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技術大全シリーズ
ドライプロセス表面処理大全

定価(税込)  3,300円

編者
サイズ A5判
ページ数 288頁
ISBNコード 978-4-526-07968-9
コード C3057
発行月 2019年03月
ジャンル 金属 機械

内容

ドライプロセスは真空や大気圧下で金属、無機化合物、有機化合物などの薄膜を形成する表面処理方法であり、エレクトロニクスや機械分野だけでなく、医療や食品分野まで広く活用が期待されている。本書では、真空技術や基板前処理などの基礎からPVD、CVD、エッチングなどの原理を解説し応用例を紹介する。

関東学院大学 材料・表面工学研究所  著者プロフィール

 関東学院大学は、戦後いち早く学内に事業部を立ち上げ、バンパーを中心としためっき技術の産業化に成功した。その10年後、世界に先駆けプラスチック上のめっきの工業化に成功し、トヨタ自動車にその技術が採用され、一躍脚光を浴びることになった。一方、プリント基板製造においても、エポキシ樹脂やフェノール樹脂に銅で配線された片面板が主流であったが、当事業部で開発したプラスチックへのめっきが、両面を接続するスルーホールめっきに応用され、事業部は両面板の回路製造も手がけるようになった。このように、関東学院大学は、50年以上も前からキャンパス内にめっきを中心とした工場を持つ大学として評価されていた。ところが、1960年代に入り、学園紛争が全国的に起き、産学協同への反対運動のため、大学の事業部は解体され、1969年に大学が筆頭株主になり、関東化成工業株式会社を立ち上げた。いわば大学発ベンチャーの走りである。株式会社になってからも、大学から出た会社のため、めっきに関する技術開発は大学の研究室と共同で進めた。このように、関東学院大学は工場を持つ大学として、さらには産学協同のルーツとして大きく評価されるようになっている。
 関東化成工業株式会社は大学が設立した企業のため、新規の技術開発の必要性を十分認識し、会社設立30周年の際、研究所を立ち上げたいとの機運が盛り上がり、今から18年前に関東学院大学表面工学研究所(当初は有限会社、その後、株式会社)を、会社の工場敷地内に設立した。その研究所ではめっき技術を中心にした研究開発を手がけた。8年前に、大学単独で中立で公正な研究所を立ち上げるため、関東学院大学材料・表面工学研究所が、大学の総合研究推進機構内に設立され、横浜市金沢区の横浜市工業技術支援センター内に研究拠点を置いた。当研究所では、ウェットプロセスであるめっきとドライプロセスとしてのスパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどやプラズマ処理技術の研究開発を、さらに最近では食品材料開発も手がけている。
 2018年4月に、大学からの要請により、横浜市より小田原市内の本学湘南・小田原キャンパス内に移転し、民間企業への技術供与を含め研究活動を推進している。なお、大学院工学研究科総合工学専攻博士後期課程材料・表面工学専修(博士号取得)および物質生命科学専攻博士前期課程材料・表面工学専修(修士号取得)が設置され、社会人を含めた教育活動を行っている。また、文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」認定の「材料・表面技術マイスタープログラム」(1年コース)も進めている。

連絡先:
〒250-0042 神奈川県小田原市荻窪1162-2
TEL:0465-32-2600(代表)、FAX:0465-32-2612
URL:http://mscenter.kanto-gakuin.ac.jp/
Email:seminar@kanto-gakuin.ac.jp

◎執筆者紹介:高井 治(たかい おさむ)
関東学院大学 材料・表面工学研究所 所長

目次

はじめに

第1章 ドライプロセスの基礎
1.1 真空技術
1.2 プラズマ技術
1.3 基板技術
1.4 評価技術

第2章 ドライプロセスの特徴と種類
2.1 ドライプロセスの特徴
2.2 ドライプロセスの種類

第3章 物理蒸着(PVD)法
3.1 真空蒸着
3.2 イオンプレーティング
3.3 スパッタリング

第4章 化学蒸着(CVD)法
4.1 CVD
4.2 プラズマ重合

第5章 ドライプロセス表面加工法
5.1 エッチングの用途と種類
5.2 等方性エッチングと異方性エッチング
5.3 薄膜エッチングの特徴
5.4 ウェットエッチング
5.5 ドライエッチング

