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植物工場経営
明暗をわける戦略とビジネスモデル

定価(税込)  2,420円

編著
編著
サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-07338-0
コード C3034
発行月 2014年12月
ジャンル ビジネス

内容

農業ビジネスの象徴である「植物工場」に多くの企業が参入しているが、8割の企業が収支均衡か赤字というのが実情。植物工場の事業を軌道に乗せてビジネスを成功させるには、市場を捉えた明確な「経営戦略」を立てることが必須である。本書は、植物工場経営の明暗を分けるビジネス戦略を実例と共にわかりやすく解説する。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)
株式会社日本総合研究所
常務執行役員 創発戦略センター所長
1958年生まれ。81年、早稲田大学理工学部機械工学科卒業、83年、同大学院理工学研究科修了。83年、三菱重工業株式会社に入社。90年、株式会社日本総合研究所に入社。95年、株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年、株式会社イーキュービック取締役。2003年、早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年、株式会社日本総合研究所執行役員。2014年から現職。
環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFIなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げなどに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業などの分野で50冊を超える書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

三輪泰史  著者プロフィール

(みわ やすふみ)
株式会社日本総合研究所
創発戦略センター 主任研究員(スペシャリスト)
1979年生まれ。2002年、東京大学農学部国際開発農学専修卒業。2004年、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修了。同年株式会社日本総合研究所入社。現在、創発戦略センター主任研究員。農林水産省などの有識者を歴任。
専門は、農業ビジネス戦略、農産物のブランド化、植物工場などの先進農業技術、日本農業の海外展開。農産物のブランド化に関する新会社「合同会社Agri Biz Communication」の立上げに参画。主な著書に『グローバル農業ビジネス』、『次世代農業ビジネス』(以上、日刊工業新聞社)、『甦る農業―セミプレミアム農産物と流通改革が農業を救う』(学陽書房)ほか。

目次

はじめに

第1章 高まる植物工場への期待感
1.1 植物工場が注目される理由
1.2 拡大する植物工場市場

第2章 植物工場の技術とラインナップ
2.1 植物工場の3類型
2.2 植物工場を構成するハードウェア
2.3 植物工場のソフトウェア
2.4 最新技術トレンド:植物工場に投入される匠の技
2.5 技術検討のポイント

第3章 オランダに見る植物工場経営
3.1 オランダの植物工場ビジネス
3.2 オランダの植物工場ビジネス成功の秘訣
3.3 オランダの植物工場が抱える課題

第4章 植物工場ビジネスの明暗をわける戦略
4.1 植物工場の成功事例と失敗事例
4.2 植物工場農産物の基本戦略
4.3 植物工場のマーケティング戦略
4.4 技術戦略
4.5 付加価値型植物工場の経営体制

第5章 日本型植物工場経営に向けた戦略
5.1 植物工場の経営人材獲得戦略
5.2 植物工場ビジネス拡大のための規制緩和
5.3 日本版フードバレーの構築
5.4 植物工場インフラ輸出戦略

はじめに

 企業戦略でも政策でも、最近農業への関心が非常に高い。長らく日本の保護産業の代表のように思われてきた農業の分野で、規制緩和の動きが早まっていることへの期待感もあろう。しかし、冷静に見ると、生産高では製造業と比べ物にならない農業に関する関心の高さは、規制緩和への期待だけで説明できない。多くの人が農業に関心を持っているのは、生産額だけでは表せない農業の重要性を感じ取っているからではないだろうか。
 関心を寄せる先にも特徴がある。低価格の農産物を大量に生産する農業を対象としている民間企業にはほとんど会ったことがない。企業と政策が着目しているのは、専ら品質の高い農産物を手掛ける農業だ。そのための先端技術が植物工場と言ってもいいだろう。
 規制に閉ざされてきた農業に先端技術が取り入れられるのは好ましいことだ。どこの分野でも技術は産業の発展に大きく貢献してきたからだ。農産物を安定して供給でき、圧倒的な安全性を持ち、様々な品質の農産物を生産できる植物工場には、これまでの農業のイメージを大きく変える可能性がある。
 しかし、実際の事業を考えてみると、植物工場は意外とやっかいな技術であることが分かる。植物工場の投資を回収するには一定以上の規模が必要であり、規模を大きくすると驚くほど大量の農産物が生産されてしまうからだ。毎日出荷される農産物を確実に売りさばくことができなければ、大量の在庫、あるいは廃棄物を抱え込むことになる。
 我々は多くの植物工場の事業に関わってきた結果、植物工場の事業を成り立たせるために最も重要なのは「経営」であると確信するに至った。露地栽培とは比べ物にならない生産力と品質制御能力を持った植物工場を確実に建設・運営し、生産された農産物の付加価値を落とすことなく、投資回収期間にわたり確実に売りさばくことできて、植物工場の事業は初めて成就する。そのためには、資金を調達し、事業目的に沿った仕様を定め、高度な技術を運用するための人材を雇用し、付加価値を認める顧客を見つけ、農産物を確実に送り届けなくなくてはならない。そこで求められているのは、まさしく「経営」である。高度な技術もそのために一要素に過ぎない。しかし、事業の現場を見ると、まだまだ技術先行となっている計画が多い。
 本書は、こうした認識から、植物工場の事業に本来の経営を浸透させ、高い技術力を生かした日本の次世代農業が立ち上がることを願って企画したものである。まず、第1章では、植物工場が注目される背景と市場動向を確認し、第2章において植物工場の特性を把握した。その上で、第3章では植物工場の先進国として注目が集まるオランダ農業の成功要因とオランダ農業が抱える課題を分析している。以上を踏まえ、第4章では市場指向の植物工場事業の経営戦略と「マルチライン植物工場」という新たなコンセプトを提案し、結びの第5章では植物工場を核とした日本農業の成功のための戦略を示した。
 本書が植物工場の事業を考える方々にとって、多少なりとも参考になれば筆者として大きな喜びである。

 本書の企画、執筆に関しては日刊工業新聞社の三沢薫様にお世話になった。この場を借りて厚く御礼申し上げる。
 本書の多くは、株式会社日本総合研究所創発戦略センターの農業の専門家である三輪泰史さんによるものである。また、技術面では木通秀樹さんに多くの助言を頂いた。多忙を極める中、本書の執筆に関わっていただいたことに厚く御礼申し上げる。
 最後に、筆者らの日頃の活動に対して、ご支援を頂いている株式会社日本総合研究所に厚く御礼申し上げる。

2014年師走
井熊 均 

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