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図解 道具としての流体力学入門

定価(税込)  2,420円

著者
サイズ A5判
ページ数 136頁
ISBNコード 978-4-526-07936-8
コード C3053
発行月 2019年02月
ジャンル その他 機械

内容

本書は、流体力学の全体像を最低限の知識に絞って簡易な読者に理解させることを目的としている。流体機械の設計で必要な流速、圧力、そして流体から受ける力の解析ができるために必要な基礎事項を、実例を交えながら解説する。

西野創一郎  著者プロフィール

(にしの そういちろう)
兵庫県生まれの愛媛県育ち。工学博士。慶應義塾大学大学院博士課程終了後、茨城大学へ。現在、同大学院理工学研究科量子線科学専攻、准教授。専門は材料力学、材料強度学(金属疲労)、塑性加工、溶接工学、X線・中性子線を利用した材料や構造物の解析など。100件以上の企業との共同研究を通じて、ものづくりと基礎工学をつなぐ仕事に奮闘中。著書:「図解 道具としての材料力学入門」(日刊工業新聞社)

目次

第1章 流体力学とはどんなものか
1-1 四力学はどんなところで役立つか
1.四力学とは? 
2.それぞれの力学の目的は?
3.四力学は設計でどのように役立つのか?
1-2 流体力学はどんなところで使われるの?
1.私たちの身のまわりの流体とは? 
2.流体の利用方法は? 
3.流体機械と作動流体とは?
1-3 たったこれだけ流体力学の全体像(1)
何を求める道具か
1.流体力学の目的は? 
2.解析に必要な方程式は?
3.圧縮性、非圧縮性とは?
1-4 たったこれだけ流体力学の全体像(2)
運動方程式と保存則を使う
1.加速度の表現方法は? 
2.流体に作用する外力とは?
3.流体力学における保存則とは?
1-5 設計で活用される流体力学
1.流体力学の活用分野は? 
2.解析のポイントは? 
3.シミュレーションとは?

第2章 そもそも流体って何だろう
2-1 分子の運動から流体を理解する①
固体、液体、気体の違いは何か
1.水の状態図とは? 
2.原子・分子の運動とは? 
3.固体、液体、気体の特徴は?
2-2 分子の運動から流体を理解する②
分子の数や速度を求めてみよう
1.アボガドロの法則とは? 
2.気体と液体の単位体積あたりの分子数の差は? 
3.気体分子の速度は?
2-3 圧力を分子のふるまいから説明する
1.空気の成分は? 
2.気圧とは?
3.分子レベルで気圧を考えるとどうなる?
2-4 流体の性質とは①圧縮性と粘性から流体を理解する
1.圧縮性を考慮しなければならない条件は? 
2.粘性とは? 
3.ニュートンの粘性法則とは?
2-5 流体の性質とは②非ニュートン流体の性質
1.非ニュートン流体とは? 
2.流動曲線とは? 
3.レオロジーとは?

第3章 止まっている流体を調べよう
3-1 止まっている流体に働く力―パスカルの原理
1.静止流体における力のつりあいとは? 
2.パスカルの原理とは? 
3.流体を使って力を増やす方法は?
3-2 重力場における静止流体の圧力変化
1.登山では気圧はどのように変化するか? 
2.エレベータで耳の中の変化 
3.重力場での圧力分布を表す式は?
3-3 圧力はどのようにして測定するのか①マノメータの原理
1.気圧の測定方法は? 
2.マノメータとは? 
3.ゲージ圧力と絶対圧力の違いは?
3-4 圧力はどのようにして測定するのか②(例題)
3-5 浮力って何だろう①浮力と重力
1.アルキメデスの原理とは? 
2.浮力の大きさはどのように表される? 
3.重心、浮心とは?
3-6 浮力って何だろう②浮力計算をしてみよう

第4章 運動している流体を調べよう−基礎編
4-1 運動している流体を調べるためのキーワード
1.圧縮性、粘性とは? 
2.定常/非定常流れとは? 
3.流れの次元とは?
4-2 流れを可視化する方法①PIV法とトレーサ粒子の運動
1.流れの可視化方法は? 
2.PIV法とは? 
3.流線、流脈線、流跡線とは?
4-3 流れを可視化する方法②流線、流脈線、流跡線を描く
1.流線の微分方程式は? 
2.流跡線の微分方程式は?
3.定常/非定常流れで流線は変わる?
4-4 流体だって変形する
1.流体の変形パターンは? 
2.伸縮変形速度とは? 
3.せん断変形速度とは?
4.回転と渦度とは?
4-5 流体運動では加速度の表現が独特だ
1.ラグランジュの方法とは? 
2.オイラーの方法とは? 
3.実質微分とは?

