内容
実務に役立つ書籍として好評を博している「必携 シーケンス制御プログラム定石集」の続編。このPART2では、シーケンス制御の目的別にプログラム作成の要点を解説、より実践に即した内容とした。立体的な機械構造図と回路図、プログラムをセットで掲載し、理解しやすい構成となっている。
熊谷英樹 著者プロフィール
(くまがい ひでき)
1981年 慶應義塾大学工学部電気工学科卒業。
1983年 慶應義塾大学大学院電気工学専攻修了。住友商事株式会社入社。
1988年 株式会社新興技術研究所入社。
現在、株式会社新興技術研究所専務取締役、日本教育企画株式会社代表取締役。神奈川大学非常勤講師、山梨県産業技術短期大学校非常勤講師、自動化推進協会理事、高齢・障害・求職者雇用支援機構非常勤講師。
主な著書
「ゼロからはじめるシーケンス制御」日刊工業新聞社、2001年
「必携 シーケンス制御プログラム定石集―機構図付き」日刊工業新聞社、2003年
「ゼロからはじめるシーケンスプログラム」日刊工業新聞社、2006年
「絵とき「PLC制御」基礎のきそ」日刊工業新聞社、2007年
「MATLABと実験でわかるはじめての自動制御」日刊工業新聞社、2008年
「新・実践自動化機構図解集―ものづくりの要素と機械システム」日刊工業新聞社、2010年
「実務に役立つ自動機設計ABC」日刊工業新聞社、2010年
「基礎からの自動制御と実装テクニック」技術評論社、2011年
「トコトンやさしいシーケンス制御の本」日刊工業新聞社、2012年
「熊谷英樹のシーケンス道場 シーケンス制御プログラムの極意」日刊工業新聞社、2014年、ほか多数
目次
はじめに
本書で使われている記号について
第1章 操作をしやすくするスイッチとランプの使い方
定石1 スイッチ1:1つのモメンタリスイッチで確実にON/OFFを切り替えるにはタイマとパルスを使う
定石2 スイッチ2:順序回路やデータをオールリセットするときには警告する
定石3 スイッチ3:角度分割機構は駆動部の終端信号で制御する
定石4 スイッチ4:長押しすると誤動作の原因となる接点は接点が有効になる条件を付ける
定石5 ランプ1:自動運転を停止しても機械が停止するまではスタートランプを点滅しておく
定石6 ランプ2:手動操作スイッチで出力を操作したときは出力結果をランプ表示する
定石7 パトライト1:機械の状態を作業者に知らせるにはパトライトを点灯する
定石8 パトライト2:注意を促すにはランプをフリッカしてブザーを鳴らす
第2章 アクチュエータとセンサの機能を引き出すプログラム
定石9 モータ1:クレーンを連続運転するときにはストップスイッチを付ける
定石10 モータ2:末端減速メカニズムは回転軸の死点で止める
定石11 モータ3:コンベア上で作業をするときは作業ユニットの動作中信号でコンベアを停止する
定石12 モータ4:コンベア上の作業ではコンベアモータの停止条件をつくって制御する
定石13 モータ5:三相交流モータを速度制御するにはインバータを使う
定石14 センサ1:センサが使えない場所ではワークセット信号を使う
定石15 センサ2:ワークの到着はセンサの立ち上がりパルスを使う
定石16 センサ3:ワークがいつ来るかわからない装置はワーク到着信号をサイクルスタートにする
定石17 センサ4:パレット上にワークがないときには作業をせずにパレットを次に送る
定石18 センサ5:センサを2個使った高さチェックはセンサ信号の組合せをつくる
第3章 タイマとカウンタを使いこなす
定石19 タイマ1:センサが不安定なときの連続運転はセンサと時間経過で止める
定石20 タイマ2:ワーク持ち上がり防止のワーク押さえは時間をずらして動作させる
定石21 タイマ3:シリンダをストロークエンドまで動作させるにはタイマを使う
定石22 タイマ4:長い時間を計測するにはタイマとカウンタを組み合わせる
定石23 タイマ5:時間を計測し直すときはタイマの入力をいったんOFFにする
定石24 カウンタ1:モータの出力軸の回転回数をかぞえるにはカウンタを使う
定石25 カウンタ2:カウンタをカウンタ自体の接点でリセットするにはリセット回路をコイルの直前に記述する
定石26 カウンタ3:整列個数のカウントはワークの移動完了信号を使う(姿勢制御型の場合)
定石27 カウンタ4:整列個数のリセットは整列したワークの送出し完了信号を使う(状態遷移型の場合)
第4章 インターロックとインデックス
定石28 インターロック1:インターロックは片側優先・先入優先・停止優先を使い分ける
定石29 インターロック2:裏返しユニットがぶつからないようにするにはインターロックをかける
定石30 インデックス1:インデックステーブルの1回転停止は4つの制御型を使い分ける
定石31 インデックス2:インデックステーブル型自動機はテーブルの位置決め完了信号で作業を開始する
第5章 ワークセット信号の扱い方
定石32 ストッカー1:棚に格納したワークの有無信号はSET/RST命令でON/OFFする
定石33 ストッカー2:パレタイザ型ストッカーはパレット交換完了信号をつくって制御する
定石34 ストッカー3:棚へ格納する順序はワークセット信号でつくる
定石35 ストッカー4:棚から取り出す順序はワークリセット信号でつくる
第6章 ロボットを制御するプログラム
