内容
製造間接費として無視できない物流コスト低減のため、物流業務の棚卸しから共同物流のメリット享受、自社に合った事業者の選択、物流コンペへの対応など失敗しない外注委託法を解説。実情把握から改善策抽出、改善実行のための手引書として簡潔に指南する。
中谷祐治 著者プロフィール
(なかたに ゆうじ)
1958年生まれ。大阪府出身。関西大学工学部管理工学科卒。総合物流事業者センコー(株)、コンサルティング系サードパーティロジスティクス事業者、商社系物流子会社を経て、現在、3PL/コンサルティング事業者ロジ・ソリューション(株)メーカー第2コンサル部長として、幅広い業種の国内外の物流改革/改善の支援を担当。新聞、雑誌、WEBサイト上への投稿、各種協会での講演/講師など多数。
目次
はじめに
第1章 だから物流業務の委託は
失敗する
1 物流を取り巻く環境変化について理解しているか
2 売上高物流費とコスト削減の動向を知っているか
3 自家物流は本当に効率的か
4 共同化の推進が遅れていないか
5 物流管理段階と委託形態の関係を理解しているか
6 物流子会社活用方針が時流に合っているか
7 委託先選定の方法は今のままで良いか
8 ─ まとめ ─ 物流業務委託を成功させる
コラム 共同化は、概念を変えたアイデアも出してみる
第2章 自社の物流業務がわからない
1 自社の物流業務を十分把握しているか
2 「物流業務の棚卸」とはどんなことをするのか
3 「物流業務の棚卸」など遠回りではないのか
4 「物流業務の棚卸」実施の注意点がわからない
5 「物流業務の棚卸」のための時間がとれない
6 現状把握のためのインタビュー方法を知っているか
7 現状把握のための物流現場を再確認する方法を知っているか
8 現状把握のための定量的な把握は十分か
9 現状把握結果の評価の仕方を知っているか ─ 定量編 ─
10 現状把握結果の評価の仕方を知っているか ─ 定性編 ─
11 改革/改善案が幅広く抽出できるか
12 改革/改善案の推定効果を定量化できるか
13 改革/改善のシナリオの作り方を知っているか
14 改革/改善のシナリオの活用方法がわからない
15 ─ まとめ ─ 自社の物流業務を知る
16 ─ 事例 ─ 食品メーカーの「物流業務の棚卸」
コラム コスト削減のためには、今までと違った視点で見直す
第3章 失敗しない物流業務委託先の
選び方
1 既存の委託先を評価したことがあるか
2 委託する物流業務内容を明確にしているか
3 物流業務の評価指標は明確になっているか
4 委託先を変更した方が良いのかわからない
5 委託先を探すとき、誰に相談すれば良いか
6 委託先の良い選定方法がわからない
7 委託先との関係づくりの手法を知っているか
8 物流業務の効率化が進む工夫をしているか
9 ─ まとめ ─ 物流業務委託先の選び方
コラム コンサルティング会社を上手に活用する
第4章 新規パートナーへのアプローチ
1 「物流コンペ」を競争見積と取り違えていないか
2 「物流コンペ」を開催するタイミングは本当に今か
3 「物流コンペ」の流れを理解できているか
4 「物流コンペ」を開催するための条件は十分か
5 相手の会社を知る方法を知っているか
6 提案してもらうべきポイントを押さえているか
7 RFPに記載することはわかっているか
8 プレゼンテーションに臨む準備はできているか
9 提案の評価/絞込みの仕方に工夫があるか
10 委託先を最終決定するポイントは理解できているか
11 委託先選定がゴールではない
12 「物流コンペ」を成功させるポイントは理解できているか
13 ─ まとめ ─ 新規パートナーへのアプローチ
14 ─ 事例 ─ 食材メーカーの「物流コンペ」開催
コラム 「物流コンペ」をスムーズに進める
第5章 3PL体制に進化する
1 3PLのことを知っているか
2 3PLのキーワードを理解しているか
3 3PLをコスト削減の切り札と考えていないか
4 3PLに頼むこと、自社で行うことの仕分けができているか
5 3PL会社にもいろいろなタイプがあることを知っているか
6 3PLと元請物流事業者を同じだと理解していないか
7 3PLの事業構造を知っているか
8 3PLとの料金の取決めの考え方を知っているか
9 3PL活用で注意すべき点を理解しているか
10 ─ まとめ ─ 3PL体制に進化する
11 ─ 事例 ─ 消費財メーカーの3PL体制
コラム 3PLの変化や発展を知る
第6章 より良い物流パートナー
関係熟成のために
1 今、企業経営に求められることはなにか
2 委託先を活用するために何をすべきか
3 委託先とパートナーとなるために何をすべきか
4 物流からロジスティクス、その先へ
5 ─ まとめ ─ より良い物流パートナー関係熟成のために
コラム 委託先とは、壁のない関係を構築する
索 引
はじめに
物流業務の委託先は「物流業者」ですか?
