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おもしろサイエンス
熱と温度の科学

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07925-2
コード C3034
発行月 2019年01月
ジャンル その他 ビジネス 機械

内容

「熱」と「温度」の原理をきちんと解説し、「熱」と「温度」の両方が関わる現象を取り上げ、具体的なエピソードを交えながらやさしく解説する。また、さまざまな温度の測り方についても解説する。技術や現象の本質を捉える(科学的な)見方について楽しく学べる。

石原顕光  著者プロフィール

(いしはら あきみつ)

1993年 横浜国立大学大学院工学研究科博士課程修了

1993~2006年 横浜国立大学工学部、非常勤講師

1994年〜 有限会社テクノロジカルエンカレッジメントサービス取締役

2006~2015年 横浜国立大学グリーン水素研究センター、産学連携研究員

2014~2015年 横浜国立大学工学部、客員教授

2015年~ 横浜国立大学先端科学高等研究院、特任教員(教授)



●主な著書

・「トコトンやさしい元素の本」日刊工業新聞社(2017)

・「トコトンやさしい電気化学の本」日刊工業新聞社(2015)

・「トコトンやさしいエントロピーの本」日刊工業新聞社(2013)

・「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」監修・太田健一郎、日刊工業新聞社(2012)

・「トコトンやさしい水素の本 第2版」共著、日刊工業新聞社(2017)

・「原理からとらえる電気化学」共著、裳華房(2006)

・「再生可能エネルギーと大規模電力貯蔵」共著、日刊工業新聞社(2012)

目次

第1章 大混乱! 熱と温度とエネルギー


1 「熱い」ってどういうこと?
2 温度を測ってみよう
3 エネルギーとは何か?

4 エネルギーは保存される

5 いろんな熱がある!

6 比熱、熱容量から熱量へ

7 物質に潜む熱? -状態変化に伴って出入りする潜熱-

8 鉄が錆びたら熱が出る
9 こすると熱くなる~摩擦熱

10 エネルギーのもう1つの移動形態-仕事という作用量-
11 仕事に変わる熱

12 熱の伝わりやすさ




第2章 温度って何だろう? ~熱の特性


13 続けて仕事を取り出したい

14 サイクルを使おう
15 これが天才カルノーのサイクルだ

16 熱の仕事への変換効率~ただしサイクル

17 熱の価値は温度で決まる

18 絶対温度はこうして決めた

19 いくら熱がたくさんあっても…

20 トータルで熱の価値は下がる




第3章 温度を測ってみよう


21 温度基準としての水の状態変化

22 水の三重点

23 温度計の歴史

24 温度を測る-いろんな温度計がある-

25 熱いと膨らむ-正しくは「温度が高いと膨らむ」-

26 熱電対~温度差が起電力を産む

27 放射温度計と熱輻射
28 熱はこうして伝わっている



第4章 やはり熱が本質だった


29 真空膨張は戻れない?

30 ひそかに発生する熱-やっぱり熱が変化の方向を決めていた-

31 地球は熱を宇宙に捨てている

32 世の中は熱だらけ



Column


新しい熱力学温度の定義(その1)
新しい熱力学温度の定義(その2)

新しい熱力学温度の定義(その3)
新しい熱力学温度の定義(その4)



参考文献

はじめに

 「熱」と「温度」ほど、身近でありながら、適当に使われている物理量はないのではないでしょうか。実際に「温度」とは何かと問われても、きちんと答えられる人はほとんどいないでしょう。さらに「熱」と「エネルギー」の混同も行われていて、「熱エネルギー」のような物理化学的には正しくない用語も、ごく普通に用いられています。これらは、日常会話としては意味が通じれば、特に問題はありませんが、やはり正しい意味を知っておくことが望ましいと思います。また逆に、なぜ誤った用いられ方をしているのかが理解できれば、それは現象の本質を知ることにつながります。
 もう1つ「熱」に注目したい理由があります。それは「熱」は驚くほど深く、自然現象の本質とかかわっているためです。熱は「普遍性」と「特殊性」の2面を併せ持っています。そして「熱の特殊性」は、自然現象の変化の方向性と表裏一体となっています。この自然現象の変化の方向性は、エントロピーという概念で統一的に理解することができます。ある意味で、エントロピーが熱の特殊性を表していると言ってよいでしょう。そうすると、エントロピーという概念を使わなくても、「熱の特殊性」のみに注目して、自然現象の変化の方向性が取り扱えるはずです。本書ではエントロピーという用語は使っていませんが、熱の特殊性を変化の方向性と結び付けた説明を行いました。特にあらわには観察しにくいのですが、「いつの間にか、ひそかに発生する熱」を導入して説明を加えました。これは従来の本にはない特徴だと思っています。

 温度に関しては、熱の価値の指標であるという、本質的な理解をしていただけるように、仕事との交換効率やカルノーサイクルについても説明しました。温度とは何かを追求したトムソン(のちのケルビン卿)の気持ちを少しでも感じていただけたらと思います。

 またちょうど、2019年5月20日の「世界計量記念日」から、新しい(熱力学)温度の定義が施行されます。温度の定義としては、およそ50年ぶりの変更です。定義が変更されたからといっても、私たちの生活にはほとんど影響がありません。それでも変更するには何らかの理由があるはずです。私たち人類は長い間、温度とは何かという問題を考え続けてきました。その1つの到達点が、ボルツマン定数を用いたミクロな視点からの新しい温度の定義です。本書ではあまりミクロな観点からアプローチしていないので、新しい定義に関する内容は、各章末のコラムで取り上げました。
 本書では本質の理解だけでなく、温度計の種類や熱と温度の両方がかかわっている現象を取り上げ、それらを通して技術や現象の本質をとらえる見方を楽しく学んでいただくことを目的としました。本書を通して、「熱と温度」に興味を持っていただき、さらに専門書に進んで深く理解していただくことを願っています。
 本書の刊行に際して、執筆の機会をいただいた日刊工業新聞社の奥村功出版局長、編集・構成上のアドバイスおよび「温度くん」と「熱ちゃん」のアイデアをいただいたエム編集事務所の飯嶋光雄氏、また本文デザインをご担当いただき、今回もまた筆者が遅筆のために多大なご助力をいただいた志岐デザイン事務所の奥田陽子氏に謝意を表します。
 
 最後に、あれこれ25年以上にわたって物理化学勉強会で一緒に議論していただいている物理化学マニアの方々に深く感謝いたします。

 
2019年1月

横浜国立大学 石原顕光

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