定石36 ロボット1:1軸ロボシリンダはポジション選択とストローブ信号で制御する
定石37 ロボット2:ロボシリンダの移動完了を検出するにはビジー信号を使う
定石38 ロボット3:ワークを棚に置いた信号はSET命令で記憶して取り出したらRST命令で消去する
第7章 不良検出と不良処理のプログラム
定石39 不良処理1:作業が開始できない不良を検出したらオペレータを呼ぶ
定石40 不良処理2:作業中の不良信号は装置の状態信号を使う
定石41 不良処理3:コンベアで送ったはずのワークがなくなったときはタイマで処理する
第8章 順序制御のための5つの制御方式
定石42 制御方式1:とりあえず動かしてみるならばパルス制御型を使う
定石43 制御方式2:リミットスイッチがない作業ユニットは時間制御型で動かす
定石44 制御方式3:機械の姿勢をリミットスイッチで特定できれば姿勢制御型で動かせる
定石45 制御方式4:イベント制御型は動作中信号をスタート条件に追加する
定石46 制御方式5:きっちり順序制御をつくるには状態遷移型を使う
各定石の実機例とシミュレーション画面
その①
その②
その③
その④
索引
はじめに
本書は、2003年に発行され、好評をいただいている『必携シーケンス制御プログラム定石集』のパート2です。前にも増して自動化機構とそれを動かす動作プログラムの定石的なつくり方を満載しました。
前書の必携シーケンス制御プログラム定石集(パート1)では、機械装置を動作させることを目的にして、重要なプログラム構造の解説とプログラムの定石的なテクニックを掲載しました。
本書(パート2)では、機械装置が単に動けばよいという単一的なシーケンス制御から一歩進んで、操作しやすい装置にするためのプログラムテクニックや、不良処理の方法、ロボットやインバータの扱い方など、生産現場で必要とされる実践的な内容を紹介します。
たとえば、人が操作することを意識した制御プログラムをつくるために、操作パネルのスイッチの扱い方やランプ表示の仕方、ブザーやパトライトの使い方など、人が機械装置の状態を理解して円滑に操作できるような制御プログラムのつくり方がわかるようになっています。
また、機械装置が順序どおりに動けばよいという機械のためのシーケンス制御にとどまらず、作業を行う対象であるワークやセンサを扱うために必要な考え方を学ぶことで、トラブルの検出や不良処理などについてのプログラムの構築方法についても理解できるようになっています。
プログラムの中で特に注目すべき場所には「ここがポイント」の表示を付けてあります。
第1章では、機械装置のスイッチの機能やランプの表示を使って、現場のオペレータや作業者が操作しやくなるような制御プログラムのつくり方を紹介します。
第2章では、モータを使った機構の制御プログラムをつくるときに必要となる知識や、ワークを扱うために必要なセンサを使った制御プログラムの考え方を紹介します。
第3章で述べるタイマを上手に使いこなすと、機械装置を制御するときに時間の要素を利用して、機械装置がもっている動作時間の遅れの対応やセンサがない時の処理ができるようになります。また、カウンタを使ったワークの整列処理の方法やカウンタを上手にリセットする方法を掲載しています。
第4章では、安全に操作するためのインターロックの考え方を実際の機械装置を例にとって解説します。また、複数のユニットが同時に作業をするインデックステーブル型の自動機を例にとって、テーブルの回転と周辺の作業ユニットがぶつからないように、協調して制御するためのプログラムの定石を紹介します。
第5章で述べる、ワークを格納したり、取り出したりするストッカーを利用した装置では、ワークを格納した信号を記憶して、取り出したときにはその記憶をリセットするプログラムの定石を掲載しています。
第6章では、ポジションデータを指定して動作するロボットの一般的な制御方法を解説します。この中でロボットとストッカーを使ったワークの移動や、棚にセットしたりする記憶を使ったワークの情報の取り扱い方がわかるプログラムを紹介しています。
第7章では、不良の検出と処理方法に関するプログラムを解説します。不良には、機械装置が起こす不良とワークに関する不良があります。作業をしているユニットでよく起こる不良を検出するプログラムのつくり方を解説し、不良が起きたときの処理方法について考えます。
第8章では機械装置のシーケンス制御を行うための「5つの制御方式」を紹介します。同じ機械装置でも、制御方法によってまったくプログラム構造が異なります。5つの制御方式を習得すると、シーケンス制御プログラムを理論的につくることができるようになります。
本書に記載されたプログラムはどれも定石といえるような基本的な制御構造をもっています。これらのプログラムを理解して使いこなすことができるようになれば、他人が書いたプログラムでも、定石に当てはめて読めるような実力がついてきます。
シーケンス制御は行き当たりばったりの試行錯誤や、デバッグを重ねてなんとか動かせるプログラムにするのものではありません。きちんと理論を学習し、プログラム構造を理解して使いこなせるようになることで、間違いのないプログラムを一発でつくることができるようになります。
読者諸賢の日々の業務や学習に本書を役立ててもらえれば幸いです。
2015年11月
熊谷英樹