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未来の科学者との対話17
第17回 神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞 受賞作品集

定価(税込)  1,728円

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サイズ A5判
ページ数 264頁
ISBNコード 978-4-526-07978-8
コード C3050
発行月 2019年05月
ジャンル その他

内容

学校教育の「理科離れ」が進み、理科教育のあり方が問われている今、学生には創造性のある「探求活動」と「課題研究」が求められている。そんな中、高校生の理科・科学の研究発表の場としてモチベーションを高め、理科人材を育成するために設けられた論文大会の受賞作をまとめた本。

学校法人 神奈川大学広報委員会
全国高校生理科・科学論文大賞専門委員会
  著者プロフィール

 上村 大輔(うえむら だいすけ)
 1945年岐阜県生まれ。1973年名古屋大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。理学博士。静岡大学教授、名古屋大学教授、慶應義塾大学教授、神奈川大学教授、金沢大学監事、日本化学会「化学と工業」編集委員長、神奈川大学評議員を歴任。現在、名古屋大学名誉教授、神奈川大学特別招聘教授。専門は天然物有機化学。
 編著書に、“Bioorganic Marine Chemistry”(共著)(Springer-Verlag、1991)、『現代化学への入門 15生命科学への展開』(共著)(岩波書店、2006)、『科学のとびら 60天然物の化学─魅力と展望─』(編集)(東京化学同人、2016)、『化学の要点シリーズ 18基礎から学ぶケミカルバイオロジー』(共著)(共立出版、2016)、ほか。
 紫綬褒章(2009)、瑞宝中綬章(2018)

 紀 一誠(きの いっせい)
 1943年群馬県生まれ。196 8年3月東京大学工学部計数工学科数理工学コース卒業。工学博士。1968年4月NEC入社(データ通信システム事業部)。1999年4月 NEC C&Cシステム研究所主席研究員を経て、神奈川大学理学部情報科学科教授、2013年神奈川大学理学部数理・物理学科教授。神奈川大学名誉教授。1996年日本オペレーションズ・リサーチ学会フェロー。専門は待ち行列理論。
 著書:『待ち行列ネットワーク』(朝倉書店、2002年)、『性能評価の基礎と応用』(共立出版、亀田・李(共著)(1998年)、『計算機システム性能解析の実際』(オーム社、三上・吉澤 共著、1982年)、『経営科学OR用語大事典』(朝倉書店、分担執筆、1999年)、他。

 齊藤 光實(さいとう てるみ)
 1943年滋賀県生まれ。1967年京都大学薬学部卒業。1972年京都大学薬学研究科博士課程満期退学。薬学博士(京都大学)。1972年住友化学宝塚研究所研究員。1973年より京都大学薬学部助手、助教授。その間、米国テキサス大学医学部ヒューストン校博士研究員。1989年神奈川大学理学部教授。神奈川大学名誉教授。専門は生化学、微生物学。
 著書に“Intracellular Degradation of PHAs”(共著)(Biopolymers, Polyesters II、Wiley-VCH、2002)“Generation of poly-b-hydroxybutyrate from acetate in higher plants. Detection of acetoacetyl CoA reductase-and PHB synthase-activities in rice”(共著、J. Plant Physiol. 201, 9-16, 2016)

 庄司 正弘(しょうじ まさひろ)
 1943年愛媛県生まれ。1966年東京大学工学部卒業、1971年東京大学工学系大学院修了、工学博士。東京大学工学部専任講師(1971年)、助教授(1972年)、教授(1986年)を経て 2004年退官、東京大学名誉教授。同年、独立行政法人産業技術総合研究所招聘研究員。2006年神奈川大学工学部教授、工学部長、理事・評議員(職務上)を歴任。専門は熱流体工学。日本機械学会名誉員、日本伝熱学会会長を務め永年名誉会員。
 著書に『伝熱工学』(東京大学出版会)、編著に“Handbook of Phase Change”(Taylor & Francis)、“Boiling”(Elsevier)等。Nusselt-Reynolds国際賞、東京都技術功労賞、Outstanding Researcher Award(ASME:米国機械学会)他受賞。

