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トヨタで学んだ工場運営
海外工場へはどのように展開したのか

定価(税込)  2,420円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07316-8
コード C3034
発行月 2014年10月
ジャンル 生産管理

内容

日本の製造業は、さらなる発展の機会を求めて海外進出への対応が必要不可欠となっている。そこで現地事業団体が日本の工場と同等のパフォーマンスを発揮する方策や、新興国に技術・マネジメントを移転するための必要条件について平易に紹介。企業力の源泉となる品質保証、原価管理、安全衛生管理、人財育成のあり方を解説する。

雨澤政材  著者プロフィール

(あめざわ まさもと)
1942年生まれ。神奈川県出身。
1964年早稲田大学第1理工学部機械工学科卒業。同年、トヨタ自動車工業(株)(現 トヨタ自動車(株))入社。1990年から堤工場で成形・総組立・工務の各部で部長として勤務。1997年には米国での生産会社であるToyota Motor Manufacturing Kentucky Inc.(TMMK)へ出向し、上級副社長、取締役社長、取締役会長を歴任。2002年トヨタ自動車九州(株)代表取締役副社長、2006年特別顧問。2009年に(株)九州モノづくり研究所を設立して代表取締役に就任(現職)。2013年(株)アジアMONOづくり研究所理事長。

目次

まえがき

第1章 モノづくり企業に求められる競争力
1.1 商品開発力
1.1.1 商品の独創性
1.1.2 商品開発スピード・リードタイム
1.2 生産技術力
1.2.1 世界唯一の生産技術
1.2.2 匠と革新技術の融合(技術と人間の対話)
1.2.3 生産決定から販売までのリードタイム
1.3 工場運営能力(現場力)
1.4 販売力とアフターサービスの質
1.4.1 広告宣伝
1.4.2 アフターサービスの質

第2章 工場管理概論
2.1 製造業における工場の位置付け
2.2 工場管理の基本―何が工場の実力を決めるのか?
2.2.1 工場のVISIONは明確か?
2.2.2 方針管理
2.2.3 日常管理
2.2.4 プロジェクト管理

第3章 品質管理
3.1 品質とは
3.1.1 「製品の品質」とは狭義の品質
3.1.2 サービスの質
3.1.3 「仕事の質」こそ、広義の品質として重要
3.2 品質の重要性
3.3 品質保証システム
3.4 生産工程での自工程完結保証=不良はないのが当たり前
3.4.1 良品条件表の作り方
3.4.2 自働化思想の徹底
3.5 変化点管理=何かが変わった時、変えた時が問題
3.5.1 変化点管理の必要性
3.5.2 変化点の定義
3.5.3 変化点管理の仕組み
3.5.4 異常時の対応を間違えれば会社の命取りになりかねない
3.5.5 「先入れ先出し」が大切
3.6 初期流動管理
3.6.1 生産開始の承認
3.6.2 商品出荷の許可
3.6.3 市場や客先での評価の確認
3.6.4 初期流動管理・特別管理期間

第4章 原価管理
4.1 原価主義と利益主義
4.2 新商品の原価の造り込みのプロセス
4.3 量産後の原単位管理システムと原価低減活動
4.3.1 生産量に比例する費目は原単位管理が必須
4.3.2 あらゆる費用を可能な限り変動費化する
4.3.3 原価改善の進め方
4.3.4 高い労働生産性と維持
4.3.5 継続的に改善が進む風土づくりとラインづくり
4.3.6 減産対応の難しさを知れ
4.4 人員計画・設備投資の考え方
4.4.1 企画通り売れると思うな
4.4.2 機会損失は必要悪

第5章 労務管理と人材育成
5.1 労務管理の変遷(労務管理から人材開発へのシフト)
5.2 生産変動下での要員調整
5.2.1 有期雇用者の採用
5.2.2 外国人労働者の活用
5.3 工場活性化のためのモチベーション管理
5.3.1 モチベーション管理の歴史的変遷
5.3.2 組織側の課題
5.4 職場の働きがい
5.4.1 QCサークル
5.4.2 多能工化
5.4.3 仕事に関係する技能や知識の習得
5.4.4 創意工夫提案制度
5.4.5 管理・監督者の役割
5.5 企業風土(職場風土)づくり
5.5.1 望ましい企業風土(職場風土)とは
5.5.2 どのように築き上げるのか?
5.5.3 経営者・マネジメント層の率先垂範

第6章 安全・衛生管理
6.1 安全管理は企業存続の重要課題
6.2 労働災害防止活動の考え方
6.2.1 強いトップポリシー
6.2.2 設備の危険箇所の排除と本質安全化
6.2.3 人・風土・制度へのアプローチ
6.3 具体的な労働災害防止活動
6.3.1 安全は職場の5Sから(整理・整頓・清潔・清掃・躾)
6.3.2 ルール順守の風土づくり
6.3.3 危険作業・危険箇所の洗い出しとリスク低減活動
6.3.4 重大災害の未然防止活動
6.4 労働疾病防止活動
6.4.1 労働疾病防止の重要性
6.4.2 労働疾病防止活動のステップ

