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ソーラー・デジタル・グリッド
卒FITで加速する日本型エネルギーシステム再構築

定価(税込)  2,420円

著者
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サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-08058-6
コード C3034
発行月 2020年04月
ジャンル 経営 環境

内容

固定価格買取制度終了(卒FIT)後に急展開する太陽光発電システムの超分散・高密度ネットワーク化を軸に、電気自動車との連携や地方のレジリエンス強化策などと絡めた事業構想を明らかにする。DX対応も含め大転換期を迎えたエネルギービジネスの行方を詳述する。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)
株式会社日本総合研究所 専務執行役員
1958年東京都生まれ。1981年早稲田大学理工学部機械工学科卒業、1983年同大学院理工学研究科を修了。1983年三菱重工業株式会社入社。1990年株式会社日本総合研究所入社。1995年株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年株式会社イーキュービック取締役。2003年早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年株式会社日本総合研究所執行役員。2014年同常務執行役員。2017年、現職。環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFIなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げなどに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業などの分野で70冊を超える書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

瀧口信一郎  著者プロフィール

(たきぐち しんいちろう)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト
1969年生まれ。京都大学理学部を経て、93年同大大学院人間環境学研究科を修了。テキサス大学MBA(エネルギーファイナンス専攻)。東京大学工学部(客員研究員)、外資系コンサルティング会社、Jリート運用会社、エネルギーファンドなどを経て、2009年株式会社日本総合研究所に入社。専門はエネルギー政策・エネルギー事業戦略。著書に「エナジー・トリプル・トランスフォーメーション(第40回エネルギーフォーラム賞「普及啓発賞」)」、「中国が席巻する世界エネルギー市場 リスクとチャンス」、「2020年、電力大再編」、「電力小売全面自由化で動き出す分散型エネルギー」など。
〈株式会社日本総合研究所・研究員紹介ページ〉
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=3280

木通秀樹  著者プロフィール

(きどおし ひでき)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター 部長(IoT推進担当)
1997年、慶応義塾大学理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。1988年石川島播磨重工業(現IHI)入社。ニューラルネットワークなどの知能化システムの技術開発を行い、環境・エネルギー・バイオ関連の制御システムを開発。2000年に日本総合研究所に入社。現在に至る。再生可能エネルギー、水素関連の技術政策の立案、および再生可能エネルギー、エネルギーマネジメントなどの社会インフラIoTの新事業開発、スマートシティなどの都市開発事業を実施。2019年より東京大学 先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー。公立諏訪東京理科大学客員教授。著書に「なぜ、トヨタは700万円で「ミライ」を売ることができたか?」、「大胆予測 IoTが生み出すモノづくり市場2025」、「農村DX革命」、「公共IoT‐地域を創るIoT投資」(共著、日刊工業新聞社)、「エナジー・トリプル・トランスフォーメーション」(共著、エネルギーフォーラム)など。

目次

目 次
第1章 検証 日本版FITの功罪
1 FITの歴史
ドイツの狙い
FIT誕生の背景
太陽光発電に注力した理由
風力発電の躍進
EUでのバブル的な普及
世界への普及
FIT終了後のEU:FITからFIPへ

2 混乱の中で始まった日本版FIT
東日本大震災での形勢逆転
不運が重なったスタート

3 巨額の負担と限られた成果
40兆円を超える国民負担
国民負担を下げる手立て
衰退した再エネ産業
発電ポートフォリオをゆがめたメガソーラーラッシュ


第2章 電力システムをめぐる10年間の潮流
1 電源競争力の大変革
予想を超えた再エネ価格の低下
原子力発電への逆風と高コスト化
火力発電の競争力低下

2 電力会社の苦戦
EU:送電事業の完全分離と再エネ拡大による劣勢
姿を変えた大手電力会社
日本:再エネ調整による負担増
アメリカ:広域化進まず

3 塗り替わった市場勢力図
電力会社の勢力減退
再エネファンドの隆盛
世界の重電御三家の苦戦

4 AI/IoTとの接続
AI/IoTの性能と経済性の飛躍的向上
再エネ大量導入を支えた送電線のインテリジェント化
需要サイドで進む自立型インテリジェント・エネルギーシステム

5 顕在化した気候変動の脅威
世界中を襲う気候変動の脅威
2つの時間軸が必要になった気候変動対策
エネルギー分野で求められる適応策
ローカル・レジリエントな分散型エネルギーシステム


第3章 立ち上がる
ソーラー・デジタル・グリッド(SDG)
1 再生可能エネルギーの評価
展開策が限られる風力発電
位置づけが問われるバイオエネルギー
海外持ち込みバイオマスと革新的バイオマス
メガソーラーの限界
再びルーフトップPV

2 卒FIT、4つのシナリオ
見えない日本のエネルギー戦略
2030年のエネルギーミックスの延長
変わり映えしないエネルギーポートフォリオ
国際的要請への対応
問われる基本に立ち戻ったエネルギー調達
グローバル視点のエネルギー調達
日本版が許容される理由
エネルギー産業小国への道
日本のエネルギー再生論