 内藤 周弌(ないとう しゅういち)
 1943年北海道生まれ。1967年東京大学理学部卒業。理学博士。東京大学理学部助手・講師・助教授、トロント大学 Research Fellow、神奈川大学工学部教授。神奈川大学名誉教授。専門は触媒化学。
 著書に『反応速度と触媒』(共著)(技報堂、1970年)、『界面の科学』(共著)(岩波書店、1972年)、『触媒化学』(共著)(朝倉書店、2004年)、『触媒の事典』(分担執筆)(朝倉書店、2006年)、『触媒化学、電気化学』(分担執筆)(第 5版実験化学講座25、日本化学会編、丸善 2006年)、『触媒便覧』(分担執筆)(触媒学会編、講談社、2008年)、『固体触媒』(共立出版 2017年)ほか。

 松本 正勝(まつもと まさかつ)
 1942年大阪府生まれ。1965年京都大学工学部卒業。1970年同大学大学院工学研究科修了。工学博士。(財)相模中央化学研究所を経て 1989年神奈川大学理学部教授。同大学大学院理学研究科長、同大学学校法人常務理事を経て、神奈川大学名誉教授。専門は有機化学、有機光化学、生物発光・化学発光。
 著書に『有機化学反応』(共著)(朝倉書店、2005年)、『バイオ・ケミルミネセンス・ハンドブック』(今井、近江谷編、丸善、 2006年)、“Synthesis with singlet oxygen”(Frimer、 A. A. 編、CRC、1985年)、“Bioluminescence and chemiluminescence Progress and Perspective”(Tsuji, A. ; Matsumoto, M. ; Maeda, M. ; Kricka, L. J. ; Stanley, P. E. 編、World Scinetific、2005年)他多数。

目次

はじめに 上村 大輔

●審査委員講評
研究課題 紀 一誠
論文って何だろう? 齊藤 光實
研究や勉学で無理は不要 庄司 正弘
地球を救う科学者をめざして 内藤 周弌
常識、論理、想像力 松本 正勝

●大賞論文
サボテンが生き抜くためのサバイバル術 横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校

●優秀賞論文
小惑星の形状を推定する方法の確立 愛媛県立松山南高等学校 太陽系班
シャウティングチキンの「悲壮な叫び声」 群馬県立藤岡中央高等学校 F.C.Lab
名古屋の星空が鮮やかさを失った背景に迫る 名古屋市立向陽高等学校 国際科学科 光害グループ

●努力賞論文
マヌカハニーと食物繊維は大腸炎を改善していた 山村学園 山村国際高等学校 生物部
ヨウ素時計反応の誘導時間を正確に予測する 千葉県立大原高等学校 澱粉三姉妹
テニス審判員はエース(満足)を取れるか !? 東京大学教育学部附属中等教育学校
河川の「減災」への挑戦 玉川学園高等部
麹菌の成長が抑制される条件 横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 自然科学部
「ビー玉5個」の秘密 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校
固まりにくい食塩を作製できる可能性 京都府立洛北高等学校
自作の金コロイドの性質を知る 仁川学院高等学校
暗色包有岩の謎に挑む 広島大学附属高等学校 科学研究班
手作りローラー回転装置の製作 愛媛県立西条高等学校
糖の分子構造の違いが浸透現象に与える影響 愛媛県立松山南高等学校 松山南高 SSH浸透班
チョーク粉末が水質浄化に役立つ理由 愛媛県立松山中央高等学校 化学部
沖縄方言と標準語の母音の比較 沖縄県立球陽高等学校 SS物理クラブ
ベニボタル類の分泌液が持つ毒性 沖縄県立球陽高等学校 ベニボタル班

● 第17回神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞団体奨励賞受賞校、応募論文一覧
神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞の概要
おわりに 井上 和仁

