買い物かごへ

ロシアが仕掛ける“本気の極東戦略”

定価(税込)  1,980円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07190-4
コード C3034
発行月 2014年01月
ジャンル ビジネス

内容

豊富な地下資源を背景に、ヨーロッパ一の経済大国になるという予測もあるロシア。そのロシアが極東の地に開発省を作り、資金を投入、この地を変えようとしている。本書では、極東開発、地下資源、シベリア鉄道という3つのキーワードを中心に、その狙いを解明していく。

山口英一  著者プロフィール

(やまぐち えいいち)
1929年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、法務省、日立ハイテクノロジー、フォードモーターなどを経て、現在はアイキョウインターナショナルコンサルタント㈱代表取締役社長、㈱五感教育研究所代表取締役社長、国際開発学会正会員、国際地方開発援助アカデミーロシア正会員、国際生産工学アカデミーロシア正会員、シベリア鉄道国際化推進委員会委員長。ロシア国内、日本国内での講演多数。

目次

はじめに 

序 章 世界最大の国土をもつロシアの今 
1 旧ソ連の国際的権利を継承したロシアは今でも大国としての影響力を持つ 
  ペレストロイカ以後の独立国家共同体とロシア/世界最大の国土と管轄の仕組み
2 資源エネルギーからの脱却を目指し経済構造の多角化を目指すロシア 
  世界のエネルギー供給地図が書き換わる可能性/ロシア大統領は政治的に強く大きな権限を有している/ロシアが今、内政・外交で目指すもの/ロシアの極東戦略は、一方で対中国対策という見方も/〝北東アジア開発銀行〟が設立される可能性も示唆


第1章 国策として進む極東開発と極東開発省、その中での日本の位置づけ 
1 東シベリア・極東地域の社会・経済発展の促進を掲げる 
  アルゼンチンよりも大きい極東?しかし人口はロシアの5%足らず/中国と国境を接するアムール州/カムチャツカ半島の全域を占めるカムチャツカ地方/北海道と接するサハリン州はロシアで唯一の「島だけの州」/石炭の生産量でロシアの45%を沿海地方が占める/極東連邦管区の中で最小面積のユダヤ自治州
2 極東は再生可能な資源と枯渇性資源の両方がきわめて豊富な地域 
  石炭輸出量の増加に期待大?日本からの投資・支援も/ロシア全体の伸びを上回る極東地域の鉱業生産?目立つ主要四州
3 国策として進められる極東開発-30兆円を投入 
  極東開発省は地方に置かれる唯一の中央官庁という画期的なもの/極東開発の国家プログラムは巨大な〝ユーラシア国家〟誕生を目指すもの/極東がヨーロッパの東の玄関口となる可能性はますます高まる/シベリア・極東をめぐり、日本、ロシアで報道増える
4 開発が急ピッチで進む極東天然資源 
  「サハリン1」「サハリン2」「原油パイプライン」など/「サハリン1」でガス輸出への道が開ける見通しとなった
5 極東で進む新宇宙基地計画 
  極東にロシアの宇宙基地が移転する?日本企業の技術や投資に期待/「ボストチヌイ宇宙基地」は、ロシア初の非軍事用の宇宙基地/北方領土を含む地域の発展計画の10年延長・強化を発表

第2章 日本とロシアを極東で結ぶ「シベリア鉄道」の拡張戦略 
1 全長9288キロメートルの世界一長い鉄道 
  韓国、中国は活用に積極姿勢/輸送日数の短さで一躍注目-シベリア鉄道は海路の半分の日数/コストと輸送便益のバランスに対する見直しなどでもシベリア鉄道は注目/シベリア鉄道は歴史的にも日本とは深い関わりがある-国際金融の生命線だった/注目された日本発ヨーロッパ内陸向け国際トランジット・コンテナ貨物/シベリア鉄道はロシアの東アジア進出が狙い-日露戦争の最中に完成
2 進むシベリア鉄道整備計画と未来 
  サハリンから日本までトンネルでつながることは実現可能? /ロシアの高速鉄道計画は三路線が検討されている/プラウダなどに発表された「二一世紀の夢」-北海道からシベリア鉄道へ/サハリンから日本までのトンネル建設検討中-プーチン首相(当時)語る/「宗谷トンネル」と「間宮海峡トンネル」を抜けシベリア鉄道へ/間宮海峡を橋で結ぶ案も-2016年着工方針の報道
3 日ロの利益が一致するシベリア鉄道 
  シベリアと日本を結ぶ計画は投資先として魅力大-米銀行家の融資話も/日本側の「シベリア鉄道国際化推進委員会」は民間の一任意団体/かつては四兆円拠出の話も-リーマンショック問題で状況が一変

第3章 ロシアの天然資源開発戦略と極東シフト 
1 森林から鉱物、エネルギーまで、ロシアの天然資源は多種で大量 
  世界第二位の木材生産国、水産資源では日本が担ってきた事業分野に進出/ロシアの資源の中核をなしているのが燃料・エネルギー資源
2 ロシアの屋台骨を支える石油、天然ガスの開発は着実に進展 
  供給先をアジアに向けるエネルギー戦略/意欲的な目標を見込む天然ガス-2008年実績比33~42%増/ウラジオストク基地から日本に年間数百万トン輸出計画のニュースも/ロシアの石炭埋蔵量は世界の12%を占める-今後500年分あるとも
3 ダイヤモンドから貴金属まで多種多様にある鉱物資源 
  ロシアには数兆カラットにのぼるダイヤモンドクレーターがある/ダイヤモンド産業の中心地・サハ共和国の「ミールヌイ」/ロシアの金は生産量が世界五位、埋蔵量は世界三位/ロシアのレアアースの可採埋蔵量は中国を上回っている可能性も/レアメタル・レアアース採掘・加工分野のポテンシャルは相当に大きい/ロシアでは120 の銅鉱床が発見されている-埋蔵量は世界三位

