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機能セル設計
“魅力あるモノ”の開発設計を10倍効率化

定価(税込)  2,484円

著者
サイズ A5判
ISBNコード 978-4-526-07878-1
コード C3053
発行月 2018年09月
ジャンル 機械

内容

新製品を開発する目的は、人々が欲しがる「新しい機能」を実現すること。そこで本書は、“機能で設計”するということをテーマに、その基礎から、機能を要素に分解してセル化し、設計情報として蓄積、機能セルとして活用、設計のスピードを10倍に上げる方法までを解説する。

梓澤 曻  著者プロフィール

(あずさわ のぼる)
1947年埼玉県生まれ
1969年3月群馬大学電気工学科卒業、
‘69年4月日立製作所入社、同社大みか工場設計部門に配属
‘69~83年 電動機の可変速制御システムの開発に従事
‘84~92年 電力・鉄鋼ほか産業用制御システムの開発に従事(主任技師)
‘92~97年 大容量インバータドライブシステムの開発に従事(副技師長)
{ドライブシステムの開発に併せて、工場全体の開発プラン指導}
{‘69~97年の間、世界初の製品開発を15製品ほか50以上の新製品の開発に従事}
‘98~00年 大みか工場の開発・技術総責任者{工場全体の製品開発及び工場全体の設計改革、生産改革を指導}
‘00~06年 情報制御システム事業部(旧大みか工場)副事業部長{工場全制御事業の経営、製品開発・設計/生産改革(LT1/5化)指導}
‘03~06年 兼情報制御システム事業部大みか事業所長兼海外合弁会社3社設立・経営兼MH製鉄機械他社外取締役
‘06~10年 同社電機グループ技師長兼CTO兼インバータ推進センター長、兼電力グループ新エネルギー推進本部員他{電機グループの事業開発及び管掌(制御,鉄道)工場の製品開発・設計/生産改革の指導}
‘11年3月日立製作所退社
‘11年4月~ (株)AZUSA PROCELL{http://www.azusa.co.jp}を設立
{国内外企業の製品開発、設計改革、生産改革関係のコンサルティング業務}
中国の風力用PCS開発をセルコンセプトで指導し、中国でのシェア20%を達成。

目次

まえがき
推薦の辞

第1章 今、製品開発設計の何が問題なのか? 
1 製品開発に長い開発期間と膨大な設計マンパワーが必要
2 設計財産の再利用を目指すアプローチが失敗してきた
3 設計業務の設計財産活用を含むIT化ができていない
4 新ジャンル製品ラッシュ期の新製品開発と新ジャンル製品飽和期の新製品開発の問題
5 「寿命ある物」での設計方法から発想転換できない
6 従来設計方法は前工程の設計情報が後工程の設計に1対1でリンクしてない
第1章のまとめ

第2章 製品開発は何をどう創るかの設計工程が重要 
1 製品開発(モノ創り)の考え方とモノ創りの流れ
1-1 製品開発(モノ創り)の考え方と定義
1-2 何をどう創るかの“設計情報の創造”がモノ創りの本質
1-3 後工程の製品製造/販売の戦略・方法は企画設計工程で創る設計情報で決定
1-4 設計情報を中心としたモノ創りから販売・サービスまでの戦略展開事例
2 製品開発の「設計情報の創造」の流れ
2-1 何を創るかの目標仕様の設計情報を創造「目標仕様設計」
2-2 新製品に「魅力・個性を持たせる機能」の設計情報を創造「機能設計」
2-3 新製品を具現化する詳細・生産・品質保証設計工程
2-4 詳細設計・生産設計情報はIT技術による変換作業に革新
第2章のまとめ

第3章 「寿命ある物」での設計から「機能セル」での設計へ 
1 従来のものづくり設計「部品・モジュール等寿命ある物での設計」
2 新しいモノ創り設計「経年変化の影響を受けない寿命の無い“機能セル”で設計」
3 機能に付随する「用途により変動する部分と時々刻々進化する部分」は最新情報でリフレッシュ
4 各機能セル単位での詳細・生産設計情報への変換や情報アップデートはITの得意分野
第3章のまとめ

第4章 目標機能を創るための機能セルと機能設計 
1 新製品の目標機能の創り方
1-1 目標仕様に必要な機能を分析し、目標機能を創る
1-2 目標機能を構成する要素機能の分析
2 機能セルの創り方
2-1 目標機能に必要な要素機能に名を付ける
2-2 機能セルの階層的分類
2-3 機能セルは常に最新情報にアップデートして新鮮さを保持
2-4 各機能セルに後工程の詳細・生産設計情報をリンク
2-5 機能セルを市場に順応させて機能を進化させる
3 機能設計
3-1 新製品の主要機能及び補助機能を機能セルで設計
3-2 新製品の目標機能を「大・中・小機能セル」を用いてツリー構成で設計
3-3 機能設計情報報の組立/具体事例
第4章のまとめ

