細菌)
1.8 酸素を吐き出すシアノバクテリアの誕生(27億年前)
1.9 酸素を呼吸しエネルギーを作れる生物の誕生(好気性細菌)
1.10 細胞の大進化:大きくて複雑な真核細胞の誕生
1.11 細胞内の仕切りを増やし能力アップ
   (いろいろな細胞小器官の獲得)
1.12 動物・植物の起源
   (細胞内共生によるミトコンドリアと葉緑体の誕生)
1.13 細胞内の輸送システム
1.14 細胞内の交通ネットワーク
1.15 多細胞化

第2章 植物の進化
2.1 陸上進出(灰、紅、緑から緑が選ばれた)
2.2 植物が陸上に上がるための壁(乾燥、光、重力)
2.3 植物を乾燥から守る(クチクラ層と気孔の発達)
2.4 光から守る(光耐性)
2.5 重力から守る(体を支える細胞壁)
2.6 セルロースを規則正しく紡ぎ出し細胞の形を決める仕組み
2.7 動物と全然違う植物細胞の成長の仕組み
2.8 植物の細胞が形を作る仕組み(拡散成長と先端成長)
2.9 植物の細胞は壁を作って分裂する(フラグモプラスト、細胞板)
2.10 壁があっても細胞はつながっている(原形質連絡)
2.11 光を目指して立ち上がった
2.12 植物の血管、維管束(道管)
2.13 植物の血管、維管束(篩管)
2.14 子孫を残す仕組みの進化
2.15 植物と動物の生き方
   (動かない独立栄養生物、動く従属栄養生物)

第3章 植物が発達させた特殊な機能
3.1 光からエネルギーを得る仕組み(光合成)
3.2 植物が光を感じる仕組み
3.3 光から逃げる仕組み(葉緑体光定位運動)
3.4 重力を感じる仕組み(アミロプラスト)
3.5 刺激を感じる仕組み(接触応答)
3.6 感じた刺激を伝える仕組み(植物に神経はあるの?)
3.7 感じた刺激を伝える仕組み(植物ホルモン)
3.8 植物も運動する(オジギソウ、食虫植物)
3.9 気孔の開閉の仕組み(息を吸ったり水を吐いたり)
3.10 ゴミ箱だけじゃないよ(液胞)
3.11 植物の自食(オートファジー)
3.12 植物同士の情報伝達(植物の会話)
3.13 植物世代間の情報伝達(植物に記憶はあるか?)
3.14 昼夜を感じる仕組み(概日リズム)
3.15 季節を感じる仕組み(時期応答、フロリゲン)
3.16 病気を治す仕組み(病原菌応答)
3.17 正しく分裂する仕組み(葉緑体)
3.18 半藻半獣の生き物(ハテナ)
3.19 植物も食べる(食虫植物)
3.20 光合成をやってみたくなった動物

第4章 原形質流動
4.1 似ているようで違う、動物の細胞内輸送、植物の細胞内輸送
4.2 細胞内の道路(細胞骨格)
4.3 細胞内の車(モータータンパク質)
4.4 植物のミオシン
4.5 生物界最速のシャジクモミオシン
4.6 植物ミオシンの様々な機能(植物成長)
4.7 植物ミオシンの様々な機能(姿勢維持)
4.8 植物ミオシンの様々な機能(病原菌を集中攻撃する)
4.9 遅いミオシンXI

第5章 進化するバイオテクノロジー
5.1 地球温暖化
5.2 地球温暖化を抑えるための条件
5.3 バイオエタノールとバイオディーゼルとバイオプラスチック
5.4 植物科学にできること
   (植物の強化、遺伝子組換えとゲノム編集)
5.5 遺伝子組み換え技術で除草剤抵抗性、害虫抵抗性を持たせる
5.6 植物からエネルギーを取り出す
5.7 植物の細胞壁を使いやすくする試み
5.8 気孔開度強化による植物の大型化
   (口を大きく開けたら、体が大きくなった)
5.9 寄生植物ストライガ
5.10 根の吸収能力アップ
5.11 光る街路樹
5.12 藻類バイオマス
5.13 原形質流動の人工的な高速化による植物の大型化
5.14 高速型ミオシンの設計と開発
5.15 植物サイズの人工的コントロールと緑の革命
5.16 新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)
5.17 PCR検査


◇生命の進化
◇植物の進化
◇遺伝子工学技術
◇植物のウィルス

参考文献
索引

はじめに

 生物の本を一般の人向けに書いてみませんかというお誘いをいただいたとき、何をどう書けばよいのか迷いました。参考にこれまで出版されている一般向けの本を何冊か購入して読んでみたところ、どの本も完成度が高くて私には書く余地が残されているように思えず、途方に暮れてしまいました。

 生物は大変面白い研究領域ですが、全体像を見渡すのが難しい分野でもあると思います。なぜなら、遺伝子やタンパク質が働くナノメートルの世界も生物の一部ですし、細胞が生きているマイクロメートルの世界も生物です。もちろん私たちが普段目にしている動物や植物も生物ですし、もっとスケールの大きな生態や地球環境も生物に含まれます。そして遺伝子工学は、ナノメートルの遺伝子やタンパク質を人工的に改変して、医療や環境の問題を解決しようという技術です。最新のバイオテクノロジーに関してはネット上でたくさんの解説がありますが、説明が簡単すぎたり難しすぎたりといろいろです。そういう意味で、高校の生物の教科書は、生物全体をカバーしたとてもよくできた書物だと思います。
 しかし教科書はその役割から、確実にわかっている現象の記載がほとんどで、新しい仮説や開発中のテクノロジーに関してそれほどページは割かれていません。私は研究者としてはあまり良くないのかもしれませんが、興味が目移りして、遺伝子からタンパク質、細胞からバイオマス増産までと、いろいろな研究分野を広く浅くやってきました。それならば、いっそ「広く浅く」をそのまま本にし、ついでに絵も充実させて、読まなくても眺めていれば何となくわかるような本を作ってみようと考えました。わかりやすさを大事にしたため、細かいところを少々端折って描いている部分もありますがご容赦ください。

 本書の役割は、観光案内所に置かれているイラスト観光マップだと思います。生物を学んだことがない人でも、この本を片手に気軽に生物という観光地を散策してください。観光地にはたくさんの名所があります。見どころは人それぞれで、それは「細胞の誕生」であるかもしれませんし、「遺伝子」や「タンパク質」であるかもしれません。あるいは、「植物の進化」や「バイオマス増産」であるかもしれません。もし面白そうな場所が見つかれば、図書館や本屋に立ち寄って、さらに詳しい本を手に奥へ奥へと進んでもらえれば幸いです。

 最後に、本書執筆の機会を与えてくださったと同時に、作成にあたり大変お世話になった新日本編集企画の鷲野和弘氏、日刊工業新聞社書籍編集部の矢島俊克氏には深く感謝いたします。

2020年6月
コロナ禍の研究室より

富永 基樹

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