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きちんと知りたい においと臭気対策の基礎知識

定価(税込)  2,484円

編著
著者
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ページ数 216頁
ISBNコード 978-4-526-07849-1
コード C3043
発行月 2018年05月
ジャンル 化学

内容

「におい」の専門書は著者の専門分野に特化した偏った内容のものが多く、初学者には不向きである。本書では、においの専門家を目指す学生や企業の人に向けて、必要な内容を網羅し系統立ててやさしく詳しく解説する。さらに臭気判定士の資格取得のために必要な基礎知識を得られる1冊でもある。

光田 恵  著者プロフィール

(みつだ めぐみ)
大同大学かおりデザイン専攻教授。公益社団法人におい・かおり環境協会理事、人間-生活環境系学会理事。
岡山県生まれ。奈良女子大学大学院博士課程修了・博士(学術)の学位取得後、名古屋工業大学大学院講師、大同工業大学(現、大同大学)建設工学科講師、建築学科准教授を経て、2010年から現職。
〈受賞〉
臭気対策研究協会学術賞(1998)、人間-生活環境系会議奨励賞(2000)
〈著書〉
「都市・建築空間の科学-環境心理生理からのアプローチ-」(共著、技法堂出版、2002)、
「口臭ケア」(共著、医歯薬出版、2003)、「日本建築学会環境基準-室内の臭気に関する対策・維持管理規準・同解説」(共著、日本建築学会、2005)、「Q&A高齢者の住まいづくりひと工夫」(共著、中央法規出版、2006)、「生活環境学」(共著、井上書院、2008)、「トコトンやさしいにおいとかおりの本」(共著、日刊工業新聞社、2011)、「心理と環境デザイン-感覚・知覚の実践-」、(共著、技報堂出版、2015)等

岩橋尊嗣  著者プロフィール

(いわはし たかし)
大同大学かおりデザイン専攻特任教員。公益社団法人におい・かおり環境協会理事、におい・かおり環境学会誌編集委員長 。
北海道生まれ。明治大学大学院博士課程修了・工学博士の学位取得後、アイコー株式会社入社、同社中央研究所有機化学研究室室長、同社取締役支配人、新エポリオン株式会社常務取締役などを経て、2014年大同大学かおりデザイン専攻教授、2017年から現職。
〈研究開発〉
電気めっき及び無電解めっき時の光沢剤の研究開発、鉄鋼コイルの塩酸及び硫酸酸洗時の素地保護材の研究開発、畜産(鶏舎)向け消臭剤の研究開発、産業及び一般向消臭剤・芳香剤の研究開発
〈著書〉
「普及版防脱臭技術集成」(共著、エヌ・ティー・エス、2002)、「五感インターフェース技術と製品開発事例集」(共著、技術情報協会、2016)等

棚村壽三  著者プロフィール

(たなむら としみ)
大同大学かおりデザイン専攻准教授。
愛知県生まれ。大同大学大学院工学研究科博士課程修了・博士(工学)の学位取得後、2011年大同大学かおりデザイン専攻講師、2017年から現職。
〈受賞〉
におい・かおり環境協会学術賞(2015)
〈著書・論文〉
「室内の臭気に関する嗅覚測定法マニュアル−日本建築学会環境基準」(共著、日本建築学会、2010)、「室内における調湿建材による調理臭の脱臭性能に関する検討」(共著、におい・かおり環境学会誌、41(6)、2010)、「定常的なにおいに対する居住者とパネルの感覚評価の比較」(共著、日本建築学会環境系論文集、76(664)、2011)、「LDKのにおいの臭気濃度と影響を及ぼす要因」(共著、日本家政学会誌、62(5)、2011)、「自動車室内環境2013(総合技術レビュー)」(共著、公益社団法人自動車技術会、2014)等

