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図解よくわかる
屋内測位と位置情報

定価(税込)  2,200円

著者
サイズ A5判
ページ数 172頁
ISBNコード 978-4-526-07904-7
コード C3050
発行月 2018年12月
ジャンル その他

内容

スマホの普及やIoT化に伴い、位置情報を活用する必要性・可能性は拡大している。しかし屋内では衛星電波が届かないため衛星測位が使えず、位置情報を得るにはそれに代わる技術が必要である。意外に知られていない屋内測位の全体像を初学者向けに解説する。

西尾信彦  著者プロフィール

(にしお のぶひこ)
●学歴
 
東京大学工学部計数工学科数理工学コース卒業 (1986年)
 
東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了 (1988年)
 
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 論文博士 (政策・メディア、2000年)



●職歴
 
有限会社アクセス 研究開発室 (1992~1993年)
 
慶應義塾大学SFC環境情報研究所 (1993~1996年)
 
慶應義塾大学環境情報学部 助手 (1996~1999年)
 
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 講師 (2000~2001年)
 
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 助教授 (2001~2003年)
 
立命館大学理工学部情報学科 助教授 (2003~2004年)
 
立命館大学情報理工学部 助教授 (2004~2005年)
 
立命館大学情報理工学部 教授 (2005年~)
 
兼任:科学技術振興機構 さきがけ研究21研究者 (2002~2005年)
 
兼任:Google Inc. Visiting Scientist (2007~2008年)

目次

第1章 屋内測位の基本
1屋内測位の可能性→ 人生の2/3の時間は屋内で過しています
2屋内測位はなぜむずかしいのか→独自の技術も必要な上に緯度と経度だけでは役に立たない?
3屋内測位技術の現状 →ランドマーク方式と自律航法から絶対位置推定へ
4屋内測位の特徴 →絶対位置と相対位置、ハイブリッドとシームレス
5屋内測位の活用 →ナビゲーションからマーケティング、防災、バリアフリーに
6初期の屋内測位「赤外線通信」 →Active Badgeはウェアラブルとセンサーネットワークのはしり?
7初期の屋内測位「超音波測位」→超音波は遅い?
コラム◎最も測位がむずかしい「屋内」はどこ?

第2章 PDR測位手法
8PDRの概要 →PDRは相対的だけど、環境へのインフラは不要
9基本的なPDRの仕組み:端末座標系と世界座標系→センサーの出力値はそのままでは使えない?
10基本的なPDRの仕組み:ステップの検知→平滑化した波形から極値を見つける
11基本的なPDRの仕組み:曲りの検知→ユーザは直進か曲進しかしない?
12階層間移動とPDR→階層間移動を加速度で認識するのは困難!
13端末の持ち方とPDR→人類の半分は鞄に入れてます
14PDRの弱点→スマートフォンのセンサーは安価で精度があまり期待できません
15PDRの活用法→PがとれてX、DがとれてA?
コラム◎センシングアプリと闘うスマートフォンのOS

第3章 Wi-Fi測位手法
16Wi-Fi測位の概要 →基地局の位置が頼り
17Wi-Fi測位の仕組み:三点測位方式→3つの基地局からのビーコンを集めよう
18Wi-Fi測位の仕組み:フィンガープリント方式→基地局の「指紋」を集めよ!
19Wi-Fi測位の仕組み:距離関数の工夫→一筋縄ではいきません
20Wi-Fi測位の仕組み:フィンガープリントの経年劣化→スマートモビリティとビッグデータで対抗?
21Wi-Fi測位の仕組み:GMMによる電波強度地図→「地図」は軽いほど喜ばれます
22Wi-Fi測位の仕組み:パーティクルフィルタ方式→粒子をばらまいて近似計算を効率化せよ
23Wi-Fi測位の弱点1→落とし穴はいろいろとあります
24Wi-Fi測位の弱点2→落とし穴は環境側にもあります
25周期的なWi-Fi電波観測の影響→立ち止まっていると精度が上がる?
26Wi-Fi測位の活用→松竹梅とあります
コラム◎スマートフォンのセンシングを止めない努力

第4章 BLE測位手法
27BLE測位の概要→真打登場かと誰もが思った?
28BluetoothとBLE仕様→無線LANと棲み分けています
29BLEとiBeacon→電波強度はFar/Near/Immediateで
30BLEビーコンタグ→バッテリもハーベスターも給電型も
31BLE測位の仕組み→1、2、たくさん
32BLE測位環境の整備→いろいろと注意することがあります
コラム◎iBeaconを測位インフラとすべきか?