3 Solar Digital Grid(SDG)のシナリオ
ルーフトップPV普及の課題
他電源を圧迫しないエネルギーポートフォリオ
他電源との共存のためのPV電力の吸収
蓄電池と熱変換でPVの変動を吸収
ケタ違いのEV蓄電池の容量
電力をリアルタイムの制約から解放するEV蓄電池
EVの充電環境整備
送配電網の強化
配電網単位での需給マッチングのための環境整備
PV発電の予測システム
人間が自然に歩み寄るエネルギーシステム
自然が起点となるマッチングシステム
EVアプリケーションのプロセス
PV2サーマルのポテンシャル
冷蔵庫によるPVピーク電力の吸収
PV2サーマルのバラエティ
VPPとの違い
エネルギー産業に求められる新しいポジション
PV2EV&サーマルのためのインセンティブ
PVインセンティブポイント
国民参加型のインセンティブ構造
SDGというオープンなネットワーク
ブロックチェーンによる信頼性の担保
エネルギー超分散と高密度デジタルネットワーク
エネルギー業界にDXトレンドを
日本の面目躍如となるSDG

4 SDGとスマートシティ
スマートシティブーム
都市のガバナンスとスマートシティ
スマートシステムの事業スキーム
Solar-Based-Smart City
Solar-Based-Smart Cityでの生活
インテリジェント化が加速する家電
Solar-Based-Smart Cityを活用する行政
日本版スマートシティの重要性
革新技術が自然と共生する日本の都市を蘇らせる

第4章 SDGが創り出す
エネルギービジネスの生態系
1 日本の資源が生きるSDG
エネルギー産業の重要性
「日本発」の再評価
2000年代の“IF”
日本モデルの成長を止めた背景
反転に向けた日本の産業の素材

2 SDGが創るビジネスエコシステム
【SDGネットワークオペレーター(SDG・NO)】
【気象データアナリス&サプライヤー(WD・AS)】
【PVインセンティブポイント・オペレーター(PV・IPO)】
【Solar-Based-MaaS オペレーター】
【Solar-Based-VPP(SB・VPP)】
【Solar-Based-マーケッター(SB・M)】
【SDGデバイス・サプライヤー(SDG・DS)】
【Solar-Based-Smart City(SB・SC)インベスター】
SB・SCが生み出す不動産プレミアム
SDGのメリット

3 コンペでプロジェクトを立ち上げる
【戦略立案・プロモーション・フェーズ】
【先行プロジェクトの実施者確定フェーズ】
【先行プロジェクト立ち上げフェーズ】
【本格普及フェーズ】

はじめに

 21世紀初頭はエネルギー変革の時代なのであろう。政策、社会、自然環境、技術など、エネルギーに関わる複数の分野で大きな変革が起こっている。政策的には、1990年代からの自由化がいよいよ本格展開の時期に入る。社会情勢を見ると、低炭素化、脱炭素の動きが加速している。日本では需要減もインフラ運営上の大きな問題だ。脱炭素の動きと裏腹だが、自然環境も変化が顕著だ。毎年、世界中が自然の猛威に晒されている。これらの動きと同じくらい大きなインパクトを与えるのが技術革新だ。発電端ではすでに太陽光発電や風力発電が最も安い電源となっている。蓄電池やAI/IoTの進化はエネルギーシステムのあり方も大きく変える。
 本書は卒FITをテーマとした書籍だが、FITという国内の制度改正だけを視野に入れると、これからのエネルギー政策やビジネスの方向を見誤る。エネルギー分野で今後の政策やビジネスのモデルを考えるには、政策を所与のものとしながらも、自然環境や技術など普遍的な要素に目を向けるべきだ。そう考えれば、圧倒的な賦存量を持つ太陽光、AI/IoTを用いたネットワークがエネルギーシステムの中心に来るはずだ。
 そこに、近い将来エネルギー分野では持ち得ない規模の蓄電池を擁することになる電気自動車を結びつければ、太陽光発電と蓄電資産をデジタル技術のグリッドでつないだエネルギーシステムとビジネスモデルが浮かび上がってくる。本書ではそれを、Solar Digital Grid(SDG)と呼ぶ。不思議なことに、SDGの中身を詰めていくと、次世代の日本のコミュニティや自然環境に寄り添う社会モデルも見えてくる。

 本書はこうした理解から、まず第1章で日本版FITの経緯と問題の構造を明らかにする。国内外のFITの動きを振り返ることで、制度としてのFITの功罪と限界が見えてくる。
 第2章では、日本版FITが施行されてからの約10年間に、エネルギーに関連する分野でどんなことが起こってきたのかを概観する。上述したように、エネルギーが革新の時代を迎えていることがわかる。
 第3章では、まず卒FITのシナリオを想定した。FITに代わる制度だけを考えることは、日本のエネルギー産業の衰退につながることがわかるはずだ。その上で、日本のエネルギーシステムを革新するSDGのコンセプトと仕組みについて論じた。
 結びの第4章では、SDGから生まれるビジネスを紹介している。ここまで来れば、SDGが単なる卒FITのエネルギーシステムのモデルではなく、エネルギーと社会構造を変革する、Energy and Digital Transformation:Energy DXのモデルであることが理解いただけるだろう。
 本書については、企画段階から矢島俊克氏をはじめ株式会社日刊工業新聞社の方々にお世話になった。みなさんの示唆なしに本書を書くことはできなかった。心より御礼申し上げる。本書は株式会社日本総合研究所創発戦略センターの木通秀樹さん、瀧口信一郎さんとの共同執筆である。木通さんは、株式会社日本総合研究所のIoTプロジェクトをリードする制御、システムエンジニアリングのプロフェッショナルである。瀧口さんは、エネルギー分野でMBAを取得した専門家である。多忙の中、執筆を共にしていただいたことに心より御礼申し上げる。最後に、日頃より筆者の活動に対してご指導ご支援をいただいている株式会社日本総合研究所に心より御礼申し上げる。
 世界がコロナ禍から一日でも早く立ち直ることを願い、本書を奉じる。

2020年 花津月
井熊 均

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