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おもしろサイエンス
折り紙の科学

定価(税込)  1,728円

著者
著者
サイズ A5判
ページ数 156頁
ISBNコード 978-4-526-07967-2
コード C3034
発行月 2019年03月
ジャンル その他 機械

内容

日本の文化に根付いている折り紙。近年では、どのような多面体でも展開図を生成できるコンピューターソフトが開発されるなど、従来の折り紙から大きく進化している。本書では、折り紙の歴史から数理的視点における折り紙、産業分野での応用まで解説する。

萩原一郎  著者プロフィール

(はぎわら いちろう)
執筆担当:第1章1・2・6・7・8・9、第2章10・11・13、第4章23・25・26・28・29、第5章30・32・33・35・36
京都大学工学研究科数理工学専攻修士課程修了。1972年4月に日産自動車(株)に入社、総合研究所で勤務。東京工業大学工学部機械科学科教授、上海交通大学客員教授兼、同大学騒音・振動・ハーシュネス(NVH)国家重点研究所顧問教授、東京工業大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻教授。2012年4月から明治大学研究・知財戦略機構特任教授/先端数理科学インスティテュート&自動運転社会総合研究所所員、東京工業大学名誉教授。工学博士。
日本応用数理学会名誉会員、日本機械学会フェロー、米国機械学会・自動車技術会・日本シミュレーション学会フェロー。
[受賞]日本応用数理学会業績賞「計算科学・数理科学援用折紙工学の創設と展開」 他多数。
[著書]『折紙の数理とその応用』(共著、共立出版) など。

奈良知惠  著者プロフィール

(なら ちえ)
執筆担当:第1章3・4・5、第2章12・14・15、第3章、第4章24・27、第5章31・34
お茶の水女子大学理学部数学科卒業。神奈川県立高等学校に専任教員として3年間勤務後、母校の大学院に戻り、修士課程・博士課程を修了。学術博士(数学)。武蔵工業大学(現東京都市大学)講師、ミシガン大学客員研究員、東海大学理学部・阿蘇教養教育センター教授を歴任。現在、明治大学研究・知財戦略機構客員教授/先端数理科学インスティチュート所員。現在の専門は離散幾何学および折紙工学。
[著書]『エクササイズ 微分積分』(共著、共立出版)、『グラフ理論への入門』(共訳、共立出版)、『証明の展覧会Ⅰ・Ⅱ―眺めて愉しむ数学』(共訳、東海大学出版会) など。

目次

はじめに

第1章 折り紙の姿
1  折り紙の誕生
2  近代折り紙
3  折り紙の基本形と展開図
4  折り紙の設計図
5  折り紙の設計ソフト
6  折紙設計とリバースエンジニアリング
7  折りやすい展開図を作る方法
8  折り紙を折るロボット
9  金属素材も折れる折紙式プリンター

第2章 折紙工学という学問
10  日本発の折紙工学
11  ハニカムコアの発明
12  バイオミメティクス折り紙① 昆虫に学ぶ
13  バイオミメティクス折り紙② 植物に学ぶ
14  折り紙の数理を用いたデザイン
15  三角錐の連なったオクテット・トラス形コアパネル

第3章 折り紙を科学する
16  折り紙の基本折りと基本形の応用
17  芸術性の高い作品に使われる「ねじり折り」
18  幾何学的な立体を作る「ユニット折り」① 手裏剣
19  幾何学的な立体を作る「ユニット折り」② ダイヤモンドの結晶構造
20  産業への応用に期待「らせん折り」
21  2つのパーツを貼り合わせる「対称2枚貼り折り」
22  「剛体折り」と「連続折り」の実用性

第4章 折り紙と産業化
23  折り紙の産業化を阻む4つの課題
24  展開と収縮に優れる「ミウラ折り」
25  金属製オクテット・トラス形コアパネル① 形状と成形法について考える
26  金属製オクテット・トラス形コアパネル② 実用化への道のり
27  コンパクトで強度を備えた折り畳み式ヘルメット
28  折り紙は優秀なエネルギー吸収材
29  高い機能と安価な製造が可能 「反転ねじり折紙構造」

第5章 折り紙の力
30  身のまわりにある建築産業への応用
31  期待される医療機器や肺の呼吸モデルへの応用
32  振動をゼロにする防振器。自動車シートへの応用
33  美しくコンパクトに折り畳める飲料容器への応用
34  簡単に折り畳める厚板の箱
35  オクテット・トラス形コアパネルによる輸送革命
36  折紙工学の未来

参考文献

はじめに

 江戸時代、平穏な時が250年余り続いた中で、俳句、川柳、和算などさまざまな文化・文芸が栄えました。その中に折り紙もあります。
 折り紙は、1枚の紙を折って対象物に近似させる創作です。近似させる折り方は1つではありません。折って楽しい、美しいと感動を覚える折り紙のほとんどは、日本で誕生したものであると聞きます。このため、日本の折り紙は海外からも評価され「Origami」という国際語にもなっています。
 芸術的観点の高い折り紙ではありますが、産業化は容易ではありません。例えば、折り紙特有の展開収縮機能はミウラ折りのような剛体折り、あるいはらせん型折り紙構造など、構造に工夫が必要です。工夫を凝らした分、複雑な構造となり、製造費は高くなり、実機への適用は困難となります。そのため、大量生産法は得られておらず、一品生産法によらざるを得ません。これが折り紙の産業化の障壁となっています。
 計測技術の著しい進展により、現在の科学技術の興味はさまざまな分野に広がっていますが、適切な強度・剛性を兼ね備えた製造装置を作ること自体困難という共通の課題があります。具体的にいうと、現在のソーラーセイル(太陽の光などを宇宙ヨットの推力に変える装置)の大きさは目標の100分の1以下であるともいわれています。この目標との乖離の原因の1つは、巨大構造の剛性に問題があり、この解決にはブレークスルーが必要とされています。
 1枚の紙を想像しましょう。折り曲げを設けるだけで、ある方向の力に対する剛性が向上するのがお分かりになるでしょう。例えば、自動車のフロアは平らでは剛性が弱く、適切に折り曲げを設けることで剛性を向上させています。血管内の掃除をする超ミクロな自己折りロボット、折り紙の展開収縮機能を使った巨大なソーラーセイルなど、折紙構造だから可能とする機能があるのです。システマティックに数理的な観点から検討する折紙工学こそ、上述の課題に対してブレークスルーのきっかけを与えるものと期待されます。
 本書では、多くの国内外の成果を見ながら、数理的な側面に加え、情報科学的な側面も捉えています。また、宇宙工学や建築工学での折り紙など、多岐に亘る事例を取り上げます。そのため、筆者らの研究範囲を超えており、多くの方々の成果の紹介に終始している項目もあります。この場をお借りして、快く資料を提供していただいた方々に厚くお礼申し上げます。
2019年1月 
萩原 一郎

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