内容
CO2排出削減のため、CO2排出量と燃料費を同時に抑制する高効率な次世代火力発電への切換えが迫られている。次世代火力とされる発電技術には種々の方式とそれぞれ特徴がある。それらの技術開発が並行して進められて2025年までに段階的な実用化が目指されている。
目次
はじめに
《プロローグ》
新たな価値を生み出す火力発電技術
第Ⅰ章 火力発電を取り巻く情勢
火力発電技術の基礎
電源構成における火力発電の位置づけの変遷
火力発電所の環境問題への対応
次世代火力発電技術開発ロードマップ
第Ⅱ章 シンプルサイクル発電技術
次世代超々臨界圧発電(A-USC)
AHAT発電
第Ⅲ章 コンバインドサイクル発電技術
超高温ガスタービンコンパウンドサイクル発電
石炭ガス化複合発電(IGCC)
第Ⅳ章 トリプルコンバインドサイクル発電技術
ガスタービン燃料電池複合発電(GTFC)
石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)
第Ⅴ章 火力発電に関連する新技術開発
CO2回収・貯留技術(CCS)
CO2有効利用技術
未利用燃料の利用技術
急速起動・負荷変動ガスタービン
水素発電技術
索 引
はじめに
電力システム改革の進展に伴い、火力発電を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。火力発電において、今ほど事業経営と技術がリンクしている時代はなかったのではないだろうか。安定な電力の供給、高品位な電力の供給に加え、競争に打ち勝つコスト低減技術、地球温暖化対策としての環境対応技術など、様々な側面で技術が捉えられ始めている。
2011年の福島第一原発事故以降、原子力発電所の運転停止により火力発電への依存度はこれまで以上に高まった。この状況を受けて2012年に『進化する火力発電』を発行し、現行の火力発電技術および次世代型の火力発電技術の開発を解説した。その後の4年間で、火力発電技術の進展に加えて、電力需要の変化、国レベルでの技術開発の推進策の明確化など、火力発電を取り巻く状況は大きく進展した。こうした状況を踏まえて本書では、CO2排出量と燃料費を同時に抑制する高効率な次世代火力発電技術を、特徴と開発の状況、実現に向けた課題と実現の時期など、様々な切り口から解説している。
具体的には、「技術開発の今」、「技術開発のポイントと問題点」、「火力発電を取り巻く新技術」を記載した。
「技術開発の今」は、国として進めようとする次世代火力発電技術を概説している。2050年頃に想定される「環境保全型発電技術」に向けた様々な技術目標の根拠や、各技術の特徴が簡潔に示されている。
「技術開発のポイントと問題点」は、従来の技術解説書ではあまり示されていない内容である。「すばらしい技術だが、どこがポイントなのだろうか。何が技術開発上の問題なのだろうか。」など、読者の知りたいことが、現在の視点で簡潔にとりまとめている。
「火力発電を取り巻く新技術」としては、地球温暖化対策としてのCO2分離・回収・活用技術の現状、水素発電技術などを取り上げた。
本書を通じ、国内で活躍するこれからの火力発電技術、そして日本にとって重要な輸出産業であり、今後発展する事業として、改めて火力発電技術を認識していたけると幸いである。