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実際の設計選書
差別化戦略のための生産システム
プロセス技術と設備技術の融合

定価(税込)  3,672円

監修
編著
サイズ A5判
ページ数 320頁
ISBNコード 978-4-526-07953-5
コード C3053
発行月 2019年03月
ジャンル 機械

内容

本書は生産設備の設計に際して、どのような考え方で生産プロセスを設計し、どのように生産設備を設計すれば、差別化戦略に沿った生産システムが実現するのかを解説した本。学術的な詳細の話は避け、実際の生産設備設計ができる具体的な方法を実例とともに記述する。

石村和彦  著者プロフィール

(いしむら かずひこ)
1977年 東京大学工学部産業機械工学科卒業
1979年 東京大学大学院修士課程修了
1979年 旭硝子(現AGC)(株)入社.以来,関西工場およびエンジニアリング部にて硝子関係生産設備の設計・開発・保全関係の仕事に従事.
2000年 液晶用硝子の生産会社である(株)旭硝子ファインテクノ(現AGCディスプレイグラス米沢)代表取締役社長
2007年 旭硝子(現AGC)(株)エレクトロニクス&エネルギー事業本部長 上席執行役員
2008年 同社 代表取締役社長執行役員
2015年 同社 代表取締役会長
2018年 同社 取締役会長著書に,「生産システムのFA化設計」,「続・実際(日刊工業新聞社)「実際の設計」の設計」(いずれも共著・日刊工業新聞社),「The Practice of Machine Design」(共著・OXFORD)

目次

監修者のことば
はじめに

第1章 生産システムの重要性
1.1 強い製造業とは
1.2 製造業における生産システム
1.3 生産システム構築の流れ

第2章 差別化された生産システムを企画する
2.1 差別化に必要とされる要素
2.1.1 製品の特性や品質で差別化する
2.2 差別化された生産システムを考える
2.2.3 プロセス技術者,設備技術者の役割と使命
2.3 差別化された生産システムの実例
2.3.3 セーレン

第3章 コア生産技術を開発する手順と実例
3.1 コア生産技術の開発
3.1.1 思考展開
3.1.2 技術調査
3.1.3 原理確認
3.1.4 量産性検証
3.1.5 解決困難な課題への取り組み
3.2 原理確認や量産性確認で失敗する場合
3.3 コアとなる生産技術開発のまとめ方

第4章 生産設備の実現
4.1 設計企画
4.1.1 生産設備実現のための3つの目標と役割分担
4.1.2 設計企画内容の実現可能性判断
4.2 基本設計
4.2.1 単体設備の基本設計
4.2.2 ライン化設備の基本設計
4.3 詳細設計
4.3.1 単体設備
4.3.2 ライン化した場合
4.3.3 詳細設計における差別化+α
4.4 設備設計検証

第5章 差別化された生産システム構築の具体例
5.1 生産システムの基本諸元と設計企画書
5.2 基本設計書と基本仕様書
5.3 FS判断(Feasibility Study,実現可能性の最終判断)
5.4 設計計算事例
5.5 設備の設計検証リスト

第6章 生産設備設計に必要な具体的知識
6.1 駆動系を設計する
6.1.1 駆動機構のモデル化と負荷の見積もり方
6.1.2 慣性モーメントI
6.1.3 モータの選定
6.1.4 回生の意味と計算
6.1.5 駆動系におけるセンサ
6.2 機械要素や機器を選定する
6.2.1 チェーンとベルト
6.2.2 駆動ねじ
6.2.3 直動ガイド
6.2.4 ラック・アンド・ピニオン
6.2.5 軸受
6.3 熱を制御する
6.3.3 生産技術者として熱を扱う際のポイント
6.4 機械構成部材の選定と構造設計
6.4.3 軸のねじり
6.4.4 代表的な金属材料の物性値
6.5 流体機械や配管を選定する
6.5.1 流体機械や配管の選定手順
6.5.2 送風機と圧縮機
6.5.3 ポンプ
6.5.4 真空ポンプ
6.6 機械設計時に電気・システム設計も考慮する
6.6.1 制御盤
6.6.2 電線・ケーブル
6.6.3 配線敷設における注意点
6.6.4 制御システムのソフトウェアについて
6.6.5 生産システム周りの情報システムについて

第7章 生産システム構築の周辺
7.1 これが日本の生きる道 Y.H
7.2 材料づくりと形づくり T.Y
7.3 経験不足による苦い経験 M.F
7.4 差別化された生産システムを短期間で実現させた事例 S.I
7.5 ソフトウェアの生産システム K.F
7.6 実際の異物対策 M.Y
7.7 生産技術者の心得 ~生産システム開発を成功させるために~ S.M
7.8 ITシステムによる生産技術情報の蓄積と活用の考え方 S.F
7.8.1 機能・性能軸で技術情報を蓄積・活用しよう
7.8.2 物理現象モデルの視点で失敗知識を蓄積・活用しよう
7.9 化学屋から見た生産技術 H.K
7.10 DRAMの事例に学ぶ差別化ポイント決定の重要性 K.I
7.11 今後の製品開発とモノづくり Y.H

