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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいダムの本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07865-1
コード C3034
発行月 2018年07月
ジャンル 土木・建築 ビジネス

内容

日本の年間降水量は世界平均の約2倍だが、水資源量では世界平均の半分くらいであり、決して水の豊かな国とはいえない。ダムは生活・工業用水などの貯蔵だけでなく、防災の観点からも必要不可欠。本書ではダムの種類や特徴、ダム建設の技術や建設場所の選定、ダムが備える機能、ダムの役割などをわかりやすく解説する。

溝渕利明  著者プロフィール

(みぞぶち としあき)

法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科教授


専門分野

コンクリート工学、維持管理工学



●略歴

1959年 岐阜県生まれ

1982年 名古屋大学工学部土木工学科卒業

1984年 名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了

1984年 鹿島建設(株)に入社、技術研究所に配属

1993年 広島支店温井ダム工事事務所に転勤

1996年 技術研究所に転勤

1999年 LCEプロジェクトチームに配属

2001年 法政大学工学部土木工学科・専任講師

2003年 法政大学工学部土木工学科・助教授

2004年 法政大学工学部都市環境デザイン工学科・教授

2007年 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科・教授

2013年 公益社団法人日本コンクリート工学会・理事

2016年 一般社団法人ダム工学会・理事



●主な著書

「図解絵本 工事現場」、監修、ポプラ社、2016年

「コンクリート崩壊」、PHP新書、2013年

「見学しよう工事現場1~8」、監修、ほるぷ出版、2011年~2013年

「コンクリートの初期ひび割れ対策」、共著、セメントジャーナル社、2012年

「モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!」、監修、アスペクト、2010年

「土木技術者倫理問題」、共著、土木学会、2010年

「基礎から学ぶ鉄筋コンクリート工学」、共著、朝倉書店、2009年

「コンクリート混和材料ハンドブック(第6章第4節マスコンクリート)」、エヌ・ティー・エス、2004年

「初期応力を考慮したRC構造物の非線形解析法とプログラム」、共著、技報堂出版、2004年

目次

第1章 ダムのここだけは知っておこう
1 地球上で人が利用できる水の量は? 「全人類で琵琶湖5000杯分」
2 ゲリラ豪雨が日本を襲う 「短時間の大雨への対策」
3 突然襲ってくる鉄砲水は恐ろしい 「土石流の発生は増加傾向」
4 水を治めるものが国を治める 「治水事業は今も昔も国家戦略の最重要課題」
5 ダムと名乗れるのは法律で決まっている? 「水を堰き止め、貯めるものすべてがダムではない」
6 ダムとため池 「稲作用に水を貯める有用性」
7 なぜダムを造らなければならないの? 「人々を洪水などから守るため」
8 ダムにはどんな役割がある? 「六つの顔を持つヒーロー」
9 ダムの種類は? 「ダムの材料や形はさまざま」
10 ダムは世界にどれくらいあるの? 「ダムのない都道府県はない」
11 ダムはどのように数えるの? 「正しく数えてみよう」
12 ダムの大きさはどうやって決めるの? 「ダムは小さく造ってたくさん水を貯めるのが一番」
13 ダムはいつからあるの? 「人類の文明とともに歩んできたダム」
14 ダムには鉄筋が入っていない? 「引張に弱いコンクリートでも鉄筋はいらない」
15 ダムは見えないところでも水を止めている? 「割れ目を防いで貯水ができる」
16 ダムができるまで川の水はどうするの? 「水の流れを変える二つの方法」
17 ダムができると地震が起きる? 「なぜか水を貯めた後に起こる群発地震」

