内容
近年、物流を取り巻く環境は大きく変わり、物流の効率化、高度化が企業競争のゆくえを左右する時代となっている。さらに海外への製造業の生産拠点シフトもあり、国際物流・貿易の知識も必要不可欠となった。本書では、2009年11月に発行した「物流マン必携ポケットブック」の内容に、新たに国際物流・貿易の内容を加え、国内・国際物流と貿易の基本から実務までをコンパクトにまとめる。
鈴木邦成 著者プロフィール
(すずき くにのり)
物流エコノミスト、日本大学准教授。一般社団法人日本ロジスティクスシステム学会理事。求荷求車ネットワークを運営する株式会社ジェイエルエヌの学術顧問も務める。
主な著書に『図解 アジア物流と貿易の実務』、『図解 物流効率化のしくみと実務』、『図解 すぐ役に立つ物流の実務』、『図解 国際物流のしくみと貿易の実務』、『絵解きすぐわかる産業廃棄物処理と静脈物流』、『絵解きすぐできる物流コスト削減』、『図解 物流の最新常識』、『トコトンやさしいSCMの本』(以上日刊工業新聞社)、『物流100問100答』(明日香出版社)、『戦略ウエアハウスのキーワード』(ファラオ企画)、『グリーンサプライチェーンの設計と構築』(白桃書房)、などがある。
物流・ロジスティクス関連の学術論文、雑誌寄稿なども多数。
目次
第1章 「物流マンの役割と心得」
1.1物流マンの役割
▪経済活動を円滑に行うためにさまざまなモノの流れをスムーズにしましょう!
▪物流プロセス全体を見据え、部分最適ではなく、全体最適を目指しましょう!
▪たんに効率化を追求するだけではなく、
作業者が働きやすい物流現場の環境整備を進めましょう!
▪物流実務を行うにあたって、経験による主観的な判断だけでなく、
客観的な指標を活用しましょう!
▪現場改善にあたっては、改善前と改善後がどう違うかをしっかり把握しましょう!
▪物流現場の安全を常に考え、しっかりとした身だしなみで作業効率の向上を図りましょう!
▪挨拶をきちんと行い、気持ち良く働ける職場づくりを心掛けましょう!
1.2物流管理の向上を図ろう
▪戦略的な視点から、物流の諸計画の策定、調整、評価、改善を
有機的に連動させた物流管理を目指しましょう!
▪物流不動産、物流施設の機能を理解し、戦略的な視点から拠点整備を進めましょう!
▪庫内レイアウトの動線は重複したり、複雑だったりすることなく、
作業者の動きも物品の流れもスムーズになるように工夫しましょう!
▪段ボール箱、パレットなどを効果的に活用し、輸送効率、保管効率などを向上させましょう!
▪物流センターのエリアごとの作業要員数、荷役作業などの流れ、進捗度などを
的確に把握するしくみをつくりましょう!
▪現況の物流量を把握し、将来の物流量を予測しましょう!
第2章 「国内物流における基本業務」
2.1物流業務を覚えよう
▪企業経営のために物流の理論、実務の双方について幅広い経験と深い専門知識を習得しましょう!
▪市場規模や産業構造の変化などへの適応を常に考え、
ロジスティクスネットワークの再編も検討しましょう!
▪物流改善を長期的な視野で実現するために物流コスト、物流ラインの管理を
年間計画を策定して行いましょう!
▪他部署との情報共有を徹底して、思いついたことはすぐにメモをとり、
改善の道筋をはっきりさせましょう!
▪パートナー企業と継続的に意見交換、情報交換を行い、
共通の目的、目標を定めてその実現を目指しましょう!
▪お客様の立場に立って、物流サービスを提供しましょう!
▪物流品質の向上に努め、安全管理を徹底し、お客様に信頼されるサービスを提供しましょう!
▪効率的な配送ネットワークを構築するために戦略的な物流管理を行うようにしましょう!
▪独自性、専門性の高い物流ビジネスモデルを構築するために、
現場経験を積み重ねながら幅広い現場知識を習得しましょう!
▪物流の現状を把握し、その問題点を整理し、いかに解決していくか、
どのように改善していくかを考えるようにしましょう!
▪物流管理を行うにあたって、何が重要か、何がポイントかを
しっかり理解するようにしましょう!
▪物流の効率化を図るにあたって、どのような条件のもとで
最適化が必要とされているかを常に考えるようにしましょう!
第3章 「現場で役立つ物流改善の基本知識」
3.1具体的な物流改善の方策を考えよう
▪物流センターのレイアウトは「ムダがなく、余分に歩くことなどがない」ことを念頭に
考えるようにしましょう!
