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超ロボット化社会
ロボットだらけの未来を賢く生きる

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ 四六判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-07976-4
コード C3034
発行月 2019年04月
ジャンル その他 機械

内容

若手ロボット研究者がこれまでのロボットの歴史を振り返りながら、これからのロボット技術の進化を想像し、私達の生活がどのように変化するか、また私達が描くべき未来像のヒントを提示する。ロボットと距離のある人でも、手に取りやすい内容。

新山龍馬  著者プロフィール

(にいやま りゅうま)
ロボット研究者
東京大学大学院情報理工学系研究科講師

1981年生まれ。東京大学工学部機械情報工学科を卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了、博士(学際情報学)を取得。マサチューセッツ工科大学(MIT)研究員(コンピュータ科学・人工知能研究所、メディアラボ、機械工学科)を経て、2014年より現職。専門は生物規範型ロボットおよびソフトロボティクス
著書:『やわらかいロボット』金子書房、2018年7月

目次

はじめに 

序章 未来のロボット
レトロフューチャーを超えて 
ロボットと人工知能のちがい 
こわくない未来 

第一章 ロボットに乗る
宇宙ビジネスとロボット 
空飛ぶクルマならもうありますよ 
空飛ぶタクシー危なくないか 
ドローンってロボット? 
やがて嫌われるドローン 
鳥になる、虫になる 
ロボット乗馬の楽しみ 
クルマがしゃべり出したら 
パーソナルモビリティのこれから 

第二章 ロボットと働く
働くロボットの反乱 
ロボットは賃金のいらない労働者か? 
職人ロボット 
ロボットの持ち腐れ 
オートメーションの盲点 
半完成品で半人前のロボット 
ロボットを手伝う仕事 
ピザ配達ロボットの恩返し 
ロボット物流はあたりまえ 
公道をロボットが走る 
ロボットカーが走る都市 
非日常ロボット 
命の恩人はロボット 
RaaSへの道のり 

第三章 ロボットと遊ぶ
ゆかいなロボット 
ペットロボットの需要 
パーソナルロボットの先駆け 
まぼろしのアイボ 
ロボットとスマホのちがい 
掃除機を愛でる 
かわいいロボット 
スポーツは身体に悪い? 
巨大ロボット 
ドローンで幽体離脱 
ロボットで旅行 

第四章 ロボットから学ぶ
ロボットにまかせてはいけないこと 
意識をもつロボット 
人工意識 
ロボットの急所 
人工知能を描く 
ヒト型ロボットを作っていいのか 
ロボット語を習う 
万能ロボット 