第5章 新しいセンサー・デバイスの活用
33気圧センサーの活用→ややこしい気圧と標高の関係
34気圧センサーによる階層推定→敵は台風と乗り物、特に地下鉄?
35地磁気センサーの活用→思ったより使いにくい
36カメラの利用→歩いている人たちが邪魔
37可視光通信の活用→照明から情報を照らす
38非可聴音の活用→若者が嫌うモスキートノイズを活用
39屋内版衛星測位IMES→出自の良い規格であったが普及に苦戦
40IMESからiPNTへ→今後は屋内でも高精度時刻同期が必須
41UWBの活用→最も高精度ですがすこしお高め
コラム◎手法ごとの利害得失は?

第6章 ハイブリッドとシームレス
42ハイブリッド測位とシームレス測位→どちらの測位結果を信じますか?
43パーティクルフィルタに移動モデルを導入す→無駄なパーティクルはまかないに限ります
44ケーススタディ:PDR測位の初期設定→PDR測位は必ずハイブリッドしなければなりません
45ケーススタディ:気圧とWi-Fi測位→階層と気圧の基準値をうまく使う
46ケーススタディ:測位方式の切り替え手法→不安になったり不明になったり、バックワードかキャンセルか?
47マップマッチング1→もちろん壁は通り抜けられません
48マップマッチング2→歩行軌跡の調整は伸び縮みと曲げ延ばし
コラム◎入店の判定

第7章 屋内地図と歩行空間ネットワーク
49屋内地図の必要性→地図がなければサービスができません
50屋内地図とGeoJSON→JSONは可読性もあって単純なだけに使い勝手がいい
51屋内地図と屋外地図を結びつける→共通の地物が見つかればラッキー
52歩行空間ネットワークデータとは→地図だけがデジタル化されれば十分なのではありません
53歩行空間ネットワークデータの仕様→リンクの属性にいろいろつまっています
54歩行空間ネットワークデータの作成と活用→作成は手間だけど屋内測位にも活用できる
コラム◎広場のノードはどうあるべきか?

第8章 屋内測位と位置情報の活用
55Appleの取組み1→ゆっくりとですが着実に進めています
56Appleの取組み2→屋内測位の精度は上々
57Googleの取組み1→老舗のGoogle Mapsのインドア化は期待大
58Googleの取組み2→Fused Location Providerの進化はまだ?
59Yahoo! JAPANの取組み→初めて地磁気での屋内測位を実現させました
60高精度測位社会プロジェクトの取組み→東京オリンピック・パラリンピックが一つのマイルストンです
61測位主体は誰か→私の位置を誰が知るのか
62環境がWi-Fi機器の存在を把握する1→Wi-Fi機器は常に存在を伝えるパケットを送出している
63環境がWi-Fi機器の存在を把握する2→MACアドレスの乱数化により追跡可能性は低減
64環境がBLEビーコンタグの存在を把握する→ビーコン事業者間でのアライアンスが鍵です
65屋内測位技術のBtoC活用→地下街、博物館・美術館が最初のターゲット
66屋内測位技術のBtoB活用→物流倉庫・工場・病院での活用
67屋内測位技術のBtoG活用→緊急時、災害時での活用例
コラム◎Wi-Fi探索要求パケット観測 vs 個人情報保護

第9章 屋内測位の新しい可能性
68Wi-Fi測位の新しい可能性→MITのChronosのために新しい規格を
69BLE測位の新しい可能性→AoA方式で高精度測位
70深度センサーの可能性→Kinect、Project TangoからFace IDへ
71カメラ画像認識の可能性1→ARアプリの発展とともに
72カメラ画像認識の可能性2→絶対的位置としてのCloudAnchor
73人感センサーの可能性→個人を特定せず動線のみを特定する

74屋内測位が開く新しい可能性
→ソフトやハードだけではなくライフスタイルも進化しつづけます
コラム◎覇者は誰か?