▪環境負荷の低減を常に念頭に置きながら物流活動に取り組んでいきましょう!
3.2
やる気の出る職場環境をつくろう
▪従業員がやる気と活気をもって職務に励めるような職場環境の構築を実現しましょう!
▪「物流のプロ」であるという自覚をもち、自己のスキルアップを常に念頭に置き、
日々努力を積み重ねていきましょう!
▪いつも安全に気を配り、交通、労災、製品に関する事故がないように
物流品質の向上に努めましょう!
▪常に明るく、活気があり、コミュニケーションが円滑に行われている職場環境を創出しましょう!
3.3
自らもスキルアップを図ろう
▪高度な物流戦略を展開するためにしっかりした人材育成体制をつくり上げましょう!
▪「物流のプロ」として専門知識の増強や諸作業の技能習熟度の向上について、
日々、努力を重ねましょう!
▪物流現場にどのようなムダが存在するかを日々、念頭に置きながら、実務に取り組みましょう!
▪「顧客第一」を常に念頭に置きながら、物流管理、物流改善を進めましょう!
▪物流センターの処理能力を的確に把握し、それに基づいて物流活動を行いましょう!
▪チームワークを重視し、信頼関係に基づいた物流システムの構築を目指しましょう!
3.4物流センターの諸活動を円滑に!
▪物流センターなどの入口や外観の管理や手入れをしっかり行いましょう!
▪物流センターにどのような機能があるか、その役割と特徴をしっかり把握して
日々の実務に臨みましょう!
▪物流センターの作業現場だけではなく、トイレ、シャワールーム、
更衣室、食堂などにも5Sを励行しましょう!
▪作業者の健康に配慮し、快適な作業環境を保つように努力しましょう!
3.5物流センターの運営・管理をしっかり行おう
▪常に最善策を考えながら、物流センターの改革計画を策定しましょう!
▪物流センター内の人、モノ、情報の流れをしっかり把握しましょう!
▪共通の目標、社内スローガンなどを立て、その達成、実現に向けて努力しましょう!
▪期せずしてヒューマンエラーが発生したら速やかかつ適切な対応を心掛け、
原因を必ず究明しましょう!
▪戦略的、中長期的な視野をもち、センター運営を行い、物流改善を推進しましょう!
第4章 「貿易実務の基本知識」
4.1グローバル社会への対応を図ろう
▪グローバル化の流れと国際経済の動向を物流と結び付けて考えましょう!
▪貿易手続きの基本的な流れを押さえ、関連業務について精通しましょう!
▪担当する輸出製品がどこで生産、保管され、
どのようなルートで輸出されるかについてよく理解しましょう!
▪貿易実務に必要な手続き書類について、作成方法、記入方法をきちんと理解しましょう!
▪通関業者やフォワーダーの役割をきちんと理解し、じょうずに活用しましょう!
▪知らない専門用語に触れたらすぐに調べ、その意味を正確に把握するように努めましょう!
▪アジア物流・貿易の基本的なフローを理解して、
国際物流マンとして活躍できる可能性を広げましょう!
▪貿易業務を円滑に行うために、到着までのリードタイム、
時差、距離、貿易条件などについても精通しましょう!
▪日本を起点としたグローバルサプライチェーンの距離が
どんどんと長くなる傾向にあることを十分に認識しましょう!
▪インボイス、明細書などの書類に単純な計算ミスや誤記がないように常に注意を払いましょう!
▪実際に輸入された製品の品質、数量などが書類と異なることがないか、入念にチェックしましょう!
▪輸入国の法規制などを考慮したうえで輸出の手続きを進めましょう!
▪貿易で取り扱う製品と環境規制との関係について基本的な実務知識をしっかり身に付けておきましょう!
▪輸入手続きに必要なさまざまな書類と一連の手続きの流れをしっかりと理解しましょう!
▪保税地域において、貨物をどのように扱うか、
どのような手続きをするか、十分に理解しておきましょう!
▪貨物の引き取りに際して、どのような書類が必要か、きちんと理解しましょう!
第5章 「グローバル化と物流マン─国際物流の基本と実務─」
5.1国際物流への理解を深めよう
▪日本と海外との文化の違いを理解し、国際物流ネットワークの構築を推進していきましょう!
▪国際物流の基本インフラや海上輸送、航空輸送の特徴を理解し、
グローバル物流戦略を構築していきましょう!
▪国際物流ネットワークについて、米州、欧州、アジアなどの主要ルートに精通しましょう!
▪港湾荷役の一連の基本プロセスを理解し、それに関連する
書類手続きの流れもしっかり把握しておきましょう!