おわりに
索引

はじめに

 筆者は機械工学を専攻して修士課程を1979年に修了した後,直ちに旭硝子株式会社(現社名はAGC株式会社)に入社した.機械工学といっても生産技術の研究室を卒業したので,機械を使って物を作る仕事に就きたいと思って旭硝子に入社した.しかし,配属されたのは関西工場施設部工作課で,ガラスを生産する部署ではなく,生産設備の設計,建設,整備や故障修理等を担当する部署であった.当時,CADなどはまだない時代で,事務所にはドラフターがずらりと並んでいた.就職面接のとき,旭硝子の人事の担当者は大部分の設備は外部から購入してきているので自社で設計することはほとんどないと言っていたが,大嘘であった(現在はこのような誤解はなくなっている).
 このときから筆者の苦闘が始まった.大学時代には,畑村洋太郎先生の研究室で機械設計の基本は一応勉強していたが,生産設備の設計などは習ったことがなかった.しかし,必要性とは恐ろしいもので,懸命に努力し,30歳のころには新入社員を教育する立場になっていた.ところが,いざ教育しようとしても,まともな教育資料もなく,困っていた.そこで,畑村先生の研究室で使っていた手作りの学生向けの教育資料をベースにして機械設計の本を書こうと提案したところ,実際の設計研究会が発足し,1988年に『実際の設計』が出版された.筆者も一部を執筆し,社内でも教育資料として使うことができた.しかしこの本は一般的な設計に関する本で,生産設備についての特別な記述はなかった.そこで,一念発起し,自ら生産システムの本を執筆して,自社の新人教育に使える教科書を作ろうと既刊の『生産システムのFA化設計』の執筆を始めた.4年ほど格闘して1993年にやっと既刊が出版された.
 当時は設備を自動化することが事業の差別化につながると考えていたが,その後様々な経験を重ねるうちに,それほど単純ではないということがわかってきた.特に2008年に旭硝子の社長に就任して以来,強い製造業とはどのような会社なのか,特別な興味を持って真剣に考えるようになった.
 2008年以来,様々な機会を通じて40社以上の製造業とコンタクトし,生産システムについて様々な議論をした.また,実際に見学させていただいた工場は海外も含めて50カ所以上になった.AGC(株)の工場も入れるとこの8年余りの間に130カ所以上の工場を見学したことになる.
 これらの議論や見学を通じて自ら考えた結果,後に示すような私なりの結論に至った.
 この結論は既刊の『生産システムのFA化設計』では抜けていた概念であり,是非,既刊を全面的に改定したいと考えていた.また,既刊の技術的な記述も世の中の進歩に対応していないところもあり,改定する必要性を感じていた.そんなときに日刊工業新聞社の天野さんから既刊の改定の話をいただき,まさに絶好の機会と考えて全面的に改定することにした.以下に本書の概要について述べる.
 本書では製造業において,強い事業を築くためには何が必要であるかから考える.後の章で詳しく述べるが,筆者の結論は差別化された価値を持った製品とその製品を生産するための差別化された生産システム(生産プロセスと生産設備が一体となったもの)を有する企業こそが最強の製造業であるという考え方である(図0.1参照).「差別化された」とは他と比べて優位である,他にはない優れた特徴を持つ,オンリーワン,などの意味合いがある.
 強い事業を築くにはまずは差別化された製品が重要である.しかし製品がいったん世の中に出まわれば,比較的,早期に似たような製品を競合他社が発売し,価格競争にさらされて十分な収益のある事業を継続できないことが非常に多い.したがって多くの場合,製品だけで差別化された製造業では長期的に強い事業を維持することが難しい.
 そこで重要なのが製品に付加価値をつける工程の生産システムを差別化することである.そうすれば,かなり長期にわたって優位な事業環境を継続できることが多い.これは,生産システムの場合は特許で開示したとしても現物をクローズドにすることができるので,差別性を維持しやすいからだと考えている.
 本書では,この生産システムに着目して,どのような考え方で生産システムを構築すれば,製造業において差別化された生産システムを実現できるのかについて述べ,その方向性を示したい.また,概念的な設計の考え方だけでなく,具体的に生産システムを構築するために必要な基本的な知識について解説する.
 そして,本書は初めて,実際の生産システムの構築に取り組んだときに,実際にどのような手順で進めれば,新しい生産システムが作れるかについても解説する.できるだけ,学術的な詳細の話は避け,実際的かつ具体的な方法を記述した.具体的には以下の内容と構成になっている(図0.2参照).

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