買い物かごへ

新版
イチから知る!IR実務

定価(税込)  2,420円

著者
サイズ A5判
ページ数 240頁
ISBNコード 978-4-526-08046-3
コード C3034
発行月 2020年03月
ジャンル 経営

内容

多くの欧米企業は、日本企業の今後のIR展開を先取りした文字通り「IR実学」を実践している。本書はそうした事例を多数紹介するとともに、準備リストや週・月次業務レポートのほか有価証券報告書や統合報告書作成のポイントなど企業のIR活動の全容を詳述する。

米山徹幸  著者プロフィール

(よねやま てつゆき)
1948年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科修了。81年大和証券(国際本部)に入社後、ロンドン、パリなどに勤務。大和インベスター・リレーションズ、大和総研・経営戦略研究所を経て、2010年より埼玉学園大学経済経営学部/大学院経営学研究科教授。2017年から同客員教授(現任)。埼玉大学大学院客員教授(2006~13年)。主な著書に、「大買収時代の企業情報」(朝日新聞社)、「個人投資家と証券市場のあり方―証券市場の健全な発展のために」(共著 中央経済社)、「広辞苑〔第6版〕」(共同執筆、岩波書店)、「21世紀の企業情報開示」(社会評論社)、「イチから知る!フェア・ディスクロージャー・ルール」(金融財政事情研究会)など。全米IR協会(NIRI)会員、政策科学学会理事、IR学会評議員。

目次

はじめに

第1章 IRの始まりと仕事
(IRの始まりを知ってビジネスの原点を押さえる)
1.IRの役割
・IRの始まり
・変わるIRの定義
・IR/IRO(IR責任者)の仕事
2.エンロン、サブプライム事件に学ぶ
・エンロンIROが語る決算発表
・金融危機時の情報ミスリードで告発されるIRO
・NIRIの「IR実務の基準と指針」/「IR資格認証」

第2章 IR部門の仕事を知ろう(Ⅰ)
(IR担当者の社内向け仕事を知る)
1.IR活動はどの部署に属するか
・広報・IR部のIR活動 ~カプコンを例に~
・業務一覧でわかるIR担当者の仕事
・米企業の年間活動プラン
・年間IRプランに5つのアドバイス
・IR業務を評価する
2.情報開示方針(ディスクロージャー・ポリシー)の作成
・その位置づけと役割
・情報開示ポリシーを作成する ~全米IR協会(NIRI)の作成例文から~
・日本企業のディスクロージャー・ポリシー
:KDDI、ミネベアミツミの例
・ディスクロージャー委員会
3.IR業務レポートの作成
・週次・月次のIR報告書
・取締役会向け四半期IRブリーフィング

第3章 IR部門の仕事を知ろう(Ⅱ)
(社外向けIR情報の仕事を知る)
1.有価証券報告書
・有価証券報告書
・「記述情報」の充実へ
・主要な経営成績等の推移
・役員報酬
・株式の保有状況
・経営方針・経営戦略・対処すべき課題 ~経営者の認識、KPI、優先課題~
・事業等のリスク
・経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況の分析(Management Discussion and Analysis、いわゆるMD&A)
2.決算短信
3.事業報告と株主通信
・株主に必ず届く冊子
・株主アンケートは宝の山
4. 英文の決算プレスリリース ~NIRI:「四半期決算発表のガイドライン」に学ぶ~
・日本企業の英文プレスリリース
・プレーン・イングリッシュ(平明な英語)で書く
5.アニュアルレポート
・2つのアニュアルレポート
・アニュアルレポートを作成する
・アニュアルレポートの読者
・アニュアルレポートはIR担当者が書く
・米国企業「10-Kラップ」の時代
・新たなオンライン・アニュアルレポートの登場
・英国IR協会のIRベストガイドライン:アニュアルレポート
・「統合報告書」に向かう
・統合報告を作成する
6.IRサイト
・ウェブサイトの基本コンテンツ
・英文サイトの注意点
・英国IR協会のベストウェブサイト・ガイドライン
・投資家やアナリスト「IRサイトに不満あり!」
・IRサイトのトレンド
7.ソーシャルメディア
・ソーシャルメディアで投資家に迫る
・ソーシャルメディアで発信する経営トップ
・ソーシャルメディアIRに取り組む

