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図解よくわかる環境化学工学
製造現場におけるグリーンケミストリーの基礎と実践

定価(税込)  2,420円

編著
著者
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サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07222-2
コード C3043
発行月 2014年03月
ジャンル 化学

内容

化学や材料のものづくり現場において、グリーンケミストリーと呼ばれる環境負荷を考慮した生産が求められている。このような試みは研究室レベルの実践ではなく、製造現場で実現することにこそ意味があると言える。本書では、環境、化学、工学のすべてを網羅し、グリーンケミストリーを製造現場で実現するため、基礎から応用までを解説する。

堀越 智  著者プロフィール

(ほりこし さとし)
上智大学理工学部物質生命理工学科 准教授
・日本電磁波エネルギー応用学会(副理事長)
・Journal of Microwave Power and Electromagnetic Energy(エディター)
・The Scientific World Journal, Chemical Engineering (エディター)
・東京理科大学(客員准教授)
・東京学芸大学(非常勤講師)

菊池康紀  著者プロフィール

(きくち やすのり)
東京大学総長室総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座 特任講師
・東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻(兼担)
・九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(訪問研究者)
・千葉大学環境健康フィールド科学センター(客員准教授)

大橋憲司  著者プロフィール

(おおはし けんじ)
株式会社資生堂 CSR部 環境企画室
・日本LCA学会(企画委員)
・LCA日本フォーラム(情報企画委員)
・PADIダイブマスター(活動休止中)

目次

序  

序章 環境化学工学とは  

第1章 環境と化学
1―1 毒とは何か?  
1―2 化学物質と管理  
1―3 毒性  
 1―3―1 急性毒性とLC50、LD50  
 1―3―2 体内への取り込まれやすさと生体濃縮  
1―4 有害化学物質  
 1―4―1 内分泌攪乱物質  
 1―4―2 POPs  
1―5 エネルギーと資源  
 1―5―1 エネルギーの分類と消費  
 1―5―2 バイオマス資源  
1―6 廃棄物とその処理  
 1―6―1 日本の廃棄物  
 1―6―2 マテリアルリサイクル  
 1―6―3 ケミカルリサイクル  
 1―6―4 サーマルリカバリー  
1―7 地球温暖化とエネルギー収支  
 1―7―1 地球のエネルギー収支  
 1―7―2 地球温暖化のメカニズム  
 1―7―3 地球の温室効果ガスの収支  
1―8 リスク  
 1―8― 安全と安心  
 1―8―2 リスクの算出法  
 1―8―3 化学物質のリスク管理  
 1―8―4 ヒトへの推定暴露量と不確実係数積  
 1―8―5 異なるリスクの比較  
 1―8―6 フェイルセーフ  
 1―8―7 安全・安心とリスク学の役割  
▲付録1 毒性学の用語  

第2章 グリーンケミストリー
2―1 有機合成化学工業の歴史  
2―2 石炭化学から石油化学へ  
2―3 有機合成化学工業  
2―4 有害化学物質放出の状況  
2―5 グリーンケミストリーへの接続  
2―6 グリーンケミストリーの役割  
2―7 12箇条  
2―8 評価方法  
 2―8―1 E―ファクター  
 2―8―2 アトム・エコノミー  
2―9 化学プロセスでの利用  
 2―9―1 グリーン原料  
 2―9―2 バイオマス原料とカーボンニュートラル  
 2―9―3 原料とエコ効率  
 2―9―4 グリーン溶媒  
 2―9―5 水溶媒  
 2―9―6 超臨界二酸化炭素  
 2―9―7 イオン液体  
 2―9―8 マイクロ波化学  
2―10 アトム・エコノミーの高い反応例  
 2―10―1 付加反応  
 2―10―2 転位反応  
2―11 アトム・エコノミーの低い反応例  
 2―11―1 置換反応  
 2―11―2 脱離反応  
2―12 グリーンケミストリーを実践した反応例  

第3章 循環型社会の形成
3―1 概念と歴史的背景  
3―2 21世紀型の循環型社会  
3―3 社会の課題解決における地理・時間スケールとシナリオ分析  
3―4 環境管理と社会的責任  
 3―4―1 企業の社会的責任  
 3―4―2 国内の事例―法令順守違反のコスト 
 3―4―3 海外の事例―原料調達と生態系保全  
 3―4―4 統合報告書  
 3―4―5 21世紀の環境管理と社会的責任  
3―5 シナリオ分析における評価  
 3―5―1 意思決定と評価  
 3―5―2 ライフサイクルアセスメント  
 3―5―3 上流および下流のライフサイクル  
 3―5―4 ライフサイクル影響評価  
 3―5―5 その他の評価手法  
 3―5―6 家電製品に関する評価の実践  
 3―5―7 企業における評価の実践  
 3―5―8 植物資源の利活用におけるトレードオフ  
 3―5―9 植物資源の利活用技術  
3―6 循環型社会に向けた評価と設計に関する国際的動向  
 3―6―1 学術的な研究開発動向  
 3―6―2 シングルクライテリア評価からマルチクライテリア評価へ  
 3―6―3 製品評価から組織評価へ  
 3―6―4 LCAを進めるために  

