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よくわかるコンクリート構造物のメンテナンス
長寿命化のための調査・診断と対策

定価(税込)  2,640円

著者
サイズ A5判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-08009-8
コード C3052
発行月 2019年09月
ジャンル 土木・建築

内容

現在、インフラストラクチャー(本書では橋、トンネル、道路、ダム、河川構造物、下水道施設、港湾構造物を指す)の劣化や老朽化といった問題に直面している。インフラを長持ちさせるための劣化予測技術、点検・調査技術、補修・補強技術、点検・調査のための検査技術など、本書ではメンテナンス全般について解説する。

溝渕利明  著者プロフィール

(みぞぶち としあき)
法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科教授

専門分野
コンクリート工学、維持管理工学

●略歴
1959年 岐阜県生まれ
1982年 名古屋大学工学部土木工学科卒業
1984年 名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了
1984年 鹿島建設(株)に入社、技術研究所に配属
1993年 広島支店温井ダム工事事務所に転勤
1996年 技術研究所に転勤
1999年 LCEプロジェクトチームに配属
2001年 法政大学工学部土木工学科・専任講師
2003年 法政大学工学部土木工学科・助教授
2004年 法政大学工学部都市環境デザイン工学科・教授
2007年 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科・教授
2013年 公益社団法人日本コンクリート工学会・理事
2016年 一般社団法人ダム工学会・理事

●主な著書
「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいダムの本」日刊工業新聞社、2018年
「図解絵本 工事現場」監修、ポプラ社、2016年
「コンクリート崩壊」PHP新書、2013年
「見学しよう工事現場1~8」監修、ほるぷ出版、2011年~2013年
「コンクリートの初期ひび割れ対策」共著、セメントジャーナル社、2012年
「モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!」監修、アスペクト、2010年
「土木技術者倫理問題」共著、土木学会、2010年
「基礎から学ぶ鉄筋コンクリート工学」共著、朝倉書店、2009年
「コンクリート混和材料ハンドブック」(第6章第4節マスコンクリート)、エヌ・ティー・エス、2004年
「初期応力を考慮したRC構造物の非線形解析法とプログラム」共著、技報堂出版、2004年

目次

第1章
コンクリート構造物とメンテナンス
1 現代社会を支えるインフラ
1-1 インフラの定義
1-2 インフラの中のコンクリート構造物
1-3 インフラの整備とその役割
1-4 ニューディール政策とグリーン・ニューディール政策
1-5 インフラの整備は終わったのか?
1-6 現代社会におけるインフラが抱える課題・問題点
1-7 インフラのあり方
2 メンテナンスとは何か
2-1 膨大なインフラストック
2-2 コンクリート構造物を長持ちさせるためには?
2-3 メンテナンスとは何か
2-4 コンクリート構造物のメンテナンス
3 コンクリート構造物のライフサイクル
3-1 コンクリート構造物のライフサイクル
3-2 コンクリート構造物の寿命
3-3 コンクリート構造物のライフサイクルマネジメント
3-4 コンクリート構造物のリスクマネジメント
3-5 コンクリート構造物のライフサイクルコスト
第2章
コンクリート構造物の現状と課題
1 橋
1-1 橋の歴史
1-2 橋の種類
1-3 橋の現状と課題
2 トンネル
2-1 トンネルの歴史
2-2 トンネルの種類
2-3 トンネルの現状と課題
3 道 路
3-1 道路の歴史
3-2 道路舗装の種類
3-3 道路舗装の現状と課題
4 ダ ム
4-1 ダムの歴史
4-2 ダムの種類
4-3 ダムの現状と課題
5 河川構造物
5-1 河川構造物の歴史
5-2 河川構造物の種類
5-3 河川構造物の現状と課題
6 下水道
6-1 下水道の歴史
6-2 下水道の分類
6-3 下水道施設の現状と課題
7 港湾構造物
7-1 港湾の歴史
7-2 港湾施設の種類
7-3 港湾施設の現状と課題
第3章
コンクリート構造物の劣化予測について
1 コンクリート構造物の劣化要因
1-1 鉄筋腐食を引き起こす劣化現象
1-2 コンクリート自体の劣化現象
2 コンクリート構造物の劣化メカニズム
2-1 鉄筋腐食を引き起こす劣化メカニズム
2-2 コンクリート自体の劣化メカニズム
3 コンクリート構造物の劣化予測
3-1 鉄筋腐食による劣化現象に対する予測手法
3-2 アルカリシリカ反応による劣化現象に対する予測手法
3-3 凍害による劣化現象に対する予測手法
3-4 化学的浸食による劣化現象に対する予測手法
3-5 耐久性力学という学問領域
第4章
コンクリート構造物のメンテナンス方法
1 コンクリート構造物のメンテナンス方法とは
2 メンテナンス計画と診断方法について
2-1 維持管理計画の重要性
2-2 人の育成とメンテナンス
2-3 維持管理計画策定の手順
2-4 維持管理計画と診断
3 メンテナンスにおける点検、調査
3-1 初期点検
3-2 日常点検
3-3 定期点検
3-4 臨時点検
3-5 緊急点検
4 メンテナンスにおける診断(評価、判定)
4-1 初期点検及び定期点検からの診断
4-2 臨時点検及び緊急点検での診断
第5章
コンクリート構造物の補修・補強から更新まで
1 コンクリート構造物の劣化進行と点検強化
1-1 劣化進行の4つのステージ
2 コンクリート構造物の補修とその方法
2-1 補修とその必要性
2-2 鉄筋腐食を引き起こす劣化に対する補修
2-3 コンクリート自体の劣化に対する補修
2-4 複合劣化したコンクリート構造物の補修方法
3 コンクリート構造物の補強とその方法
3-1 コンクリート構造物の補強工法
3-2 コンクリート構造物の機能向上及び供用制限
4 コンクリート構造物の解体・撤去
4-1 解体・撤去及び更新の計画
5 コンクリート構造物の更新
第6章
コンクリート構造物の検査・点検
1 コンクリート構造物のヘルスモニタリング
1-1 構造ヘルスモニタリングとは
2 コンクリート構造物の検査技術
2-1 検査技術の現状
2-2 目視検査
2-3 打音検査
2-4 各種機器を用いた検査技術
3 コンクリート構造物の非破壊検査技術
3-1 弾性波法
3-2 超音波法
3-3 電磁波法
3-4 レーザ法
3-5 赤外線法
3-6 自然電位法及び分極抵抗法
3-7 その他の非破壊検査法
4 コンクリート構造物の点検ロボット
4-1 UAV
4-2 UGV
4-3 真空吸着式ロボット
4-4 点検ロボットの展望
第7章
コンクリート構造物の未来
1 メンテナンスエンジニアの育成
1-1 メンテナンスエンジニアとしての資質
1-2 総合工学としてのメンテナンス工学
1-3 メンテナンスエンジニア育成のための制度
2 メンテナンス技術の伝承と普及
2-1 スキルの取得と維持する方法
3 一般市民とインフラメンテナンス
3-1 ネガティブな面
3-2 ポジティブな面
4 インフラメンテナンスの将来について

