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俯瞰図から見える
日本型“AI(人工知能)”ビジネスモデル

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 210頁
ISBNコード 978-4-526-07779-1
コード C3034
発行月 2017年12月
ジャンル 経営

内容

日立製作所 取締役会長兼代表執行役 中西 宏明氏 推薦!

AI(人工知能)という言葉が流行となっているが、実態がよくわかっていないため、自分の事業にAIを使いたくてもなかなかうまく進まない。そこで本書では、今のAIの技術的全体像を俯瞰図でハッキリとさせ、さらに具体的なAIへの取り組み事例を挙げ、日本企業がどう戦うべきかの戦略を解き明かす。

大野 治  著者プロフィール

(おおの おさむ)
1948年福岡県生まれ。
1969年、宇部工業高等専門学校電気工学科卒業。同年、日立製作所入社。SE(システムエンジニア)として官公庁・自治体のシステム開発に従事。プロジェクト立て直し請負人として、失敗プロジェクトを次々と成功に導く。2001年より、同社の最大事業である情報・通信事業の生産技術とプロジェクトマネジメントの責任者として、システム開発の生産性向上に取り組む。2005年より、日立グループ全体の社内情報システムの責任者として、それまで日立グループ各社・各工場に分散していた基幹システムを一本化。2009年より、日立製作所執行役常務及び電力システム社CIOを兼務。この頃より、日立グループ各社の経営者からの情報システム刷新と経営改革の支援依頼に基づき、日立グループ各社の改革に取り組む。2012年より、日立システムズ取締役専務として同社の経営統合に伴う情報システム統合、日立グループ情報・通信事業の改革を主導。2014年より、同社特別顧問。2016年、同社退任。2016年、日立製作所内で『SE哲学外来』を開設。
プロジェクトマネジメント学会会長(2007年~2008年)、2014年から同学会アドバイザリボード議長(現職)、国際CIO学会理事(2006年~2011年)を歴任。2001年、埼玉大学にて学位取得(工学博士)。
日立グループの役員時代(2009年~2015年)に取り組んだ経営改革の範囲は、日立グループの約50%(売上比)に及ぶ。
著書に「俯瞰図から見える IoTで激変する日本型製造業ビジネスモデル」日刊工業新聞社がある。

目次

はじめに
本書の構成
第1章 AI(人工知能)とはいったい何なのか?
1.まずはAI(人工知能)の歴史を振り返る
2.今、「AI」をどう定義すればいいのか
3.では、今のAIにはどんな種類があるのだろう
第2章 今、広がりつつある第3次AI技術の俯瞰図
1.今のAIには何ができて何ができないのか
2.これが今のAI技術の俯瞰図だ
3.第3次AIの中核となる3つの技術
4.AIがする「学習」とは何か
5.3つの「AI」と3つの「学習」についてのまとめ
第3章 第3次AIの中核技術とは?
1.3つのAI中核技術を知っておく
2.ベイズ統計学(Bayesian statistics)
3.機械学習(Machine Learning)
4.深層学習(ディープラーニング:Deep Learning)
5.機械学習と深層学習のまとめ
第4章 経営改革のためのAI活用
1.企業経営の何にAIを使うのか?
2.営業改革のためのAI技術とはどんなものか?
3.コールセンターから設計へのフィードバック ─ テキストマイニング
4.プロジェクト管理改革 ─ ナイーブベイズ法
5.AI強化の技法
6.企業経営にAIを使うためのまとめ
第5章 製造業を襲うAIによるサービス化の波
1.AIで製造業のビジネスモデルが変わる?
2.製造業におけるサービス化へのビジネス構造の変化
─ 投資から経費へ
3.AIでサービス業化するGE
4.機械学習による異常検知の原点(マハラノビス=タグチ法)
5.ノンパラメトリック異常検知法の開発競争
6.AIで激変する製造業のまとめ
第6章 AIで実現する眼を持ったマシンの登場
1.その応用領域を広げるAI
2.自動運転車を実現するAI
3.眼を持ったロボット
第7章 日本企業のとるべきAI戦略
1.AIを活かすための戦略とは?
2.AI活用の大前提はデータだ
3.AIとIoTの関係 ─ CIOの役割と取るべき行動
4.AIは時間をかけて育てるものだ
─ AIを賢くするには技術者や職人を大切に
5.AI技術者の確保 ─ 日本企業が採るべきAIの人材戦略
6.AI時代の経営者の心構え
7.日本企業のAI戦略のまとめ
附 録 ボードゲームに使われているAI技術
1.AIからみたボードゲームの特徴
2.AI将棋が強くなったわけ
3.AI囲碁が強くなったわけ
4.ボードゲームの次のテーマ