第4章 化学工学
4―1 概念と歴史的背景  
 4―1―1 化学工学と生活  
 4―1―2 技術学術体系の変遷  
 4―1―3 環境技術と化学工学  
4―2 化学工学の基礎  
 4―2―1 化学プロセス  
 4―2―2 化学プロセスの開発  
 4―2―3 プラントの構成要素と単位操作  
4―3 物質と熱の移動  
 4―3―1 物質とエネルギーの収支1  
 4―3―2 物質とエネルギーの収支2  
 4―3―3 物質とエネルギーの収支3  
 4―3―4 流体のエネルギー  
 4―3―5 移動現象論  
 4―3―6 層流と乱流  
 4―3―7 伝熱  
 4―3―8 無次元数による移動現象の理解  
4―4 化学反応と反応容器  
 4―4―1 化学反応速度(逐次反応)  
 4―4―2 化学反応速度(逐次並列反応)  
4―5 物質の分離  
 4―5―1 分離技術  
 4―5―2 蒸留  
4―6 プロセスシステム工学  
▲付録2  

キーワードインデックス

はじめに

筆者が2011年に上智大学に赴任し、受け持った授業がグリーンケミストリー(3年生対象)であった。グリーンケミストリーとは「環境にやさしい有機合成のための手法」であることが知られ、関連書では様々な反応事例を基に解説されていることが多い。一方、グリーンケミストリーの原書といえるGreen Chemistry:Theory and Practice(P. T. Anastas, J. C. Warner, Oxford Univ. Pr., 2000)には、グリーンケミストリーとは、ゴミの出ない有機合成を行うことで廃棄物の処理費用を無くし、企業の経済性を向上させることが明記されている。もちろん、このような理想的な有機合成を化学プロセスで行えば、環境にやさしい有機合成を行うこととなるが、これに加え経済性との密接な関係が強調されていた。すなわち、グリーンケミストリーとは単に環境に配慮するだけではなく、私たちの暮らしや経済をより豊かにするための概念である。また原書には、化学者が考案する合成プロセスや合成化学物質が、環境や健康に対しても悪影響を与えることを念頭に置いて責任を持った仕事を行わなければならないことが明記されている。このような試みは、研究室レベルでの実践ではなく、化学工業規模で実現することに意味があることも示唆されている。
 本書ではAnastasとWarnerが書いた原書からのメッセージを踏まえ、これらから化学者を目指す大学生や技術系新入社員に向けて、環境にやさしい有機合成にとどまることなく、環境、化学、工学の視点からグリーンケミストリーを解説することを目指した。特に、循環型社会を目指した実際の化成品製造現場におけるグリーンケミストリーの基礎と実践を次の章立てでまとめた。1章:環境と化学、2章:グリーンケミストリー、3章:循環型社会の実現、4章:化学工学。また、本書の主題目はグリーンケミストリーではなく、書籍としては初めてであろう「環境化学工学」とした。これは、物質変換やエネルギー利用が与える環境や健康の悪影響がない製造プロセスの開発を目指し、さらにグローバルな経済性やこれに伴う環境指針などの構築をグリーンケミストリー教育の一環として含めたためである。
 さまざまな分野間の横断や統合による環境化学工学をまとめるため、先端的研究をされている、菊池康紀博士(化学プロセス工学・大学人)および大橋憲司氏(生物学・環境学・企業人)に、堀越(化学・環境保全技術・大学人)を加え、多面的に分かり易く解説することを目指した。また、本書では見開きで各内容が完結するように、エッセンスだけを抽出した。さらに深く各項目を理解されたい場合は参考文献を参照していただければ幸いである。
 環境化学工学を各分野の立場から簡潔にまとめていただいた、2名の共著者に謝意を表します。また、本書の完成に有益なご助言をいただいた、多くの技術者や研究者の皆様に感謝します。さらに、日刊工業新聞社の奥村功様および木村文香様にはご激励をいただき出版までたどり着きました。また、様々な助言をしてくれた、研究者である妻(奈津子)にも感謝します。
 なお、この本では多くのご教示を学術的な文献やインターネットから得ている。本書の紙面を借り、著者を代表してお礼を申し上げます。

2014年2月
大雪の東京より
上智大学 堀越 智

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