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シェールガス革命“第二の衝撃” 危機に陥る日本の化学産業

定価(税込)  1,760円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07189-8
コード C3034
発行月 2014年01月
ジャンル ビジネス 化学

内容

米国で起こったシェールガス革命により化学原料の主役は石油から天然ガスに代わろうとしている。米国の化学産業は復活しようとしているが、日本の化学産業は生き残りの危機が迫る。

室井髙城  著者プロフィール

(むろい たかしろ)
1968年、福島工業高等専門学校卒業。住友金属鉱山㈱入社。
1969年、日本エンゲルハルド㈱〔現・エヌ・イーケムキャット㈱〕に出向。工業触媒の開発に従事。
1998年、エヌ・イーケムキャット㈱化学触媒事業部長。
2002年、同社事業開発部長。
2003年、同社執行役員。
2006年、触媒学会副会長。
2008年、エヌ・イーケムキャット㈱退社。アイシーラボ(工業触媒コンサルタント)設立。BASFジャパン㈱主席顧問。
2009年、日本ガス合成㈱執行役員。
著書:「工業貴金属触媒」(ジェティ)、「工業触媒の劣化対策と再生、活用ノウハウ」(サイエンス&テクノロジー)、「工業触媒の最新動向」(シーエムシー出版)、「シェールガス・オイル革命の石油化学への影響」(サイエンス&テクノロジー)

目次

はじめに 

第Ⅰ章 化学原料としてのシェールガス
1 シェールガス革命の影響は化学産業にも及ぶ 
2 シェールオイルの開発も始まる 
3 化学原料として見たシェールガスの特性 
4 シェールオイルは化学原料として使われるか? 
5 日本にとってシェールガス革命は化学産業では凶となる? 

第Ⅱ章 ナフサからエタンに原料転換するエチレン生産
1 天然ガスからエチレンを作る 
2 米国で建設が進むエチレンプラント 
3 シェールガス由来の化学製品は価格破壊を起こす 
4 日本が輸入する天然ガスは化学原料として使われるか?

第Ⅲ章 化学製品の原料転換はエチレン以外でも進む
1 シェールガス増産でプロパン、ブタンの余剰は生まれるか? 
2 プロピレンプラントの建設も米国で始まる 
3 ブタジエンも天然ガスから作れる 
4 芳香族も天然ガスから作れるか? 

第Ⅳ章 化学産業は米国の一人勝ちとなるのか?
1 復活する米国の化学産業 
2 日本以上に早い欧州への影響 
3 石油随伴ガスで中東に化学産業が勃興 
4 中国は石炭化学で対抗 
5 中国でもシェールガスの開発が始まる 
6 新興国でもエチレンプラントの建設が進む 
7 追い打ちをかけられた日本の石油化学産業 

第Ⅴ章 日本の化学産業の生き残る道
1 エチレン以外の国内生産はまだ可能性がある 
2 海外生産を積極化する日本の石油化学メーカー 
3 日本の強みは製造技術の開発力にある 

おわりに 
索 引 

はじめに

 2000年代に入りシェールガスが大量に安価に掘削できるようになったことで世界的に安価な天然ガスが供給されることになり、シェールガス革命と呼ばれるエネルギー革命が始まった。シェールガス革命は予想以上に急速に広まり、世界のエネルギーの地図が大きく塗り替えられ始めている。これはエネルギー産業にとっては朗報であった。
 一方、石油化学産業に目を向けると、歴史的に日本の石油化学産業は1970年代に二度のオイルショックを体験したが、為替変動や国内外の高度成長に助けられてこの半世紀は順調に発展してきたと思える。しかし、ここに来て世界の石油化学産業は大きく変貌し始めている。
 中東の産油国は、石油随伴ガスを用いて自国で大規模なエチレンクラッカーとポリエチレンなどのエチレン誘導体の製造を開始し始めた。中東で製造される安価な石油随伴ガスから製造されるエチレン誘導体は、欧州とアジアへの輸出が目的である。新興国最大の中国は中東の石油の最大輸入国になりつつあるが、輸入石油の依存度を下げるために独自の石炭を原料とした化学産業を展開しようとしている。
 米国は21世紀になると石油の生産量が減少し輸入量が増加し始めオイルピーク論が出始めていた。そこに来てシェールガスの掘削が始まり天然ガスが安価に大量に入手できることになったのである。シェールガス革命により米国のあらゆる産業は活気を取り戻した。特に米国の石油化学産業はシェールガスに含有されるエタンを原料とすることによって世界一安価なエチレンを製造できることになった。北米では、安価なエタンクラッカーの新設が次々と計画され建設が始まっている。数年後の米国のエチレン誘導体の生産量は米国の国内需要の倍近くとなる。その増加分はほとんどが輸出にあてられると考えられる。輸出先は主に欧州とアジアである。中東の石油化学製品輸出の日本への影響は、中国の需要がいまだ続くために日本への影響はまだ大きくないが、日本の石油化学産業は中東の石油化学産業に競合することはできずエチレンセンターの統合や縮小が始まっている。その矢先にシェールガス革命によってもたらされた米国の安価なエチレン誘導体の輸出に追い打ちをかけられることになるのだ。
 かつて化学原料の主役が石炭から石油から替わったように、化学原料の主役は今や石油から天然ガスに替わろうとしている。
 シェールガス革命の影響はあまりにも大きく、かつてのオイルショックの時のような助け船はない。かつて石油化学コンビナートのフレアスタックの赤い炎は高度成長のシンボルであり、学生時代の著者は石油化学のコンビナートで働きたいと思っていた。ナフサクラッカーの導入と共に人生の半世紀を歩んできた著者のような者にとって、ナフサクラッカーが消滅することなど全く考えられなかった。
 しかし、日本が直面している現実を知らなければならない。本書は、米国のシェールガス革命の日本の石油化学産業への影響を具体的に解析し解決策を模索してみた。石油化学産業に携わる多くの人々への警鐘となれば幸いである。

室井 髙城

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