第5章 運動している流体を調べよう
―理想流体の運動方程式編
5-1 流体でも質量保存則は大事(連続の式)
1.流体の運動解析における未知数は? 
2.流体の運動方程式とは? 
3.連続の式とは?
5-2 理想流体に働く体積力と面積力
1.理想流体に働く力は? 
2.体積力とは? 
3.面積力とは?
5-3 理想流体の運動方程式を立ててみよう
(オイラーの運動方程式)
1.流体の質量、加速度は? 
2.流体に働く力は? 
3.オイラーの運動方程式とは?
5-4 オイラーの運動方程式を解いてみよう(例題)

第6章 ベルヌーイの式を活用して流速や圧力を求めよう
6-1 保存則を活用してより簡単に流速や圧力を計算しよう
1.流体力学における保存則とは? 
2.1次元流れとは? 
3.管内の流速の求め方は?
6-2 ベルヌーイの定理はエネルギー保存則だ
1.流体が持つエネルギーとは? 
2.ベルヌーイの定理とは? 
3.ベルヌーイの定理が成り立つ条件とは?
6-3 ベルヌーイの式はオイラーの運動方程式から導かれる
1.力学におけるエネルギー保存則とは? 
2.エネルギー保存則の導き方は? 
3.ベルヌーイの式の導き方は?
6-4 ベルヌーイの式を活用しよう(例題)
6-5 運動量保存則を使って流体から受ける力を計算しよう
1.運動量保存則とは? 
2.運動量保存則の導き方は?
3.噴流が板に当たったとき受ける力は?
6-6 運動量保存則を活用しよう(例題)

第7章 運動している流体を調べよう
―粘性流体の運動方程式編
7-1 粘性を持つ流体が流れると粘性力が発生する
1.ニュートンの粘性法則とは? 
2.せん断変形による粘性力は? 
3.伸び変形による粘性力は?
7-2 理想流体の運動方程式に粘性力を加えよう
(ナビエ・ストークスの方程式)
1.粘性流体に作用する力は? 
2.ナビエ・ストークスの方程式とは? 
3.動粘性係数とは?
7-3 ナビエ・ストークスの方程式を解いてみよう(例題)
7-4 円管内の粘性流体の流れを解析しよう
(ハーゲン・ポアズイユ流れ)
1.円柱座標系とは? 
2.円柱座標系でのナビエ・ストークスの方程式は? 
3.ハーゲン・ポアズイユ流れとは?

第8章 物体まわりの流れの性質と、流れの中の物体が受ける力
8-1 流体の粘性が物体にどのくらい影響するか
1.理想流体と粘性流体の違いは? 
2.レイノルズ数の意味は? 
3.レイノルズ数の求め方は?
8-2 流れの性質はレイノルズ数2320を境に変わる(層流と乱流)
1.層流、乱流とは? 
2.層流から乱流に遷移する条件とは?
3.乱流の発生原因は?
8-3 縮小モデルを用いた流体実験に必要な「相似則」
1.実機における流れを縮尺モデルで解析するためには? 
2.相似則とは? 
3.相似則の証明は?
8-4 物体近傍の流速は物体との摩擦で遅くなる(境界層)
1.すべりなしの条件とは? 
2.粘性流体における摩擦とは? 
3.境界層とは?
8-5 管内の流れでは内壁との摩擦で圧力損失が起こる
1.摩擦によるエネルギーの損失とは? 
2.ヘッドとは? 
3.ダルシー・ワイスバッハの式とは?
8-6 物体まわりの流体は剥がれて渦になる
1.理想流体と粘性流体における物体まわりの流れは? 
2.理想流体と粘性流体で物体が受ける力は? 
3.カルマン渦とは?
8-7 物体が流れから受ける「抗力」
1.抗力とは? 
2.摩擦抗力と圧力抗力とは? 
3.抗力の求め方は?
8-8 流れのはく離を防いで揚力を高める(飛行機の安定飛行)
1.揚力の求め方は? 
2.翼の性能と迎え角の関係は? 
3.マグナス効果とは?