第7章 生産改善の進め方
7.1 トヨタでトヨタ生産方式が生まれた背景
7.1.1 自働化思想の原点
7.1.2 JUST IN TIMEの原点
7.1.3 生産改善を進める時の心構え
7.2 トヨタ生産方式の特徴
7.2.1 5Sから始める
7.2.2 職場の見える化
7.3 ムダの削減、排除
7.3.1 造りすぎのムダと在庫のムダ
7.3.2 手待ちのムダと動作のムダ
7.3.3 運搬のムダ
7.3.4 加工そのもののムダ
7.3.5 不良・手直しのムダ
7.4 生産ラインの作り方
7.4.1 生産の増減に対応できるライン
7.4.2 Full Work/No Work制御
7.5 作業の標準化
7.5.1 作業要領書(作業指導書ともいう)
7.5.2 標準作業票
7.5.3 標準作業組合せ票
7.6 具体的な改善の進め方
7.6.1 改善の切り口(攻め方)
7.6.2 改善を進めるための支援組織の在り方

第8章 海外工場の立ち上げ
8.1 各部門の役割
8.2 現地での指導と指導要員の養成
8.3 経営理念と経営方針
8.4 マザープラントの役目
8.5 現地採用人材と日本人の役割
8.5.1 現地人材の採用
8.5.2 日本人の現地での役割形態

第9章 海外工場運営の実際
9.1 Union(労働組合)対策
9.1.1 人事労務組織
9.1.2 具体的な人事政策
9.2 経営指導方針の継続性
9.2.1 日本人交代時の課題
9.2.2 定期的な中期ビジョンの見直し
9.2.3 社長交代が最も大きなストレスで注意が必要
9.3 技術の移転
9.3.1 技術の移転は必要だが流出には注意も必要
9.3.2 新製品情報、技術のブラックボックスはきちんと管理
9.4 管理体系・管理方法の移転
9.4.1 マネジメントシステムは現地の事情に一部合わせる
9.4.2 コンプライアンス問題のリスク
9.4.3 現地幹部の待遇
9.5 派遣日本人の資質
9.5.1 言葉と慣習の壁
9.5.2 現地スタッフとの関係
9.6 米国から学んだこと

第10章 日本の工場と肩を並べるために
10.1?工場運営の実力評価の仕組み
10.2?日常管理と方針管理のアセスメント
10.2.1 工場運営管理の基本要件書の作成
10.2.2 ケンタッキー工場での改善取り組み事例
10.3?おわりに
?コラム1 トヨタ自動車九州でのレクサスライン立ち上げプロジェクトマネジメント ?コラム2 本当のことを知りたかったら全数を測れ
?コラム3 労務費は増えても原価は下がる
?コラム4 疾病対応の実質ロスは負担額の4倍
?コラム5 トヨタで学んだこと
?コラム6 著者の米国での奮闘記

〈巻末資料〉良品条件表の作成要領、トヨタのエルゴガイド基準

参考文献
索  引

はじめに

 1985年のプラザ合意以降の急激な円高により輸出環境が大きく変化した。結果として多くの企業はコストの安い海外への生産拠点の移転を急速に進めた。一方で自動車産業は貿易摩擦の回避もあり、消費地での生産に向かわざるを得なくなった。この急拡大の傾向は2000年まで続くことになる。
 2001年以降この傾向は減速してきたが、2013年11~12月にかけてジェトロが海外ビジネスに関心の高い日本企業(本社)9,800社に対して行った、海外ビジネスへの取り組みに関するアンケート調査によると、円高修正や国内景気回復の流れにも関わらず、日本企業の海外事業展開に対する意欲は引き続き高い水準にある。輸出の拡大に積極的な企業の割合が増加をみせたほか、海外進出(新規投資、既存拠点の拡充)についても、依然として6割超の企業が拡大を志向している。海外事業展開先では、中国に対する様子見の姿勢が増加する一方、ASEANへのシフトが鮮明となってきている(ジェトロ「海外ビジネス調査」:有効回答数3,471社うち中小企業は2,791社、回答率35.4%)。
 日本の製造業は、国内需要に頼っていては将来の発展の機会は限られる。新しい需要の増大が海外市場であることから、企業の発展のためには海外への進出が必要不可欠となっている。しかし、海外の生産拠点における生産性向上、品質保証、現地スタッフ人材の育成、現地管理監督者の役割強化など海外工場の運営について課題を抱えている企業は少なくないと思われる。このような状況の中で、現地の事業体が日本の工場と同等のパフォーマンスを上げていくにはどうすればよいのか? また、新興国において技術やマネジメントを移転するための必要条件は何なのか? 過去の展開の中で多くの企業が試行錯誤の末、現状にたどり着いたのであるが、その原点は国内の生産工場の運営管理のレベルの高さにあることは否めない。製造業の競争力の中で生産部門の力が大変重要だということを再認識するとともに、そのためになすべきことを整理してみたい。
 また進出先の国、地域特有の文化、風土、国民性、法制度などと自社の企業文化や理念との融合の問題がある。守るべき理念、企業風土は何かを進出前に十分検討をすることが大切である。
 この書はいわゆるトヨタ生産方式そのものの紹介ではなく、企業活動の中での工場の役割、工場運営の実際について書き下ろしている。内容的には一般的な管理手法に始まり、著者がトヨタで経験した国内工場でのマネジメントや、米国ケンタッキー州Toyota Motor Manufacturing Kentucky Inc. における経験についても参考になる情報を紹介しておきたい。特に企業の力の源泉である品質保証の在り方、原価管理の在り方、安全衛生管理の在り方、そして人材育成の在り方などについて著者の経験に基づく考えを紹介したい。トヨタ流というより、著者の流儀である部分もかなりあるのでご了解いただきたい。
 この書がこれから進出を考えている企業や、現在すでに進出するも種々の課題で問題を抱えている企業への有益な情報となれば幸いである。

2014年10月
雨澤政材

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