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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい地盤工学の本

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08049-4
コード C3034
発行月 2020年03月
ジャンル 土木・建築 ビジネス

内容

様々な土によって構成されている地盤。地形によって地盤は異なり、防災の面からも地形の成り立ちを知ることは重要である。建築時には、工事中に構造物が変形しないよう、建築後には地震や豪雨などの被害を受けないよう設計する必要がある。地盤や液状化の専門家が学問的視点から地盤を捉える。

安田 進  著者プロフィール

(やすだ すすむ)
工学博士
技術士(総合技術監理部門、建設部門)
土木学会特別上級技術者(地盤・基礎)
専門分野:地盤工学、土木工学、地震工学

●略歴
1948年 広島市生まれ
1975年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
1975年 基礎地盤コンサルタンツ(株)入社
1986年 九州工業大学工学部 助教授
1994年 東京電機大学 理工学部 教授
2006年 地盤工学会副会長
2012年 土木学会理事
2013年 日本地震工学会会長
2016年 東京電機大学副学長
2018年 同大名誉教授

●受賞
1987年 土木学会論文賞
2011年 地盤工学会研究業績賞
2011年 国土交通大臣賞産学官連携功労者表彰
2012年 ガス保安功労者経済産業大臣表彰
2018年 科学技術分野の文部科学大臣表彰
(理解増進部門)
2019年 令和元年安全功労者内閣総理大臣表彰

●主な著書
『液状化の調査から対策工まで』鹿島出版会、1988年
『土質力学』(共著)オーム社、1997年
『建設技術者を目指す人のための防災工学』(共著)
コロナ社、2019年

目次

第1章 地盤ってなに?
1 さまざまな土 「地盤を構成する土の種類」
2 地形により地盤は違う 「山地、丘陵地、台地、低地の地盤の特徴」
3 川の流れで大地は造られた 「河川沿いの低地の地盤の成り立ち」
4 2万年間の海水面変動の影響 「低地の地盤の形成」
5 上流と下流で地盤は違う 「河川沿いの種々の地盤と留意点」
6 海岸でも地盤が造られる 「海岸沿いの低地の地盤の成り立ちと留意点」
7 台地を刻む細い谷底低地 「谷底低地の成り立ちと留意点」
8 起伏に富んだ山地や丘陵地 「丘陵地 ・ 山地の成り立ちと留意点」
9 火山の土は特殊 「火山性堆積土が分布する地区と留意点」
10 局所的な人工地盤 「人工地盤の種類と留意点」

第2章 地盤の力学
11 必要な地盤情報は構造物ごとに違う 「建設時に知っておくべきこと」
12 粒子と水と空気から成る土 「土粒子、間隙水、間隙空気」
13 土独特の定義を知ろう 「土の物理量の基本」
14 土には砂礫から粘土まで混じっている 「土の工学的な分類方法」
15 しっかり締固めると盛土は崩れない 「土の締固め特性」
16 有効応力や間隙水圧とは? 「全応力と有効応力の考え方」
17 砂礫は透水、粘土は不透水 「土の透水性」
18 数年もかかる沈下 「圧密の考え方」
19 土の力学の基本はせん断破壊 「せん断強度」
20 複雑なせん断強さ 「せん断強度の求め方とせん断強度に影響を与える要因」
21 擁壁の前後で異なる土圧 「土圧の考え方」
22 地盤が良いと基礎は簡単 「浅い基礎の支持力の求め方」
23 軟弱地盤では杭基礎 「杭基礎の支持力の考え方」
24 地震や雨ですべらないように 「斜面の安定性の考え方」

第3章 地盤を知るには
25 地盤内を知る方法 「多種多様な地盤調査」
26 設計に最も用いられるN値の測り方 「ボーリング孔による詳細な調査 ・ 試験」
27 開発進むサウンディング 「種々のサウンディング」
28 土の試料はどのように採取するか 「乱れの少ない試料採取」
29 地表からでも地下の状況を探れる 「地表からの探査」
30 基本的な土の性質の試験方法 「土の密度や粒径分布」
31 土の強さなどは精密な試験で求める 「土の力学特性の試験方法」
32 地盤モデルの作成に利用 「既存の地盤データの利用」
33 支持力を直接知る 「原位置試験」
34 地盤の挙動を見る 「模型実験」
35 難しい解析もコンピュータの発達で可能に 「複雑な状況での解析方法」
36 建設中に変状を測って安全な施工を 「予測と実際の差異」
37 急速に利用が進む上空からの測定 「航空写真から衛星画像、ドローン撮影へ」

第4章 地盤改良と盛土・斜面補強
38 改良や補強すると土は強くなる 「地盤改良と補強の種類」
39 軟弱粘土地盤の改良 「圧密沈下への対策」
40 軟弱粘土地盤でより一層強度を増す方法 「すべりの防止、支持力を増強」
41 砂地盤の改良 「液状化への対策」
42 補強材を用いた土の補強 「すべりへの抵抗力と盛土の安定性」
43 斜面の補強 「崩壊への対策」

第5章 地盤工学と建設
44 即時沈下、圧密沈下、支持力を検討 「浅い基礎」
45 鉛直と水平方向の支持力を検討 「深い基礎」
46 すべり安定性に影響するのり面勾配 「道路や宅地の盛土」
47 漏水を防ぐ工夫 「フィルダムや堤防」
48 土圧に加え地下水の流れに注意 「地中構造物」
49 崖を守る方法 「宅地の擁壁」
50 背後地盤の液状化に注意 「岸壁や護岸」

