プレス成形難易ハンドブック 第4版
定価(税込) 15,400円
編者 |
薄鋼板成形技術研究会 ![]() |
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サイズ | B5判 |
ページ数 | 748頁 |
ISBNコード | 978-4-526-07663-3 |
コード | C3053 |
発行月 | 2017年02月 |
ジャンル | 機械 |
内容
自動車用薄鋼板の開発と車体成形技術の向上に向けて活動を続けてきた編者が内容を10年ぶりに改訂。サーボプレスおよび成形シミュレーションの活用で高度化する成形技術を詳述するなど、自動車車体部品成形技術を網羅した定本として仕立てた。
薄鋼板成形技術研究会 著者プロフィール
(うすこうはんせいけいぎじゅつけんきゅうかい)
執筆者一覧
編集委員会 委員長
林 央 ((元)理化学研究所)
委 員
飯塚 栄治 (JFEスチール(株))
加納 誠 (いすゞ自動車(株))
黒住 浩司 (トヨタ自動車(株))
小高 秀元 (日産自動車(株))
酒井 明 (マツダ(株))
佐藤 義也 (トヨタ自動車(株))
鈴木 利哉 (新日鐵住金(株))
樋貝 和彦 (JFEスチール(株))
藤井 慶太 (日野自動車(株))
松田 俊史 (ホンダエンジニアリング(株))
山野 隆行 ((株)神戸製鋼所)
吉田 亨 (新日鐵住金(株))
執筆者 *は執筆主査
第1章
*林 央 ((元)理化学研究所)
赤松 聡 (新日鐵住金(株))
池田 貴昭 (日産自動車(株))
松田 俊史 (ホンダエンジニアリング(株))
第2章
*中澤 嘉明 (新日鐵住金(株))
金子真次郎 (JFEスチール(株))
松元 孝 (日新製鋼(株))
三浦 正明 ((株)神戸製鋼所)
吉田 亨 (新日鐵住金(株))
第3章
*山野 隆行 ((株)神戸製鋼所)
磯貝 栄志 (新日鐵住金(株))
伊藤 泰弘 (新日鐵住金(株))
大川 修一 (プレス工業(株))
須釜 淳史 (日新製鋼(株))
林 央 ((元)理化学研究所)
第4章
*米村 繁 (新日鐵住金(株))
足立 尚久 (日産自動車(株))
飯塚 栄治 (JFEスチール(株))
後藤 真岐 (スズキ(株))
第5章
*斉藤 孝信 (JFEスチール(株))
尾路 春幸 (ダイハツ工業(株))
城戸 陽平 (いすゞ自動車(株))
西村 隆一 (新日鐵住金(株))
山口 信幸 (日産自動車(株))
第6章
*鈴木 利哉 (新日鐵住金(株))
須田高太郎 (日産車体(株))
福島 正彦 (ダイハツ工業(株))
藤井 慶太 (日野自動車(株))
第7章
*新宮 豊久 (JFEスチール(株))
久保 雅寛 (新日鐵住金(株))
中谷 大 (富士重工業(株))
濵村 伸二 (スズキ(株))
樋貝 和彦 (JFEスチール(株))
第8章
*岩間 隆史 (JFEスチール(株))
岩谷 二郎 ((株)神戸製鋼所)
酒井 明 (マツダ(株))
米林 亮 (新日鐵住金(株))
第9章
*安島 優 (トヨタ自動車東日本(株))
佐藤 竜也 (ホンダエンジニアリング(株))
鈴木 義則 (トヨタ車体(株))
谷 祥二郎 (いすゞ自動車(株))
玉井 良清 (JFEスチール(株))
中本 昌平 (三菱自動車工業(株))
福島 敏博 (トヨタ自動車(株))
第10章
*岸上 靖廣 (JFEスチール(株))
渥美 学 (日産自動車(株))
一条 尚樹 (トヨタ自動車(株))
酒井 明 (マツダ(株))
白神 聡 (新日鐵住金(株))
平岡耕太郎 (三菱自動車工業(株))
深澤 雄 (富士重工業(株))
舩本 雄二 (日産自動車(株))
三日月 豊 (新日鐵住金(株))
資 料
*林 央 ((元)理化学研究所)
目次
序 文
我が国産業の中核的な役割を果たしてきた自動車産業であるが,社会の要請に応じて,軽量化,安全対策をはじめとした様々な技術開発が課せられている.自動車生産の一翼を担う車体製造においても,超高強度鋼板の採用に代表される困難な技術課題に面している.