第4章 IR情報を届ける相手を知ろう
(IR情報の相手は誰か。それぞれに企業情報の見方も違う)
1.アナリスト
・アナリストの役割(セルサイドとバイサイド)
・日米で違う業績予想のやり方
・アナリストの業績予想を評価する
・アナリストが評価する企業・IR部門 ~日本証券アナリスト協会「ディスクロージャー優良企業選定」から~
・“やってはいけない”セルサイド・アナリスト対応
・日本版フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)の導入
・MiFIDⅡ(第2次金融商品市場指令)の影響
・IRデイ/アナリスト・デイの開催に向けて
・アナリスト向けイベント評価のアンケート
2.機関投資家
・米企業:効率を追う四半期決算の電話会議
・機関投資家とのワン・オン・ワン(個別面談) ~やるべきこと、やってはいけないこと~
・ウォルターズ・クリュワ、証券ブローカー向け「ロードショー・ガイドライン」
・ロードショー担当の証券会社はアナリストで選ぶ
・株主名簿に実名が載らない株主を見つける
・株主を投資スタイル別に掲載する ~米衣料大手のリミテッドブランズ~
・機関投資家:投資スタイルの類別
・アクティブ運用とパッシブ運用
・議決権行使助言会社への対応
・ESG情報を求める投資家
・ESGインテグレーションが本流に
・ESG情報の発信に向けて
・持続可能な開発目標(SDGs)と気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)
・2つのコードの時代に ~スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コード~
・改訂版スチュワードシップ・コード
・改訂版コーポレートガバナンス・コード
・投資家と企業の対話ガイドライン
3.個人投資家
・個人投資家向けの
IRコミュニケーション
・「個人投資家向け情報提供」の優良企業表彰
・広がる株主優待

第5章 プレゼンテーション
(プレゼンテーションはいつも初めての気持ちで)
・パワーポイント作成:
~見た目の効果、テキストの書き方、カラーの使い方~
・スライド・プレゼンテーションの前に
・プレゼンテーションで話す
・オンライン・プレゼンテーションで話す

おわりに
(IR担当者の仕事はこれからもっとインテリジェントに)
・テクノロジーの進展で変わるIR活動
・投資家やアナリストとの信頼関係

はじめに

 本書は企業のIR(投資家向け広報)活動をわかりやすく、内外の多くの実例に沿って具体的に紹介するものです。そして、個々のIR活動では、その準備チェックリストや評価アンケートのサンプルを多く掲載しています。
 第1章は、「IRの始まりと仕事」についてです。ビジネスとしてのIRの始まりを追って、IRの役割や職業としての倫理を確かめています。第2章と第3章は、「企業内におけるIR部門について」です。1つの企業によるIR活動の全体を概観したものです。最初はIR部門内での仕事についてです。日本よりIR活動で先行する米企業の年間のIRプランは、とても参考になります。その作成アドバイスや評価方法も同様です。そして週次・月次の業務レポートのサンプルも紹介しています。次は、部外向けの仕事です。まず有価証券報告書、決算短信を取り上げ、さらに事業報告や株主通信のトレンドを追います。英文の決算プレスリリースではガイダンスやプレーン・イングリッシュ(平明な英語)、アニュアルレポートでは作成ポイントを学び、この数年の統合報告書の動きもしっかり頭に入れましょう。もちろん、自社のIRサイトやソーシャルメディアの基本的な取り組みや直近の動向をも示しています。
 第4章は「IR情報を届ける相手を知ろう」という内容で、特にIR担当者とコンタクトが多いアナリストや機関投資家、個人投資家について、IR担当者が基本的に知っておきたいポイントをまとめています。そして、アナリスト対応でやってはいけない項目や、日本版フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)やMiFIDⅡ(第2次金融商品市場指令)の導入がもたらしたIR現場の影響を追い、IRデイの準備チェックリストや評価アンケートの例などを掲載しています。機関投資家では、個別面談での「やるべきこと、やってはいけないこと」、ロードショー(投資家訪問の出張)のガイドライン、IR担当者が面談する前に行うチェックリスト、面談後に行うフィードバックのサンプルも用意しました。さらに、株主名簿に実名が載らない株主を見つける判明調査、機関投資家の投資スタイル、アクティブ運用とパッシブ運用、ESG情報を求める投資家、持続可能な開発目標(SDGs)と気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)情報、改訂されたスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードのポイントなどを追います。そして個人投資家では、その効用から増え続ける株主優待の要点を紹介します。
 第5章の「プレゼンテーション」では、配布資料のパワーポイント作成での要点、人前のプレゼンテーションや動画のプレゼンテーションで語るときに注意したい点を書き込んでいます。
私がIRの世界に関わってから35年あまりになります。最初にIRと出会ったのはロンドンです。そのころ、東京証券取引所(東証)では欧米を中心とする外国企業の上場が大変な勢いで増え始めていました。上場に当たって各社とも揃って大手の投資家向けに説明会や大手機関投資家との個別面談を重ね、上場後も毎年続ける例が少なくありませんでした。そのとき配布された自社を説明する資料の内容は、日本企業にとって大きなインパクトでした。数年も待たず、配布資料の記載内容も含めて日本企業による海外投資家向け説明会のクオリティが大きく向上します。当時、私はロンドンやパリから、この大きなIR活動の始まりに立ち会いました。
 こうして始まった35年あまりの経験でいつも感じることがあります。それは、多くの欧米企業が日本企業の今後のIR展開を先取りした、文字通り「IR実学」を実践しているという現実です。これが、本書で多くの英米企業の事例が引用されている理由の1つです。IRの現場で仕事をしているみなさん、これからIRの仕事を始める方々、IRに関心をお持ちのみなさんに本書をお読みいただければ幸いです。
本書の出版に当たっては、日刊工業新聞社出版局書籍編集部の矢島俊克氏に大変お世話になりました。記してお礼申し上げます。
2020年3月
米山徹幸

買い物かごへ