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ホットスタンピング入門
自動車軽量化に向けた超高強度鋼部材成形法

定価(税込)  3,024円

著者
サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-07402-8
コード C3053
発行月 2015年04月
ジャンル 機械

内容

板材を高温炉で加熱し、プレス成形後に下死点で保持。後加工としてトリミング、穴あけなどを行う一連のホットスタンピング(薄板プレスの熱間成形)加工の要点を、冷間成形の特徴と対比で紹介。本邦初のホットスタンピング技術を体系化した本とする。

森 謙一郎  著者プロフィール

(もり けんいちろう)

1953年8月4日大阪府生まれ。1978年神戸大学大学院工学研究科修士課程修了。79年京都大学大学院工学研究科博士課程中途退学。83年京都大学工学博士。79年京都工芸繊維大学助手。90年大阪大学基礎工学部助教授。97年豊橋技術科学大学教授。現在に至る。塑性加工の有限要素法の開発、新塑性加工プロセスの開発に注力。日本塑性加工学会新進賞・論文賞・会田技術奨励賞・会田技術賞・技術開発賞・天田賞・国際精密鍛造賞、日本鉄鋼協会学術記念賞(西山記念賞)、イギリス機械学会生産部門A M Strickland論文賞、粉体粉末冶金協会技術進歩賞などを受賞。日本塑性加工学会フェロー、CIRP Fellowなど

目次

はじめに


第1章 自動車の軽量化

1.1 自動車の燃費向上技術
1.2 自動車部品の軽量化
1.3 自動車部品の構成割合
1.4 構造最適化による軽量化
1.5 高張力鋼板
1.6 高張力鋼板の冷間プレス成形技術の問題点


第2章 ホットスタンピングの概要

2.1 加熱と冷却による鋼板の変化
2.2 ホットスタンピング工程
2.3 利点と欠点
2.4 応用事例


第3章 鋼板特性

3.1 温度履歴、鋼板成分
3.2 高温中の変形特性
3.3 焼入れ特性
3.4 酸化特性・防止
3.5 1.8GPa級鋼板、ステンレス鋼板

第4章 プレス成形・ダイクエンチング特性

4.1 成形荷重
4.2 成形性
4.3 形状凍結性
4.4 ダイクエンチング性
4.5 直接水冷
4.6 テーラードダイクエンチング


第5章 加熱装置、プレス機械、金型、搬送装置

5.1 ホットスタンピング装置、加熱と冷却による膨張と収縮
5.2 高温炉加熱
5.3 赤外線加熱
5.4 誘導加熱
5.5 温度測定
5.6 油圧式プレス
5.7 機械式サーボプレス
5.8 金型材質・コーティング
5.9 金型冷却
5.10 搬送装置
5.11 生産性


第6章 後加工

6.1 レーザ切断
6.2 ホットスタンピング加工中のせん断加工
6.3 熱間抜き残し・冷間抜き取り加工
6.4 トリミングおよび穴抜き加工部の焼入れ防止
6.5 微小丸み角部を持つパンチによる冷間穴抜き加工
6.6 溶接・塗装
6.7 成形品の強度


第7章 通電加熱ホットスタンピング

7.1 通電加熱特性
7.2 通電加熱による温度上昇
7.3 電極
7.4 通電加熱ホットスタンピングシステム
7.5 部分加熱・昇温抑制
7.6 ホットスタンピングによるスプライン成形
7.7 1ショットホットスタンピング
7.8 通電加熱順送ホットスタンピング
7.9 ホットスタンピングによる鋼管成形
7.10 局部通電加熱せん断加工


第8章 シミュレーションの利用

8.1 有限要素シミュレーション
8.2 材料特性
8.3 シミュレーション結果


第9章 今後の応用分野

9.1 チタン合金板の成形
9.2 アルミニウム合金板の成形
9.3 テーラードブランクの成形
9.4 薄板のホットスタンピング




付 録

索 引

はじめに

 
ホットスタンピングは高強度な自動車部材を製造する加工法で、焼入れ鋼板を900℃程度に加熱してプレス成形し、プレス機械の下死点で常温の金型ではさみ込んで急冷し、焼入れを行う方法である。

 「ホット」という言葉は熱間加工を示しており、熱間圧延や鍛造では加熱によって素材を柔らかくして成形しやすくすることを目的としている。その一方で、ホットスタンピングは変形した素材を金型によって焼入れすることが主な目的であり、成形しやすくなることは付随した利点と言えるかもしれない。鋼材の焼入れは通常、加熱後に水または油の中に入れることで急冷するが、十分大きな金型によって急冷するというプロセスはダイクエンチングと呼ばれる新しい焼入れ方法である。

 自動車の軽量化と衝突安全性の向上を目的に、引張強さが1GPaを超える超高張力鋼板の適用が自動車部材に対して望まれている。しかし、1.2GPa以上の鋼板の冷間プレス成形は成形荷重やスプリングバックの増大、成形性や金型寿命の低下に寄与するため困難とされている。そのような背景において、超強度鋼部材を製造できるホットスタンピングが注目されてきた。ダイクエンチングによって1.5GPa級超高強度鋼部材が製造でき、低い成形荷重とスプリングバックの防止、高い成形性の実現など多くの利点が得られるのである。
 
ホットスタンピングは現在、欧米を中心に実施が進んでおり、フォルクスワーゲンやボルボなどで生産する自動車の部材製造に多用されている。日本における適用事例はまだそれほど多くはない。ただ衝突安全基準の適用が厳しくなり、現状の高張力鋼板だけでは対応できないことから、ここへ来て日本の自動車メーカーの関心が高まり適用部材も増え始めているところだ。これまで日本では高品質な高張力鋼板が入手できることで、高張力鋼板の冷間プレス成形に依存し過ぎたことがホットスタンピング適用の遅れにつながっていたことは否めない。

 通常のプレス成形は、板材は加熱しないものとして行われており、鋼板を900℃程度に加熱して成形することは技術的にもハードルが高くなる。板材の場合は表面積が大きく、熱間鍛造における塊状素材と比べて温度低下が大きいなどで熱間プレス成形は難しい。加熱や成形、ダイクエンチング技術など冷間プレス成形とは違った多くの知識が必要になるのだが、それらを総合的に解説した手引きがなかったため、ホットスタンピング技術が広がる妨げになっている。加熱すると鋼板が柔らかくなり成形しやすくなるはずだが、900℃程度の高温に加熱することに伴う多くの技術的困難が生じることを理解しておかなければならない。

 本書は、ホットスタンピングの概要や鋼板特性、プレス成形技術、ダイクエンチング特性、加熱・加工装置、後加工の方法、シミュレーションの利用法などホットスタンピングにまつわる技術を総合的に解説している。また、次世代技術である通電加熱ホットスタンピングについても説明した。本書によってホットスタンピングへの理解が深まり、日本でこの技術が少しでも広がることを望んでいる。

 ホットスタンピングは現状で、自動車部材生産の一部しか適用されていないが、本技術を拡張して新しい適用分野が生まれることも期待している。プレス成形では難加工材など厳しい加工がますます要求されており、それを解決するキーワードの1つが板材の加熱にあると見ている。

 ホットスタンピング技術はヨーロッパの自動車メーカーが先行しているが、日本においても新しい技術が開発されるようになってきている。現状のホットスタンピング設備は大型で生産性も低く、日本の生産現場に適用するには多くの問題を抱えていることも事実である。しかし日本の生産技術者のレベルは高く、この技術を改良してヨーロッパを超えるような新しいホットスタンピング技術を開発し、実生産において使われる日が近い将来に来ると確信している。



2015年3月

森 謙一郎

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