目次

第1章 におい物質を知る
1-1 においは分子、分子という概念
1-2 におい物質濃度の単位
1-3 におい物質の特性
1-4 化学構造とにおい物質

第2章 においを感じるメカニズムと嗅覚の特性
2-1 ヒトの五感―嗅覚以外の感覚器官
2-2 五感の中の嗅覚
2-3 においを感じるメカニズム
2-4 嗅覚の感度
2-5 においの濃さと強さ感覚の関係
2-6 においの濃さによって感じる質の変化
2-7 環境条件とにおいの感じ方の関係

第3章 不快なにおいの種類と基準値
3-1 生活環境のにおい
3-1-1 においに対する意識
3-1-2 意識されているにおいの種類
3-1-3 室内のにおいの発生原因
3-2 悪臭防止法の概要
3-2-1 法律が制定された背景
3-2-2 悪臭防止法の制定
3-2-3 悪臭防止法を読み解く
3-2-4 2号規制基準の基本的な考え方
3-2-5 中小規模施設における2号規制基準の簡略化
3-2-6 2号規制基準の算出方法
3-3 室内のにおいの基準値を知る

第4章 においを測る・評価する
4-1 においの測定・評価法の種類
4-2 ヒトの嗅覚で測る
4-2-1 嗅覚測定法における臭気試料取扱いの注意点と試験室の環境
4-2-2 嗅覚パネルの条件
4-2-3 においの濃さの測定方法(希釈法)
4-2-4 評定尺度法
4-3 機器で測る
4-3-1 現場測定に適した検知管法とセンサー法
4-3-2 特定悪臭物質の測定方法
4-4 脱臭効率を測る

第5章 臭気対策の考え方
5-1 室内の臭気対策の手順と特徴
5-1-1 室内の臭気対策の手順
5-1-2 各対策の特徴
5-2 換気による臭気対策
5-2-1 換気量と換気回数
5-2-2 換気の経路
5-2-3 換気の方式
5-2-4 必要換気量の求め方
5-3 消・脱臭、感覚的消臭による対策
5-3-1 感覚的方法
5-3-2 生物的方法
5-3-3 物理的方法
5-3-4 化学的方法
5-4 空気清浄機・消脱臭芳香剤の種類
5-4-1 消脱臭対策製品の種類
5-4-2 空気清浄機
5-4-3 消脱臭芳香剤
5-5 臭気対策の性能評価
5-5-1 空気清浄機の性能評価法
5-5-2 消脱臭・芳香剤の性能評価法

第6章 室内の臭気対策事例
6-1 臭気発生源管理の事例
6-1-1 生ごみ臭の発生源管理の重要性
6-1-2 尿管用排液バッグからの臭気の防止
6-2 換気による臭気対策
6-2-1 局所換気の必要性
6-2-2 室内の臭気発生量
6-2-3 室内の臭気を指標とした必要換気量と換気計画
6-3 脱臭(調理臭の調湿建材を用いた対策)
6-4 感覚的消臭対策事例
6-5 身近な臭気の対策
6-5-1 住宅内の臭気対策
6-5-2 体臭の対策
6-6 最新技術紹介(高温消臭器、木材空気清浄機)
6-6-1 物理的方法:スギ・ヒノキの天然材の臭気除去能力(空気清浄機への適用)
6-6-2 化学的方法:半導体型酸化触媒の臭気除去能力(高温型消臭器の開発)

コラム
適合マーク
お香〈蘭奢待〉
癌探知犬

参考文献
索引

執筆者(五十音順)
第1章 岩橋尊嗣 光田 恵
第2章 岩橋尊嗣 光田 恵
第3章 岩橋尊嗣 棚村壽三 光田 恵
第4章 棚村壽三 光田 恵
第5章 岩橋尊嗣 棚村壽三 光田 恵
第6章 岩橋尊嗣 棚村壽三 光田 恵

