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強度検討のミスをなくす
CAEのための材料力学

定価(税込)  2,808円

著者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-07374-8
コード C3053
発行月 2015年03月
ジャンル 機械

内容

CAEを導入しても「強度評価でのミスが増える」「トータルでの効率が下がる」など期待通りの効果が得られていない設計現場も多い。CAEを効果的に利用するため、正確な強度計算を事前に行うのに必要な材料力学の基礎知識をわかりやすく解説する。

遠田治正  著者プロフィール

(とおだ はるまさ)

1974年東京大学工学部精密機械工学科卒業。
三菱電機株式会社入社,大型発電機の強度の研究に従事。
弾塑性有限要素法プログラムの開発,回転円板の破壊試験など,全社機械技術者を対象とした有限要素法による解析技術の普及推進を担当。
1984年末から1年間,フランスCNRS留学,結晶の高温クリープ挙動の研究に従事。帰国後,天体望遠鏡「すばる」の開発,3D-CAD・CAE利用による機械設計の効率化活動に従事。
1994年以来,三菱電機グループ内機械技術者教育に従事。
材料力学・3D-CAD・CAEの利用普及教育活動などを担当。
2010年三菱電機定年退職後,TMEC 技術士事務所を設立。
機械技術コンサルタントとして,CAE に頼り過ぎない強度評価技術の普及および設計者CAE普及活動などを展開中。
技術士CPD認定会員(機械),日本機械学会会員。
専門は材料力学,材料強度,破壊力学,有限要素法,設計工学,3D-CAD・CAE教育。

目次

まえがき

第1章 強度検討のフロントローディング
~設計と影響因子の把握の重要性
1.1 設計の3段階とそこに込められた意味
1.1.1 「いきなり細かい検討ができる」は決して良いことではない
1.1.2 原則に従えばどんでん返しも防げる
1.1.3 設計を進めて行く上で大切なのは影響因子の把握
1.2 CAD・CAEの功罪
1.2.1 CADの功罪
1.2.2 CAEの功罪
1.3 強度検討のあるべき姿,手計算の有用性
1.4 設計計算の精度

第2章 材料力学の基礎
2.1 材料力学とは?
2.1.1 材料力学と機械力学との違い
2.1.2 材料力学で検討する対象
2.1.3 材料力学を記述する状態量
2.1.4 力の釣り合い
2.1.5 材料の機械的性質と物理的性質
2.2 初級材料力学での仮定~線形
2.2.1 線形とは
2.2.2 線形が成り立つための主要必要条件4 つ
2.2.3 線形と重ね合わせの原理
2.2.4 線形と設計検証
2.2.5 サン・ブナンの原理 2
2.3 材料力学の構成とCAE の位置づけ
2.4 機械構造用材料の性質と測定試験
2.4.1 引張試験と測定できる性質
2.4.2 金属材料の応力―ひずみ線図
2.4.3 応力―ひずみ線図に潜む材料力学の3つの基本公式
2.4.4 プラスチックの応力―ひずみ線図
2.4.5 曲げ試験・ねじり試験
2.5 応 力
2.5.1 応力の定義
2.5.2 せん断応力成分の対称性
2.5.3 応力の符号と物理的意味
2.5.4 計算しなくてもわかる応力
2.5.5 単純な応力分布~垂直応力,せん断応力
2.6 ひずみ
2.6.1 ひずみの定義
2.6.2 ひずみの成分
2.6.3 ひずみの符号と意味
2.6.4 真応力と真ひずみ
2.7 材料力学の基礎式
2.7.1 応力の定義式~応力の釣合い方程式
2.7.2 フックの法則~応力とひずみの関係
2.7.3 ひずみの定義式
2.7.4 弾性体の変位を未知数とした方程式
2.7.5 三軸応力,二軸応力,一軸応力=板・シェル・棒・軸・梁・柱
2.8 基本的な問題の変位
2.8.1 棒の引張り・圧縮
2.8.2 梁(=片持ち梁)の曲げ
2.8.3 断面円形(または中空円形)の軸のねじり
2.9 熱応力・熱変形
2.9.1 熱膨張と発生ひずみ
2.10 重力・遠心力を受ける棒
2.10.1 重力を受ける棒
2.10.2 遠心力を受ける棒

