買い物かごへ

本当は、ずっと愚かで、はるかに使えるAI
近未来 人工知能ロードマップ

定価(税込)  1,540円

著者
サイズ 四六判
ページ数 172頁
ISBNコード 978-4-526-07999-3
コード C3034
発行月 2019年08月
ジャンル コンピュータ・情報 経営

内容

本書は、日本のAI研究の第一人者である著者が大胆にAI込みの未来社会を予測する読み物。2020年代~2040年代ごろまでのAIの社会への浸透の具合を予測。AIに関する様々な誤解を解きほぐし、等身大の姿を浮かび上がらせるとともに、AIを受容するために社会に求められる要件を明らかにする。

山田誠二  著者プロフィール

(やまだ せいじ)
1984年 大阪大学基礎工学部卒。1989年 大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。1989年 大阪大学助手、1991年 大阪大学講師、1996年 東京工業大学助教授を経て、2002年 国立情報学研究所・総合研究大学院大学教授、現在にいたる。専門は人工知能、HAIヒューマンエージェントインタラクション。ここ10年の研究テーマは「人間と協調するAI」であり、現在HAI、知的インタラクティブシステムを中心に様々な研究プロジェクトを推進中。2016〜2018年 人工知能学会会長。

○著書『ヒューマンエージェントインタラクションJ(山田誠二、小野哲雄、近代科学社)、『人工知能の基礎(第2版)』(馬場口登、山田誠二、オーム社)ほか。

目次

はじめに AIと生きる未来を考えよう

第1章 そろそろ等身大のAIの話をしよう
1・1 AIは人間になれるのか
1・2 AIはなぜだまされるのか
1・3 なぜシンギュラリティは起こらないのか
1・4 第3次AIブームはなぜ起こったか
1・5 機械学習だけがAIではない
1・6 AIの得意なこと、苦手なこと
《コラム》AI研究者の仕事術

第2章 私たちはAIに何を期待しているのか
2・1 「AIが仕事を奪う」という大きな誤解
2・2 実は、クリエーターの仕事こそAIに代替される⁉
2・3 AIは非常に使える「ツール」だ ―弱いAIバンザイ!
2・4 ディープラーニングは仕組みが分からないブラックボックスだ
2・5 イノベーションは、医療・ヘルスケアから始まる
《コラム》研究者は信念を持とう

第3章 AIを学ぶ、AIに教わる
3・1 AI家庭教師〈アダプティブ・ラーニング〉による教育のカスタマイズ
3・2 本当に子供たちに必要なプログラミング教育とは
3・3 教育→就職→再教育→再就職 ― リカレント教育はAIに任せろ
3・4 圧倒的に不足するAI人材をどうやって増やすか
3・5 就活・昇進に勝つAIリテラシー
《コラム》はたらくおじさん「学会会長」

第4章 あらゆる現場で仕事につくAI
4・1 IoT+AI=インダストリー4・0&精密農業
4・2 AIは自動運転よりもMaaSとの相性が良い
4・3 RPAにAIを組み込むとどうなるか
4・4 自分の仕事は、自分でAI化しよう
4・5 AIでブロックチェーンの巨大データベースを活用する
《コラム》ヒューマノイドロボットの使い道

第5章 AIと生きる未来シナリオ
5・1 AI同僚やAI部下が当たり前の職場になる
5・2 AI社会のダークサイドも直視しよう
5・3 XAI(説明可能なAI)でブラックボックスを許さない
5・4 HAI ―進化する人とAIのインタフェイス
5・5 近未来、どんなAI技術がイノベーションの引き金になるか
《コラム》AI研究者的「AI映画評」