はじめに

はじめに

におい・かおりに対する関心が高まっており、生活の中で、悪臭からかおりまで、さまざまな質のにおいが意識されている。ところで、冒頭から“ニオイ”の表現として「におい」「かおり」「悪臭」が出てきたが、これらの区別は、どのようにされているのであろうか。
 各研究分野や業界によって“ニオイ”の表記、表現は異なっている。生活環境の“ニオイ”を対象として述べる本書では、次のように用いることとする。ヒトの嗅覚で感知するあらゆる“ニオイ”を「におい」とし、快いにおいを「かおり」、なかでも香料や成分の時には「香気」を使用することもある。不快なにおいを「臭気」、さらに苦情にもつながる不快感がより強いものを「悪臭」とする。
 さて、かつて、悪臭発生源は特定できる限定的なものとされていたが、次第にその発生源である工場等の近傍において市街地が拡大したことで、人々にとって悪臭問題が身近なものとなっていった。そのような中、1971(昭和46)年に悪臭防止法が制定され、悪臭対策が進み、生活環境の悪臭問題は、ある程度解決したかに思われていた。
 しかし、その後、野外焼却、飲食店や近隣住宅からのにおいなど、限定的な発生源ではなく、生活の中にある身近なにおいすら悪臭苦情の対象となった。ちょうど同じ1990年代に、室内においても空気環境の大問題が顕在化した。シックハウス症候群である。その原因物質は、主に揮発性有機化合物であり、ヒトが刺激やにおいを感じることができるものであった。この空気質の問題も生活環境のにおいに対する意識が向上する契機となった。においは、快適性にかかわる要素であり、また健康にも影響する要素として改めて認識されるようになったのである。
 においの役割を改めて考えてみると、動物においてもそうであるが、元来、においには健康や生命に関係する「危険を知らせる」大きな役割がある。例えば、本来は無臭である都市ガスなどに、においを付加し、嗅覚でガス漏れがわかるようにしている。
 その他の嗅覚の役割として、嗅覚は味覚とも密接に関係している。食べ物や飲み物からのにおいを感じ、口に入れる前にまず嗅覚でその食べ物や飲み物のおいしさを感じる。そして、口に入れた食べ物や飲み物のにおいを口から鼻に抜けるルートを通じて嗅覚で感じ、風味を味わうのである。
 また、季節や天候を嗅覚で捉えることもある。私たちは、春の訪れを花々のかおりによって感じ、いわゆる雨のにおい(通常、土臭さ、カビ臭さ)を感じることで雨が降りだしたことを知る。最近では、体調や病気により体臭に変化が生じることを利用して、微量の体臭成分を測ることで病気の診断を行う研究も進んできている。さらに、香水、柔軟剤などの身にまとうにおい、お香やアロマを使用し空間を演出するにおい、マッサージや入浴の際に癒されるにおいなど、においの用途が広がりをみせている。
 このように、私たちの生活の中で、においは確実に存在感を増してきている。
 しかし、生活の中のにおいを対象として、その特性や測定・評価方法、においの適切な使用法、臭気対策の考え方など、全体を網羅し、系統立てて学べるような初学者向けの専門書は見当たらない。そもそもにおいに関しては、学校教育の中で学ぶ機会はほとんどなく、五感の1つである嗅覚に関しても、視覚や聴覚に対して圧倒的に情報量が少ないといえるのではないだろうか。
 においは化学物質がヒトの鼻腔内を通過し、におうという現象が起こってはじめて「におい」となる。化学物質がヒトの鼻腔内を通過し、においを感じていることは誰しも想像に難しくないところであるが、においのある化学物質とは何であるのか、化学物質が鼻腔内を通過し、どのようにしてにおうという現象が起こっているのか。
 第1章では、におい物質について、第2章では、ヒトがにおいを感じるメカニズムについて解説する。第3章では、不快なにおいの種類と屋外、室内のにおいに対する基準について、第4章では、悪臭防止法に関連するにおいの測定・評価方法を中心に解説する。また、安全で快適なにおい環境を創造するためには、臭気対策の基本的な考え方を把握しておく必要がある。第5章では、身近な環境である室内の臭気対策の考え方を中心に解説し、第6章では、その考え方に基づいた実際の対策事例を紹介する。
 本書が生活環境のにおいについての理解を深める一助となれば幸いである。
2018年5月
光田 恵

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