第5章 機能設計から詳細設計と生産設計へ 
1 機能設計情報から詳細設計情報に変換
1-1 機能設計情報から製品を具現化する詳細設計へ
1-2 各機能セルを部品・モジュールで構成する回路図等の詳細設計情報に変換
1-3 追加する「新しい機能セル」の詳細設計
2 詳細設計情報から生産設計情報に変換
2-1 新機能セルの詳細設計情報を部材調達・加工・組立の生産設計情報に変換
2-2 生産設計情報から作業リードタイム設計へ変換
2-3 リードタイム短縮の工程別作業指示画面への変換
2-4 “水平分業型ものづくり”で製品品質・コストを確保するものづくり
3 機能設計情報から詳細・生産設計情報変換のIT技術活用
3-1 機能設計情報から詳細設計情報へのIT化変換
3-2 詳細設計情報から生産設計情報へのIT化変換
第5章のまとめ

第6章 機能セルの設計資産化とその活用 
1 機能セルの設計資産化
1-1 機能セルの設計資産化の準備
1-2 詳細・生産設計情報を機能セルに付加
1-3 機能セル名で格納する設計BOMの準備
2 設計資産化した機能セルの活用
2-1 機能セルの設計資産の活用準備「活用のしくみ、設定IT画面等」
2-2 機能セルの設計資産としての活用
3 設計資産化の機能セル利用による製品開発事例
3-1 設計財産の利用で設計リードタイム短縮
3-2 同じ要素機能を繰返し使う開発設計のリードタイム短縮
3-3 設計財産の利用で研究開発の研究リードタイムを短縮
第6章のまとめ

第7章 製品に個性を持たせる戦略Keyセル手法 
1 日本の強みと主要国の強みからの製品開発の考察
2 製品に個性を持たせ、自社の強みを活かす「戦略Keyセル」の創造
3 製品戦略に戦略Keyセルを活かす機能セル設計
4 戦略Keyセル化を活かした機能セル設計事例
第7章のまとめ

あとがき

はじめに

まえがき


 かつて日本の“モノ創り(製品開発)”は、新進企業(現在のベンチャー企業)や若い技術者が情熱を傾け、トランジスタラジオや携帯音楽プレーヤー等の若者を魅了する新製品を開発した。これらの製品は日本の強み技術であるアナログ性「音質・画質など調整ノウハウや生産ノウハウ」を活かした個性を創造することで、世界中の若者を魅了した。
 しかし、企業の大企業化や生活が豊かになると共に、新製品開発への情熱とスピードが影を潜め、かつての「個性あるモノ創り力」は失われていった。さらに製品がデジタル化していくと、情報家電等でリードする米国企業の後塵を拝し、中国・韓国などの企業には「日本の製品開発は遅いから…」と屈辱的な陰口を云われるまでになってしまった。「製品開発力である“モノ創り力”」が落ちて、かつての日本企業の強みと良さが無くなってしまったのだ。
 日本の製品開発が海外企業に後れをとった原因は二つの問題に分類できる。第一は日本の企業が大企業化し、歳をとり、製品開発への情熱・自由度・決断速度が不足し、市場環境(デジタル・コモディティ化等)の変化に順応できなくなっている問題。第二は「いかに市場が魅力を感じる製品を速く開発するか」、「いかに品質・コストを満たすモノづくりをするか」のKeyである“設計情報をつくる設計手法”に関する問題である。
 第一の問題は生活が豊かになったこと及び企業が大企業に成長したことにより、「モノ創り・モノづくり*」の本質と「“人々の生活を豊かにする”新製品開発に対する理念と情熱」を疎かにしたことに原因がある。加えて、大企業の短期的経営方針により新製品・新技術開発への投資が減少し、若い設計者の新製品開発のチャンスや開発の自由度(開発内容や工程などの管理強化)が減り、自由な発想や個性的な発想を持つ開発設計者が育たなくなり、個性を持つ新製品開発力(モノ創り力)が低下し、世界の製品開発スピードに遅れてしまったのだ。
 これを解決するには、先人たちがどのようにして、「人々を満足させるモノ」、「生活を豊かにするモノ」を次々と考え、創り出してきたのかを考えることだ。先人たちがヒット商品を生みだしてきた原動力は、自身が愛する人達の「苦労しているコト」を解決して楽にしてあげたい、「欲しがっているコト」を実現してあげたい、という動機だった。
 かつて世界を魅了する製品を創ってきた先人たちは、このような強い想い(理念)を製品開発の情熱として、使える新技術を広く吸収することに加え、不足する技術の新開発を貪欲に進め、世界に先駆けたモノ創りを行ってきた。したがって、「日本のモノ創り力」を復活させる為には、若い人に製品開発の自由度とチャンスを与え、強い想いと情熱を復活させることが必要なのである。
 もう1点、これが本書のテーマになるが、「市場を魅了する製品をいかに速く開発するか」「いかに品質・コストを満たすモノづくりをするか」ということである。つまり、これらを決める設計方法の改革である。特に“製品開発の速度を速める”開発設計方法の改革が今こそ必要なのである。
 著者は製品開発に従事するうち、新製品開発でも90%以上の機能が既存製品と同じであるのに、設計財産化されている「ものづくり図面」が、既存製品の“仕様=全機能”を具現化した図面であること、及び日進月歩で向上する性能が更新されず陳腐化している部品が含まれていること、この2つによりそのまま利用できなかった。その為、既存製品の利用できる機能部分を抽出し転記する設計をした。言い換えると、設計作業の90%は既存製品の製品開発で行ったことを繰り返すことになっていた。つまり、新機能の創造に寄与しない退屈な転記に近い設計作業に、長い設計時間を費やしていたのだ。そこでこの90%以上の機能が同じである既存製品の設計情報を再利用できる方法はないかと検討・模索した。
 そんな中で、以前学んだ「40億年と永続的に進化してきた生態系のしくみ“進化する機能細胞で構成した生物は永続的に進化してきた”」ということを思い出し、このしくみをモノ創りに展開できないかを検討した。
 その結果、「寿命の無い機能である“機能細胞(機能セル)”を用いて設計する」、及び「設計情報となる図面も機能セル単位で構成する」という新しいモノ創りに行きついた。
 “寿命の無い機能セル”及び“機能単位”で創り出される「設計情報」のモノづくり図面は、新製品に必要な機能の設計情報を自由に選択でき、部品の陳腐化の心配も無くなり、設計財産として再利用可能となる。
 この設計方法は私が勤務していた工場の開発プロジェクトで実践し、開発設計期間の大幅な短縮という成果をあげた。
 本書ではこの改革した開発設計方法「機能セルで設計する新しいモノ創り」、すなわち、日本のモノ創りの第二の問題である「開発設計手法の改革」に焦点を絞って述べる。この新しいモノ創り設計方法が、日本のモノ創り力復活の一助になることを願っている。

