買い物かごへ

今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいゴム材料の本

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08027-2
コード C3034
発行月 2019年12月
ジャンル ビジネス 化学

内容

ゴムには、弾力がある、良く伸びる、水・空気を通さないなど色々な特徴があり、原料作成、加工の段階で様々な手を加えることにより、用途・目的にあったものが作られる。本書では、各種ゴム材料の特徴、構造、使われ方などを図解でやさしく解説していく。

伊藤眞義  著者プロフィール

(いとう まさよし)
1970年東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了
1979年東京理科大学理学博士
東京理科大学名誉教授
1994年繊維学会賞受賞
2010年オーエンスレーガー賞受賞
専門は高分子材料物性
東京理科大学を定年退職後、2011年技術コンサルタント業であるELATECOを設立し現在に至る

目次

第1章 ゴムの素顔ってどんな顔
1 ゴムはどうして変形する? 「ゴムとはいったいなに?」
2 ゴムが伸びるのはランダムコイルの変形 「ゴムと金属ばねの違い」
3 原料ゴムの分子鎖間を化学的に結合する 「ゴム製品の中身」
4 室温での天然ゴムは液体? 固体? 「高分子物質と低分子物質の違い」
5 寒冷地でも液体として存在できる原料ゴム 「原料ゴムは高分子物質」
6 多くの原料ゴムは非晶性高分子 「高分子物質のユニークな性質」
7 分子鎖中のモノマー配列 「コポリマーの種類」
8 ゴム材料は液体状態、プラスチック材料は固体状態 「ゴム製品とプラスチックの関係」
9 ゴム製品のいくつかの泣き所 「伸びた状態が戻らない!?」
10 ゴム製品の老化を防ぐ技術 「ゴム製品の寿命」

第2章 原料ゴムは仲間がいっぱい
11 合成ゴムはこれまで多種類開発されてきた 「仲間が多い理由」
12 自然が作りだす天然ゴムと人間が作る合成ゴム 「原料ゴムの種類」
13 化学構造によって原料ゴムをグループ分けする 「原料ゴムの分類」
14 天然ゴムは人工的には作れない 「天然ゴムのすばらしさ」
15 ジエン系ゴムとは? 「合成ゴムその①」
16 非ジエン系ゴムとは? 「合成ゴムその②」
17 ジエン系ゴムの泣き所を克服 「劣化しにくいゴムその①」
18 水素をフッ素に置き換えたフッ素ゴム 「劣化しにくいゴムその②」
19 シリコーンゴムはすぐれもの 「物性の温度依存性が小さい」
20 ウレタンゴムはオーダーメード 「エステル系とエーテル系」
21 ゴムとプラスチックの違いをよく考えてみよう 「ゴムとプラスチックの合体その①」
22 ゴムとプラスチックのいいとこどり 「ゴムとプラスチックの合体その②」
23 原料ゴムどうしをブレンドする 「相溶と非相溶」

第3章 ゴム製品作りの基本
24 物性、加工性、価格までを考慮して原料ゴムを選ぶ 「ゴム製品作りの特徴」
25 配合表にはゴム業界特有の単位が使われる 「原料ゴムが製品になるまで」
26 機能と力学的特性に大きな効果をもたらす配合剤 「配合剤の選択」
27 オープンロールとバンバリーミキサー 「原料ゴムと配合剤の混合」
28 加硫による各種の成形方法 「製品の形を作る」
29 架橋構造はゴムの基材物性に重要な役割 「架橋の重要性」
30 化学反応を利用した架橋構造の成形 「架橋反応の最適化」
31 イオウで構築した架橋構造は熱に弱い 「架橋と製品物性」
32 弾性率と強度がゴムの特性を決める 「製品の力学的特性その①」
33 ゴムの弾性率と強度を増す 「カーボンブラックの役割」
34 ゴム材料では粘性的性質も重要 「製品の力学的特性その②」
35 ゴム製品は熱による変形が少ない 「原料ゴムの熱的特性」

第4章 ニーズに応えるゴム製品作り
36 どこで、どんなふうに使われるのか? 「ニーズに応える製品作りとは」
37 ゴム製品の硬さを調節する方法 「架橋操作と充てん剤」
38 丈夫なゴム製品を作る方法 「補強性充てん剤を配合」
39 良く伸びるゴム製品を作る方法 「絡み合い点間分子鎖の変形」
40 残留ひずみの小さいゴム製品を作る方法 「架橋密度と架橋点数が問題となる」
41 ゴムの耐摩耗性を向上させる方法 「カーボンブラックを使う」
42 耐候性を重視したゴム製品を作る方法 「紫外線とオゾンへの対策」
43 疲労をおさえてゴム製品の寿命を延ばす 「寿命を延ばす方法その①」
44 酸化反応をおさえゴム製品の寿命を延ばす 「寿命を延ばす方法その②」
45 ゴムの耐水性、耐油性対策 「原料ゴムの溶解度パラメータに注意」
46 広い温度範囲で使用できる製品作り 「分子鎖の切断をいかに防ぐか」