第3章 応力集中部の応力の把握
3.1 主応力と相当応力
3.1.1 主応力
3.1.2 相当応力
3.1.3 2 種類の相当応力の共通点
3.1.4 主応力と相当応力の使い分け
3.2 力の流線
3.2.1 流線とは?
3.2.2 流線の考え方の理論的背景
3.2.3 2次元応力状態と水の流れの類似
3.2.4 力の流線の応用
3.3 応力集中
3.3.1 応力集中の発生原因別分類
3.3.2 特異点(=応力の値が∞の箇所)
3.3.3 切欠きの向きや大きさによる応力集中の変化
3.4 応力集中係数の見積もり方
3.4.1 応力集中係数の定義と基準応力
3.4.2 基準断面の選び方
3.4.3 応力集中係数αの見積もり
3.4.4 実形状へのαの推定式の適用例
3.5 応力集中と強度評価
3.5.1 寸法効果について
3.5.2 応力集中係数αと切欠き係数βの関係
3.5.3 高サイクル疲労破壊への影響
3.5.4 βの推定方法(直径10mm程度の部材の場合)
3.5.5 βの寸法効果
3.5.6 後からβを下げるのは難しい
3.5.7 αとβに関するその他の結論

第4章 強度評価と安全率
4.1 材料の破壊形態~破壊の分類
4.1.1 一発破壊=材料自身の持つ性質によって現れる破壊形態
~延性破壊と脆性破壊
4.1.2 疲労破壊
4.2 強度評価の考え方と安全率
4.2.1 強度評価の基礎式と安全率S の導入
4.2.2 安全率の値の設定方法
4.3 限界値と変動係数の入手方法・推定方法
4.3.1 一発破壊の限界値(強度,強さ)の入手方法および推定方法
4.3.2 一発破壊の限界値(強度,強さ)の変動係数の入手方法および推定方法
4.3.3 疲労破壊の場合の強度(疲労強度)の入手方法および推定方法
4.3.4 疲労破壊の場合の変動係数の入手方法および推定方法
4.4 発生応力の変動係数の入手方法・推定方法
4.5 安全率の具体的な値
4.6 安全率についての間違い

第5章 応力解析のためのCAE理論
5.1 FEMの内部処理
5.1.1 FEMで解いている方程式
5.1.2 FEMの内部処理
5.1.3 簡単な具体例での剛性方程式
5.1.4 ユーザーから見たFEMの処理の流れ
5.1.5 Bマトリクスについて
5.2 要素と変位関数
5.2.1 要素の役割
5.2.2 要素の変位関数の仮定の仕方
5.2.3 変位関数の資格
5.2.4 いろいろな要素と変位関数の例
5.2.5 要素のいろいろ
5.2.6 2次要素の結合と節点拘束に関する制約
5.3 分布荷重の等価節点荷重への変換
5.3.1 等価節点荷重とは?
5.3.2 分布力の等価節点荷重への変換
5.3.3 温度分布の等価節点荷重への変換
5.3.4 分布力の換算式の例
5.4 数値積分
5.4.1 数値積分と積分点
5.4.2 ガウス型数値積分公式の2次元・3次元積分への拡張
5.4.3 低減積分
5.5 連立方程式の解法
5.5.1 直接法と反復法
5.5.2 直接法の詳細
5.5.3 処理順節点番号とバンド幅の縮小
5.5.4 反復法(ICCG法)
5.5.5 固有値解析(ランチョス(Lanczos)法)
5.5.6 非線形問題の解法
5.6 結果の表示と評価
5.6.1 変形の見方と解釈
5.6.2 応力の見方と解釈
5.6.3 モーダル解析の見方と解釈
5.6.4 微小変形理論ゆえのおかしな現象
5.6.5 分割が粗いために発生する問題

