内容
ロジスティクスは、現在、物流費の上昇、人手不足、複雑化する流通への対応など深刻な問題を抱えている。そこで本書では、これらの課題を解決する第4の革新「ロジスティクス4.0」によるIoTやAI技術の応用、サプライチェーン全体での効率化などを事例をあげてわかりやすく解説していく。
前田賢二 著者プロフィール
(まえだ けんじ)
株式会社クニエ ロジスティクスグループリーダー ディレクター
大手物流会社で要職を歴任した後、外資系コンサルティングファームに入社してロジスティクスプラクティスを設立。ロジスティクス戦略策定・ロジスティクスビジネスデザイン・ロジスティクスIT導入の各プロジェクトをプラクティスリーダーとして担当。その後日系コンサルティングファーム・大手外資系3PLプロバイダーを経てクニエに入社。産業を問わず、各種ロジスティクスコンサルティング・物流コンサルティングを展開。クニエにおけるロジスティクスソリューションの責任者を務める。本書では全体の監修にあたる。
㈱クニエ ロジスティクスグループ 著者プロフィール
(かぶしきがいしゃ くにえ ろじすてぃくすぐるーぷ)
目次
はじめに
第1章 ロジスティクスの現状と課題
1そもそもロジスティクスとは何を指すのか?
その進化の過程からみえるもの
2喫緊の課題である人手不足
3現場にはびこる属人化が障害となる
4広がる物流格差が障壁になる
5日本特有のロジスティクスを考える
第2章 ロジスティクス4.0とはいったい何なのか?
1ロジスティクス4.0とは何か
2AI・IoT、改革を実現する技術の発展
3ロジスティクス4.0で実現される2つの標準化
4ロジスティクス4.0で実現される省人化
5ロジスティクスを取り巻く環境の変化
COLUMN 物流は真心を込めたサービスだ
第3章 現在=ロジスティクス3.Xの姿とは
1ロジスティクス4.0に向けて歩み始めた企業
2事例① 先進的なロジスティクスを構築するeコマース企業
3事例② 物流のシェアリング実現に挑むプラットフォーマー
4事例③ 自律する物流センターを目指す老舗マテハンメーカー
5現状でのロジスティクス3.Xの実際
COLUMN
物流はモチベーションが大切だ
第4章 ロジスティクス4.0への取り組みと壁
1ロジスティクス4.0に向けたアプローチ
2現在の標準化の実態とロジスティクス4.0の標準化
3標準化の実現に向けた課題と6つの取り組み
4現場における省人化の実態
5省人化の実現に向けた課題と3つの取り組み
第5章 ロジスティクス4.0の今後の展開
1ロジスティクス4.0以降の世界と物流
2ロジスティクス4.0の先で生まれるロジスティクスサービス
3すべては日本型ロジスティクス4.0から
COLUMN
物流マンは現場感を忘れずに
引用・出典一覧
監修者略歴・著者略歴
はじめに
私が物流に携わるようになって早30年になろうとしています。物流事業者の視点、コンサルタントの視点から間近で物流の変遷を見てきましたが、この30年間、物流は凄まじいスピードで進化を遂げたと実感しています。思い返すと、30年前の物流現場では、ねじりハチマキに手鉤(てかぎ)を持った作業員があちらこちらにいて、荷物に手鉤を刺して、ひょいと肩に持ち掛ける、見方を変えれば「いき」で「いなせ」な職人気質な業界であったように思います。 近代化された今では考えられない光景ですが、ある意味、閉鎖的な世界であったのかもしれません。
そのような物流業界が 変貌を遂げたのは、1980年代に訪れたサプライチェーンとロジスティクスの概念の渡来からだと思います。
この少し前から企業は生産等の上流の改善には着手していたのですが、長らく物流だけが手つかずのままでした。しかしながら、サプライチェーン全体を考えると、物流とて見て見ぬふりをしている訳にはいかなくなり、企業はこぞってこの見直しを図りました。それと同時に他のサプライチェーンの要素と有機的に結合して、今日のビジネスシステムの構築に寄与するようになったのです。
様々な歴史を経て、物流は近代化・高度化しました。消費行動の多様化などの潮流に大きく影響を受け、良くも悪くも物流は今や注目を浴びる存在に変わり、消費者は物流を身近に意識するようになりました。
また、自然災害などによる物資供給の途絶などを目の当たりにし、物流はライフラインを支える大きな存在であることに気づくにいたりました。
その一方、物流は労働集約型産業であるために、少子高齢化社会による労働人口減少の影響をまともに受けています。もはや、このままでは社会インフラあるいは生活インフラとしての物流が成り立たなくなることが予想されるのです。
今回、本書を出版するきっかけとなったのは、改めてこの問題に対する警鐘を鳴らすと同時に、それを解決するひとつの方法として「日本型ロジスティクス4.0」を提起したいと考えたことに起因しています。
物流はまだまだ日進月歩で進化する領域です。また、我々世代では考えが及ばないテクノロジーの進化に支えられて新たな発展を遂げる可能性を秘めています。物流のさらなる発展により、人々の暮らしはより一層豊かなものになるはずです。本書を通じ、日本型ロジスティクス4.0の普及と夢のある物流が進展することを期待してやみません。
最後に、出版にあたり多大なご助力をいただきました日刊工業新聞社の藤井様、参考とさせていただきました企業各社様、弊社ロジスティクスグループならびにマーケティング担当にこの場を借りて御礼申し上げます。
平成31年1月吉日
株式会社クニエ ロジスティクスグループリーダー ディレクター
前田賢二