第5章 大活躍のゴム材料
47 免震ゴムの仕組みと特徴 「震災対策用製品その①」
48 防振ゴムで振動を抑制する 「震災対策用製品その②」
49 省エネに協力する自動車用タイヤ 「カーボンブラックから白色シリカへ」
50 自動車用ゴムホースは原料ゴムのデパート 「使う場所によっていろいろな工夫が」
51 水回りで使われるゴムパッキンの特徴 「シールゴムの活躍」
52 電気を通すゴムと通さないゴムの複合 「電力ケーブルには二層構造の利用も」
53 文房具や玩具として活躍するゴム 「消しゴムとスーパーボール」
54 医療現場で活躍するゴム 「安全性と物理的、化学的相互作用が問題」
55 ゴムに気泡を入れた高機能製品 「3種類に分類されるスポンジゴム」
56 プラスチックとゴムの合体による高機能材料 「プラスチックの弱点をゴムでカバー」

第6章 ゴムのこれから
57 天然ゴムには優れた力学物性がある 「天然資源の利用その①」
58 天然ゴムは強度の要求に応える 「天然資源の有効利用その②」
59 基本形は8種類。それを改質して新しいものをつくる 「新規原料ゴムの開発」
60 2種類のゴムを混合する方法 「ポリマーブレンドの活用」
61 光や電気で伸びるゴム製品 「液晶エストラマー」
62 ゴム材料としての高分子ゲル 「環動ゲルとは?」
63 配合剤を混合している液状ゴム 「省エネを目指した製造工程の見直しその①」
64 分子鎖間の摩擦による熱で架橋 「省エネを目指した製造工程の見直しその②」
65 ゴム製品の再利用を進める 「リユースとリサイクル対策その①」
66 架橋構造をリサイクル可能な構造へ 「リユースとリサイクル対策その②」

【コラム】
●高分子物質の相変化
●日本における合成ゴムの歩み
●高分子物質は粘弾性体
●溶解度パラメータの補足説明
●ゴム材料のポアソン比について
●ポリマーブレンドの補足説明

参考文献
索引

はじめに

 ゴム製品は、私たちの身近に数えきれないほどあります。まずは朝、洗顔の際に利用する水道の蛇口にはゴムパッキンが使われています。これが壊れると蛇口からの水を止めることができません。通勤、通学の足であるバスには、ゴムホース、制振材、ゴムシール材など多種類のゴム製品が使われておりゴムのデパートのようですが、この中の一個でも壊れると安全/快適に利用することができなくなります。
 ゴム製品が地球上で使われ始めたのは1800年代初頭、イギリスではじまった産業革命の頃です。その当時プラスチックはありませんでしたから、ゴム製品は、プラスチックよりも長い歴史を有していることになります。
 当時のゴム製品は、ゴムの木から採取したラテックスから水分を取り除いた天然ゴムから作られたゴム靴やレインコートが主でしたが、1839年、発明家であるグッドイヤーが、天然ゴムに硫黄を加えて加熱するとよく伸び、かつ丈夫なゴム材料ができることを発見しました。この発見によりゴムが工業用材料として大量に使われるようになり、ゴム工業誕生のきっかけとなりました。
 1904年、天然ゴムにカーボンブラックを混合すると強度の高いゴム材料が得られることが見いだされたことが発端となり、1912年にはカーボンブラックが自動車用タイヤの補強剤として使われ始めました。その後、ゴム工業は、自動車産業の急速な発展や、天然ゴム不足がもたらした合成ゴムの開発研究成果もあり急速に成長し、現在では自動車産業のみならず、輸送、建築、医療、宇宙などあらゆる産業分野で活躍しています。
 近年では、生体適合性に優れたゴムができたことにより人工血管などの医療用品としての利用、巨大な建物を支え、地震による被害を最小限に抑えることができる免震ゴムの開発、新幹線の車両に快適な乗り心地を提供してくれる防振ゴムの開発など、新たなゴムの開発は数え上げるときりがありません。しかも、ゴムと他素材との複合化などによる新しい機能を持ったゴム材料も次々と生まれるようになりました。
 ゴム工業の歴史は、加硫用薬品として長い間使用されてきた硫黄に加えて、有機過酸化物を用いること、カーボンブラックのかわりにシリカを利用、天然ゴムに代わる合成ゴムの開発などでゴムに対する要求に対応してきました。加硫と微粒子による補強というゴムにおける二大コンセプトは現在も受け継がれていますが、加硫や微粒子による補強効果の詳細は現在も議論が続いている難しい問題です。さらに、原料ゴムが高分子物質であることもゴムの理解を困難にしています。「ゴム作りは経験が第一」とされてきた理由の一つがここにあります。
 本書では、高分子物質に関する基本からスタートし、ゴム製品を作るための基本、ニーズに応えるためのゴム作り、ゴムのこれから、について述べました。いずれも理系の専門知識がなくても理解できるように、なるべく数式や化学式を用いることなく、前述した「経験」を科学的に説明するよう努力しました。これにより経験の浅いゴム関連技術者のみならず、ゴムに興味を持っている方でも一見不思議に思えるゴム作りやゴムの有用性を理解していただければ幸いです。

2019年12月             
著者

買い物かごへ