自動車車体を「安く・大量に・高品質で・安定して・効率よく」製造する生産技術は,プレス加工技術と薄鋼板製造技術とによって支えられてきた.プレス加工技術と薄鋼板製造技術の発展は,両技術分野を結びつける「成形性」の概念を中心にした「プレス成形技術」の発展があって可能であった.この活動を支えてきた薄鋼板成形技術研究会(*)は,2017年に創立60周年を迎えることになった.先達の遺産に甘えることなく,研究討論会での真摯な議論,共同研究の推進,若手の活発な交流など,研究会は以前にも増して元気に活動している.
本書は,薄鋼板成形技術研究会の創立30周年を記念して,今後のプレス成形技術のあり方を検討することを目的に,1987年に初版が刊行された.その内容は,
1.研究会発足時からのプレス成形技術を集大成して,確立した技術を体系化すること
2.解明の不十分な事項を明確にすること
3.今後の取り組むべき課題を明確にすること
4.プレス成形技術の今後の発展のための方法論を確認すること
であった.この基本的な姿勢は,研究会創立60周年を期して刊行する第4版でも変わっていない.10年前の第3版刊行以降の研究会活動の成果を踏まえ,これまでの内容を見直し新しい知見を加えた.本書の構成は以下のとおりである.
「第1章 自動車車体技術の変遷と成形難易評価の概念」・・・我が国の自動車車体技術の歴史を,発展を支えてきたプレス成形技術,薄鋼板開発の観点から概観し,本書で詳細に論じられる成形難易評価の基礎的な考え方と,その動向を最近10年間の状況も含めて紹介した.高強度鋼板の車体への採用についても,最近の状況を提示している.
「第2章 自動車用鋼板」・・・自動車に適用される各種薄鋼板およびそれらの機械特性と材料因子について解説するとともに,今後の展望を紹介した.特に,適用が拡大しいている高強度鋼板に関する内容を充実させた.
「第3章 薄鋼板の成形性と成形性試験法」・・・薄鋼板の成形の基礎理論,成形性評価のための試験方法に関して,実際に利用されているものをまとめ,さらに実務に活用されているプレス成形シミュレーション用の材料モデリング方法の記述を拡充した.
「第4章 破断成形限界と成形難易評価」・・・破断の分類と体系化,破断機構と材料因子,破断に及ぼす成形条件の影響,対策技術について紹介した.特に,高強度鋼板の伸びフランジ成形限界,曲げ性,成形性に及ぼす高潤滑皮膜の影響についてデータを追加し,理論から実践まで幅広く解説した.
「第5章 面形状精度不良と成形難易評価」・・・面ひずみやしわなどについて,プレス現場において問題となる具体例のまとめに加え,面ひずみの3次元計測による可視化,高強度鋼板適用検討および成形シミュレーション活用事例を追加した.
「第6章 寸法精度不良と成形難易評価」・・・寸法精度不良の各現象について,対策技術の適用事例の充実を図り,特に980MPa級などの高強度材料の事例および3次元形状不良の実部品レベルでの対策事例を増やすとともに,対策効果だけでなくそのメカニズムも記述した.寸法精度不良の要因分析への成形シミュレーション活用事例も新たに追加している.
「第7章 プレス成形におけるトライボロジ」・・・薄鋼板のプレス加工の成否に大きな影響を及ぼす表面の摩擦状態,潤滑剤の働きを概説するとともに,ホットスタンプを含めた種々の成形形態に対する潤滑の影響について記載した.また,高強度鋼板の成形で課題となる型かじりに関して,発生メカニズムや提案されている予測方法について記述した.
「第8章 自動車ボディ部品の張り剛性とデント特性」・・・自動車外板パネルの張り剛性と耐デント性について,手押しによる張り剛性官能評価をシミュレーションで予測するため,官能評価を数値化する試みと,それを反映した新たな張り剛性試験方法について,記述を加えた.
「第9章 自動車プレス部品の成形技術」・・・自動車プレス部品における成形技術や要素技術について,数多くの実験データや図を多用して分かりやすく解説し,新たな成形工法であるサーボプレスやホットスタンプなど製品への適用が進んだ事例について記述した.