おわりに
参考文献

はじめに

はじめに
近年、「人工知能」や「AI」というキーワードが氾濫している。夢のような社会が実現する話や、仕事がなくなる話、あげくには人類が滅ぼされてしまう話などが、次々にマスコミに登場し、世間をにぎわしている。
この10年間、「人間の知性の象徴」とも言えるチェスや将棋、囲碁といったゲームで、世界のトッププレイヤーが次々にAIの軍門に下った。これらの出来事が、AIへの関心を必要以上にまねき、良きにつけ、悪しきにつけ社会に大きな影響を与えている。
人工知能とは英語でAI(Artificial Intelligence)と言い、1956年夏に米国のダートマス大学のキャンパスで開催されたダートマス会議で命名された。人工知能学会の倫理指針では「人工知能研究は、人間のような知性を持ち自律的に学習し行動する人工知能の実現を目指している」と定義されている。しかし、実際のところ人工知能学会の歴代会長の間ですら、明確に共有された「人工知能の定義」は存在しない。半世紀以上に及ぶ人工知能研究の歴史を経て、人々が思い描く人工知能のイメージは変遷して来ている。
よって現在は慣習として、人間の脳が行っている知的な作業をコンピューターで模倣したソフトウェアやシステムのことを指す場合が多い。その内容は、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするプログラムなどで、年々多様化している。
最近、この人工知能の実用化が始まりつつある。ならば、これを事業に生かさない手はないと誰しも思う。ところが、AI(人工知能)を正しく理解して、事業にどのように適用すればよいのか、どのAI技術を使うのがよいのかと考え始めると、とたんに行き詰まってしまう。
なぜかというと、AIについて報道されているニュースや出来事の中には、「本当にすごいこと」と「実はたいしたものではないこと」が混ざっている。また、「すでに実現したこと」と「もう少しで実現しそうなこと」、「実現しそうもないこと」も混在している。さらには、AIの定義も様々なものが混ざっている。それらがAIの適用時に混乱を招いている原因のひとつだろう。
筆者は、『俯瞰図から見える IoTで激変する日本型製造業ビジネスモデル』を2016年末に初めて出版した。読んでくれる人がいるだろうかと不安だったが、思いもかけず発売後毎月重版することになり(2017年10月現在で9刷)、望外の喜びとするところである。
読んでいただいた方々の反響の多くは、『ユニークな俯瞰図でIoTの全体構造がわかった』との評だった。その反面、『IoTの中核技術のひとつであるAIのことがよくわからない。このままでは、事業のIoT化を進めるにあたり困る。AIついて、何を参考にすればよいか、あるいはAIついてもまとめてもらいたい』という意見もあった。
それならば、まずAIの全貌をとらえ、自社の事業に取り込む指針や手順をまとめるべきだと思い、AI関連の図書を30冊ほど読んでみた。だが、これらのAI関連書籍はいずれも、具体的な事例集であったり、技術の網羅的な解説書であったりと、いずれの書籍もAIをどのように適用すればよいのか、何から手を付けるべきなのかが、そして何よりもAIの全貌がわからなかった。
しかし、米国を中心としたグローバル企業をはじめ、多くのベンチャーが果敢にAIを利用した事業に取り組んでいる。彼らがどのような戦略を持ち、現在どのように取り組んでいるのかを分析することで、日本企業がこの世界でいかに戦うべきかの戦略が見えてくるのではないかと考えた。
筆者は日立製作所に入社し、以来ずっと日立グループの中で仕事をしてきた。最初は、公共分野のシステムエンジニアとして活動した。並行して、ソフトウェア生産技術の開発に従事し、加えてプロジェクトマネジメント関連の活動に携わり、失敗プロジェクトを抑止するためにプロジェクトマネジメントの確立に取り組んだ。
その後、日立グループ全体の社内ITを統括する情報システム部門に移り、長年経験してきたベンダー側の立場からユーザー側の立場に変わった。そして経営メンバーのひとりとなり、関心事はプロジェクトが産み出す経営価値へと変わった。
複数年にわたる投資計画のもとに、日立グループ全体のITの統合化と、グローバルでのネットワークからハードウェアやソフトウェアの集約に取り組み、それまで各工場や各グループ会社に分散していた基幹システムを日立グループ全体で一本化した。
その後、日立グループ各社のCEOやCIOから情報システムの構築およびITの経営への活用に関する相談・支援依頼を数多く受けるようになった。
振り返ると、筆者がAIと出会ったのは、ソフトウェアの生産技術の開発とその適用に従事していた第2次AIブームの時だ。当時、開発していたCASE(Computer Aided Software Engineering)システムの一部にルールベースを適用したのがAIとの出会いだった。ルールベースとは、予め人間が決めたルールに従って挙動するシステムのことである。
現在のAIの根幹である深層学習の原型である「ニューラルネットワーク」もCASEに取り入れようとしたが、今から思えば技術的に限界があり、これは上手くいかなかった。AIについての開発実務でのかかわりは上述の程度なので、『AIについてもまとめてもらいたい』との要望を数多くいただいたが、AIについて書籍にまとめることには躊躇があった。
しかしその後、経営者として現在のAIの動向を分析し、日立はAIをどのように事業展開するべきかについて考察する機会を得た。それで、これらの経験で得た知見を社会に少しでも報いたいと考えるようになった。
そこで、AIの全貌を俯瞰図にてわかり易くまとめることで、経営者や組織の部門長、企画立案者が現在のAIを事業に適用する際の指針として活用できるものにしたい。加えてAIを勉強しようとしている技術者や学生にも参考になる教科書にしたいと、浅学をも顧みず本書の執筆を思い立った次第である。

2017年12月大野 治

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