第6章 地盤災害と対策
51 浅層地盤で決まる地震の揺れ 「地震の揺れと浅層地盤の関係」
52 建物は沈下し、マンホールは浮き上がる 「液状化による構造物の被害」
53 液状化し易い条件とは? 「発生のメカニズムと予測方法」
54 直下や周囲から改良 ・ 補強 「既設構造物の液状化対策」
55 市街地全体で地下水位を下げる 「広範囲での液状化対策」
56 まず調査し、実態の把握から 「盛土造成宅地の地震対策」
57 意識に変化。広がる耐震化 「土構造物の地震対策」
58 地震の度に発生。予測は困難 「自然斜面の地震対策」
59 日本で土砂災害が多い理由 「豪雨による土砂災害の種類」
60 レッドゾーンとイエローゾーンに注意 「土砂災害の対策」
61 気候変動による河川の氾濫の増加 「豪雨による河川堤防の決壊」
62 100年前から始まった地盤沈下 「地下水の汲み上げによる地盤沈下」
63 土壌環境は改善できる 「土壌汚染対策」
64 点検で災害を未然に防ぐ 「地盤の風化や老朽化への対策」
65 地面が持ち上がりずれる 「大断層による災害」
66 何が起こるか分からない火山 「大規模な火山災害」
67 緩やかな傾斜地盤でも大規模に地盤が流れ出す 「クイッククレイ」

【コラム】
●各地にある特殊土
●地盤工学での有効数字はさまざま
●阿蘇カルデラ内の複雑な地盤を解明
●液状化対策の歴史
●クーロンとランキンの土圧論
●地震時の挙動を理解して設計を

参考文献
用語の解説
索引



はじめに

 ガリレオはピサの斜塔で物体の落下法則の実験をしたと言われていますが、勿論、この斜塔は斜めに造り始めたのではありません。建設を始めたら傾いてきたので、修正しつつ建設を進めたとのことです。それでも傾きがひどくなってきたので、ついに2001年、トリノ工科大学のヤミオルコフスキー教授らによって対策が施されました。
 筆者がメキシコシティに初めて行ったのは1986年です。中心地のソカロの広場で見回すと、周囲に建てられている重厚な建物が右や左に向きに傾いていて、どの建物がまっすぐ建っているのか分かりませんでした。また、よく見ると巨大なメトロポリタン大聖堂も大きく沈下していました。
 現在の我が国ではこのように傾いているビルは滅多に見かけません。ところが、2011年に発生した東日本大震災では、千葉県の浦安市から千葉市にかけての東京湾岸の埋立地や利根川周囲で、数多くの戸建て住宅が沈下して傾きました。メキシコシティと違って、よく見ないと沈下・傾斜していることが分からない程度でした。それでも傾いた家に住んでいる住民の方々には眩暈や吐き気といった健康障害がおきましたので、家屋を持ちあげて基礎を直して復旧する必要がありました。
 これらのように、構造物を造るときに沈下や傾斜しないようにし、建設後も地震などの災害に耐えることが必要です。そのため、構造物の建設計画時点から調査、設計、施工、維持管理の段階すべてで、地盤の特性や挙動に注意しておく必要があります。維持管理に関しては設計時の外力に対して安全を保つだけでなく、施工後に変化する外力にも対応が必要です。南海トラフの巨大地震が近いうちに発生しそうだとか、地球の温暖化で豪雨の降り方が変わってきたといった外力の変化に対応するため、「防災」といった観点から補強を行っていくことが近年必要となってきています。
 計画から維持管理・防災までの過程で、地盤に関して種々の検討が行われます。良い地盤に建設するために、計画段階では地形や土地の履歴、過去の地盤データなどを基に場所の選定が行われます。そのために地形学に関する知識が必要です。調査段階ではボーリングや各種の地盤調査、土質試験を行って、設計に必要な定数を求めます。そのために、「土質力学」と称する力学体系を習得しておく必要があります。また、地質学の知識も必要です。設計段階では、土質力学に加えて構造物基礎の設計方法を習得しておく必要があります。勿論、応用力学や水工学の知識も必要です。施工段階ではこれらに加えて、施工法、測量学の知識も必要になってきます。最後の防災の段階では地震工学や気象学、火山工学といった分野の知識も大切になってきます。
 そこで、本書では土質力学を中心にして、関連する学問分野も少しずつ含ませた、地盤工学の概論としてみました。したがって、より専門的に知りたい方は参考文献に示した図書などを参照していただきたいと思います。また、本書では計画から防災までの流れに沿って、計画段階は第1章、調査・設計段階は第2〜3章、施工段階は第4〜5章、防災関係は第6章で扱うようにしています。
 本書は、主に土木工学、建築学、農業工学に携わっておられる方々を対象にしています。これらの方々の中も、計画段階を担当されている役所などの発注者の方、調査・設計を担当されているコンサルタントや設計事務所の方、施工を担当されているゼネコンやメーカーの方、と担当が分かれていると思います。そして、互いに他の担当の方がどのように地盤に関する問題を扱っているか、あまり知らないのが現状と思われます。そのようなときに、全体を通した概論を一通り扱っている本書を役立てていただければ幸いです。という著者自体も施工には経験が少なく、今後も勉強していかねばと、本書を書きつつ気を引き締めているところです。
 通常の教科書とは異なり、本書はどのような内容にするかといった目次の設定からスタートしました。その時点から原稿完成まで、終始、石原研而先生と三浦基弘先生にご指導をいただきました。三浦先生には第5章のコラムの執筆もしていただきました。また、日刊工業新聞社の土坂裕子さんには叱咤激励していただき、何とか完成しました。末筆ながらこれらの方々に感謝する次第です。

2020年3月6日  
安田 進

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