はじめに

 皆さんは「流体力学」に対してどのようなイメージをもたれているでしょうか。流体力学は機械工学における四力学の一つであり、ものづくりを進めるために必要不可欠な学問です。しかし、自分が学生時代に学んだことを思い出してみると、形の定まらない物体の運動を扱う、数学的に難しい学問だというイメージがありました。大学で流体力学の授業を担当したときに、いかにわかりやすく教えるか苦労したことを覚えています。
 世の中には流体力学に関するたくさんの教科書があります。それぞれが非常に工夫されており、どの領域を重点的に説明するかという点で特徴があります。一方で、流体力学の全体像を最低限の知識で簡単に説明した教科書は多くないと感じていました。また、頻出する数式の難しさから学ぶことが嫌になってしまう場合もあります。この本では、流体力学の全体像をいかに簡単に理解するかという点に力を注いで書きました。数式についても最低限の式(これだけでも難しいのですが)について、その導出過程の物理的な意味を明確にして、じっくり解説しました。
 流体力学は、エンジニアがものづくりを行う上で必要とされている学問の一つですが、最も重要な目的は、流体の運動における「流速」「圧力」そして「物体が流体から受ける力」を明らかにすることです。また、流体力学はエンジニアが設計や製造現場で起きる事象を論理的に解析する有効な道具であり、より良いものづくりに役立つものでなければなりません。このような観点から、流体力学を設計において役立つ道具として捉えて、それぞれの理論や公式と製造現場における工学的事象とを密接にリンクさせて、読者にとって本当に役に立つ新しい「流体力学」の教科書を提供したいという思いでこの本を書きました。本書の特徴は下記の通りです。
①流体力学における全体像を最小限の数式で理解することができる。
②設計や製造現場でエンジニアが直面する事例を例題として取り上げ、道具としての流体力学をいかに活用するか解説する。
 著者は加工や接合、そして製造現場における不具合解決など100件以上の共同研究を通じて様々なものづくりの現場を見てきました。その経験から、実学としての流体力学を道具としてうまく使うためには、実例をきちんと示して基礎理論との結びつきを明らかにすることが重要であると考えています。
 余談になりますが、塑性加工や熱処理、溶接など製造に関連する技術は、工業製品の創成にとって重要な役割を占めています。しかし、製品開発の実務を担う設計者たちが、自分たちの設計した製品がどのようにして加工され、組み立てられていくか知らないという話を聞いて驚いた経験があります。同様に、流体機械の設計者が、流体力学を有効な道具としてどのぐらい活用しているのかが気になっています。様々な基礎工学を道具として活用し、ものづくり全般を広く見据えて(一歩引いて全体を見て)自分たちの製品や技術の位置付けや役割を把握してほしい、そして幅広い素養を持ったエンジニアとして育ってほしいという願いを込めてこの本を書きました。ものづくりに関わるエンジニアの皆様にとってこの本が少しでもお役に立てれば望外の喜びです。
 本書は道具としての流体力学・入門編です。流体力学のすべてをこの本で伝えることは困難でしたので、最も重要な基礎事項に絞って平易に解説しました。物理と数学の基礎知識があれば誰でも理解できると信じています。さらに詳しい解説は別の機会に考えたいと思います。
 本書の企画から発行まで日刊工業新聞社出版局書籍編集部の天野慶悟氏には大変お世話になりました。著者の流体力学に対する思いを書籍として実現することができたのも天野氏のおかげです。厚く御礼申し上げます。最後に、執筆を温かく見守ってくれた家族に感謝します。
2019年2月 
西野 創一郎

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