第6章 ドライプロセス表面改質法
6.1 ドライプロセスによる表面改質
6.2 無機材料のプラズマ表面改質
6.3 高分子材料のプラズマ表面改質
6.4 イオン注入

第7章 ドライプロセスの応用
7.1 機械的機能膜
7.2 光学的機能膜
7.3 電磁気的機能膜
7.4 化学的機能膜
7.5 生物・医学的機能膜

第8章 機能性薄膜
8.1 DLC膜
8.2 透明導電膜
8.3 自己組織化単分子膜(SAM)

第9章 ドライプロセスの最新技術・研究
9.1 コーティング法・装置
9.2 薄膜の構造・評価
9.3 応用技術

参考文献
索 引

はじめに

 現在、私たちの身の回りには表面処理を用いた製品がたくさんある。しかし、表面処理が施されていることには、なかなか気づかないことが多い。製品の直接目に見える個所に施される場合もあれば、目に見えない製品内部に施される場合もある。
 例えば、次のような製品に表面処理は使われている。スマートフォン・携帯電話、めがね・カメラのレンズや金属フレーム、電気製品の集積回路をはじめとする多くの電子部品、液晶、有機ELなどのディスプレイ、電卓の太陽電池やディスプレイ、腕時計のケースやバンド、磁気ディスク・磁気テープ、CD、口紅のキャップなど、いろいろな製品において、表面処理は主役や脇役として、あるいは黒子的な存在として、その役割を果たしている。
 「表面処理(surface treatmentまたはsurface finishing)」という用語は、『材料表面の性質を高めるために施される加工法』をいうが、最近では、「表面改質(surface modification)(広義)」と言われることも多い。表面処理が施される材料は、「基板(substrate)」と呼ばれる。
 基板に施される表面処理には、大きく分けて2種類ある。1つは、『地面に雪が降り積もるように、外部から何らかの物質が基板表面に積まれていく方法』である。この積まれてできる層は、「膜(film)」と呼ばれる。この膜も、その厚さにより「薄膜(thin film)」と呼ばれたり、「厚膜(thick film)」と呼ばれたりする。この薄膜と厚膜の境の厚さは決まっていないが、5μmであったり、10μmであったりする。この表面処理の方法を、「堆積、デポジション(deposition)」という。
 もう1つは、『例えが良くないかも知れないが、切ったりんごの表面が時間とともに茶色に変色して行くように、基板自身が外部と反応し、化学変化を起こし、内部とは変化した層が基板表面にできていく方法』である。りんごの場合は、含まれているポリフェノールが酸素と反応し、茶色く変化した層が形成される。金属の場合には、空気中の酸素や水蒸気と反応し、酸化物層あるいは水酸化物層が表面に形成される。ステンレス鋼の場合の不働態皮膜やシリコンの場合の自然酸化膜は、空気中に置かれただけで、自然に形成される。このような表面処理法を、「表面改質(狭義)」という。この場合も、表面に形成される層は、薄膜であったり厚膜であったりするが、薄膜の場合の方が多い。この他に、表面に形を形成する「表面加工(surface processing)」がある。これはパターニング(patterning)とも言われ、表面に何らかの形を形成する。ここでは、フォトリソグラフィ(photolithography)、エッチング(etching)などの技術が使われる。この表面加工も、表面改質(狭義)の一種ということもできる。
 表面処理は、使う環境により次の2種類に分けられる。1つ目は、「ウェットプロセス(wet process)」であり、水溶液や非水溶液を用いて加工を行う。2つ目は、「ドライプロセス(dry process)」であり、真空、大気圧、高圧などの状態下で加工を行う。ウェットプロセスの代表として「めっき」があり、本書の姉妹書『めっき大全』(日刊工業新聞社、2017年)に述べられている。本書では、ドライプロセスによる表面処理を扱う。
2018年8月
高井 治

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