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SDGs経営
“社会課題解決”が企業を成長させる

定価(税込)  1,760円

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著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-07959-7
コード C3034
発行月 2019年03月
ジャンル 経営

内容

SDGsは2016年~2030年の世界共通目標。経営にSDGsを採り入れると新規取引先の開拓などビジネスチャンスが広がるとともに、企業を長続きさせる道標になる。企業がSDGsを活用する利点・方法や、実際に取り組む企業の事例と成功ポイントを解説する。

松木 喬  著者プロフィール

(まつき たかし)
1976年生まれ、新潟県出身。2002年、日刊工業新聞社入社。2009年から環境・CSR・エネルギー分野を取材。日本環境ジャーナリストの会理事。著書は『エコリーディングカンパニー 東芝の挑戦』(日刊工業新聞社)。

目次

はじめに

第1章 SDGsを経営に活用する手法
Step1  SDGsを知る
Step2  SDGsがビジネスに役立つ理由
Step3  SDGsを活用しよう
Interview 国際連合大学上級副学長 沖 大幹氏

第2章 社会に必要とされる事業を考える
Case1  株式会社大川印刷 SDGsで新規受注「印刷の仕事をしたいならCSRをやりなさい」
Case2  株式会社TBM 脱プラ時代の申し子、社会課題解決の思いに共感する大企業が支援
Case3  WASSHA株式会社 未電化地域でランタン貸し出し。本当の課題解決に価値
Case4  株式会社イトーキ オフィスチェアの購入でインドネシアの環境・住民生活に貢献できる仕組みを提供
Case5  パナソニック株式会社 他社からも引き合い。未電化地域の解消で教育、医療、観光、経済にも貢献する電源システム
Case6  ユニ・チャーム株式会社 紙おむつリサイクルを開発。将来リスク「大量廃棄」を回避
Case7  セイコーエプソン株式会社 TOP Interview 代表取締役社長 碓井 稔氏 SDGsがプリンター業界のビジネスモデルを変える“チカラ”となる
Case8  楽天株式会社 地域課題解決を目指し創業。大企業になっても継続する取り組み
Case9  長野県×関東経済産業局 地域ぐるみで中小企業のSDGs支援
Case10 株式会社滋賀銀行 県内全域への発信力とけん引する力を併せもつ
Case11 株式会社LIXIL 途上国へのトイレ普及でユニセフと連携。マーケット創出の援軍
Case12 三菱電機株式会社 商品1つで低所得者と富裕層のニーズを満たす工夫
Case13 コニカミノルタ株式会社 2030年を目指し「バングラデシュでの健康診断制度の定着」を目標設定
Case14 富士ゼロックス株式会社 コピー機メーカーの業態を超えた取り組み。社内ノウハウを地域のSDGsに活用
Case15 SOMPOホールディングス株式会社 社内からSDGsを広めて、そして社外へ発信
Case16 住友化学株式会社 社員全員参加のSDGs。活動を投稿し、1人1人が自分ごと化
Case17 メタウォーター株式会社 TOP Interview 代表取締役社長 中村 靖氏 SDGsがもつ、社員のモチベーション、リクルート、投資家への訴求効果とは

【Column1】 取引先の業界のSDGsを知ろう
【Column2】 FSC
【Column3】 脱プラスチック
【Column4】 パリ協定
【Column5】 サーキュラー・エコノミー
【Column6】 中小企業のSDGsの認知度
【Column7】 ESG投資

