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おもしろサイエンス
腸内フローラの科学

定価(税込)  1,760円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08069-2
コード C3034
発行月 2020年06月
ジャンル ビジネス 化学

内容

人間の腸管内で増殖を続ける微生物群集は「腸内フローラ」と呼ばれている。私たちの健康に深く関わる腸内フローラの知られざる面白話をやさしく紹介。腸内環境を整える有益な生理作用から病原菌や生活習慣病など疾病の発生まで、メカニズムや機能に迫る。

野本康二  著者プロフィール

(のもと こうじ)
1954年東京都生まれ。1979年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年、株式会社ヤクルト本社入社。2017年退社。同年、東京農業大学生命科学部分子微生物学科動物共生微生物学研究室教授に就任。2005年から順天堂大学客員教授。一貫して、腸内細菌およびプロバイオティクスの健康に果たす役割に関する研究に従事する。獣医師、薬学博士

目次

第1章 腸内フローラって何?
1 腸内フローラとは?
2 見えない細菌を拡大して観察することから始まった
3 細菌の解析法の開発と発展
4 分子レベルにおける微生物解析法の確立
5 広いダイナミックレンジを有する腸内フローラを精度良く解析する画期的手法
6 培養法の重要性
7 口腔内フローラの働き
8 食道・胃・十二指腸に生息するフローラ
9 大腸(下部消化管)フローラの役割
10 腸内フローラは新生児期に早くも変化する
11 小児期に示す腸内フローラの変化の特徴
12 成長・加齢に伴う腸内フローラの変化
13 動物(哺乳類)の腸内フローラはどうなっている?
14 昆虫類の腸内フローラはどうなっている?

第2章 腸内フローラはどこで、どのように存在する?
15 腸内フローラは安定している?
16 コロナイゼーションレジスタンスのおかげで腸内バランスが保たれる
17 地域による腸内フローラの違い
18 腸内フローラの栄養となる食物繊維
19 オリゴ糖、プレバイオティクス、レジスタントスターチは腸内フローラの強力な援軍

第3章 いろいろな疾患と腸内フローラとの関わり
20 肥満と腸内フローラの知られざる関係
21 腸内フローラは生活習慣病にも大きく関与
22 腸の病気を誘発する腸内フローラ異常
23 アレルギーなど免疫疾患も引き起こす
24 腸内フローラが及ぼす脳への影響

第4章 プロバイオティクスは腸内環境を改善するミカタ
25 プロバイオティクスは何をしてくれるの?
26 感染性下痢症を予防する
27 新生児・小児科治療で期待されるプロバイオティクスの効果
28 消化器疾患に大きな作用を及ぼす
29 アレルギーの軽減・抑制にも確かな効果がある
30 俄然注目されるがん予防への可能性
31 メンタルヘルスの維持改善に向けて研究が進む
32 プロバイオティクスが作用するメカニズム
33 有用菌の機能をさらに高めるシンバイオティクス

第5章 腸内フローラを構成する細菌群を知ろう
34 ビフィズス菌の機能と特徴
35 フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィは腸内フローラのメジャー菌種
36 ヒトの腸内細菌の5%を占めるアッカーマンシア・ムシニフィラ菌
3 7口腔から腸内までの細菌叢を構成する優勢菌バクテロイデス・フラジリスGとプレボテラ
38 善悪取り混ぜ最も馴染みが深い大腸菌
39 私たちの食生活に欠かせない乳酸菌
40 病原菌として話題に上ることが多いブドウ球菌、腸球菌類
41 免疫機能が低下すると感染症を起こす日和見感染菌

第6章 どうなる?腸内フローラ/プロバイオティクス研究の今後
42 適切な方法に基づいて実施された臨床研究から得られる確かな証拠
43 臨床効果を説明する作用メカニズムとは?
44 常在腸内細菌の潜在力を知る
45 安全性の確保が一番

Column
日本の細菌学の父、北里柴三郎
生体防御論という考え方
ISAPPにより啓蒙の輪は広がる
予防医学に期待される腸内フローラの働き

参考文献
索引/資料

はじめに

 腸内フローラという言葉が世の中に浸透しています。私たちの腸内に棲んでいる100種・100兆個とも言われるバクテリア群のこと、と説明されていますね。スーパーやコンビニに、あふれるように陳列されているヨーグルトや乳酸菌飲料の種類もかなりのもので、私たちの健康に良い善玉菌としてのプロバイオティクスという言葉も一般的になっています。本書を手にとられる方のほとんどは、食生活におけるいわゆる「菌活」を実践されているのではないでしょうか。
 このような状況は日本に限らず世界的なものですが、これに歩調を合わせるように、腸内フローラがどのように私たちの健康に関わっているかについて、日進月歩の勢いで研究が進んでいます。私がこの研究領域に携わった1980年頃に比べると、まさに隔世の感があります。日本の微生物学は、1800年代の終わりに北里柴三郎先生により導入され、その後、現在に至るまで病原微生物学や免疫学の発展はすさまじいものがあります。一方、腸内細菌学は、光岡知足先生らの先駆者により構築された基盤の下に、現在の発展があると言ってよいでしょう。
 私は長年、食品メーカーの研究所で、自称「臨床腸内細菌屋」として主に腸内フローラやプロバイオティクスの基礎的な研究を続けてきました。最近、アカデミアに研究の場を移したことにより、学生さんや社会人のみなさんを対象とした「腸内フローラ」や「プロバイオティクス」に関する講義をする機会が増えてきました。そのたびに、受講されるみなさんが、読んでわかりやすい総合解説書みたいなものがあればよいのに、と感じてきました。
 以上の背景から、質・量ともに蓄積している「腸内フローラと健康」に関する学術情報を、系統立てて一般のみなさんにお伝えするテキストを作成できたらと考えていた折に、日刊工業新聞社の書籍編集部の方から本書執筆の機会を打診いただき、喜んでお引き受けした次第です。
 本書の特徴として、内容的には基礎から臨床までカバーすることを心がけました。また、図表の多くにデータを盛り込みましたので、事実に基づいた理解がいただけるかと思います。この際、医学的な内容は私の専門から離れるため、解説した内容に参照文献を列挙し、より深い理解のために検索いただけるようにしました。
 本書が、みなさんの健康な生活の維持・増進の一助になりますことを祈念します。また、よりご専門のみなさんには、有効な情報活用にお役立ていただければ幸いです。
 本書の執筆に当たり、日刊工業新聞社書籍編集部の阿部正章氏と矢島俊克氏には、的確な執筆アドバイスをいただきました。筆者遅筆に対するご寛容な対処と併せて深謝します。

2020年6月
野本 康二

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