物流業務を委託する荷主側において、古くから物流部門は日のあたらない部門として認識されてきました。その後、コストダウンが利益につながることから、売上拡大、製造・仕入れ原価低減につぐ第三の利潤源として物流が注目され、物流業務の改善が進められるようになりました。さらに、ロジスティクスの視点で、幅広く業務の高度化を進める企業が出てきました。一方、このような考え方を持つに至らず、まだまだ高度化の必要な企業も多く存在しています。
こうした企業の中には、コストダウンのために委託先に対する支払物流費や物流料金単価ばかり注目している場合があります。単価ダウンによるコストダウンを図ることはすでに限界に達していますので、新たな改善の切り口を見つけて実施すべきです。この本では、その方法として「物流業務の棚卸」について取り上げます。
また、物流業務の委託において物流を委託先に任せっきりにしたり、現在の委託先が本当に最適なのか、継続することが良いのか、別の委託先を起用した方が良いのかわからぬまま、従来の関係から業務の委託を続けていたりします。このような場合は、まず物流業務の範囲やレベルを明確にし、管理指標で実態を把握/管理していくことが必要です。そして、それらをもとに委託先を評価したり、一緒に改善を進めたりする必要があります。この本では、新規委託先選定を実施する前にすべきことについて説明します。
一方、物流を取り巻く環境は大変厳しくなっていますし、この状況は今後も継続していくものと考えられます。今までは、コストさえ負担すれば物流が滞ることはなかった時代でしたが、例えコストを負担しても思うように物流のできない時代を迎えつつあります。今後も起こるさまざまな変化に対し、物流面、ロジスティクス面の最適体制を維持し、より高度な体制に進化し続けることが求められます。そのためには「物流を仕組みで改善する」「ロジスティクスととらえて幅広い範囲で改革する」「サプライチェーン全体で改革を進める」ことが重要です。
今まではこれらの活動を自社の物流担当だけで進めることができましたが、時代の変化が激しく、幅広い知識や能力が求められるため、自社だけではこれらを滞りなく推進していくことは難しくなっています。この状況に対応するためには、「パートナーとの協業という経営スタイルへの変革」を行うことが必要です。つまり、最適なパートナーを選定し、そのパートナーと力を合わせて、変化の激しい時代を乗り越えていく経営スタイルへの変革です。
そのためには、「物流」は決して「縁の下の力持ち」ではなく「ロジスティクスが経営そのもの」で、その中心にあるのが「物流」という認識を持つ必要があります。また、物流からロジスティクス、さらにその先への進化を実現していくためには、選定した委託先とのパートナーシップの熟成を進め、さらに業務の高度化につながる好循環を生み出さなければなりません。物流業務の委託先は簡単に変更できませんので、委託先の選定は極めて重要です。この本では、委託先の選定の進め方、選定した委託先とのパートナーシップ構築に加えて、さらに高度化するためのサードパーティロジスティクス(3PL)の活用についても取り上げています。
このような重要なパートナーである委託先が「業者」であるはずがないことは明白ですから、ぜひ「物流事業者」と呼ぶべきです。
あわせて、これらが自然に受け入れられるためには、サプライチェーン上の各企業の担当だけでなく経営者までが物流やロジスティクスの重要性を認識している社会の実現が欠かせません。すなわち、物流やロジスティクスの社会的な地位がもっと向上することが必要です。
最後に今回の出版にあたりいろいろなアドバイスをいただきました学校法人東京理科大学藤川教授、ロジ・ソリューション株式会社釜屋様、日刊工業新聞社の方々にこの場を借りてお礼申し上げます。あわせて、執筆活動に協力してくれた妻と2人の子供たちにも感謝したいと思います。
2015年1月
中谷 祐治