▪国際物流の貨物を積載するコンテナについての基本的な知識を整理しておきましょう!
▪船積みされる貨物にはどのようなものがあり、
どのような手続きをとるのか、しっかりと理解しておきましょう!
▪国際貨物の確認に際して、どのようなダメージを受けたかをしっかり確認しましょう!
▪日本国内のみならず、海外の物流拠点についても最適立地を考え、
物流効率化を進めていきましょう!
▪日本との経済交流が盛んになり始めたベトナムの国内事情について
物流の視点からも情報収集を強化しましょう!
▪可能ならば海外の物流センターを積極的に見学し、
日本のセンターとの違いを肌で感じとるようにしましょう!
▪戦略的、中長期的な視野をもち、海外でもセンター運営を行い、
物流改善を進めていきましょう!
▪国際航空輸送の活用について基本的な知識を整理し、実務に活用しましょう!
▪通関手続きをスムーズに行うために、税関に貨物の詳細を知らせ、
目的地までの輸送をスピーディかつ円滑に行いましょう!
▪二酸化炭素排出量の削減など、環境にやさしい国際物流の推進を強く意識しましょう!
▪保税地域の運送について、どのようなしくみで行われているかを
きちんと理解しておきましょう!
▪中国物流のしくみと制度をくわしく理解し、実務に活用していきましょう!
▪中国物流においても、交通、労災、製品に関する事故がないように
物流品質の向上に努めましょう!
▪欧州大陸における物流インフラの総合政策について情報収集を行いましょう!
資料
はじめに
「物流に関する知識をいつでもどこでも気軽に確認して活用する」ということを念頭に物流マンに必要な実務知識を集めてポケットブックとしてみました。
いまや、物流を効率化、高度化することが企業競争のゆくえを左右する時代となりました。さらにいえば、中国などへの製造業の生産拠点シフトもあり、国際物流・貿易実務も物流マンにとって不可欠になりました。
物流をめぐる環境は複雑化、高度化しています。それゆえ高いモチベーションと柔軟な思考回路を持ち、的確に物流実務に対処していく人材が国内外で求められています。
そこで日々の国内物流から国際物流と貿易の実務にまでかかわっていく物流マンが必要とする基本的な心得と基本知識をまとめることとしました。物流マンとしてどのような心構えで国内外の実務をこなし、自らのスキルアップを図っていくかを体系的、かつわかりやすく整理してあります。
荷主企業の物流部などに新たに配属された方、物流企業に就職、転職された方はもとより、長らく物流業界に身を置かれている方、貿易業務に携わっている方、さらにはこれから物流業界に就職したいという学生の方などにも知識の整理に役立つ内容となっています。
本書の構成は次のようになります。
第1章「物流マンの役割と心得」では物流マンの役割、心得、さらに主要業務となる物流管理にあたってのチェックポイントをまとめました。
第2章「国内物流における基本業務」では物流業務における心構えを荷主企業、物流企業のそれぞれの立場から整理し、あわせて物流改善を進めるにあたっての基本的な考え方、心得、ノウハウをまとめました。
第3章 「現場で役立つ物流改善の基本知識」では、現場で必要な物流改善にあたる心構え、姿勢、実務知識をまとめました。
第4章「貿易実務の基本知識」では、国際物流マンが知らなければならない貿易の基本知識とその心得をまとめ、あわせて輸入業務、輸出業務のポイントを解説しました。
第5章「グローバル化と物流マン─国際物流の基本と実務─」ではサプライチェーンの距離が伸びるなか、その重要性が高まっている国際物流に必要な基本知識と物流マンの心得をグローバルな視点を交えてまとめました。
なお、各項目には理解の手がかりとなる、簡単なクイズを出題しています(解答は次項目ページ下に掲載しています)。学校、社内などで相互の物流知識を理解する際の取っ掛かりや確認として活用していただければ幸いです。
全体を一読されたのちにハンドブックとして必要に応じて実務の際に関連項目に目を通すことで物流マンに必要な国内外の物流業務、貿易業務についての理解も進むことと確信します。
また巻末には付録として物流業務を行ううえで必要となる基本知識がまとめられています。物流管理指標、物流コストの分類、倉庫、パレット、フォークリフト、コンベヤ、5S、国際物流の基本項目などに関する実務に役立つ知識、情報を整理しておきました。
日々の実務に取り組む際の参考にしていただければ幸いです。
本書を通して物流マンとしての心得、知識などが整理され、さまざまな可能性がさらに広がることを願ってやみません。
2014年1月
鈴木邦成