第2章 ダムの種類とその特徴 
18 ダムの形はどうやって決めるの? 「決め手は地盤の強さだけではない」
19 ダムにはさまざまな施設がある 「基本構造を知ろう」
20 重力式ダム 「自身の重さで巨大な水圧を支えるどっしりタイプ」
21 アーチ式ダム 「曲線が美しいスレンダーボディー」
22 重力式アーチダム 「重力式ダムとアーチ式ダムのいいとこどり」
23 バットレス式ダム 「コンクリートダムの中で、唯一鉄筋コンクリートを使用」
24 中空重力式ダム 「見た目は重力式、でも中は空洞」
25 ロックフィルダム 「土、砂 ・ 砂利と岩でできたダム」
26 アースダム 「最も古典的な形状」
27 フェイシングダム 「上流面を水の通らない膜で覆う」
28 砂防ダム 「土砂 ・ 岩石を貯めるダム」
29 地下ダム 「地下を流れる水を貯める」

第3章 ダムの計画と設計
30 ダムを造る三原則 「転倒、滑動、破壊の安全対策」
31 ダムを建設する場所はどうやって決めるの? 「さまざまな条件から最も効果的な場所を探る」
32 ダムを造るための年数 「完成までに40年以上かかる?」
33 ダム建設のための事前工事 「まずは道路や橋の建設に着手」
34 原料は建設現場周辺から採取する 「コンクリートダム建設に必要な原石の掘削量とは」
35 ダム建設場所の環境調査 「環境影響調査や生態系調査は欠かせない」
36 ダム建設の理想の地形 「地形とダム形状の関係」
37 ダムに生じるひび割れ 「コンクリートの内側と外側の温度差による影響」
38 ダム内部の温度 「ダムの中心が冷えるには数十年かかる」

第4章 ダムを造るために必要な設備
39 コンクリートダムに使う材料 「コンクリートに混ぜる砂利の大きさはダチョウの卵大」
40 フィルダムに使う材料 「コンクリートは使わず、天然の材料のみ」
41 フェイシングダムに使う材料 「遮水膜の特徴に適した施工技術」
42 原石の加工と貯蔵 「原石山から選別し、適したサイズに破砕」
43 コンクリート製造設備 「コンクリートダムのためだけに建設される施設」
44 コンクリート運搬設備 「大量のコンクリートを施工場所まで運ぶ方法」
45 コンクリート打設機械 「新たな工法も生まれている」
46 濁水処理設備 「ダム建設で出る汚れた水をきれいな水に変える」
47 その他の設備 「まだある、工事を支える設備」
48 調査横坑 「周囲の岩盤を詳細に調査する」
49 転流工 「建設現場内に水が入ってこないようにするための迂回路」

第5章 ダムの施工技術と工法
50 堤体掘削 「ダム本体を据え付けるために、山の表面部分を削り取る」
51 グラウト 「水が漏れないようにする陰の主役」
52 パイプクーリング 「内部の熱を除去する方法」
53 プレクーリング 「温度変化によるひび割れ防止」
54 柱状工法 「ブロックに分けて施工する」
55 拡張レヤ工法 「柱状工法よりも効率的な施工が可能」
56 RCD工法 「コンクリートダムの急速施工が可能」
57 CSG工法 「セメントで固めた砂礫を使用」

第6章 ダムの維持管理とリニューアル
58 ダムの寿命はどれくらい? 「維持管理が長寿命の決め手」
59 ダムの決壊 「下流の街に甚大な被害を及ぼす」
60 ダムの維持管理 「ダムの安全は常に監視されている」
61 ダムのリニューアル 「重要視される既設ダムの機能向上」

第7章 ダムのいろいろ
62 ダム建設で町ができる? 「工事関係者によって活気が溢れる町へ」
63 ダム建設による経済効果 「地元企業を巻き込んだ事業」
64 ダムと観光 「ダムやダム湖は地域の観光名所になる」
65 ダムとの共生 「住民や自然環境とともに歩んでいく方法」
66 これからのダム 「ダムが進むべき方向」

【コラム】
●ダムを題材とした本
●ダムを舞台にした映画
●ダムを壊した怪獣たち
●進化するダム施工技術 無人化する日は近い?
●集客の強い味方 ダムカードとダムカレー
●なかなか読めない、ダムの名前
●ダムのあれこれ四方山話