おわりに まだまだこれから

はじめに

AIと生きる未来を考えよう

 AIブームの到来以降、いわゆる「AI本」が数多く世に出されました。
AI本とは、AI(人工知能)に関する専門書とは別に、一般の方に向けて書かれたAIの「入門書」「ビジネス書」「読み物」のことを指しています。ためしに「AI 人工知能 書籍」と検索すれば驚くほど多くのAI本がヒットすることが分かります。
これは、なにも書籍に限った話ではありません。新聞・雑誌の記事、IT系ウェブサイト、技術系ブログなどあらゆるメディアで夥しい量の情報が流布しています。筆者などは、なるほどブームとはこういうものかと日々感心しています。

 ただし、研究者の視点でこれらの情報をつぶさに見ていくと、その内容はまさに玉石混淆と言わざるを得ません。
これは一面ではブームの代償だと考えています。なにしろ、これまでAIとまったくと言っていいほど関係のなかった。IT評論家やら社会学者やら文化人やらが、したり顔でAIを語り始めたのです。
それらの本の中には、AIをテーマしていながら、AIにはほとんど触れられていないトンデモ本も少なくありません。また、AIに関する解説があまりに表面的で、しかもAIの現状と大きく乖離(多くは過大評価)している本も見受けられます。まさに、「おまいう(お前が言うな)」な状況です。
筆者は、決して専門家でない人(非専門家)がAIについて語るなと言っているのではありません。非専門家の鋭い指摘が、専門家の凝り固まった視点や考え方を解きほぐしてくれることも多いからです。なにより、AIがそれだけ多くの人の心を動かすテーマであることの証拠だと思うからです。
これまで筆者は一般の方を対象にした講演を数多くこなしてきました。多くの会場で聴講者から直接「AIの得手・不得手がよくわかった」というお褒めの言葉をいただいています。
筆者が心がけているのは、「あれもできる、これもできる」ばかりの話をしないということです。AIの限界をきちんと伝えなければ、結局AIと私たちの関係に支障をきたすことが目に見えているからです。「一般の方にAIの等身大のイメージを的確に伝える」こと、ここに義務感を感じていたのも、本書を書く大きなきっかけでした。

 本書では、「AIは単なるプログラムである」「AIは使えるツールである」「AIの知能は2歳児のそれ」などと繰り返し述べています。ごくごく初歩的で当たり前のたとえ話や理解を助けるエピソードがあるだけでも、AIの見方が相当変わってくると思います。筆者は長きに渡って、AIとその関連分野を研究してきた研究者であり、大学教授でもあります。およばずながら、そのあたりの知識をきちんと提供するのは実際にAIと対峙してきた筆者ら専門家しかできない芸当だと思っています。

 本書では、AIの仕組み、つまりアルゴリズム(=手続き)やプログラムについてはほとんど説明していません。厳密なAIアルゴリズムについては、一般の方が理解するには難しすぎること、AIの仕組みを解説した書籍はすでにたくさんあること(そのほとんどはエンジニア、研究者向けです)がその理由です。
 もう一つ、別の理由は、研究者が自身の研究内容を一般の方の日常生活と関連させて伝えることで、AIの社会的意義や理解が深まるのではないかと期待しているからです。技術の詳細よりも、何のためにどんな研究をしているかに重きを置いて知っていただくことで研究への良い波及効果が生まれると信じているからです。
 現在から近未来にわたるAI導入のロードマップを次のページの図に示します。導入は、大まかに3つのフェーズから進むと考えていますが、大切なのはAI技術が一方的に進歩することで導入が進むのではないということです。AIと社会が相互作用をし、AIが社会構造を組み替えて、少しずつ下地をならしながら導入が進んでいきます。
 このロードマップを眺めながら本書をお読みいただくことで、これからのAIが自身の生活や人生にどのように影響するか考えるきっかけにしてもらえるのではないかと期待しています。

 以上が、本書を執筆する動機や筆者がAIを人に説明するときの基本的なポリシーです。AIとともに生きる私たちの未来は、ありもしない絵を描かなくとも、十分に刺激的です。
 本書をお読みになった結果として、世間に氾濫するAIへの偏見から解放され、筆者の考えるAIのありのままの姿を感じていただけることができれば、筆者にとって望外の喜びです。

著者

買い物かごへ