第4章 日本とロシアのビジネス-その期待と狙い 
1 進出著しい日本企業の動き 
  日系企業は自動車産業から銀行、うどんチェーン店まで約270社が進出/ヘルスケアの改善も重点項目の一つ-スーパーに日本の医薬品が展示/日本食人気は「豆腐」や「味噌」の素材にも波及しているが…
2 ロシアビジネスでよく言われること 
  ロシア人と日本人はいろいろと違う/小さな変化が大きな変化になる可能性を秘めている/高等教育人口が多く、外国文化の理解、許容という点で最も進んだ国/ロシアを世界戦略の中で重要なR&D拠点と位置付ける
3 ロシアにも経済特区がある 
  産業構造の高度化を狙いに四種類/経済特区には世界的レベル企業-日本の有力企業も積極進出/ロシア政府は入居企業に高いステータスを与え、必要な支援を約束する

参考資料 

はじめに

 ロシアは今、国際的に注目されています。2020年にはイギリス、フランスを抜き、2028年にはドイツを上回って、ヨーロッパ最大の経済大国になるだろうとの予測もあるほどです。その最も大きな要因が、ロシアが持っている豊富な天然資源に対する高い関心です。「豊富な資源によってロシア経済は継続的な発展が可能」とされています。
 また、航空宇宙産業や軍需産業、IT産業などの高度な科学技術と、高い教育水準による豊富な人材なども注目されています。
 とくに、最近では、宇宙開発基地の極東移転や、極東に対する大規模な資金投入、2012年のウラジオストクでのAPEC(Asia-Pacific Economic Cooperation=アジア太平洋経済協力)の開催、そして、2014年のソチでの冬季オリンピックの開催、2018年のサッカー・ワールドカップ開催など、いずれも世界の耳目を集める話題には事欠きません。
 ロシアが、その豊富な資源を国際的に活用し、経済的な発展を図ろうとするのは当然ですが、その時に大きな力になるとされているモノの一つが、ロシア物流の基幹となっているシベリア鉄道です。ロシア国内を東西に横断し、ヨーロッパから極東を結んでいるシベリア鉄道はまた、新たな資源開発にも結び付いていく可能性をもちます。
 さらに、このシベリア鉄道が、日本やアメリカとつながる可能性も現実味を帯びてきています。そして、そこには日本の得意とする鉄道、土木の技術力が発揮できる余地が期待できますし、それによっての日本への経済効果も見込まれます。
 ツンドラを横切り、バイカル湖畔を通る〝夢とロマンの鉄道〟というイメージが私たち日本人の間では強いシベリア鉄道ですが、現実には、すでに日本も物流の一つの手段としてシベリア鉄道を活用していますし、それが今後、さらに様々な面で拡大していくことが期待できるとなれば、日本のみならず、中国や韓国など近隣諸国もその活用には今以上に積極的になるのは当然でしょう。すでに中国や韓国は、日本の数倍もの物量を、シベリア鉄道で運んでいます。
 また、私たちは、ロシアといえば、北方領土問題を第一に思い浮かべますが、これらの物流と技術を通じて、この問題に踏み込めるのでは、という政治的な側面もあるようです。

 2013年6月、「サハリンへ橋と鉄道?ロシア、16年に着工方針」「北海道延伸案も浮上」という記事が地図入りで新聞に報じられました。ロシア極東の開発を統括する極東開発省が発表したものです。ハバロフスク地方セリヒノからサハリン州ヌイシュまでの約580キロメートルを結ぶ鉄道を建設するという計画で、タタール(間宮)海峡の最も狭い部分(7.3キロメートル)に鉄道橋を建設するというものです。総事業費は一兆円以上とされています。
 そして、「将来的には日本とも結ばれる可能性もある」とし、「サハリン州と国土交通省がこの構想についてすでに協議した」ということも伝えています。
 そこで本書は、躍進著しいロシアを、2012年5月に新たにできたシベリア開発省を中心とする極東開発、国際的な力となる豊富な天然資源、そして、極東からヨーロッパへの大動脈となるシベリア鉄道、という3つのキーワドでくくり、ロシアとは実際どういう国なのか、そして何を目指して、どういう方法で、どこに向っているのかの戦略を、国際生産工学アカデミーと国際地方開発アカデミーのロシア正会員、シベリア鉄道国際化推進委員会委員長というロシアを若干なりとも知る立場から、改めて見てみようと思い、まとめたものです。
 まとめるに当たっては、読者の主観を大事にするため、できる限り客観的な視点からの立場という点を心がけました。一読して、ロシアに対するこれまでの認識に加え、何か新しい知識などを得ていただければ、これに勝る喜びはありません。
 なお、ここで採用した数字については、資料によって異なる場合があることを付け加えておきます。

2014年1月
山口英一

買い物かごへ