解説 ロボットとのつきあいかた  サイエンスライター 森山 和道

はじめに

 わたしはロボット研究者です。四六時中ロボットのことを考えているせいで、世の中のことすべてをロボットに関連づけてしまいます。これもロボットになるのでは、あれもロボットといえるのではと、思考は止まりません。
 本書では、現状のロボットがどれくらい使いものになるのか、これからどんなロボットが現れそうか、ロボットの専門家のひとりとして私見を述べています。描こうとしたのは、ロボット化が加速した末に、ロボットが意外なところにまで入りこんでくる未来像「超ロボット化社会」です。本当にそんな社会が来るのかなあ? と斜めに読んでもらってかまいません。ロボットがどのように社会に受容されるかという議論につながれば本望です。
 未来を予想するのは難しいことです。「ジオデシック・ドーム」や「ダイマクシオン・カー」などの発明で知られるバックミンスター・フラーは、前兆をうまくとらえれば、25年先くらいならある程度正確に予測できると述べています。彼は、独自のデザイン科学を編み出し、テクノロジーによる問題解決を実践しました。
 未来の兆しはあちこちで見られます。世の中のロボット技術について、現時点でのわたし自身の態度を決めておかないと2020年を迎えられないような気がして、本書に着手しました。人工知能の本もロボットの本もたくさん出ていますが、本書のように過去と現在と未来とファンタジーをつないだ本は珍しいのではないでしょうか。2025年くらいに本書を見返すと、どれだけ時代の先を読めていたか、どれだけ時代に流されていたか、答え合わせができるでしょう。
 ところで、わたしの専門は、ソフトロボティクスという比較的新しい分野です。ソフトロボティクスは、柔軟材料を積極的に使い、その利点を活かしたロボットに関する学問です。これまでのロボットは、金属製の丈夫でかたい身体をもっていました。決まった形の部品をつかんだり、溶接をしたりするロボットはそれでよかったのですが、人間の隣で働いたり、人間と同じようにものをやさしく扱ったりするためには、やわらかさが必要になってきます。やわらかさを取りこむと、ロボットの作り方・設計・制御に新しい発想が必要になります。
 人間の身体も、骨以外は筋肉や脂肪などのやわらかい組織からできています。タコやクラゲはさらにやわらかい身体をもっています。やわらかさを使いこなすという意味では、生物は一朝一夕では追いつけないような大先輩です。なので、ソフトロボティクスは、生物に学んだロボットの作り方、動かし方についての研究も含んでいます。一つの例は、人工筋肉で動く動物型ロボットです。わたしたちは、跳んだり走ったりする筋駆動ロボットを多数開発しています。また、ゾウの鼻のようなロボットも作っています。骨も関節もない、新しいタイプのロボットアームです。
 本当だったらやわらかいロボットの研究について本1冊分話したいところですが、それは別の機会に譲り、本書では幅広くロボット技術を見わたそうとしています。ロボットの活用が、豊かな未来への鍵だと思うからです。
 ただし、ロボット技術がすべての問題を解決するわけではありません。こう書くと、無責任に聞こえるでしょうか。本書の中でも、悲観的だったり、尊大に聞こえたりする部分がいくつもあると思います。ロボット愛ゆえに、どうしてもひとこと厳しいことをいいたくなってしまうのです。どうかご勘弁いただけると幸いです。
 この本は最初、ロボットに「できない」ことを扱うはずでした。でも、できないことを書いても未来は広がらないと考え直し、もっと空想・妄想を広げて、これから「できそうなこと」をたくさん書くことにしました。ロボットが関わるテクノロジーの未来です。農業ロボットや物流ロボットなど、わたしが取り上げなくても放っておけば使われていくだろうロボットについては、あえて多くを語っていません。代わりに、忘れ去られようとしている過去のロボットや、見過ごされやすい人間の暮らしに関わることを多く取り上げました。簡単な技術史をあちこちに入れたのは、ここ最近の流行の技術だけ見ても、技術の潮流が見えないと考えたからです。ロボティクスはまだ成長期ですから、過大な期待で押しつぶさないように、でもいいところは評価して、暖かく見守って欲しいと願っています。
 一を十にするのではなく、ゼロから一を作るのが、研究の醍醐味だと思います。本書で語られる未来のロボットのいくつかは、わたし自身が作り手です。その未来が実現するか否かはわたしのロボット研究が進むかどうかにかかっています。自らの専門分野を超えてロボットの将来を俯瞰することを試みたことで、今再び、自分の専門に立ち戻って本当に新しいことを深く研究していかなければという思いを新たにしています。わたしの本業は、やはり論評ではなく研究だからです。
 本書の企画は日刊工業新聞社の土坂裕子さんがわたしのブログに目を留め、連絡をくださったことからはじまりました。出版の機会をいただけたこと、また、締切に遅れてばかりの執筆に辛抱強く付き合っていただいたことに、深く感謝申し上げます。増山慶彦さんには、未来のロボットを描くという難しい仕事をお願いしましたが、わたしのイメージを超えて、とても魅力的な表紙と挿絵を描いていただきました。本当にありがとうございました。最後に、脱稿の後に気が抜けていたわたしを見かねて、校正作業を全面的に手伝ってくれた妻の桂子に感謝。
2019年4月吉日   
新山 龍馬

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