「第10章 プレス成形シミュレーション」・・・この10年間,プレス成形現場への利用がますます拡大し,重要性が増している技術であるプレス成形シミュレーションに関する基礎的な知識を解説するとともに,従来の成形評価に加えて線ずれなどの成形性以外のプレス不具合評価についても記述した.ホットスタンプなど実業務での適用が拡大している技術についても解説した.
本書の特徴は,これまでと同様に薄鋼板成形技術研究会の会員各社の共同研究成果や,製造現場で検証された実績をもとに,活用しやすいように集大成したところにあり,実務に積極的に生かしていただけると期待する.
IT技術の急速な進展により,CAEが車体生産技術の有用でかつ不可欠なツールとなっているが,さらなる発展のためには,プレス成形難易評価の迅速化と精度向上がこれまでに増して重要である.そのための今後の技術開発にも,本書が多くに寄与を果たし得るものと確信する.
終わりに,本書が多くの方々に活用され,お役に立つことを願うものであり,あわせて執筆に携わっていただいた研究会の方々,これまでと同様に出版を快くお引き受けいただいた日刊工業新聞社の関係各位に厚く謝意を表する.
2017年2月
プレス成形難易ハンドブック第4版編集委員会
(*) 現在の薄鋼板成形技術研究会の構成
いすゞ自動車株式会社 日産車体株式会社 JFEスチール株式会社
スズキ株式会社 日野自動車株式会社 株式会社神戸製鋼所
ダイハツ工業株式会社 富士重工業株式会社 新日鐵住金株式会社
トヨタ自動車株式会社 プレス工業株式会社 日新製鋼株式会社
トヨタ自動車東日本株式会社 ホンダエンジニアリング株式会社
トヨタ車体株式会社 マツダ株式会社
日産自動車株式会社 三菱自動車工業株式会社 理化学研究所
はじめに
「プレス成形難易ハンドブック」第4版刊行にあたって
「ものづくり立国」と叫ばれて久しいが,開発途上国のめざましい発展により,我が国の工業は国際競争,グローバルな展開を視野に大きな転換が進められている状況にあり,世界のトップレベルとされる自動車産業もその例外ではない.世界の自動車生産台数は年間9,000万台を超え,海外生産を含めた日本の自動車生産は2,700万台に達しているが,安全対策の強化,地球環境保全からの省資源・省エネルギーや温暖化対策のための低燃費化の追求,公害対策,リサイクル・廃棄処理などの社会的要請への対応,消費者の好みの多様化,国際的な競争,徹底したコストダウンの追求など,依然として多くの課題に直面している.さらに,駆動源・駆動システムの多様化,IT技術の導入による自動運転システムの開発など従来の自動車の概念を変える時代に突入している.これらに対応するためには,自動車の構造を支える車体生産技術の革新を図ることが求められている.このような時期にあわせて「プレス成形難易ハンドブック」第4版を刊行できることは喜びにたえない.
本書は,1987年薄鋼板成形技術研究会発足30周年記念として,初版が発行された.薄鋼板成形技術研究会は,我が国の自動車産業が成長を始める時期に,自動車・鉄鋼の共同研究の場としてスタートし,自動車用薄鋼板の開発・車体成形技術の向上に貢献すべく,地道な活動を続けてきた.材料と成形技術は,車体生産においていわば両輪であり,世界的に見ても両者の共同研究の推進に果たしてきた薄鋼板成形技術研究会の役割は大きいといえる.研究会発足後,ご指導されてこられた福井伸二博士,五弓勇雄博士,さらに実質的な推進役としてご活躍された吉田清太博士,多くの先達の成果を踏まえ,発行された本書は,2度の改訂を経て,このたび第4版刊行に至った.
超高強度鋼板を含む軽量化材料の開発と車体への採用,サーボプレスに代表されるプレス機械,CAEの発展などは,車体生産の基礎であるプレス成形技術の著しい進歩をもたらした.今回刊行される第4版は,2007年以降の新たな成果も取り込み,最新の情報を集大成したものである.車体生産技術は技術データノウハウが公にされることが難しい分野であるが,その点からも本書の意義は大きいと自負する.
刊行にあたり,編集委員,執筆者の方々はいうまでもなく,薄鋼板成形技術研究会メンバーの尽力に敬意を表するとともに,本書が広く活用されることを願うものである.
2017年2月
プレス成形難易ハンドブック 編集委員長 林 央
((元)理化学研究所)