索 引

はじめに

 コンピュータの著しい発達とともにCAEツールと3次元CADツールも発達を遂げ,身近な設計ツールとなってきた。これらを利用すれば,複雑な形状の部品でもCADでモデルを作成し,それをCAEツールに入力して解析に必要な条件設定をすれば,少なくとも部品レベルの強度検討はいとも簡単にできるようになった。これらのツールを適切に活用すれば設計検証は確度高く行え,疲労破壊などのトラブルの防止も期待できる他,構造的な無駄を削ることによって安価に製造できるようになることが期待できる。
 しかし,CAEを導入した企業の約半数では,解放されるはずの強度的トラブルに相変わらず悩まされ続け,また材料の無駄が省けるという期待に反して,部品はどんどん大きくなってコスト増を招き,経営者の期待は裏切られているのが実情である。なぜこのようなことが起きるのであろうか。実はその原因は,安易なCAEの適用にある。その因果関係を説明するために,まずCAEの使えなかった昔,強度の検討がどのように行われていたかを見てみよう。
 ①まず部品に作用する荷重を想定する。どこからどのような荷重を受けるのかをリストアップする。
 ②次にそれらの荷重を受ける断面積を決め,最も基本的な計算式である
   応力=力/断面積
   応力=モーメント/断面係数
で応力を求める。
 ③この応力に対して
   応力<強度の限界値(引張強さや疲労強度など)
  が成り立っていることを確認する。もし成り立っていれば,第一関門は通過である。
 ④成り立っていなければ,この時点で成り立たせるように徹底的に改善を図る。ここまでの過程で応力集中は考慮する必要がない。
 このような検討の過程を「時代遅れ」とか「CAEがなかったからそんな風に進めるしかなかったのだ」などと考えてはならない。なぜならば,②の応力が強度の限界値を超えてしまっていたら,その設計は絶対に成り立たないのであるから,そのことがわかった時点で④の改善は不可欠なのである。要するに
②の応力が強度に及ぼす最大の影響因子なのである。この影響因子が成り立つかどうかの検討は設計開始後のかなり早いうちに行えること,そしてその早いうちの検討が設計の最後の方で発生するどんでん返しを防ぐ役割を果たすこと,またこれは応力集中を発生させる細かい形状が決まる前に済ませられることに注目しよう。
 勘の鋭い読者は,現代の“CAEを安易に使う検討方式”では,実はこの最大の影響因子の検討過程がスッポリと抜け落ちていることに気づくと思う。
CAEでは複雑な形状,複雑な荷重に対しても応力が計算できる。このため,3次元CADで部品の形状をできるだけ詳細に作り,それをCAEで計算するというプロセスになっているのが普通だからである。実際,CAEツールを売りその利用法を指導してユーザーに大きな影響力を持つベンダーの中で,上記①~④を実施の必要性を説くところは,筆者の知る限り皆無である。
 読者の中には,「詳細モデルで検討すれば上記のような過程を含めての検討が行えるのではないか。その方が早く結論に到達できるのではないか」と考える人もいることだろう。しかしこの一見効率の良さそうなプロセスは,NGになった場合に結局は影響因子の分析に追い込まれる他,実はCAEの解析結果に潜む“危険な罠”にはまって判断を誤る可能性をはらんでいるのである。その“危険な罠”には次のようなものがあって,多くのエンジニアがそれと知らずにはまり込んでいることが多い(各項目の詳細については本文を参照されたい)。
 (ⅰ)応力集中部に発生する高い応力に注目する (部品が大きくなる原因となって無駄を招く原因)
 (ⅱ)特異点応力に注目する (値自体に意味はなく,処置を誤ると無駄の発生や強度不足を招く原因)
 (ⅲ)節点平均応力を見る (強度の最大の影響因子となっている応力よりも低い値を示すために強度不足を招く原因)
 要はCAEを適用したからといって,上記のような現象の処置の仕方を知らなければ,必ずしも強度の適切な確保には必ずしも結びつかないのである。むしろCAEがなかった頃の手計算的な進め方の方が影響因子を確実に押さえ込むことができているのである。
 設計を進めて行く上で大切なのは,影響因子の大きなものから順に成り立つことを確認していくことであり,強度の検討では最も重要な影響因子が上記②で計算される応力なのである。CAEのなかった時代にはこれを確実に押さえ込む検討過程が行われ,CAEが普及してからはおろそかにされる傾向にあるという現象に注目されたい。
 手計算は決して時代遅れではない。むしろ安易にCAEを使わずに手計算的検討を行った方が,設計の早いうちに信頼性を確保できる場合も多い。しかしそのためには最小限度の材料力学の知識が必要となる。その知識を既販の材料力学の教科書で学ぼうとすると,現代のコンピュータが併用できる時代では不必要な知識まで習得しなければならなくなって,強度設計を行おうとする設計者にとっては道が遠い。そこで本書は,とにかく強度的に壊れないように装置を設計したいという機械装置を設計するエンジニアを対象に,必要事項のみが吸収できるように配置してあるので,短時間で効率良く学べるようになっている。さらに,CAEを利用する際に多くのエンジニアが陥る“危険な罠”を避け,適切な強度検討が行えるようにとCAEの理論についても必要最少限度含めている。
 このために,本書は材料力学全体を体系的に学ぶための教科書ではない。これから材料力学を一から学ぼうとし,今後どのような分野に進むかが決まっていないような大学や工業高校の機械系の学生は,学校の先生が書かれた本で勉強することを勧める。
 これまで本書のような解説書がなかったのは,残念ながら強度の専門家はCAEの詳細を知らず,またCAEの専門家は強度に関する現象に疎いこと,さらに両者の共通点として3次元CADの適切な利用方法を知らなかったことにあると考えている。
 著者は決してCAEの効用を否定するものではない。CAE一辺倒の風潮をいさめ,また簡単な手計算で重要なポイントが押えられることを訴えたいのである。著者のルーツはCAEエンジニアであり,また強度エンジニアである。さらに会社生活の後半は3次元CADにも接し,以後はそれらを総合した設計技術をエンジニアが実践しやすい形で社内教育に反映させてきた。それらの集大成が本書である。本書によって強度的トラブルが未然に防止できるようになり,また無駄のない設計が実現されることを願ってやまない。

2015年3月
遠田 治正

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