参考文献
是非とも見てほしいダムリスト
索引

はじめに

はじめに


 今回、ダムの本の執筆を依頼された時、自分がダムに最初に出会ったのはいつだったのかと考えてみました。私が物心ついた頃の興味の対象は、ゴジラやウルトラマンに出てくる怪獣とプラモデルでした。第3章のコラムでも書いた『ウルトラQ』の第13話の「ガラダマ」の回(1966年3月放映)だと思います。番組の中で何度もダムといっていたようなのですが、当時小学1年生の自分はダムという存在自体知らなかったので、ただ大きな壁を怪獣ガラモンが壊して、その後、動作を指示される電波が届かなくなってガラモンが敢えなく死んでしまったということしか覚えていませんでした。

 同年4月に公開された『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(田中重雄監督、1966年公開)も映画館で観ているのですが、ガメラが黒部ダム(富山県)と思しきダムを破壊しているシーンは、ガラダマ同様あまり印象に残っていませんでした(後年、見直してダムを破壊するのを見てなぜかいたく感激したのは覚えています)。

 実は、その2年前に公開された『三大怪獣 地球最大の決戦』(本多猪四郎監督、1964年公開)でキングギドラが入った隕石が黒部ダムと思しきダムの近くに落ちたという設定になっていますが、そもそも黒部ダムというものが何なのかまったく知らない(当時5歳になったばかり)ので、キングギドラが誕生する瞬間しか記憶にありませんでした。直接ではありませんが、こうして考えると5歳の時にすでにダムに出会っていたわけです。しかしながら、当時はゴジラやガメラの方に興味があって(今もあまり変わっていないかもしれませんが)、ダム自体を知るのはもっと後になってからになります。

 直接ダムを見たのは、小学生の時に仲のよかった友達のお父さんたちと一緒に車で連れて行ってもらった御母衣ダム(岐阜県)だと思います。印象は、ただ背の高い石の堤防というものでした。ダムを意識して見たのは、大学4年生の時に研究室の先生の特別の計らいで、当時建設中だった今市ダム(栃木県)を見学した時でした。研究室のメンバー3人で、そのうちの1人が持っていた車で名古屋から今市まで丸1日かけていきました。翌日、ダム現場を案内してもらったのですが、その巨大さに圧倒されたのを覚えています。私が本格的にダムに関わった最初だと思います。その時の印象があまりに強烈だったので、ダムのような巨大構造物を造っている会社に就職すると決めて、大手ゼネコンに入社しました。

 最初から現場に行けると思っていたのですが、技術研究所に配属されてしまいました。そのかわり多くのダム現場の仕事に関わることができたのは、今から思うととてもよかったです。入社後10年で、念願のダム現場に転勤となりました。苦労の方が多かった現場勤務でしたが、現場の諸先輩からダムの「いろは」を教わったことはとてもありがたく思っています。それがなかったら、今回の執筆の依頼もお断りしていたかもしれません。約3年間の短い現場勤務でしたが、得るものはたくさんあったと思っています。その後、技術研究所に戻り、ダムの現場の技術サポートを数多くしました。大学に移ってからは、自分のこれまでのダムの経験を学生たちにできるだけ話すようにしています。

 今回の本の内容も、できるだけ一般の方たちにダムを理解していただけるようにと思って書きました。「ダム」と「水」は切っても切れない関係ですので、水の存在、水の功罪、水とダムの関わり、地球規模から自分たちの生活との関わりについてまで書いてみました。

 最近では、いろいろな書籍の形でダムの本が出ていますし、私のようにダム経験の少ない人間がたくさんの経験を持っておられる諸先輩たちを差し置いて書くことには非常に気が引けましたが、自分なりにできるだけ噛み砕いてダムのことを書いたつもりです。この本を読んで、ダムに興味を持ってくだされば幸いです。

2018年7月                            
溝渕 利明

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