あとがき
参考文献
索 引

はじめに

 “祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。”
 これは、平家物語の冒頭の一文である。どんなに栄華を謳歌していても、それが未来永劫続くわけではなく、最後は滅んでしまうのである。まさに、風の前に曝されて散っていく塵のようなものであるという意味だ。この一文は多くの人が学生時代に一度は耳にしたもの、もしくは暗記させられたものではないかと思う。私などもこの年になってもこの一文はまだ空でいえるくらいである(最近は、少しボケてきてちょっと怪しいところもあるが)。
 実は、ここで紹介したいのは次の一文である。
 “遠くの異朝をとぶらえば、普の趙高、漢の王莽、梁の周伊、唐の禄山、これらは皆、旧主先皇の政にも従はず、楽しみを極め、諫めをも思ひ入れず、天下の乱れんことを悟らずして、民間の愁ふるところを知らざつしかば、久しからずして、亡じにし者どもなり。”
 この一文の後半には、栄華を極め、他人からの諌言をも受け入れずに天下が乱れていることにも気付かず、民が嘆き苦しんでいることを知らなかったために、栄華も長く続くことなしに滅んでいった者たちであるということが述べられている。勢いのある時は、当然後ろを振り返ることなく、ばく進していくのであるが、その勢いが弱まった瞬間に築き上げたものが瓦解してしまうのである。得てして勢いのある時には、何をやってもうまくいってしまい、失敗と思ったことが成功に繋がったりしていく、まさに正のスパイラルが働くのである。当然、うまくいっているのであるから、周囲が見えなかったり、いろいろ危惧する意見も耳に入らなかったりするものだ。この勢いが一旦衰え始めると、やることなすこと裏目に出てしまい、まさに負のスパイラルに陥ってしまい、最後は自滅してしまうのである。戦いは、攻撃に出ている時よりも守勢に回った時こそ将たる者の真価が問われるといわれている。
 現代のコンクリートと鉄でできた巨大な構造物群であるインフラストラクチャー(以後、インフラと称す)とて、未来永劫そのままの形で残るわけではなく、いつかは崩れ去る時が来るわけであり、それが早く訪れるのか、我々の何世代先なのかは、これだけの巨大構造物群を作り上げた我々の世代の取り組み如何にかかっているといえる。
 今、日本のインフラは戦いでいうとまさに守勢に回った段階である。戦後の高度成長期に大量・急速施工された膨大なインフラ、いつまで長持ちするとか、維持をどうするとかいったことも考えずにどんどん造り続けてきた結果、劣化や老朽化を目の前に突き付けられた状態だ。ローマ帝国があれだけの巨大インフラを整備し、国としても富んだ国家であったにも関わらず、最後はそれらを維持すらできなかったのである。
 我々は、今まさにインフラの将来をどう守り、どう次の世代に引き渡していくのか、具体的な方策を求められている。敗軍の将とならないためにも、皆さんでインフラの将来を明るいものにしていってもらいたいと願っている。本書がその一助になってくれればと思って書いたものであり、メンテナンスの重要性とその方法、メンテナンスを行っていくために必要な劣化予測技術、点検・調査技術、補修・補強技術、点検・調査のための検査技術を解説していくとともに、メンテナンスを行っていく上で最も重要なエンジニアの育成と活用について記したものである。

2019年9月   溝渕 利明

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