2018年9月
梓澤 曻



推薦の辞


三菱重工業株式会社 取締役社長 宮永俊一



 このたび友人である梓澤曻さんが、半世紀にわたる技術者としての経験と知識に基づき、これからの製造業を支える日本の若き設計者の為に、製品開発と設計に関する考えや思いをまとめて出版されるとのことで、同氏のモノづくりへの変わらぬ情熱に深く感銘を受けている人間として、門外漢であることを顧みずに推薦文を書く次第です。
 梓澤さんとのご縁は、2000年代初めに三菱重工が日立製作所と設立した製鉄機械の合弁会社で小生が社長として事業の再建に励んでいた時にはじまり、日立製作所指名の社外取締役として事業の再生と成長を様々な面から支えていただきました。
 また、同氏が事業所長をされていた大みか工場を見学し、当時進化の著しかった製鉄機械のドライブ制御における各種機器の設計から工場生産工程にいたる改善に関してきわめてクリアで創造的な説明を受けたことを懐かしく思い出します。その後2006年に小生が合弁会社を離れてから現在にいたるまで、個人的に親しくお付き合いを続けています。
 本書は「製品開発設計における問題提起」にはじまり、生態系とその進化に着目した考え方である「寿命ある物での設計から(普遍性のある)機能セルでの設計への転換」に進み、「その具体的な体系や展開方法」を斬新な切り口で説明しています。また、著者の考え方の実行にはしっかりとした体系化と初期設定からその維持・継承を根気よく行う人々とチームワークが必要であり、日本の製造業に適した差別化手法でもあると考えます。
 今、私たちは、デジタライゼーションやAIからAM(Additive Manufacturing)まで、科学技術の驚くべき進化の時代に暮らしていますが、その一方で氾濫する情報や便利で比較的安価な検索・解析ソフトなどに疎外され、主体的で長期的な視点に立った行動がとれなくなっている面も多いと思います。そのような時代にこそ、本質的に競争力のある技術体系やプロセス及びそれらの共有と伝承などが大切になり、設計分野においては著者が標榜する「生態系のしくみ」に着想した「アナログ的な設計」という考え方が役立つのではないでしょうか。
 また、「デジタル」に押され気味の「アナログ」という言葉は「類似性≒同質性の認識」と解することで、本書にある「変化・変異への対応の柔軟性」や「普遍的な体系化」に繋がっていくように感じます。
 最後になりますが、この書が「日本のモノづくり再生」を支えていく21世紀の若き設計者への20世紀からの贈り物になることを期待しています。

2018年8月16日

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