はじめに

審査委員長 上村 大輔

 「神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞」は2018年度も79の高等学校から総数153編の応募があり、理科教育に関する関心の高さを知らしめました。ご協力を賜りました全国の高等学校の関係諸氏に心より御礼申し上げます。未知なる自然の深遠に触れ、畏敬の念を持って理解・展開することを源として新しく生まれいずる学術・技術は、未来に向けて世界の人々を救う嚆矢となることは必定です。「誰も取り残されない社会の実現、SDGs(持続可能な開発目標)」を目指した国連の提言を実現するためには科学技術の発展は必須で、特に資源の少ない日本では科学技術の振興は最も重要な国策の一つとなっており、理科・科学教育の重要性が叫ばれています。本大賞はまさにこれに合致した内容であり、大変な努力の上に成り立つものではありますが、今後への期待がますます高まっていると判断しております。昨今、他の大学から実施に関する問い合わせがいくつかあり、関心の深さが見て取れます。いち早く本大賞を提案、実施された本学先達に深く感謝申し上げます。
 本大賞の審査は、まず学内教員による専門委員会が組織され、専門的な立場で、複数の委員によって審査・評価されます。その結果を受けて選考委員会が、高校生らしい研究論文のあり方や研究の進め方なども含めた判断のもと、今回は大賞1編、優秀賞3編、さらに努力賞14編と団体奨励賞6校を選びました。専門委員会委員長として専門の立場から応募論文の選考の基盤を提案していただきました井上和仁氏(神奈川大学理学部教授)をはじめとする専門委員の各位に心より御礼申し上げます。
 本年度の大賞に選ばれたのは横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校横屋稜君の「サボテンの維管束は水を効率よく吸収するために工夫されている(原題)」でした。葉に相当するサボテンの針ではなく、茎の部分に水を効率的に吸収する仕掛けがあることを丁寧に観察調査し、他の植物とは異なり導管が著しく小さく、維管束の大きな広がりのある構造に気がついています。トルイジンブルーでの染色や、食紅を使った給水の様子など、正確に記述されていました。今後、染色での色合いの相違に興味を持つことで、新たな発見がでてくる可能性を秘めていると評価されました。
 優秀賞3編の中で、愛媛県立松山南高等学校太陽系班よる「光度変化を利用した小惑星の解明(原題)」は4人の共同研究です。小惑星の形状は直接大型のレーダー観測によって計測可能ですが、条件を整えれば小惑星の弱い経時的な反射光の光度変化を観測することによっても可能です。天体望遠鏡と冷却CCDカメラを利用し自転の周期を測定、目的とする小惑星の形状をモデル実験とともに推定することに成功しています。モデルを作成し、仮説を検証して行く過程は大いに評価されました。
 同じく優秀賞の「シャウティングチキンはなぜ悲壮な叫び声をあげるのか(原題)」は群馬県立藤岡中央高等高校F.C.Labの諸君によります。シャウティングチキンの悲鳴の心理音響学的な解析と、その再現を工夫、解明した論文内容で、しっかりとした展開と記述に引き込まれました。高校生らしい好奇心、探究心にあふれた内容に感心するとともに、この力をぜひとも自然現象の理解に向けてもらいたいと期待し、途方もないほどの将来性を予感することとなりました。
 もう1件の優秀賞は愛知県名古屋市立向陽高等学校国際科学科光害グループ 4名の提出した「都市の光が夜空に与える影響(原題)」です。大都市圏、名古屋市周辺の光が夜空のバックグラウンドをどの程度明るくしているのかを調査研究した内容となっています。センサーを用いて必要なデータを収集するための予備実験や、集めたデータの丁寧な解析を元にした図を使って、議論展開を記載しています。その結果、名古屋周辺を50km四方の均一な光源としてエネルギー総量概算を見積もることに成功し、都市における人間生活との関連性をとらえています。
 一方、努力賞および団体奨励賞のなかには高校生活の中で不思議に思ったことなど生活の中で興味を持った、高校生活に密着した研究課題を、積極的かつ大胆に攻めた内容が多く含まれ、将来に向けての大きな期待と希望を感じることができました。大賞や優秀賞には至らなかったものの、研究意欲あふれる人材の育成を目指す本大賞の意義をあらためて感じ取った次第です。今後のますますの精進、飛躍を心より念じております。
 さて今日、人口の減少から外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が成立しましたが、大学教育の立場からは、1)海外での日本語教育をどう充実させるのか、2)留学生の国内就職をどう推進するのか、の2つの問題が考えられます。海外での日本語教育は特に重要な鍵になります。国策として推進させる必要があり、適切で優秀な「日本語・日本事情」の教育者確保のために、対応する学部教育への期待は大きくなるでしょう。また、留学生の国内就職についてもポスト留学生 30万人計画を認識しながら、新しい時代への留学生問題を議論することが大切になってきています。例えば、海外の優秀な人材を留学生として確保するために各大学では英語で講義を受け、卒業できるコースを作ってきました。しかしながら、今後は海外での日本語教育に裏打ちされた、学識の高い人材が永く日本に定着することが必要です。従って、英語圏以外での日本語教育がより一層重要となってきます。
 国内の英語教育の低年齢化がこれと密接に関連します。語学力は総合的な知識力と連携しているとことを忘れることなく、理科好きの全国の高校生諸君に語学力の向上も図ってほしいと心より願う次第です。

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