はじめに

 人々がスマートフォンを持ち歩くようになって衛星測位がいつでも利用できるようになりました。かつてカーナビゲーションが普及してきた頃、車に乗っている間は自分がどこにいるかがわかりましたが、いまは外を歩いていてもわかるようになりました。しかしまだ「秘境」があります。衛星測位が利用できない屋内や地下です。本書はこの最後の「秘境」に挑む技術である屋内測位とそれに関連する技術に関して、極力平易に解説することを目的に執筆しました。
 

都市は多くの建築物が立ち並び、特に交通の結節点となるターミナル駅の周辺は隣接する施設が接続し、雨に濡れずに移動できるようにはなりましたが、それは自分がどこを歩いているかを把握している人だけの利点です。都市部はますます発展をつづけ、地下空間も広大に広がりつづけています。位置情報の最後の秘境である屋内・地下空間は、いまや「ダンジョン」として立ちはだかっています。スマートフォンの普及のせいで衛星測位は日常化しているとともに、都市の発達もそれを前提としているかのように複雑さに目をつぶって拡大をつづけ、わかりにくくなる一方です。
 
残念ながら屋内測位は衛星測位とは違い、一つの技術で完結しているわけでも、決定版の技術が確立しているわけでもありません。いままさに日々新しい技術が展開され互いにしのぎを削っている中で、誰かがそれらを概観し整理する必要があります。本書はまさにその役割を果すものだと自負しています。屋内測位の普及はまだこれからですが、本書をお読みいただければ、その可能性は大きく広がっていることがご理解いただけると思います。



 本書の構成は、屋内測位の基礎、歴史から始まり、携帯端末のセンサーを活用するPDR、施設内に設置された無線LAN基地局からの電波観測によるWi-Fi測位、近年とみに流行しているBLEビーコンタグによる測位を説明し、それ以外に利用可能になってきたセンサーを活用した測位手法を解説します。その後、これら単一の測位技術だけでいつでもどこでも位置がわかるのには無理があるため、これらの技術をハイブリッドしてシームレスに測位可能にするための手法について説明します。さらに測位技術には欠かせない施設地図と歩行空間ネットワークデータについて説明し、Apple、Googleをはじめさまざまなプレーヤがどのように取り組んでいるか、どのように屋内測位が利用される可能性があるかを解説します。最後に新しい可能性として、最新の技術動向と筆者が予想する未来の可能性についてふれて結んでいます。すべての解説項目は2ページで完結させ、理解の助けとなるようすべての項目に図版をつけています。

 

本書の執筆に際し、多くの方々にご協力いただきましたことをここに厚く御礼申し上げます。まず本書の姉妹書にあたる「衛星測位と位置情報」の著者である久保信明先生には、私に本書の執筆を薦めていただきましたことを感謝いたします。本書で述べられている多くの知見は私の研究室に在籍した多くの卒業生との研究活動の成果のおかげです。本書に掲載したさまざまな図版の提供をいただいたCambridge大学Andy Hopper教授、名古屋大学河口信夫教授、金具浩平様、原?將吾様、クウジット様、衛星測位技術様、屋内情報サービス協会様、日本消防設備安全センター様、加古川市様、国土交通省国土情報課様、同省総合政策局様、国土地理院様にも感謝しております。また、原稿をご確認いただき誤りの指摘や貴重なコメントをいただきました森亮様、坪内考太様、塩野崎敦様、石井真様、井上綾子様、原田勝敏様、村上克明様、西山大河様にも感謝しております。本書の出版の機会を頂き、原稿に対して貴重なコメントやご配慮をいただいた日刊工業新聞社書籍編集部の国分様および関係各位の皆さまに深く感謝いたします。


 
2018年12月

 西尾 信彦 

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