はじめに

 
 自分は何ができるのだろうか?。会議室にいるのは中学校や高校の先生たち。総勢50人以上だったと記憶している。日刊工業新聞の記者である私には場違いで“完全アウェー”だ。ここで4人ずつのグループをつくって「教育とSDGs」を議論する。慣れない空気に飲み込まれている。しかも、教育問題への知識がない自分が参加して会話はかみ合うのだろうか、不安でいっぱいだった。
 しかし、始まってみると違った。「企業のSDGsの取り組みを取材しています」。そう自己紹介すると先生たちが食いついてくる。どんどん質問してくる。知っている企業、身近な商品がSDGsにつながると分かると、先生たちも関心を持ってくれる。
 先生の話にも興味が湧いた。「授業でどうやってSDGsを教えたらいいのか、悩んでいます」。これはどの先生も共通の課題だった。「SDGsを英語の授業の教材にしたらどうですか」「動画があるといい」と、アイデアが飛び交う。そして「企業の事例、いいですね」と感想をもらえた。門外漢な私でも多少は役に立ったようだ。
 SDGsがテーマなら学校の先生も、産業紙の記者も同じテーブルに着ける。先生たちとの会話から、SDGsには所属の壁を取り払う力があると実感した。SDGsの吸引力によって普段とは違う業種の方と出会い、ビジネスのヒントを得られることもあるだろう。

 このイベントは2018年夏のある日の夜、有志が集まって都内で開かれた。東京・表参道にある「ESD活動支援センター」の柴尾智子さんが私を誘ってくれた。ESDは「持続可能な開発のための教育」のこと。センターは年齢や立場を超え、地域ぐるみで社会課題を考えるESDを推進している。
 柴尾さんは取材の時、「SDGsには何かをしたいと思わせるものがある」と教えてくれた。これもSDGsの力の1つだ。
 フジテレビは2018年夏、SDGsのレギュラー番組「フューチャーランナーズ~17の未来~」を放送した(関東ローカル)。社会課題解決に向けて奮闘する市民の姿を追い、視聴者にSDGsを知ってもらう内容だ。編成局の野崎理さんに制作のきっかけを取材した。社内のCSRチームからの番組提案は初めてだったが「SDGsを広めるのがメディアの役割」と異論は出ず、営業、編成が連動したという。「SDGsには何かをしたいと思わせるものがある」の言葉通りだ。
 同じように「社内で何かしたい」と思っている企業人が多い。行政にもSDGsに取り組みたいと考えている職員は少なくない。しかし「何から始めたらいいのか分からない」という声もよく聞く。

 自分を振りかえると、社会課題解決に取り組む企業を取材し、記事を書いて世間に発信することが自身のSDGsだと思えるようになった。新聞社であるので目標達成に直接的な貢献はできないが、伝えることでSDGsの認知度向上に役立つと信じている。情報発信によって取材に協力いただいた企業の社会的評価が高まり、その企業のSDGsへの取り組みが加速されるのであれば、それも私たち日刊工業新聞社のSDGsだ。多くの社会人も、直接、間接はあってもSDGsに関われる。SDGsは社会に貢献する企業として評価される機会を与えてくれる。自社とは関係ないと思わず、本業とSDGsの関係を確認して欲しい。

 日刊工業新聞は国際連合総会でSDGsが採択された2015年9月25日、1ページを使ってSDGsを報道した。これが「日本初のSDGs特集」と思っている。それ以来、事業活動やイノベーションの視点からSDGsの取材、報道を続けている。2018年9月には国際連合がSDGsを啓発する世界の報道機関を組織化した「SDGメディア・コンパクト」のメンバーにもなった。
 早くから取材した蓄積を生かし、本書はSDGsの取り組み事例を中心にまとめた。企業事例の数は、他のSDGs書籍よりも多いと思っている。2人の社長にもインタビューし、経営者がSDGsをどのように活用しているのか直撃した。
 私はコンサルタントではないので「こうすべきだ」と指摘する資格はない。ただ、事例をまとめながら「社会に貢献しているならSDGsを活用して発信した方がいい」と、自分なりの整理ができた。社会からの評価が高まると取引先からの信頼や人材確保につながり、経営は長続きするはずだ。
 職場でSDGsへの取り組みを始める際、「SDGsにはこんなメリットがあります」「こんな取り組み方があります」と説明したいと考えている方も多いと思う。本書が、そうしたSDGs推進者の参考になれば幸いだ。
 (本文の一部は日刊工業新聞に掲載した記事を加筆した。肩書きは原則、取材当時のもの)


2019年2月   
日刊工業新聞社 松木 喬

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